一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
68 俺達より強い男。
リア―ドの城に向かった俺達だが、昨日のように二人の門番に止められてしまう。門番に伯爵だと嘘を言い、なんとか城の中に入らせて貰ったが、信用はされていないらしい。エントランスにまで連れて行かれるが、そこで待ち構えていたディレイドという男と交渉を持ちかける。話を続ける俺達だが、偽物だと周りを囲まれた。取引の証拠があると口に出し、なんとかその戦いを回避した。そして俺達は、まだ客扱いだと、客室に案内されるのだった…………
マルクス・ライディーン (ラグナード神英部隊、隊長)
ラクシャーサ・グリーズ (ラグナード神英部隊、後方支援)
ガルス・フリュード (ラグナード神英部隊、前方防御)
ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)
セリィ・ブルーマリン (魔物と人の娘。エルフ種)
ディレイド (マリア―ドの偉い人?)
大きな客室に通された俺達だが、扉を開けた後ろには、見張りがつけられている。
茶や菓子も出され、立派な椅子に座らされているが、まだ、客人という扱いだ。
一応武器も取り上げてられてはいない。
しかし、もし証拠が見つからず、グリアーデの宝石も見つからなければ、即犯罪者というレッテルを張られてしまうだろう。
今この部屋の中には俺達だけだ。
まあ使用人でも盾にされると思われているのかもしれないが、なんにしろ、仲間と話すなら今のうちだ。
とりあえず、茶と菓子に手を伸ばそうとしているガルスとセリィに釘を刺した。
「ガルス、セリィ、手はつけるなよ、万が一毒が入れられていたら不味いからな」
「そ、そうだね、セリィも止めとこう、危ないから」
「え~、セリィ食べる~!」
「ダメだよセリィ、私が持って来たお菓子をあげるから、それで我慢してね」
「おかし~!」
ラクシャーサがセリィにお菓子を渡し、それを食べさせている。
その菓子を食べて、今の所は大人しくしてくれていた。
それは良いとして、この時間は俺達にとっても貴重な時間だ。
この中の状況を話し合わなければ。
「さて、城に入れたのは良いが、あまり良い状況とは言えないな。ラクシャーサ、教会の奴等はもう脱出しているだろうか?」
「う~ん、どうだろう。結構頑丈には作ったんだけど、相手は十人も居るから、逃げられててもおかしくないかもな。でもグリアーデはこの城に居るんだろ? こっちに来てくれれば、上手くいくと思うけど」
「どうだろうな、あ奴は家の復興を考えとるからなぁ。儂等を斬り捨てて、それが成されるのなら、きっとそうするだろ。…………だがそれも、この城の中で何が起こっているのか、だろうな」
「たしか、あの宝石の譲渡が、王の独断であるような事を言っていたな。そして敵も多く、あんな黒ヴェールの奴等まで出て来るほど人望がなく、国賊とまで呼ばれるとなると、この国にとっては良くない人物なのだろう。その王を味方につけられれば逆転も可能だろうが、会うにしても何処に居るのかがわからない。会いに来てくれれば手っ取り早いんだが、俺達のような怪しい奴等の前には出て来ないだろう」
「でもさ、グリアーデって俺達の敵じゃないでしょ? 泥棒から宝石を取り戻したって思ってるだけかもしれないよ? ただ褒美をもらって、資金提供をお願いするだけじゃない?」
「その宝石が、何方に流れたかによるだろうな。ディレイドは知らなったようだから、別の人物に知らせが行って、そこから王側に情報が行ったか、それとも黒ヴェールの奴等に情報が行ったか、その先の展開が変わるだろう。黒ヴェールの奴等に宝石が渡れば、グリアーデは金も貰えず、城に持って来た事自体が無かったことにされるだろう。口封じされる可能性もあるな」
「ふむむ、王側に渡ったとなれば、もう一度取引が行われるかもしれんが、あの黒ヴェールが邪魔をしに来るのだろうな。儂等が助かるには、王側に行ってくれる方がいいのだが、さて…………」
「はぁ、結局のところ、あの扉が開いた時しかわからないんだよね」
「まあ、そうなんだがな。何時でも戦う用意はしておけよ」
俺達はその時を待ち続け、ようやくその瞬間が訪れた。
ガチャリと扉が開くと、あのディレイドという男一人が、この部屋に入って来た。
先ほどとは違い、今は緑の帽子をかぶり、邪魔くさい装飾ははずしてある。
部下達も居らず、何も言わずに俺達の元へとやって来た。
俺達は椅子から立ち上がり警戒を強める。
証拠を理解出来たか……それとも…………?
「グリアーデという人物はこの城には見つからない。言った教会には誰も居ない。お前達の証拠は何も示さなかった。この意味が分かるな?」
ディレイドが、腰の剣を抜き放ち、先端を俺の前に向けている。
たった一人で、俺達五人を相手に出来るというのだろうか?
それとも何か罠が?
俺は仲間に警告を出す。
「全員戦闘準備だ!」
俺は腰のブロードソードを抜き、仲間達とディレイドに斬り掛かった。
「たった五人でこの私に…………と言いたい所だがッ、って話を聞かんか馬鹿者め!」
何か言いたそうにしている気がするが、今更止められない。
ガンと剣がぶつかり力比べが始まる。
相手の力は強く、俺は簡単に押し負けてしまうが、この場には俺一人ではない。
ドル爺とガルスが左右からぶつかったが、籠手と剣を使い、受け流された。
ラクシャーサがゴーレムを、セリィは弓を番え、隙を待つ。
じつは戦いを止めようとしているのは知ってるが、このディレイドという男の実力を知ろうとしているのだ。
まあセリィとガルス辺りは本気で戦ってるのかもしれない。
…………もし怪我でもさせたら謝るとしよう。
「ふッ!」
「どりゃあああああああ!」
「これで、どうだ!」
「ぬうううぅん! この糞共! えええぃ、止まらんかあああ!」
俺達の三方向の攻撃も、ドル爺の槍を受け流し、俺達の進路へと弾くと、自分の優位の場所に位置を移動している。
セリィの弓の軌道も塞ぎ、俺達五人でも微妙に負けているか?
魔法を使えばなんとかなるかもしれないが、使わなければ無理だな。
まだ相手からの攻撃は来ていない。
もうそろそろ怒って反撃してくるかもしれない。
そろそろ攻撃を止めるとしよう。
俺は一歩下がり、その場で剣を納め、全員に攻撃中止を宣言する。
「おい、そろそろ剣を納めるぞ」
「う~む、やはり手強いな。だが実力が知れたのは充分な収穫だな」
「えっ? 本気じゃなかったの?!」
俺達のそんなやり取りを見ると、ディレイドも剣を納めた。
「ふん、そんな事だろうと思ったが、これでこの私の実力は分かっただろう。今後こんな事をすれば、どうなるか…………」
カン
「セリィ、もういいよ、弓を降ろし……あっ…………」
すでにセリィは天井に矢を放っていたらしい。
その矢がカンと天井に当たり、ディレイの頭の上に落下している。
あれは教会で見せた跳躍する技だ。
その矢が天井に当たり、ディレイドの頭に落下した。
ドスっと立派な帽子を突き破り、その矢が頭に突き刺さった。
「「「「あっ!」」」」
…………ま、まあ、ちょっと刺さったぐらいだから、死ぬことはないだろう。
「うぐおおおおおおおおおおおおおおお,貴様等ああああああああ!」
ディレイドが頭を押さえて、床に蹲っている。
ああ、達人でも油断してたから…………
このままでは不味いと、ラクシャーサに治療を頼んだ。
「いや待て、それはワザとじゃない、ラクシャーサ、早く治療を! セリィももう攻撃しなくていいから」
「ん、わかった~!」
「ごめんごめんごめんごめん、直ぐ治療するから、セリィを怒らないでよ!」
「うおおおおおおおおおおお、早くしろ! もし治らなかったら許さんぞおおおおおおお!」
ラクシャーサにより矢が引き抜かれ、ディレイは魔法による治療をうけると、また剣を抜き警戒を強めたが、その場で地団駄を踏み、ディレイドはまた腰の剣を納めた。
「二度と、するな、馬鹿者め!」
「「「「あ、はい…………」」」」
「は~い!」
元気に返事をするセリィに、ディレイがジロリと睨んでいるが、あんまり気にしていないその目に諦めたらしい。
「…………うぬぬぬ、クッ! 教会には争った跡は見つかり、門番からは、赤い宝石を持った女が入城したとも聞かされた。お前達のことは、保留とさせてもらおう。許されたとは思わぬことだな、何か出ればその場で斬る。その女は特にだ!」
ビシッとセリィに指さしている。
結構怒っているらしい。
セリィのことは兎も角、油断させる罠、ではないな。
この男の力は俺達全員より強い、わざわざ嘘をつく必要もないだろう。
「…………ああ、わかっている」
俺はそう返事をして、この男との情報を交換する。
マルクス・ライディーン (ラグナード神英部隊、隊長)
ラクシャーサ・グリーズ (ラグナード神英部隊、後方支援)
ガルス・フリュード (ラグナード神英部隊、前方防御)
ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)
セリィ・ブルーマリン (魔物と人の娘。エルフ種)
ディレイド (マリア―ドの偉い人?)
大きな客室に通された俺達だが、扉を開けた後ろには、見張りがつけられている。
茶や菓子も出され、立派な椅子に座らされているが、まだ、客人という扱いだ。
一応武器も取り上げてられてはいない。
しかし、もし証拠が見つからず、グリアーデの宝石も見つからなければ、即犯罪者というレッテルを張られてしまうだろう。
今この部屋の中には俺達だけだ。
まあ使用人でも盾にされると思われているのかもしれないが、なんにしろ、仲間と話すなら今のうちだ。
とりあえず、茶と菓子に手を伸ばそうとしているガルスとセリィに釘を刺した。
「ガルス、セリィ、手はつけるなよ、万が一毒が入れられていたら不味いからな」
「そ、そうだね、セリィも止めとこう、危ないから」
「え~、セリィ食べる~!」
「ダメだよセリィ、私が持って来たお菓子をあげるから、それで我慢してね」
「おかし~!」
ラクシャーサがセリィにお菓子を渡し、それを食べさせている。
その菓子を食べて、今の所は大人しくしてくれていた。
それは良いとして、この時間は俺達にとっても貴重な時間だ。
この中の状況を話し合わなければ。
「さて、城に入れたのは良いが、あまり良い状況とは言えないな。ラクシャーサ、教会の奴等はもう脱出しているだろうか?」
「う~ん、どうだろう。結構頑丈には作ったんだけど、相手は十人も居るから、逃げられててもおかしくないかもな。でもグリアーデはこの城に居るんだろ? こっちに来てくれれば、上手くいくと思うけど」
「どうだろうな、あ奴は家の復興を考えとるからなぁ。儂等を斬り捨てて、それが成されるのなら、きっとそうするだろ。…………だがそれも、この城の中で何が起こっているのか、だろうな」
「たしか、あの宝石の譲渡が、王の独断であるような事を言っていたな。そして敵も多く、あんな黒ヴェールの奴等まで出て来るほど人望がなく、国賊とまで呼ばれるとなると、この国にとっては良くない人物なのだろう。その王を味方につけられれば逆転も可能だろうが、会うにしても何処に居るのかがわからない。会いに来てくれれば手っ取り早いんだが、俺達のような怪しい奴等の前には出て来ないだろう」
「でもさ、グリアーデって俺達の敵じゃないでしょ? 泥棒から宝石を取り戻したって思ってるだけかもしれないよ? ただ褒美をもらって、資金提供をお願いするだけじゃない?」
「その宝石が、何方に流れたかによるだろうな。ディレイドは知らなったようだから、別の人物に知らせが行って、そこから王側に情報が行ったか、それとも黒ヴェールの奴等に情報が行ったか、その先の展開が変わるだろう。黒ヴェールの奴等に宝石が渡れば、グリアーデは金も貰えず、城に持って来た事自体が無かったことにされるだろう。口封じされる可能性もあるな」
「ふむむ、王側に渡ったとなれば、もう一度取引が行われるかもしれんが、あの黒ヴェールが邪魔をしに来るのだろうな。儂等が助かるには、王側に行ってくれる方がいいのだが、さて…………」
「はぁ、結局のところ、あの扉が開いた時しかわからないんだよね」
「まあ、そうなんだがな。何時でも戦う用意はしておけよ」
俺達はその時を待ち続け、ようやくその瞬間が訪れた。
ガチャリと扉が開くと、あのディレイドという男一人が、この部屋に入って来た。
先ほどとは違い、今は緑の帽子をかぶり、邪魔くさい装飾ははずしてある。
部下達も居らず、何も言わずに俺達の元へとやって来た。
俺達は椅子から立ち上がり警戒を強める。
証拠を理解出来たか……それとも…………?
「グリアーデという人物はこの城には見つからない。言った教会には誰も居ない。お前達の証拠は何も示さなかった。この意味が分かるな?」
ディレイドが、腰の剣を抜き放ち、先端を俺の前に向けている。
たった一人で、俺達五人を相手に出来るというのだろうか?
それとも何か罠が?
俺は仲間に警告を出す。
「全員戦闘準備だ!」
俺は腰のブロードソードを抜き、仲間達とディレイドに斬り掛かった。
「たった五人でこの私に…………と言いたい所だがッ、って話を聞かんか馬鹿者め!」
何か言いたそうにしている気がするが、今更止められない。
ガンと剣がぶつかり力比べが始まる。
相手の力は強く、俺は簡単に押し負けてしまうが、この場には俺一人ではない。
ドル爺とガルスが左右からぶつかったが、籠手と剣を使い、受け流された。
ラクシャーサがゴーレムを、セリィは弓を番え、隙を待つ。
じつは戦いを止めようとしているのは知ってるが、このディレイドという男の実力を知ろうとしているのだ。
まあセリィとガルス辺りは本気で戦ってるのかもしれない。
…………もし怪我でもさせたら謝るとしよう。
「ふッ!」
「どりゃあああああああ!」
「これで、どうだ!」
「ぬうううぅん! この糞共! えええぃ、止まらんかあああ!」
俺達の三方向の攻撃も、ドル爺の槍を受け流し、俺達の進路へと弾くと、自分の優位の場所に位置を移動している。
セリィの弓の軌道も塞ぎ、俺達五人でも微妙に負けているか?
魔法を使えばなんとかなるかもしれないが、使わなければ無理だな。
まだ相手からの攻撃は来ていない。
もうそろそろ怒って反撃してくるかもしれない。
そろそろ攻撃を止めるとしよう。
俺は一歩下がり、その場で剣を納め、全員に攻撃中止を宣言する。
「おい、そろそろ剣を納めるぞ」
「う~む、やはり手強いな。だが実力が知れたのは充分な収穫だな」
「えっ? 本気じゃなかったの?!」
俺達のそんなやり取りを見ると、ディレイドも剣を納めた。
「ふん、そんな事だろうと思ったが、これでこの私の実力は分かっただろう。今後こんな事をすれば、どうなるか…………」
カン
「セリィ、もういいよ、弓を降ろし……あっ…………」
すでにセリィは天井に矢を放っていたらしい。
その矢がカンと天井に当たり、ディレイの頭の上に落下している。
あれは教会で見せた跳躍する技だ。
その矢が天井に当たり、ディレイドの頭に落下した。
ドスっと立派な帽子を突き破り、その矢が頭に突き刺さった。
「「「「あっ!」」」」
…………ま、まあ、ちょっと刺さったぐらいだから、死ぬことはないだろう。
「うぐおおおおおおおおおおおおおおお,貴様等ああああああああ!」
ディレイドが頭を押さえて、床に蹲っている。
ああ、達人でも油断してたから…………
このままでは不味いと、ラクシャーサに治療を頼んだ。
「いや待て、それはワザとじゃない、ラクシャーサ、早く治療を! セリィももう攻撃しなくていいから」
「ん、わかった~!」
「ごめんごめんごめんごめん、直ぐ治療するから、セリィを怒らないでよ!」
「うおおおおおおおおおおお、早くしろ! もし治らなかったら許さんぞおおおおおおお!」
ラクシャーサにより矢が引き抜かれ、ディレイは魔法による治療をうけると、また剣を抜き警戒を強めたが、その場で地団駄を踏み、ディレイドはまた腰の剣を納めた。
「二度と、するな、馬鹿者め!」
「「「「あ、はい…………」」」」
「は~い!」
元気に返事をするセリィに、ディレイがジロリと睨んでいるが、あんまり気にしていないその目に諦めたらしい。
「…………うぬぬぬ、クッ! 教会には争った跡は見つかり、門番からは、赤い宝石を持った女が入城したとも聞かされた。お前達のことは、保留とさせてもらおう。許されたとは思わぬことだな、何か出ればその場で斬る。その女は特にだ!」
ビシッとセリィに指さしている。
結構怒っているらしい。
セリィのことは兎も角、油断させる罠、ではないな。
この男の力は俺達全員より強い、わざわざ嘘をつく必要もないだろう。
「…………ああ、わかっている」
俺はそう返事をして、この男との情報を交換する。
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