一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

46 少女と王子……のにちじょう。

本編の続き~?(謎)


モモ     (天使に選ばれた猫)
シャーイーン (王国の王子)
アズア・ゼリア(銀髪の天使)


 男が持って来た薬はどうやら本物だったようで、シャーンの体も徐々に回復のしていっている。
 まだ部屋からは出れていないが、それももう少しで終わるだろう。
 それはいい、それはいいのだけど、この体になってからシャーンの様子がおかしいのだ

「シャーン遊ぼう!」

「わっ、お姉ちゃん、抱き付くのはやめてよぉ。僕恥ずかしいよ」

 何時ものように後からとびついて、頬にキスするのだけど、シャーンは嫌がってしまう。
 何が嫌なのだろうか?
 今までしていたというのに。
 能力は失ってしまったけど、私は特に何も変わってはいない。
 変わったのはこの体のサイズぐらいだろうに。
 人の気持ちというのは、まだ完全には理解できない。
 それとも私が何かしてしまったのだろうか?

「シャーン、私何かしたか? 何かしたなら謝るぞ?」

「お、お姉ちゃんは別に……何にも……してない……よ……」

「じゃあ何でだ? 私のこと嫌いになったか?」

「き、嫌いじゃない! ……よ。恥ずかしいから見ないで!」

 そういってまた顔を逸らしてしまう。
 何だかよく分からないけど、今私の顔を見たくないようだ。
 私の顔に何かついている?
 鏡を見ても特に何も変わっていない。
 折角遊ぼうとしたのに、これじゃあ私が暇になってしまったじゃないか。

「じゃあ私は中庭で走ってくるぞ! 気が向いたら遊ぼうな!」

「ぼ、僕も行くよお姉ちゃん!」

 ?

 嫌われてはいないようだけど、本当によく分からない。
 嫌われていないならそれでいいかと私達は中庭に出ると、放置してあるボールを使って遊ぼうとしている。

「よし、行くぞシャーン。たあああああああああああああ!」

「全然届かないよお姉ちゃん!」

 おもいっきり投げて見たのだけど、ボールはシャーンのかなり手前でポテっと落ちた。
 私は猫だったから、投げるという行為自体をしたことがないんだけど、思ったよりも威力が出ない。
 投げ方が悪かったのだろうか?
 それはあとで練習するとして、シャーンは何時も通りに戻っている。
 私と距離が離れたからだろうか?

「じゃあ行くよお姉ちゃん! やあああああ!」

 私とは違い、シャーンの放ったボールは結構な威力があった。
 投げるのは不得意だけど、取るぐらいは出来るはずだ。
 放たれたボールに手を伸ばすが、指の先がボールにぶつかってしまう。

「いたああああああああああい!」

「大丈夫お姉ちゃん?!」

「指がジンジンして痛いぞ」

「突き指しちゃったんだね、お医者さんに見てもらおう。こっち、ついて来て!」

「うん!」

 さっきまでの態度はなくなり、シャーンは私の手を取ってくれた。
 何だか凄く嬉しく感じる。

「ねぇモモお姉ちゃん……モモちゃんって、呼んでいいかな?」

「シャーンの好きに呼べばいいぞ。私達は家族なんだからな!」

「うん、モモちゃん!」

 二人の日々は続いていく。
 ちょっとずつ距離を詰めて、そのうち何かあるかも知れないし、ないかも知れない。
 
「シャーン王子は私のものだあああああああああああああ!」

「また出たなカーリー! シャーンは渡さない、絶対だ!」

「今日こそは倒させて貰います! そして王子と一つにいいいいいいいいいい!」

「やらせないぞおおおおおおおおおおおおおおお!」

 何て日々も続くかもしれない。
 そして……

「シャーン、私子供が欲しい」

「ああ、そうだね。僕達の宝物を作ろうか……名前は、何が良いかな?」

 私はそのままベッドに沈み、シャーンとの夜を過ごすのだった。

「という妄想をしたので、ちょっと見たいと思いまして、はい……」

 天界と呼ばれる場所にある、遥か遠い異世界の日本の町並みの様な場所。
 その景色に一切溶け込もうとしない一つの神殿に、銀髪の天使アズア・ゼリアが偉い人に呼び出されていた。
 見たこともないような偉い天使達に囲まれ、ちょっとピンチを迎えようとしている。
 罪状として、天界の掟を破り、適当に猫を転生させて、殺して生き返らせた罪だった。
 ついでに視界をジャックして運命を操って王子と結ばせようとした罪もある。

「ほおぅ、それが見たいから掟を破ったのだな? それにあの猫娘の中には天使の力が残っているではないか」

「いや違うんですよ。だってまさかあんな程度で死ぬとは思わないじゃないですか。あれはただの事故で私の所為じゃないんです! それに力だってその内消えると思います!」

「その猫とやらは本来あの世界に存在しない人間である。貴様は罪を犯した。よってこの天界を追放する。もし天界に戻りたいというのなら、貴様が利用した王子とやらと別れさせることだ。もちろん、貴様が王子の慰み者になってもいいんだぞ?」

「全力で別れさせて御覧に入れます!」

「そうか、受け入れて貰えてよかった。では貴様は力無い人間として生まれ変わらせてやろう! 安心するがいい、寿命が来た時には迎えに行ってやろう。覚えていればな」

「えええええええええええええええええ!」

 天使がそんな前の事を気にするはずがない。
 きっと寿命で死んだときには、次も普通の人間としてまた生まれ変わらされるだろう。
 その時には天使であったことさえも忘れさせられ、普通の人間になってしまう。
 ついでに寿命のその時には、私も帰ることをスッカリ忘れているかもしれない。

「あの、出来れば定期的に連絡とかくれると嬉しいんですけどおおおおおおおおおお?!」

 交渉しようとするも、足元には大きな穴が開き、私は人間界に飛ばされてしまうのだった。
 兎に角、私のやれる事は一つである。
 あの二人が大人になる前に天界に戻り、天使の力を取り戻すことだ。
 それがもし出来なくとも、視界共有さえ出来れば充分である。
 そして、ずっとかけてある視界共有の力で、二人の合体を見届けなければならないのだ。
 というか、最初からそれが目的なのだ。
 私は天界には存在しない人間のエロスというものを体験するのが目的なのである。

 今後あの二人の前には色々な障害が立ち塞がることだろう。
 それは私の妨害であったり、恋敵とのバトルであったり、色々と。
 だがきっと成し遂げてくれるだろう、私の目的の為に!


 モモの試練はまだまだ続く。
 というかまだ始まったばかりなのである。
 味方だと思っていた天使に襲われそうになったり、恋敵的な存在があらわれたりと、物語は続いて行くのだろう。


                            END

「一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く