一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

77 小さく大きな物語34

追い掛けられた俺達は、宿に戻って仲間と合流し、もうこんな変な町には来たくないと思いつつ、この変な町から逃げ出した。少しばかり追い掛けられるが何とか振り切り、次の町へ向かって行く。その道の道中、野営をしようと準備をするが、そこに、とんでもない怪物が現れた。黒色の巨体は空すら隠す程で、そいつにとって蟻のような俺達は、我武者羅に逃げ出した。そんな化け物のおかげか魔物とは遭遇せず、目的の町とは別の町を見つけてしまう。町といっても廃墟だったが、そこで休憩しようと泊れる家を探すのだが、そこで裸のお姉さんをガン見してしまうのだった…………


レティシャス(シャインの息子)ストリア   (村娘)
リッド   (村人)     リーゼ    (リッドの母ちゃん)
サンタクロス(セバスチャン) トナカイマスク(プロレスの人)







 あの女の人が家に籠って十数分、着替えて来たその人が家の中から出て来るのだった。
 さっきも裸だったが、服を着ても煽情的せんじょうてきな物になっている。
 胸元は布で巻き付けられ、半そでのお腹までしかないデニムジャケットを着ていた。
 太腿をドーンと出した半ズボンと、脛の上まで伸びた皮のブーツを着用している。
 そんな恥ずかしがり屋だが出したがりの姉ちゃんが、俺達を見て蔑みながらこう言った。

「あんた達、まだ居たのね、そんなに私を怒らせたいのなら、良いわぶっ殺してあげる!」

「いや俺達は泊れるいえを探しててって、聞いててなかった? 俺別にお姉さんに興味ないし、裸見たって別に何とも思わないぞ。なあリッド」

「え、あ、うん…………」

 リッドはちょっと照れてる。
 まあ今のは嘘である。
 男の子である俺達は、多少なりとも、お姉さんの裸で興奮しているのである。
 だって男の子だもの。
 しかしそれを隠して対応しなければ、相手は俺達を敵と見るだろう。

「怪しいものね、このナイスバディの私の裸を見て興奮しない男なんていないもの。貴方達、どうせ裸の女が暮らしているとか噂で聞いたから来たんでしょうけど、私は貴方達のような奴に見世物にされる為に裸になってる訳じゃないのよ! 諦めて帰るのね!」

「いや、だから、泊れる家を探しているだけだって。それに俺達の仲間にも女の人は居るし、お姉さんの裸を見たくて来た訳じゃないって。なあリッド」

「そそそそそそうだね…………」

 おい、怪しまれるからオドオドするなリッド。
 本当にそう思われるじゃないか。

「やっぱり怪しいわね、本当にそんな女が居るんなら、連れて来てみなさいよ、どうせ嘘なんでしょう?! ぶん殴られたくなければ、早く帰るのねッ!」

 もう駄目らしい、俺達の事は、どうしようもなく怪しんでいる。
 近くに泊まれそうな建物も見当たらないし、一応聞いてみよう。

「じゃあお姉さんの家の他に、何処か泊まれる場所を知らないか? 俺達そこに泊まるからさ」

「私が知るかああああああああああああ! もういい、実力行使よ、ぶっ倒してあげるわよ!」

 そういってお姉さんが拳を握っている。
 俺達に襲い掛かって来そうだけど、剣を抜いて勝っちゃったら当然悪者だ。
 これでは言い合っても無駄だと、尻尾を巻いて逃げ出した。

「リッド、これは無理だ、逃げるぞ!」

「そ、そうだね。ごめんなさ~い!」

「待てええええええええええ!」

 逃げる俺達を追い掛けて来るお姉さん、俺達を逃がす気はないらしい。
 鍛えられた俺達の足について来るというのは、このお姉さんはただ物じゃないだろう。
 いや、そんなことを言ってる場合じゃない。
 女性陣の元へ行って、誤解を解いて貰わなければ!

「待てええええええええええ、止まれええええええええええええ!」

「やだ、殴られるから止まらない! 仲間の元へ案内してやるから、それで誤解を解いてくれ!」

「嘘をつくなあああああああああああああ!」

 走り続けた俺達は、ストリアとリーゼさんの元へと戻って来た。
 辺りには良い匂いが漂っている。
 美味い料理が出来たのかもしれないが、今はそれはどうでもいい。
 俺とリッドは急いでストリアの横を通り過ぎて、リーゼさんの後ろに隠れた。
 ストリアがちょっと残念そうにしているけど、まあ放っておこう。

「あら、また何かあったのよね? そんなに慌てて」

「あれあれあれあれあれあれあれあれ!」

「前前前前前前前前!」

「ああ、あの人ね? 何かしたの貴方達?」

「いや、俺達は何も……っていうわけでもないけど、不可抗力だったんだ!」

「そうだよ、人が住んでるなんて知らなかったんだし、仕方なかったんだよ!」

 俺達が到着した直ぐあと、既にその女は到着していた。
 言い訳をする俺達が悪者だと指を突きつける。

「本当に女が居るとはビックリだけど、それでも私の裸を嘗め回した罪は消えない! 大人しく成敗されなさい!」

「…………まさか、レティ君だけじゃなくてリッドも舐めたの?」

 俺だけじゃなくってのには引っかかるが、

「ちちちち違うよ母さん! 別に僕達は舐めてないよ!」

「レティ、お前も男の子だ、そんな気が起こるのもわからないでもない。でも何故だ、私なら舐め放題だと言うのに、何で私を舐めないんだ!」

「何言ってるのお前?! 俺は舐めてないわ! ただちょっとタイミング良く真っ裸を覗いちゃっただけだよ!」

「だそうだけど?」

「本当に舐めてなくても、舐めるように見回したのは事実! 例え事故であろうと、乙女の柔肌を勝手に見た罪は重い! 大人しく私に撲殺されなさい!」

「いやだよ、何で大人しく殴り殺されなきゃならんのだ! 謝ったからもういいじゃん!」

「あわわわわわわわわ」

「問答無用! はあああああああああああ!」

「ッ待ちなさい!」

 その女はリーゼさんの横を抜け、俺とガルスに殴り掛かって来るんだが、リーゼさんはそれを軽くぶん投げてしまうのだった。
 確かこれはリーゼさんがやっているという、近所の奥さんに教わった格闘術だ。
 だが投げ飛ばされたその女は、空中で体勢を直し、地面にシュタッと着地する。
 そして二人が睨み合う。

「ふっ、なかなかやるようね、おばさん、名前を教えなさい!」

「私? 私はリーゼ、ただのリーゼよ。じゃあ貴女は?」

「良く聞いたなリーゼ! この私こそ伝説の女を超える為、日夜修行に明け暮れる者。そう私はジャネス・ミッドフィールドよ! もうそんな覗き魔なんてどうでも良いわ! さあリーゼ、兵(つわもの)が出会ったのなら、そこが戦いの場。いざ尋常に勝負なさい!」

「…………なんだか面倒だから断ってもいいかしら?」

「そちらが来ないなら此方から行くぞ、たああああああああああああ!」

「このッ、話を聞かない子ね! やれば良いでしょ、やれば!」

 ガシッっと、小技など何もない、激しい蹴り合いから始まった戦いは、俺達を無視して始まってしまう。
 ジャネスの右の拳をリーゼさんは受け止め、そのまま、またぶん投げる。
 今度は捕まえたまま地面に叩きつけたが、叩きつけたジャネスの拳がりーぜさんを殴りつけた。
 しかしそれも顔をずらして躱すという、とんでもない格闘戦になりそうだ。
 だがそんな戦闘中に、料理を作り続け完成させたストリアが、リーゼさんに格闘技を教えた近所の奥さんの娘ストリアが、ジャネスの頭を地面に叩きつけたのだった。

「フンッ!」

「ぎゃッ」

 その一撃で白目をむいて倒れるジャネス。
 二人の一対一とか関係なく、なんか煩かったからぶん殴ったのだろう。

「よし、これで暴漢は倒したぞ。さあレティ、私の作った料理を存分に堪能してくれ!」

「お、おう…………」

 丁度良いからジャネスをロープで縛り上げ、俺達はストリアの料理を食べるのだった。 

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