一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

7 不思議な少女。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!」


「パパ、早く行かないとまた誰か来るから!」


 レシュトリアにグイグイと股間を引っ張られた俺は、痛みの為に、もうそろそろ牢に戻るのを諦めようと思いだす頃、俺達の元に一人の女性が現れた。


「あら、まさか貴方に娘が居るとは思いませんでしたわね。私とあんな事をしていた時にも、その子の母親の事でも考えていらしたのかしら?」


 その声には聞き覚えがあった。
 俺は股間を握られたまま首を少し動かし確認するとその女性、フレデリッサが立って居た。


「ふ、フレデリッサああああああああああ! ち、違うんだフレデリッサ! 俺もこの子の事は今さっき知ったばかりだし、俺の子なのかもまだ確認出来てないし、まずは話し合おうじゃないか!」


 微妙に怒っていらっしゃるフレデリッサは、大勢の人達が倒れる周りの状況を確認して、もう一度俺を見た。


「はぁ、どうやらまだ暴走していらっしゃるのね。もう一度ベットに縛り付けて上げますから、大人しくしていらっしゃいな」


 近づいて来るフレデリッサだが、それをレシュトリアが黙ってはいなかった。


「パパ、そのおばさんは一体誰なの? パパの知り合い?」


「…………あらあら、随分失礼なクソガキですわね。少しばかりお仕置きでもしてあげようかしら?」


 確かにフレデリッサの年齢は、おばさん所か、お婆ちゃんと言っても良い年齢である。
 いや、お婆ちゃんでもまだ足りず、もうご先祖様と呼べる年齢だ。


 何百年も短剣に閉じ込められていたから、見た目の年齢は変わって無いのだが、その彼女も、ちょっとばかり怒りっぽい所と、古臭い所とか、攻撃的な所とか、自己中心的な所とか、他にも色々短所はあるが、顔と体だけはとても綺麗だ。


 見た目の年齢は十八、十九ぐらいに留まっている。
 だからおばさんとか呼ぶと怒りだすのだ。
 …………そうじゃなくてもきっと怒り出したと思うけど。


「ふ、フレデリッサ、それは止めた方が良い。この子は普通じゃないんだ、君でもたぶん勝てない。もう一度言うけど、落ち着いて話し合おう」


「あらぁ、それは聞き捨てなりませんねぇ。…………この私がこんなクソガキに勝てないとでも? だったら試してあげますわ!」


「私の邪魔をするのなら、例えパパの知り合いだったとしても手加減しないわよ!」


 子供相手に向きになってと言いたい所だが、この化け物じみた力を持ったレシュトリアの相手では、フレデリッサの方を心配をしてしまう。


「さあ、お仕置きです!」


「おばさんが私に勝てるとおもわないでね!」


 流石に剣は抜かないけど、思いっきり拳を握って走り出したフレデリッサと、それを待ち受けるレシュトリア。


 止めないと、と、窓から降りた俺は、今にも跳びかかりそうな二人の前に立ちはだかった。


「二人共やめ…………」


 ドバーン!


 その瞬間、レシュトリアの口から金に輝く光線が発射され、俺の頭の横を通り過ぎた。
 光線を目で追うと、その先にあった建物を爆散して、尚も突き進んで空に消えて行く。
 正直恐ろしい威力だ。
 盾で防御していても、それを貫いて体まで穴が開きそうなレベルである。


 フレデリッサは…………予想外に凄い攻撃が来たから驚いているけど、怪我はないみたいで大丈夫みたいだ。
 レシュトリアは俺が跳び出したから、攻撃を外してくれたのかもしれない。


「ななななななな何ですの貴女! そそそそそそのぐらいの攻撃で、私が降参するとでも思っているんですか!」


 この少女の力が分かったフレデリッサは、ちょっと腰が引けているけど、まだやる気らしい。
 抜いていなかった剣を抜いて、ブンブンさせている。  


「ちょ、ちょっと落ち着こうねレシュトリア。うん、先ずは落ち着こう。二人共仲直りをして握手でもしようじゃないか」


「パパ、まさかその女を庇うというの? やっぱりパパはその女のことを…………穏便に済まそうと思ってたんだけど、パパを連れて帰る為には、その女と邪魔な上半身と足を斬り離して連れて帰るしかないのね。待っててパパ、直ぐに邪魔な体から斬り離してあげる!」


 邪魔な上半身と下半身を斬り落とすって?!
 ま、まさか、レシュトリアの目的は、この俺のチ〇コだというのか?!
 今までチ〇コを見つめていたり、チ〇コを握っていたりしてたのはその為か?!
 何でそんな事を、一体何故?!


 しかしそんなモノを簡単に渡せる訳がない。
 チ〇コを斬り離されるなんてごめんだし、これは俺の大事な相棒なのだ!
 例えレシュトリアのの頼みであっても、絶対に渡せない!


「逃げるぞフレデリッサ! このまま、この子に付き合っていたら、俺の大事なチ〇コが危うい! フレデリッサもそれは困るだろう?!」


「し、仕方がありませんわね…………」


 俺達が逃げ出すと、レシュトリアもそれを追い掛け、後から迫って来ている。
 その口からは、先ほどの黄色の光線と、白色の砲弾を撃ち続けていた。


「逃げるなあああああああああああ!」


「いや、そりゃ逃げるでしょう!」


「何なのですか、あのクソガキは。もしかして何かの破壊神か何かなのですか?! なんであれ、あれは貴方の子供なのでしょう? 早く何とかしなさい!」


「それが出来れば、もうやってるんだけどね!」


 子供の脚なので追い着かれはしないのだが、外れた攻撃はキメラ研究所を壊し続け、もう建物は大惨事である。
 そんな騒ぎを聞きつけ大量の兵士が駆けつけて来ているのだが、相手が小さな少女だからと攻撃を躊躇っている様だ。


 だから調子に乗ってレシュトリアが攻撃を続けていたのだが、何時までもそれをさせておく程、王国の兵は甘くはない。
 突如現れた黒いべノム隊長が、レシュトリアの後頭部にガンっと拳を殴りつけると、レシュトリアは気絶して地面に倒れた。
 まあそれでも殺す様な事はしていないから、かなり優しい対応である。


「さてバール、お前には色々と山の様に聞きたい事が徹底的にあるが、とりあえずこの子供は何処の子供だ?」


「さ、さあ何処の子供でしょうかねぇ…………」


「こいつの子供ですわ」


 庇ってやったのに、フレデリッサが俺を指さしていた。






 …………やっぱり怒っているらしい。



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