一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
16 小さく大きな物語18
「いったああああああああああああ!」
両肩から切り裂かれ、血を噴き出すバールという男だが、実はそれほどダメージはないかもしれない。
リーゼさんの攻撃は、かなり鋭いものだったのだが、男の皮と少しの肉を削っただけで、深部にまでは届いていない。
男に一撃を入れたリーゼさんは、トントンと後に下がり、油断なく剣を構え続けている。
「体が硬いと言っても、この剣なら通用するらしいわね。このまま続ける? それとも降参するのかしら?」
「ま、まさか俺にダメージを与えられる武器を持っているとは…………」
これから激しい戦いが始まるのかもしれない。
俺はそう思ったのだが、この男は立ち上がり、こちらを見据えてこう言った。
「あの、ちょっとパンツを履かせて貰ってもいいでしょうか?」
まあ確かに、俺としてもブラブラしているアンナものを見たくはないのだが、リーゼさんはそれを許さず、断るのだった。
「駄目よ! そのまま弱点をさらしときなさい! この剣で刻んであげるから!」
「そこをなんとか…………」
「駄目よ!」
「ふう、だったら仕方ない。このままでやるとしようか」
バールという男から、どす黒い何かを感じる。
べノム爺ちゃんと同じ人種なら、他にも何か有り得ない攻撃をしてくる可能性がありそうだ。
俺はじっくり男を観察し、剣を構えた。
俺はその男を見るが、長かった股間が何故か小さくなっている。
なるほど、大きすぎたあれは、こいつの能力のせいだったか。
バールは俺達の動きを見ると、両手を上げてガニ股になり、そして、一気にそれを振り下ろした。
「痛いのは嫌です。すいませんでした」
バールは地面に頭と手を突き、簡単に謝ている。
自分が傷付くと分かったら簡単に謝るのかこいつは。
なかなか根性がない男だ。
どす黒い何かを感じた俺にも謝って欲しい。
「それでこいつはどうするんだリーファ、始末するなら今の内だぞ」
バールの体がピクリと反応して、頭を地面につけながら後方へと器用に移動している。
逃げる積りだったのだろうが、行き止まりの壁にガンとぶつかり、そこで止まった。
「エルフは生き物を殺さない。こんなの要らないから持って行ってくれ」
「いや、俺達もいらないよ。こんな性欲モンスターなんて連れてったら、リーゼさんだけじゃなくて、ストリアの身まで危ういし」
「どうするにしろ、抵抗できないように縛っときましょう。暴れられたら厄介みたいだしね。じゃあレティ君、キッチリ縛っちゃいなさい」
「おう!」
俺の名を聞いて、何故かバールは驚いている。
べノム爺ちゃんの知り合いらしいし、俺の事を知っていても不思議じゃないかな?
「レティ? …………そうか、レティか。これも運命なのかな。 …………うん、出来れば女の人に縛って欲しいです」
「レティ君、徹底的に動けないように縛り上げてやりなさい。血が止まっちゃってもいいから」
「ラジャ!」
俺はバールという男を、逃げられない様に徹底的に縛り上げ、頭には袋をかぶせておいた。
ないとは思うが、万が一ストリアがこんなのに惚れたら困るからだ。
因みにパンツは履いてもらい、この男は朝になるまでこの家の天井から吊るされて、シャンデリアのようにされてしまうのだった。
一仕事した俺達だが、まだ外は真っ暗である。
疲れたし、今後の為にももう少し眠っておきたい。
だが俺が言うまでもなく、リーゼさんはそれを提案した。
「ふぅ、まだ夜中だし、もう一度寝直しましょうかレティ君」
「そうだな。こいつの事は起きてから考えよう」
リーファもそれに頷き、俺達は一度解散するのだった。
そして朝になり、俺達は軽い朝食を食べ、のんびりすごしている。
出来れば昨日の男の事は忘れてしまいたいが、そうも行かなかったらしい。
エルフのリーファがこの家にやって来て、バールという男を連れて行けと迫ったのである。
今日は顔を隠していないのは、あの男のことが解決したからだろうか?
「起きたか、お前達には、あの男を連れて行ってもらう。安心しろ、もう馬車に積み込んである。運ぶ手間はない」
「いや運ぶ手間はなくても、これから運ぶ手間はあるだろ。そっちで処理して欲しいんだけど」
「なんだ? 一体なんの事を言っているんだ? レティ、あの後何かあったのか?」
ストリアが不思議そうに聞いて来ていた。
ストリアとリッドは寝ていたから、それを知らないのはしょうがない。
話す時間もなかったしな。
もう一人のリッドは、その話に興味がなさそうに、メシを食っている。
「この村に巣食っていた馬鹿な男を退治しただけだよ。で、その男を連れて行って欲しいんだってさ」
「ふむ、そうか。だったらこちらがそれを処理する必要はないだろう。この村を助けた私達に、これ以上厄介事をおしつけないでくれないか?」
「何を言っている。確かにお前達は村を救ったが、それ以前にお前達はこの森に勝手に入った。夜に出るなというの約束を破った。あまつさえエルフの秘密まで知った。この森から出るのにも私の案内が必要だ。それともお前達、このエルフの村で生きて行くか?」
「レティ君、どうもこちらに勝ち目はなさそうだわ。大人しく言う事を聞いておきましょう。次の町に進むまでの辛抱よ」
「分かったよ。じゃあ飯も食ったし、早速案内してもらおうか」
「ちょっと待ってくれレティ! 僕はまだご飯を食べているんだ、もうちょっと待っててくれないか!」
「お、おう、まだ食ってたんだな」
リッドが飯を食べ終え、俺達はこの村から出発しようとしていた。
その見送りに、エルフの人達が総出で送り出そうとしてくれている。
今まで一切姿を現さなかった男のエルフとかが、すんごい嬉しそうに手を振っていた。
「助かった、ありがとう!」
「また来てくれ、俺達は歓迎する!」
「救世主!」
「おおおおおおおんん!」
中には泣き出す物まで居る。
まあたぶんバールには敵わなかったんだろうけど、リーファ一人に任せるとは、結構情けない奴等である。
馬車の荷台には、バールという男が寝かされている。
「ああ、何て気持ちがいいんだろうこのエルフの村は。この村はパラダイスだ! 女の子がいっぱい! すんごい楽しい!」
そんな寝言まで言って、なんか凄く気持ちよさそうに眠っているから、俺はインクを取り出し、顔や体に落書きをしておいた。
どうもそろそろ出発らしい。
リーファが出発を宣言していた。
「お前達、私が森の案内をする。遅れずついて来い」
「おう!」
「世話になったな」
「ばいばーい」
「お別れは済んだわね。それじゃあ出発するわよ!」
俺達はリーファの案内で森を歩いて行く。
まだ眠っているあの男が目が覚めた時には、どれだけガッカリするだろうか。
俺はそれを楽しみにして、精霊の森から脱出するのだった。
両肩から切り裂かれ、血を噴き出すバールという男だが、実はそれほどダメージはないかもしれない。
リーゼさんの攻撃は、かなり鋭いものだったのだが、男の皮と少しの肉を削っただけで、深部にまでは届いていない。
男に一撃を入れたリーゼさんは、トントンと後に下がり、油断なく剣を構え続けている。
「体が硬いと言っても、この剣なら通用するらしいわね。このまま続ける? それとも降参するのかしら?」
「ま、まさか俺にダメージを与えられる武器を持っているとは…………」
これから激しい戦いが始まるのかもしれない。
俺はそう思ったのだが、この男は立ち上がり、こちらを見据えてこう言った。
「あの、ちょっとパンツを履かせて貰ってもいいでしょうか?」
まあ確かに、俺としてもブラブラしているアンナものを見たくはないのだが、リーゼさんはそれを許さず、断るのだった。
「駄目よ! そのまま弱点をさらしときなさい! この剣で刻んであげるから!」
「そこをなんとか…………」
「駄目よ!」
「ふう、だったら仕方ない。このままでやるとしようか」
バールという男から、どす黒い何かを感じる。
べノム爺ちゃんと同じ人種なら、他にも何か有り得ない攻撃をしてくる可能性がありそうだ。
俺はじっくり男を観察し、剣を構えた。
俺はその男を見るが、長かった股間が何故か小さくなっている。
なるほど、大きすぎたあれは、こいつの能力のせいだったか。
バールは俺達の動きを見ると、両手を上げてガニ股になり、そして、一気にそれを振り下ろした。
「痛いのは嫌です。すいませんでした」
バールは地面に頭と手を突き、簡単に謝ている。
自分が傷付くと分かったら簡単に謝るのかこいつは。
なかなか根性がない男だ。
どす黒い何かを感じた俺にも謝って欲しい。
「それでこいつはどうするんだリーファ、始末するなら今の内だぞ」
バールの体がピクリと反応して、頭を地面につけながら後方へと器用に移動している。
逃げる積りだったのだろうが、行き止まりの壁にガンとぶつかり、そこで止まった。
「エルフは生き物を殺さない。こんなの要らないから持って行ってくれ」
「いや、俺達もいらないよ。こんな性欲モンスターなんて連れてったら、リーゼさんだけじゃなくて、ストリアの身まで危ういし」
「どうするにしろ、抵抗できないように縛っときましょう。暴れられたら厄介みたいだしね。じゃあレティ君、キッチリ縛っちゃいなさい」
「おう!」
俺の名を聞いて、何故かバールは驚いている。
べノム爺ちゃんの知り合いらしいし、俺の事を知っていても不思議じゃないかな?
「レティ? …………そうか、レティか。これも運命なのかな。 …………うん、出来れば女の人に縛って欲しいです」
「レティ君、徹底的に動けないように縛り上げてやりなさい。血が止まっちゃってもいいから」
「ラジャ!」
俺はバールという男を、逃げられない様に徹底的に縛り上げ、頭には袋をかぶせておいた。
ないとは思うが、万が一ストリアがこんなのに惚れたら困るからだ。
因みにパンツは履いてもらい、この男は朝になるまでこの家の天井から吊るされて、シャンデリアのようにされてしまうのだった。
一仕事した俺達だが、まだ外は真っ暗である。
疲れたし、今後の為にももう少し眠っておきたい。
だが俺が言うまでもなく、リーゼさんはそれを提案した。
「ふぅ、まだ夜中だし、もう一度寝直しましょうかレティ君」
「そうだな。こいつの事は起きてから考えよう」
リーファもそれに頷き、俺達は一度解散するのだった。
そして朝になり、俺達は軽い朝食を食べ、のんびりすごしている。
出来れば昨日の男の事は忘れてしまいたいが、そうも行かなかったらしい。
エルフのリーファがこの家にやって来て、バールという男を連れて行けと迫ったのである。
今日は顔を隠していないのは、あの男のことが解決したからだろうか?
「起きたか、お前達には、あの男を連れて行ってもらう。安心しろ、もう馬車に積み込んである。運ぶ手間はない」
「いや運ぶ手間はなくても、これから運ぶ手間はあるだろ。そっちで処理して欲しいんだけど」
「なんだ? 一体なんの事を言っているんだ? レティ、あの後何かあったのか?」
ストリアが不思議そうに聞いて来ていた。
ストリアとリッドは寝ていたから、それを知らないのはしょうがない。
話す時間もなかったしな。
もう一人のリッドは、その話に興味がなさそうに、メシを食っている。
「この村に巣食っていた馬鹿な男を退治しただけだよ。で、その男を連れて行って欲しいんだってさ」
「ふむ、そうか。だったらこちらがそれを処理する必要はないだろう。この村を助けた私達に、これ以上厄介事をおしつけないでくれないか?」
「何を言っている。確かにお前達は村を救ったが、それ以前にお前達はこの森に勝手に入った。夜に出るなというの約束を破った。あまつさえエルフの秘密まで知った。この森から出るのにも私の案内が必要だ。それともお前達、このエルフの村で生きて行くか?」
「レティ君、どうもこちらに勝ち目はなさそうだわ。大人しく言う事を聞いておきましょう。次の町に進むまでの辛抱よ」
「分かったよ。じゃあ飯も食ったし、早速案内してもらおうか」
「ちょっと待ってくれレティ! 僕はまだご飯を食べているんだ、もうちょっと待っててくれないか!」
「お、おう、まだ食ってたんだな」
リッドが飯を食べ終え、俺達はこの村から出発しようとしていた。
その見送りに、エルフの人達が総出で送り出そうとしてくれている。
今まで一切姿を現さなかった男のエルフとかが、すんごい嬉しそうに手を振っていた。
「助かった、ありがとう!」
「また来てくれ、俺達は歓迎する!」
「救世主!」
「おおおおおおおんん!」
中には泣き出す物まで居る。
まあたぶんバールには敵わなかったんだろうけど、リーファ一人に任せるとは、結構情けない奴等である。
馬車の荷台には、バールという男が寝かされている。
「ああ、何て気持ちがいいんだろうこのエルフの村は。この村はパラダイスだ! 女の子がいっぱい! すんごい楽しい!」
そんな寝言まで言って、なんか凄く気持ちよさそうに眠っているから、俺はインクを取り出し、顔や体に落書きをしておいた。
どうもそろそろ出発らしい。
リーファが出発を宣言していた。
「お前達、私が森の案内をする。遅れずついて来い」
「おう!」
「世話になったな」
「ばいばーい」
「お別れは済んだわね。それじゃあ出発するわよ!」
俺達はリーファの案内で森を歩いて行く。
まだ眠っているあの男が目が覚めた時には、どれだけガッカリするだろうか。
俺はそれを楽しみにして、精霊の森から脱出するのだった。
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