一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
50 まおうぐんのにちじょう 戦慄のデート記念日。
天使マスティアの事を解決し、普通に平和に暮らしている俺に、また変なことが舞い込んでしまう。
べノムザッパー(無力となったマスコット)
アスタロッテ (べノムの嫁)
グラビトン (王国の門番)
マスティア (塔の天使)
「ヌガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
町中で巨大な剣を振り回す男グラビトン。
彼はこの町で暴走していた。
ただ、これは前とは違い、ハッキリと自分の意思を持った暴走である。
だったらどうなんだと言われても、こっちの方が案外酷い被害が出ているのかもしれないが、今の所人への被害は零だった。
「おいコラ! 町中で剣を振り回すな! ぬおあ!」
ちなみに俺は、その隣にいるべノムという男である。
一応宥めてはいるのだが、まあ無理なんじゃね?
とか思い始めている頃だった。
何故こうなったかと言われれば、時は少し遡る。、
それは今日の日から二日ほど前に、俺の家にグラビトンが尋ねて来たのだ。
入れる大きさじゃないので玄関先で手早く要件を聞いてみるたのだが。
「頼みがあるのだべノム! どうか俺と一緒にデートをしてくれないか?!」
「嫌だわ! お前そんな趣味だったのかよ?! というかあの天使はどうしたんだ?!」
「待て、勘違いをするんじゃない。俺とマスティーとのデートに付いて来てくれと言ってるだけだ!」
「はぁ、あの天使とのデートだとぉ?」
マスティーとは、たぶんあの天使の事だろう。
つまりは俺に付き添いを頼んでいるのだ。
まあ仲間であるグラビトンの頼みだ、一応聞いてやろうとは思う。
「お前の頼みだ、聞いてやりたい所だが、残念だが他を当たってくれ。俺はあの天使と関わり合いになりたくない!」
天使に関わるという条件がないならだ!
俺はそう断わり扉を閉めようとするのだが、グラビトンが巨大な手を扉に挟ませている。
「おいコラ、手が邪魔だ! 放せやコラ!」
「これだけ頼んでいるんだ、良いではないか! 今回だけ、今回だけなのだ! 私の頼みを聞いてはくれないか?!」
「全然頼んでねぇじゃねぇか! 俺が了解するまで放さねぇつもりだろ!」
俺がどれだけ力を入れても扉は閉まってはくれない。
この男と力比べをしたところで、絶対に勝てないだろう。
全く以てやりたくはない俺だったが、頼まれたとしても絶対にやりたくはなかった。
激しくどうしてもやりたくなかった俺なのだが。
「マッドが起きちゃうでしょ。二人共煩くしないで! べノムも頼まれてるんだから聞いてあげればいいじゃない!」
「いや、でもなぁ」
「やりなさい!」
「あ~、わかったよ。やりゃあいいんだろ、やりゃあよ……」
俺はロッテに説得……というか脅されて、それをやらざるを得なかったのだ。
子守というのは中々に大変らしく、機嫌の悪い日というのが結構頻繁にあったりする。
そして今は機嫌が悪いらしい。
ここでもし断れば、俺は後々大変なことになったりしてしまうのだ。
「うおおおおおおおおおお、ありがとう友よ! これからはグラちゃんと呼んでくれてもいいんだぞ! 是非そうするがいい!」
「はぁ、そうかいグラちゃんよ。じゃあ行ってやるから、とりあえず帰ってくれ!」
「うむ、ではまた当日の明後日に呼びに来るから。家で待っていてくれよ! まあ居るのは分かっている。お前の休みの日は調べてあったからな」
「計算ずくかこの野郎! 俺の休みがなくなるじゃねぇか!」
「はっはっは、ではまたな!」
グラビトン、いやグラちゃんが去って行き、俺はそのデートとやらに付き合わされることになってしまう。
そして日が流れ、その約束の日が来てしまった。
朝っぱら、朝早く、色々と言い方があるかもしれないが、水平線から日がちょっと輝いたぐらいの時間。
夜と朝がまじりあった時間帯。
ハッキリ言って俺もロッテもまだ寝ている。
「たのもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! この日が来たぞ、さあ出立しようではないかべノムよ!」
「おわッ、何だ一体!」
「ぎゃああああああああああああああああ!」
「あああああ、マッドが起きちゃったああああ!」
そんな時間帯に、めちゃめちゃデカイ声でグラビトンの呼び声が聞こえて来たのだ。
俺とロッテも跳び起きて、マッドまでもが泣き出す始末。
「おいうるせぇぞ!」
「朝っぱらから何やってんだ!」
と、ご近所からも怒号が飛び、ロッテの機嫌も悪くなっていた。
「煩いべノム、早く出て行って!」
「いや俺の所為じゃねぇからな?!」
「このまま叫ばせてたらもっと煩いでしょ! 良いから早く行って来て!」
「お、おう」
俺はロッテに追い出され、とりあえず怒りを向けてグラビトンに蹴りをくれてやる事にした。
「テメェの所為でロッテの機嫌が悪くなったじゃねぇか! 来るのが早すぎんだよ!」
ガンと頭に一撃くれてやったが、俺の攻撃など物ともしていない。
「はっはっは、俺も待ちきれなかったのだ。許せ。そんな事よりも、俺とマスティーとのデートの事だ! 早速作戦会議といこうではないか!」
むしろ逆に足を掴まれ、俺は肩に担がれてしまった。
「おいコラ、足を放せ!」
「はっはっは!」
何処に連れて行かれたかと言えば、こいつの担当する正門前だ。
俺は椅子もなく地べたに座らされ、この巨人の小さな悩みを聞かされ続けている。
「それでべノムよ、デートとは何をすれば良いのだ?! いきなりキス以上の事を要求してもいいのだろうか?!」
「さ~? いいんじゃないか?」
普通に訪ねて来てくれれば、俺だってそれなりに相談にも乗ってやろうと思っていたんだが、流石にそんな気にはならなくなっていたのだ。
まあ俺は適当に聞き流していると、かなり早めにデートの時間が来たらしい。
空から天使マスティアがこの場所へ飛んできていた。
「またせたのですよグラビ―! さあデートを……おや、貴方は黒い人? 私と付き合うですか?」
「覚える気がねぇのかお前は、おりゃべノムだよ! そして付き合わねぇから!」
「マスティー、この男は俺達のデートに付き添ってくれるだけの男だ。気にする必要はまるでないぞ! それより早速デートを始めようではないか」
「そうですね、では行きましょうかグラビ―」
こんなもの付き合ってても酷い目にしか合わないと、もうこの時点で気付いとけばよかったのだが、今の俺は気付けなかったのだ。
「あ、グラビ―、何かあるですよ?」
「あれは中央広場の噴水ですな。マスティー少し休んで行こうか?」
「いや、いいです」
「では彼方に行ってみよう。彼方には公園があるのでな!」
「そうですか? では行ってみるです!」
最初の内は順調に進んで行き、俺はその惚気状態を永遠と見せつけられている。
だが、それも長くは続かなかった。
「あなた、私の恋人になるですか? あなたはどうです?」
日が昇り、人々が起き始めると、この天使は活発に行動し始める。
横に居るグラビトンのグラビ―を置き去りにして、男とみるや恋人にしようと声を掛けて行くのだった。
一度はこの天使からはなれた奴でも、その唇を忘れられなかった奴も多かったのだ。
二人三人と増え続け、大きな集団が出来始める。
だがマスティアも前の行動で懲りたのか、十数人でその数を止めていた。
それでも十分多いのだが、まあこのぐらいなら王国の危機にはならないだろう。
しかし、グラビトンにとってはそうではなかった。
このデートを物凄く楽しみにしていた、この男にとっては、この状況は許せないものだったのだ。
「ヌガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
頭に血が上り過ぎて剣を抜いて暴れ出すグラビトン、ハッキリ言って危ない事この上ないが、一応少しは理性があるらしい。
直撃は避けて地面にぶつけているが、それでも普通に危ないのは変わりなのだ。
「危なッ!」
「ぎゃああああああああ!」
「ほわああああああああ!」
集まっていた男達の近くに大きな剣が振り落とされ、全員逃げて散って行く。
だが大きな剣を振り回し、力いっぱい地面に振り下ろしたりと、まるで止まる気配がなかったのだ。
「おいコラ! 町中で剣を振り回すな! ぬおあ!」
俺にまで剣を向けてくるこの暴走野郎だが、それを止められる力はない。
超防御力のこんな奴に、何をしても効きやしないのだ。
あとはもう気の済むまで暴れさせるぐらいしか方法がなかった。
だが、そんな中で救いの手が現れた。
「グラビ―、デートはしないのですか?」
「もちろんします!」
天使のたった一言で態度を一変させ、グラビトンはデートの続きを楽しむらしい。
「おい、その前に謝ってくれ!」
「……べノムよ、よく聞くがいい。これはよくある青春の暴走というやつだ。まあ大目にみてくれ」
「お前そんな年じゃねぇだろうが!」
まあこれで終わっとけばよかったんだが、この状況は何度も何度も繰り返され、暴走を繰り返している。
もうなんというか、暴走する原因(マスティア)と要因(グラビトン)がガチっと噛み合って、ひたすら迷惑この上ない状況となっていた。
だから結局イモータル様に呼び出されてしまい……
「デートするのはいいのですが、王国の中ではしないでください!」
そう言いつけられてしまったのだった。
「は、はい、すみませんでした……」
「?」
マスティアの方は分からないが、グラビトンはそれなりに反省し、これで一件落着だと思われたその時。
「貴方にも責任はありますベノム! 監視をしていたというのに、これは一体何事ですか!」
何故か俺にまで飛び火してきてしまったのだ。
無理やり付き合わされただけの俺に一体何の非があるというのか。
「待ってくださいイモータル様。俺はただ無理やり連れて来られただけで、あの騒ぎに関わっている訳では……」
「黙りなさい! 言い訳とは見苦しいですねべノム。貴方には一ヶ月の草むしりを命じます!」
「ああ、はい……」
結局俺は仕事帰りや暇な時に草むしりをやらされるという、何にも良いことがない結果になったのだ。
天使よ、頼むからもう俺に関わらないでくれ!
END
べノムザッパー(無力となったマスコット)
アスタロッテ (べノムの嫁)
グラビトン (王国の門番)
マスティア (塔の天使)
「ヌガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
町中で巨大な剣を振り回す男グラビトン。
彼はこの町で暴走していた。
ただ、これは前とは違い、ハッキリと自分の意思を持った暴走である。
だったらどうなんだと言われても、こっちの方が案外酷い被害が出ているのかもしれないが、今の所人への被害は零だった。
「おいコラ! 町中で剣を振り回すな! ぬおあ!」
ちなみに俺は、その隣にいるべノムという男である。
一応宥めてはいるのだが、まあ無理なんじゃね?
とか思い始めている頃だった。
何故こうなったかと言われれば、時は少し遡る。、
それは今日の日から二日ほど前に、俺の家にグラビトンが尋ねて来たのだ。
入れる大きさじゃないので玄関先で手早く要件を聞いてみるたのだが。
「頼みがあるのだべノム! どうか俺と一緒にデートをしてくれないか?!」
「嫌だわ! お前そんな趣味だったのかよ?! というかあの天使はどうしたんだ?!」
「待て、勘違いをするんじゃない。俺とマスティーとのデートに付いて来てくれと言ってるだけだ!」
「はぁ、あの天使とのデートだとぉ?」
マスティーとは、たぶんあの天使の事だろう。
つまりは俺に付き添いを頼んでいるのだ。
まあ仲間であるグラビトンの頼みだ、一応聞いてやろうとは思う。
「お前の頼みだ、聞いてやりたい所だが、残念だが他を当たってくれ。俺はあの天使と関わり合いになりたくない!」
天使に関わるという条件がないならだ!
俺はそう断わり扉を閉めようとするのだが、グラビトンが巨大な手を扉に挟ませている。
「おいコラ、手が邪魔だ! 放せやコラ!」
「これだけ頼んでいるんだ、良いではないか! 今回だけ、今回だけなのだ! 私の頼みを聞いてはくれないか?!」
「全然頼んでねぇじゃねぇか! 俺が了解するまで放さねぇつもりだろ!」
俺がどれだけ力を入れても扉は閉まってはくれない。
この男と力比べをしたところで、絶対に勝てないだろう。
全く以てやりたくはない俺だったが、頼まれたとしても絶対にやりたくはなかった。
激しくどうしてもやりたくなかった俺なのだが。
「マッドが起きちゃうでしょ。二人共煩くしないで! べノムも頼まれてるんだから聞いてあげればいいじゃない!」
「いや、でもなぁ」
「やりなさい!」
「あ~、わかったよ。やりゃあいいんだろ、やりゃあよ……」
俺はロッテに説得……というか脅されて、それをやらざるを得なかったのだ。
子守というのは中々に大変らしく、機嫌の悪い日というのが結構頻繁にあったりする。
そして今は機嫌が悪いらしい。
ここでもし断れば、俺は後々大変なことになったりしてしまうのだ。
「うおおおおおおおおおお、ありがとう友よ! これからはグラちゃんと呼んでくれてもいいんだぞ! 是非そうするがいい!」
「はぁ、そうかいグラちゃんよ。じゃあ行ってやるから、とりあえず帰ってくれ!」
「うむ、ではまた当日の明後日に呼びに来るから。家で待っていてくれよ! まあ居るのは分かっている。お前の休みの日は調べてあったからな」
「計算ずくかこの野郎! 俺の休みがなくなるじゃねぇか!」
「はっはっは、ではまたな!」
グラビトン、いやグラちゃんが去って行き、俺はそのデートとやらに付き合わされることになってしまう。
そして日が流れ、その約束の日が来てしまった。
朝っぱら、朝早く、色々と言い方があるかもしれないが、水平線から日がちょっと輝いたぐらいの時間。
夜と朝がまじりあった時間帯。
ハッキリ言って俺もロッテもまだ寝ている。
「たのもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! この日が来たぞ、さあ出立しようではないかべノムよ!」
「おわッ、何だ一体!」
「ぎゃああああああああああああああああ!」
「あああああ、マッドが起きちゃったああああ!」
そんな時間帯に、めちゃめちゃデカイ声でグラビトンの呼び声が聞こえて来たのだ。
俺とロッテも跳び起きて、マッドまでもが泣き出す始末。
「おいうるせぇぞ!」
「朝っぱらから何やってんだ!」
と、ご近所からも怒号が飛び、ロッテの機嫌も悪くなっていた。
「煩いべノム、早く出て行って!」
「いや俺の所為じゃねぇからな?!」
「このまま叫ばせてたらもっと煩いでしょ! 良いから早く行って来て!」
「お、おう」
俺はロッテに追い出され、とりあえず怒りを向けてグラビトンに蹴りをくれてやる事にした。
「テメェの所為でロッテの機嫌が悪くなったじゃねぇか! 来るのが早すぎんだよ!」
ガンと頭に一撃くれてやったが、俺の攻撃など物ともしていない。
「はっはっは、俺も待ちきれなかったのだ。許せ。そんな事よりも、俺とマスティーとのデートの事だ! 早速作戦会議といこうではないか!」
むしろ逆に足を掴まれ、俺は肩に担がれてしまった。
「おいコラ、足を放せ!」
「はっはっは!」
何処に連れて行かれたかと言えば、こいつの担当する正門前だ。
俺は椅子もなく地べたに座らされ、この巨人の小さな悩みを聞かされ続けている。
「それでべノムよ、デートとは何をすれば良いのだ?! いきなりキス以上の事を要求してもいいのだろうか?!」
「さ~? いいんじゃないか?」
普通に訪ねて来てくれれば、俺だってそれなりに相談にも乗ってやろうと思っていたんだが、流石にそんな気にはならなくなっていたのだ。
まあ俺は適当に聞き流していると、かなり早めにデートの時間が来たらしい。
空から天使マスティアがこの場所へ飛んできていた。
「またせたのですよグラビ―! さあデートを……おや、貴方は黒い人? 私と付き合うですか?」
「覚える気がねぇのかお前は、おりゃべノムだよ! そして付き合わねぇから!」
「マスティー、この男は俺達のデートに付き添ってくれるだけの男だ。気にする必要はまるでないぞ! それより早速デートを始めようではないか」
「そうですね、では行きましょうかグラビ―」
こんなもの付き合ってても酷い目にしか合わないと、もうこの時点で気付いとけばよかったのだが、今の俺は気付けなかったのだ。
「あ、グラビ―、何かあるですよ?」
「あれは中央広場の噴水ですな。マスティー少し休んで行こうか?」
「いや、いいです」
「では彼方に行ってみよう。彼方には公園があるのでな!」
「そうですか? では行ってみるです!」
最初の内は順調に進んで行き、俺はその惚気状態を永遠と見せつけられている。
だが、それも長くは続かなかった。
「あなた、私の恋人になるですか? あなたはどうです?」
日が昇り、人々が起き始めると、この天使は活発に行動し始める。
横に居るグラビトンのグラビ―を置き去りにして、男とみるや恋人にしようと声を掛けて行くのだった。
一度はこの天使からはなれた奴でも、その唇を忘れられなかった奴も多かったのだ。
二人三人と増え続け、大きな集団が出来始める。
だがマスティアも前の行動で懲りたのか、十数人でその数を止めていた。
それでも十分多いのだが、まあこのぐらいなら王国の危機にはならないだろう。
しかし、グラビトンにとってはそうではなかった。
このデートを物凄く楽しみにしていた、この男にとっては、この状況は許せないものだったのだ。
「ヌガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
頭に血が上り過ぎて剣を抜いて暴れ出すグラビトン、ハッキリ言って危ない事この上ないが、一応少しは理性があるらしい。
直撃は避けて地面にぶつけているが、それでも普通に危ないのは変わりなのだ。
「危なッ!」
「ぎゃああああああああ!」
「ほわああああああああ!」
集まっていた男達の近くに大きな剣が振り落とされ、全員逃げて散って行く。
だが大きな剣を振り回し、力いっぱい地面に振り下ろしたりと、まるで止まる気配がなかったのだ。
「おいコラ! 町中で剣を振り回すな! ぬおあ!」
俺にまで剣を向けてくるこの暴走野郎だが、それを止められる力はない。
超防御力のこんな奴に、何をしても効きやしないのだ。
あとはもう気の済むまで暴れさせるぐらいしか方法がなかった。
だが、そんな中で救いの手が現れた。
「グラビ―、デートはしないのですか?」
「もちろんします!」
天使のたった一言で態度を一変させ、グラビトンはデートの続きを楽しむらしい。
「おい、その前に謝ってくれ!」
「……べノムよ、よく聞くがいい。これはよくある青春の暴走というやつだ。まあ大目にみてくれ」
「お前そんな年じゃねぇだろうが!」
まあこれで終わっとけばよかったんだが、この状況は何度も何度も繰り返され、暴走を繰り返している。
もうなんというか、暴走する原因(マスティア)と要因(グラビトン)がガチっと噛み合って、ひたすら迷惑この上ない状況となっていた。
だから結局イモータル様に呼び出されてしまい……
「デートするのはいいのですが、王国の中ではしないでください!」
そう言いつけられてしまったのだった。
「は、はい、すみませんでした……」
「?」
マスティアの方は分からないが、グラビトンはそれなりに反省し、これで一件落着だと思われたその時。
「貴方にも責任はありますベノム! 監視をしていたというのに、これは一体何事ですか!」
何故か俺にまで飛び火してきてしまったのだ。
無理やり付き合わされただけの俺に一体何の非があるというのか。
「待ってくださいイモータル様。俺はただ無理やり連れて来られただけで、あの騒ぎに関わっている訳では……」
「黙りなさい! 言い訳とは見苦しいですねべノム。貴方には一ヶ月の草むしりを命じます!」
「ああ、はい……」
結局俺は仕事帰りや暇な時に草むしりをやらされるという、何にも良いことがない結果になったのだ。
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END
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