一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
79 痴話喧嘩。
ワニ男、アリーに川を渡ると宣言し、俺達は川の向う側へ移動をする。アリーに括り付けられた俺だが、向う側につくのは約三分だという。そんなに息を止めるのは無理だと言い、俺は一分毎に息継ぎをする。四回もの息継ぎの末、拷問のような時間を何とか耐え抜いた。ちょっとばかりダメージが大きく、息を整えていると、向う側からアリーの飛び込んだ。そういえば何か言うのを忘れていたと、グリア―デの事をすっかり伝え忘れ、こちら側についた時にはグリア―デの息が止まっていたのだ。俺は心臓の辺りをグッと押し、なんとか息を吹き返らせると、抱きかかえてポンポンと背中を叩いた。だが気が付いたグリア―デは、自分の状況を確認し、唇の辺りに手を当てる。そして何故か俺の顔面を殴りつけたのだった…………
マルクス・ライディーン (ラグナード神英部隊、隊長)
ラクシャーサ・グリーズ (ラグナード神英部隊、後方支援)
ガルス・フリュード (ラグナード神英部隊、前方防御)
ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)
セリィ・ブルーマリン (魔物と人の娘。エルフ種)
ディレイド・マグロイド (マリア―ドの偉い人?)
遠くから見える灯りが、ほんのりとグリア―デのシルエットを映し出す。
顔は良く見えないが、凄く怒っていそうな雰囲気だ。
いや、見えないけど凄く怒っている。
今まさに怒鳴り散らそうとしていた。
「気絶させた挙句、わざわざ溺れさせて、人工呼吸と称して私の唇を奪うとは、なんという計画的な! もう一度ぶん殴ってあげますわ!」
グリア―デはまた右の拳を振り上げ、俺の顔面を殴り飛ばした。
避けられなくもないが、ほんのちょっとだけ気絶させたことが頭をよぎり、それは避けないことにしたのだ。
「ぶふぉっ」
だが同じ個所ばかり殴らないで欲しい。
本当に痛いんだが。
「いや、ちょっと落ち着け、俺はそんな事はしていない。ただちょっと胸の辺りに手を当ててドーンとしただけだ」
「むむむむむ胸を揉んだですってえええええええ! ま、まさか、気絶している間に色々と…………いやああああああああ、けだものおおおおおおおおおおお!」
「いやそうじゃなくてな、胸をドーンと押しただけで…………」
「言い訳なんて聞きたくありません! 貴方が私をそういう目で見てたのは知っていますけど、まさかこんな手で来るなんて…………うう、もうお嫁にいけません、傷のついた体では誰も貰ってくれませんわ。もう貴方を殺して私も死にます!」
俺をどんな目で見てたんだこいつ。
そんな混乱しているグリア―デが懐から短剣を取り出し、俺に襲い掛かって来るのだが、そんなので殺される訳にはいかない。
グリア―デの手首を掴みそれを止めるのだが、逆の手でまた力一杯殴って来るから、そちらの手も掴んだ。
「わ、私をどうする気なんです! こ、このッ!」
「こ、股間はやめろ! ぬぐぁ…………」
グリア―デは俺の股間を蹴ったから片足となり、俺は玉を打ち付けられ前へ倒れだす。
結果、短剣だけは自由にさせてはだめだと両手を掴んだまま、グリア―デを押し倒し、その体の上に倒れてしまった。
そんな状態で、痛みで声を上げるしか出来なくなっている。
「うおおおおおおおおおぉぉぉ…………」
「このっ、放せ、放せえええええええええええええ!」
何だこの状況は、俺が一体なにをしたというんだ。
ただちょっと助ける為に、気絶させただけじゃないか。
間違ってるぞ神様、これは命を助けてやった俺に対する仕打ちじゃない。
グリア―デが叫び、俺が動けないでいると、ザバンと水の中からアリーとラクシャーサが上がって来た。
「ゲホゲホ、こんなに辛いなんて…………二人ってそういう関係だったんだ? いや別にいいけど、今やることじゃないんじゃないの?」
見られているのは分かっているんだが、痛いものは痛いからどうにもならない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「あああああああああああああああああああ!」
俺達を見て居たラクシャーサも、これ以上見るのは不味いと顔を逸らし出した。
「見ない方がいいよなこれ……何でこんな時に盛ってるんだろう」
「み、見てないで助けてください、私は今まさに襲われようとしてるのですよ?! やだ、胸に顔をうずめないでえええええええええええ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおお…………」
俺は何もする気がないのだが、痛みの為に動けないから如何にも出来ないのだ。
そんな騒々しい時間も、俺の痛みと共に収まる。
俺はハッとグリア―デの顔を見ると、少しだけ涙を浮かべ、もう如何にでもすれば良いんじゃないのよ的な表情をしている気がする。
まあ暗いから良く分からない。
だがこのままでは不味いと、俺はゆっくりと立ち上がり、ふうと一息ついた。
「これはただの事故だ。お前が蹴りなんて入れなければ起こらなかったただの事故だ。ちょっと玉が痛くて蹲っていただで、俺は何もする気はないから安心しろ。とりあえずその短剣をしまってくれ。もとはと言えば、お前がそんなものを持って襲って来るから悪いんだろう?」
「…………貴方のことはよく分かりました。身分違いの恋をして、どうにもならない劣情を発散して落ち着いたのですね。確かに、美し過ぎる私に、そういう思いを抱くのは分からないでもありません。仕方ありません、今回は私が大人になります。今回だけは許してあげます!」
「いや、だから事故だと…………」
「わ、か、り、ま、し、た、ね?!」
グリア―デは短剣を此方に向け、怒った顔だと思われる顔で威嚇している。
これ以上言い合いをする必要はないかと、俺はそれを受け入れたのだ。
「じゃあもうそれでいいから、もう大人しくしといてくれ…………」
「認めましたわああああああああああ! やっぱりそうなのよ、私のことが好きで好きで仕方ないんでしょう?! 貴方みたいな奴を相手にするのは嫌ですけど、嫌なんですけど! そんなに好きだと言うのなら、私に相応しい証を持っていらっしゃい! もし私が気に入る様な物であれば、考えるだけは考えてもいいのよ?! 考えるだけですけどね! その場でグシャっと叩きつけて、踏み潰して差し上げますわ!」
「おい、今言った事を今覆すな! ころころと心変わりの激しい奴だ。まあそんな証とやらを持って来ようにも、任務中だから無理だ。もし任務が終わっても付いて来る気があるのなら、ラグナードまで来るなら渡してやってもいいぞ」
「そ、それは、まさか、プロポーズ?! 私にラグナードに嫁げと…………?!」
「誰がそんな事を言った! またこっちに戻って来るのが面倒だからラグナードに来いと言ってるだけだ!」
俺達がガミガミと言い合いをしていると、仲間達も続々と此方に渡って来ている。
もう最後の一人、ディレイドが到着しようとしていた。
因みに到着している仲間達は、俺達の言い合いを無視して、この場所の探索をしていたり色々している。
こっちの苦労も考えて欲しいが、最後の一人が到着すると、ラクシャーサが話しかけて来た。
「お~い、痴話喧嘩はもう後にしなよ、まだやってるなら、私達は先に進むからな!」
「「 痴話喧嘩じゃない! 」」
俺達の話に決着はつかなかったが、もう仲間達も集まってしまったから、先に進むことを優先する。
グリア―デはまだ文句を言い足り無さそうだが、俺はもう関わり合いになりたくないと、先頭を歩き出した。
これ以上文句を言わせない為、落ちていた木片に剣の魔法で火をつけ、川の様子を見渡すと、全貌が見えて来る。
川のこちら側の岸は狭く、奥には一つだけ伸びる道がある。
アリーに聞くと、この道は何かあった時の為に作った脱出口だと言う。
大臣達も知らない道だというので、追っ手もやっては来ないだろう。
ここからは分かれ道も無く、俺達はただ真っ直ぐ続く道を上り続け、道の先から外の光が伸びていた。
マルクス・ライディーン (ラグナード神英部隊、隊長)
ラクシャーサ・グリーズ (ラグナード神英部隊、後方支援)
ガルス・フリュード (ラグナード神英部隊、前方防御)
ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)
セリィ・ブルーマリン (魔物と人の娘。エルフ種)
ディレイド・マグロイド (マリア―ドの偉い人?)
遠くから見える灯りが、ほんのりとグリア―デのシルエットを映し出す。
顔は良く見えないが、凄く怒っていそうな雰囲気だ。
いや、見えないけど凄く怒っている。
今まさに怒鳴り散らそうとしていた。
「気絶させた挙句、わざわざ溺れさせて、人工呼吸と称して私の唇を奪うとは、なんという計画的な! もう一度ぶん殴ってあげますわ!」
グリア―デはまた右の拳を振り上げ、俺の顔面を殴り飛ばした。
避けられなくもないが、ほんのちょっとだけ気絶させたことが頭をよぎり、それは避けないことにしたのだ。
「ぶふぉっ」
だが同じ個所ばかり殴らないで欲しい。
本当に痛いんだが。
「いや、ちょっと落ち着け、俺はそんな事はしていない。ただちょっと胸の辺りに手を当ててドーンとしただけだ」
「むむむむむ胸を揉んだですってえええええええ! ま、まさか、気絶している間に色々と…………いやああああああああ、けだものおおおおおおおおおおお!」
「いやそうじゃなくてな、胸をドーンと押しただけで…………」
「言い訳なんて聞きたくありません! 貴方が私をそういう目で見てたのは知っていますけど、まさかこんな手で来るなんて…………うう、もうお嫁にいけません、傷のついた体では誰も貰ってくれませんわ。もう貴方を殺して私も死にます!」
俺をどんな目で見てたんだこいつ。
そんな混乱しているグリア―デが懐から短剣を取り出し、俺に襲い掛かって来るのだが、そんなので殺される訳にはいかない。
グリア―デの手首を掴みそれを止めるのだが、逆の手でまた力一杯殴って来るから、そちらの手も掴んだ。
「わ、私をどうする気なんです! こ、このッ!」
「こ、股間はやめろ! ぬぐぁ…………」
グリア―デは俺の股間を蹴ったから片足となり、俺は玉を打ち付けられ前へ倒れだす。
結果、短剣だけは自由にさせてはだめだと両手を掴んだまま、グリア―デを押し倒し、その体の上に倒れてしまった。
そんな状態で、痛みで声を上げるしか出来なくなっている。
「うおおおおおおおおおぉぉぉ…………」
「このっ、放せ、放せえええええええええええええ!」
何だこの状況は、俺が一体なにをしたというんだ。
ただちょっと助ける為に、気絶させただけじゃないか。
間違ってるぞ神様、これは命を助けてやった俺に対する仕打ちじゃない。
グリア―デが叫び、俺が動けないでいると、ザバンと水の中からアリーとラクシャーサが上がって来た。
「ゲホゲホ、こんなに辛いなんて…………二人ってそういう関係だったんだ? いや別にいいけど、今やることじゃないんじゃないの?」
見られているのは分かっているんだが、痛いものは痛いからどうにもならない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「あああああああああああああああああああ!」
俺達を見て居たラクシャーサも、これ以上見るのは不味いと顔を逸らし出した。
「見ない方がいいよなこれ……何でこんな時に盛ってるんだろう」
「み、見てないで助けてください、私は今まさに襲われようとしてるのですよ?! やだ、胸に顔をうずめないでえええええええええええ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおお…………」
俺は何もする気がないのだが、痛みの為に動けないから如何にも出来ないのだ。
そんな騒々しい時間も、俺の痛みと共に収まる。
俺はハッとグリア―デの顔を見ると、少しだけ涙を浮かべ、もう如何にでもすれば良いんじゃないのよ的な表情をしている気がする。
まあ暗いから良く分からない。
だがこのままでは不味いと、俺はゆっくりと立ち上がり、ふうと一息ついた。
「これはただの事故だ。お前が蹴りなんて入れなければ起こらなかったただの事故だ。ちょっと玉が痛くて蹲っていただで、俺は何もする気はないから安心しろ。とりあえずその短剣をしまってくれ。もとはと言えば、お前がそんなものを持って襲って来るから悪いんだろう?」
「…………貴方のことはよく分かりました。身分違いの恋をして、どうにもならない劣情を発散して落ち着いたのですね。確かに、美し過ぎる私に、そういう思いを抱くのは分からないでもありません。仕方ありません、今回は私が大人になります。今回だけは許してあげます!」
「いや、だから事故だと…………」
「わ、か、り、ま、し、た、ね?!」
グリア―デは短剣を此方に向け、怒った顔だと思われる顔で威嚇している。
これ以上言い合いをする必要はないかと、俺はそれを受け入れたのだ。
「じゃあもうそれでいいから、もう大人しくしといてくれ…………」
「認めましたわああああああああああ! やっぱりそうなのよ、私のことが好きで好きで仕方ないんでしょう?! 貴方みたいな奴を相手にするのは嫌ですけど、嫌なんですけど! そんなに好きだと言うのなら、私に相応しい証を持っていらっしゃい! もし私が気に入る様な物であれば、考えるだけは考えてもいいのよ?! 考えるだけですけどね! その場でグシャっと叩きつけて、踏み潰して差し上げますわ!」
「おい、今言った事を今覆すな! ころころと心変わりの激しい奴だ。まあそんな証とやらを持って来ようにも、任務中だから無理だ。もし任務が終わっても付いて来る気があるのなら、ラグナードまで来るなら渡してやってもいいぞ」
「そ、それは、まさか、プロポーズ?! 私にラグナードに嫁げと…………?!」
「誰がそんな事を言った! またこっちに戻って来るのが面倒だからラグナードに来いと言ってるだけだ!」
俺達がガミガミと言い合いをしていると、仲間達も続々と此方に渡って来ている。
もう最後の一人、ディレイドが到着しようとしていた。
因みに到着している仲間達は、俺達の言い合いを無視して、この場所の探索をしていたり色々している。
こっちの苦労も考えて欲しいが、最後の一人が到着すると、ラクシャーサが話しかけて来た。
「お~い、痴話喧嘩はもう後にしなよ、まだやってるなら、私達は先に進むからな!」
「「 痴話喧嘩じゃない! 」」
俺達の話に決着はつかなかったが、もう仲間達も集まってしまったから、先に進むことを優先する。
グリア―デはまだ文句を言い足り無さそうだが、俺はもう関わり合いになりたくないと、先頭を歩き出した。
これ以上文句を言わせない為、落ちていた木片に剣の魔法で火をつけ、川の様子を見渡すと、全貌が見えて来る。
川のこちら側の岸は狭く、奥には一つだけ伸びる道がある。
アリーに聞くと、この道は何かあった時の為に作った脱出口だと言う。
大臣達も知らない道だというので、追っ手もやっては来ないだろう。
ここからは分かれ道も無く、俺達はただ真っ直ぐ続く道を上り続け、道の先から外の光が伸びていた。
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