一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
7 三つ首をもつ炎の大犬。
村に帰った俺達。
色々と作戦を練っているのだが、あの大犬を倒す為には、出来る限り広い空間が必要だ。
広い森の入り口まではかなり遠く、あそこまで誘導するのは大変そうである。
「さてと、どうするか?」
「ふむ、面倒だのう。いっそこの村で戦ってみるのはどうだ? この場なら充分に広いだろう。戦えぬものは避難させればいい。それなら被害も最小限に済むだろう」
「いやいや、駄目でしょう。もう住める家も少ないんだから、これ以上家が焼けちゃったら、村人全員外で寝ないとならなくなっちゃいますよ! こんな所で外で寝て居たら、正直危ないと思いますって」
「ほほう、ガルスにしては考えておるではないか。だが確かに後は面倒そうだな。住居を作るのも重労働だしな。」
住民の生活が脅かされる事は避けたい。
入り口に誘導するのも不可能なら…………
「だったらいっそ作ってみるか。村人にも手を貸してもらえれば、そこそこの広場も作れるだろう。ラクシャーサ、リーファに伝えてみてはくれないか?」
「ん、分かった。いいかいリーファ。えっとこれをこうして…………」
地面に絵を描いて説明している。
これである程度は伝わるだろう。
エルフとの意思疎通はラクシャーサに任せ、俺達は六日を費やし広場を完成させたのだった。
出来る限り草も引き抜かれ、邪魔な木は切り倒し、住宅の材料として利用している。
広場が出来る間に入り口近くに来てくれないかとも思ったが、一度矢に当てられたからか、移動する事はなかったらしい。
しかし六日もかかるとは、帰ったらもう一度休暇届を出したい所だが、受け付けてはもらえないだろうな…………
作られた広場の周りには消化の為の水も用意してある、戦いの準備は整った。
「%$$#’)”(%%(”””!!##!」
「マルクス、たぶんあの犬を連れて来たっぽいぞ」
「お前リーファの言葉がわかるようになったのか?」
「いや、何と無く」
「そうか。 ……まあ状況からすればそうなんだろうな。なら来る前に全員戦闘準備だ!」
俺達が構えて待っていると、グルルと唸る、大犬の唸り声が聞こえて来た。
もう近いらしい。
俺は一メートルもの長さを誇る大剣クレイモアを持ち、あの犬が出て来るのを待っている。
「ガルスよ、敵の姿が見えてもいきなり突っ込むんではないぞ。いいか、炎が森に当たらない中心部にまで引き込むのだぞ?」
「そ、そのぐらい言われなくても分っていたよ! あッ…………! き、来た!」
逃げているエルフを追って、大犬が追跡して来ている。
犬の足は速いが、エルフ達の足も相当早いらしい。追いつかれずに俺達の元へ駆けて来た。
人がこれ程の速度を出せるのかという疑問もあるが、今は敵を倒さなければ。
近くで見る敵の姿は、かなりの大きさである。
地に足をついたままでも二メートルを超える
広場の中心部にまで達した大犬に、盾を持ち走るガルス。
「はああああああああああああああ!」
大盾とランスでガンと首を一つ打ち付けるも、大犬は怯まなかった。
「え、あの…………もう少し怯んでくれたら嬉しいんだけど…………」
頭の一つを押さえているが、残りの頭二つが、ガルスに向かって牙を見せている。
押さえている頭の一つに盾の端を噛みつかれ、牙をむいた二つの頭がガルスへと襲い掛かる。
「嫌ああああああああああああ!」
「動けんのなら盾から手をはなさんんかい、馬鹿者が!」
ハッと気づき盾から手を引き抜くも、タイミング的に間に合わない。
それでも噛みつかれなかったのは、ラクシャーサが矢を放ったからだろう。
盾を咥えたままポンと跳びあがり、それを避けると、咥えた盾をバッと投げ捨てた。
「ああ、俺の盾が!」
後を向き、盾を求めて走り出すガルスに、大犬が襲い掛かろうとしている。
俺とドル爺が支援に向かおうとするのだが、それを見た大犬が、ガルスを諦め距離を取た。
「チッ、面倒だな。如何にかして、まず足を封じるしかないか」
「さて如何するマルクス、このままでは攻撃も出来んぞ」
この広場に大犬が来た所でエルフの皆が囲んでいるのだが、そもそもあの木の矢が効かない。
俺達が持って来た予備の武器を渡してあるのだが、あまり期待は出来なさそうだった。
「ラクシャーサ、お前は一度離脱しろ。森に潜んで、エルフ達と一緒に矢を放て。エルフの矢に紛れさせて、鉄の矢で脚を狙うんだ」
「ああ任せろ! 行くぞリーファ!」
「%$%”!!」
森の中に消えて行く二人を後目に、大犬に迫ろうと動く俺達だが、近づけば離れられてしまう。
その状況に、業を煮やした大犬の体から激しい炎が轟轟と迸った。
三つ首の全てが息を吸い込むと、轟炎の渦が野を焼き払う。
「うおおおおおおおお!」
「ぐぬぬぬぬ!」
「ぎゃあああああああああ!」
必至で逃げ、それを回避してみるも、背中の鎧に熱が伝わる程だ。
じんわり温かくなっている。
地面にある土や砂は、熱を帯びて空気が揺らめいて見える。
真面に受ければ一発で死ねそうだ。
だがこの攻撃を放つには、少し溜めが必要なのだ。
ならばそれは、此方にとっての勝機!
そろそろラクシャーサ達の準備が出来ただろう。
この次の攻撃のタイミングで、ラクシャーサは動きをみせるはず!
「ガルス! 盾を寄越せ、矢の軌道を確保するから俺一人で突っ込む! 二人は待機していてくれ!」
「えっ?! 一人で行くの!」
「ぬ、了解だ! 仲間の矢で死ぬなんて間抜けな事はするなよ?」
「ああ、分かっている」
ガルスの盾を受け取った俺は、敵の正面から真っ直ぐと駆けだした。
大犬は動かず、もう一度息を吸い込み、待ち構えていた。
その攻撃範囲を見極め、一歩を踏み出すと、急激にブレーキをかけた。
大犬の轟炎が目の前を覆うと、一気に後方へジャンプした。
左腕に構えた盾が、焼き鏝の様に熱く、俺の腕を焦げ付かせる。
「ぐおおおおッ!」
そしてエルフの矢が放たれ始めた。
それを見ても大犬は動じていない。
効かない事が分かっているのだ。
その全てが体に当たる直前に墨とかし、体に当たると砕け散るが、その中の何本かがラクシャーサが放ったものだった。
連射された矢は、止まったままだった大犬の後足に殆どが命中すると、木製の部分が燃え尽きるが、矢尻の鉄は燃え尽きず、足の肉を抉って突き抜けた。
外れた矢の一本が、俺が構えた盾を突き抜け、頬に傷をつけて後方に抜けて行った。
熱で耐久力が無くなってしまっていたのだろう。
もうこの盾は使えないと、俺は地面へと投げ捨てた。
「あああ、俺の盾があああああああ!」
「諦めるんだなガルス。ああなってはただの鉄くずだ。帰ったら新しいものをマルクスに買って貰え」
「そんな起きもしない未来の話はどうでもいい。脚を引きずった今が勝機だ。行くぞ二人共!」
「マルクス、今買わない宣言したよね?! 後で絶対買って貰うからね!」
あの炎は厄介だったが、それでも足を止めてしまったこの魔物に勝ち目はない。
俺達三人の攻撃と、ラクシャーサがによる支援により、大犬は少しずつ弱りだす。
もうそろそろ止めを刺してやろう。
「さあ止めだ! 行くぞ二人共!」
「おうよ!」
「い、行ってやるさ!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」
ドシュ! ザン! ゴッ!
一気に接近した俺達三人の攻撃は、三つの首を同時に貫き、薙ぎ払らう。
完全なる静寂と共に、力を失った大犬は、ドシャっと崩れて肉塊へと変わり果てた。
色々と作戦を練っているのだが、あの大犬を倒す為には、出来る限り広い空間が必要だ。
広い森の入り口まではかなり遠く、あそこまで誘導するのは大変そうである。
「さてと、どうするか?」
「ふむ、面倒だのう。いっそこの村で戦ってみるのはどうだ? この場なら充分に広いだろう。戦えぬものは避難させればいい。それなら被害も最小限に済むだろう」
「いやいや、駄目でしょう。もう住める家も少ないんだから、これ以上家が焼けちゃったら、村人全員外で寝ないとならなくなっちゃいますよ! こんな所で外で寝て居たら、正直危ないと思いますって」
「ほほう、ガルスにしては考えておるではないか。だが確かに後は面倒そうだな。住居を作るのも重労働だしな。」
住民の生活が脅かされる事は避けたい。
入り口に誘導するのも不可能なら…………
「だったらいっそ作ってみるか。村人にも手を貸してもらえれば、そこそこの広場も作れるだろう。ラクシャーサ、リーファに伝えてみてはくれないか?」
「ん、分かった。いいかいリーファ。えっとこれをこうして…………」
地面に絵を描いて説明している。
これである程度は伝わるだろう。
エルフとの意思疎通はラクシャーサに任せ、俺達は六日を費やし広場を完成させたのだった。
出来る限り草も引き抜かれ、邪魔な木は切り倒し、住宅の材料として利用している。
広場が出来る間に入り口近くに来てくれないかとも思ったが、一度矢に当てられたからか、移動する事はなかったらしい。
しかし六日もかかるとは、帰ったらもう一度休暇届を出したい所だが、受け付けてはもらえないだろうな…………
作られた広場の周りには消化の為の水も用意してある、戦いの準備は整った。
「%$$#’)”(%%(”””!!##!」
「マルクス、たぶんあの犬を連れて来たっぽいぞ」
「お前リーファの言葉がわかるようになったのか?」
「いや、何と無く」
「そうか。 ……まあ状況からすればそうなんだろうな。なら来る前に全員戦闘準備だ!」
俺達が構えて待っていると、グルルと唸る、大犬の唸り声が聞こえて来た。
もう近いらしい。
俺は一メートルもの長さを誇る大剣クレイモアを持ち、あの犬が出て来るのを待っている。
「ガルスよ、敵の姿が見えてもいきなり突っ込むんではないぞ。いいか、炎が森に当たらない中心部にまで引き込むのだぞ?」
「そ、そのぐらい言われなくても分っていたよ! あッ…………! き、来た!」
逃げているエルフを追って、大犬が追跡して来ている。
犬の足は速いが、エルフ達の足も相当早いらしい。追いつかれずに俺達の元へ駆けて来た。
人がこれ程の速度を出せるのかという疑問もあるが、今は敵を倒さなければ。
近くで見る敵の姿は、かなりの大きさである。
地に足をついたままでも二メートルを超える
広場の中心部にまで達した大犬に、盾を持ち走るガルス。
「はああああああああああああああ!」
大盾とランスでガンと首を一つ打ち付けるも、大犬は怯まなかった。
「え、あの…………もう少し怯んでくれたら嬉しいんだけど…………」
頭の一つを押さえているが、残りの頭二つが、ガルスに向かって牙を見せている。
押さえている頭の一つに盾の端を噛みつかれ、牙をむいた二つの頭がガルスへと襲い掛かる。
「嫌ああああああああああああ!」
「動けんのなら盾から手をはなさんんかい、馬鹿者が!」
ハッと気づき盾から手を引き抜くも、タイミング的に間に合わない。
それでも噛みつかれなかったのは、ラクシャーサが矢を放ったからだろう。
盾を咥えたままポンと跳びあがり、それを避けると、咥えた盾をバッと投げ捨てた。
「ああ、俺の盾が!」
後を向き、盾を求めて走り出すガルスに、大犬が襲い掛かろうとしている。
俺とドル爺が支援に向かおうとするのだが、それを見た大犬が、ガルスを諦め距離を取た。
「チッ、面倒だな。如何にかして、まず足を封じるしかないか」
「さて如何するマルクス、このままでは攻撃も出来んぞ」
この広場に大犬が来た所でエルフの皆が囲んでいるのだが、そもそもあの木の矢が効かない。
俺達が持って来た予備の武器を渡してあるのだが、あまり期待は出来なさそうだった。
「ラクシャーサ、お前は一度離脱しろ。森に潜んで、エルフ達と一緒に矢を放て。エルフの矢に紛れさせて、鉄の矢で脚を狙うんだ」
「ああ任せろ! 行くぞリーファ!」
「%$%”!!」
森の中に消えて行く二人を後目に、大犬に迫ろうと動く俺達だが、近づけば離れられてしまう。
その状況に、業を煮やした大犬の体から激しい炎が轟轟と迸った。
三つ首の全てが息を吸い込むと、轟炎の渦が野を焼き払う。
「うおおおおおおおお!」
「ぐぬぬぬぬ!」
「ぎゃあああああああああ!」
必至で逃げ、それを回避してみるも、背中の鎧に熱が伝わる程だ。
じんわり温かくなっている。
地面にある土や砂は、熱を帯びて空気が揺らめいて見える。
真面に受ければ一発で死ねそうだ。
だがこの攻撃を放つには、少し溜めが必要なのだ。
ならばそれは、此方にとっての勝機!
そろそろラクシャーサ達の準備が出来ただろう。
この次の攻撃のタイミングで、ラクシャーサは動きをみせるはず!
「ガルス! 盾を寄越せ、矢の軌道を確保するから俺一人で突っ込む! 二人は待機していてくれ!」
「えっ?! 一人で行くの!」
「ぬ、了解だ! 仲間の矢で死ぬなんて間抜けな事はするなよ?」
「ああ、分かっている」
ガルスの盾を受け取った俺は、敵の正面から真っ直ぐと駆けだした。
大犬は動かず、もう一度息を吸い込み、待ち構えていた。
その攻撃範囲を見極め、一歩を踏み出すと、急激にブレーキをかけた。
大犬の轟炎が目の前を覆うと、一気に後方へジャンプした。
左腕に構えた盾が、焼き鏝の様に熱く、俺の腕を焦げ付かせる。
「ぐおおおおッ!」
そしてエルフの矢が放たれ始めた。
それを見ても大犬は動じていない。
効かない事が分かっているのだ。
その全てが体に当たる直前に墨とかし、体に当たると砕け散るが、その中の何本かがラクシャーサが放ったものだった。
連射された矢は、止まったままだった大犬の後足に殆どが命中すると、木製の部分が燃え尽きるが、矢尻の鉄は燃え尽きず、足の肉を抉って突き抜けた。
外れた矢の一本が、俺が構えた盾を突き抜け、頬に傷をつけて後方に抜けて行った。
熱で耐久力が無くなってしまっていたのだろう。
もうこの盾は使えないと、俺は地面へと投げ捨てた。
「あああ、俺の盾があああああああ!」
「諦めるんだなガルス。ああなってはただの鉄くずだ。帰ったら新しいものをマルクスに買って貰え」
「そんな起きもしない未来の話はどうでもいい。脚を引きずった今が勝機だ。行くぞ二人共!」
「マルクス、今買わない宣言したよね?! 後で絶対買って貰うからね!」
あの炎は厄介だったが、それでも足を止めてしまったこの魔物に勝ち目はない。
俺達三人の攻撃と、ラクシャーサがによる支援により、大犬は少しずつ弱りだす。
もうそろそろ止めを刺してやろう。
「さあ止めだ! 行くぞ二人共!」
「おうよ!」
「い、行ってやるさ!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」
ドシュ! ザン! ゴッ!
一気に接近した俺達三人の攻撃は、三つの首を同時に貫き、薙ぎ払らう。
完全なる静寂と共に、力を失った大犬は、ドシャっと崩れて肉塊へと変わり果てた。
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