一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
32 小さく大きな物語10
ガーデンの砦の町から出発した俺達は、馬車で旅を続けながら進み、ラグナードの町が見えている。
もう日は落ち、夜となり、それでも、もう少しだと、ラグナードの町へ向かうのだが、まあ無事に到着する事は出来たんだ。
それは出来たんだが……ただ、その門はガッチリ閉まって、高い壁の上に、外を見張って居る兵士が居るだけだった。
「うおい、ちょっと門を開けてくれませんかー!」
俺は大きな声で、門を開けてと懇願したが、相手は此方を見て居るだけで、門を開ける動きは一向にない。
どうせ朝まで待てと言うのだろう。
「門は開けてくれないみたいだわね。 う~ん、じゃあ野宿の準備でもしてみましょうか。町の近くなら比較的安全だからね」
「ん、そうだな。じゃあ始めるとしよう。レティもちゃんと手伝うんだぞ?」
「言われなくても分かってるよ」
「じゃあ母さん、この辺りに焚き火でも………ッファ!」
ヒュンっと、準備を始めようとしたマッドの足元近くに、一本の矢が射ち込まれた。
「こわッ! いきなり矢を射ち込まないで欲しいんだけど! ちょっと警告ぐらいして欲しいよ!」
角度から見ると、たぶん上に居る兵士が放った物だ。
「ん、矢に何か付いてるぞ?」
その矢には、紙が取り付けられていて、俺はそれを手に取った。
矢に括り付けられた紙は、広げると地図になっており、この近くに宿があるのを知らせている。
此処で野宿をするなということだろうか?
だったら口で言えば良いのに。
「町の前だと邪魔だったみたいだわね。じゃあこの地図の場所に行ってみましょうか」
「おう、そうしようぜ!」
俺は馬車に乗り込もうと足を掛けたが、
「レティ、出した物を片付けるのを手伝ってよね」
「お、おう」
そういえばと、俺は片付けを手伝うのだった。
パッと片づけを終えた俺達は、その地図に描かれた場所へと向かい、三十分程度で到着した。
その場所は、村と言うには住宅が少なく、集落と呼ぶにも、少々建物が少ない気がする。
確認するまでもなく、たった三軒の建物だけが、向かい合って建っている。
それぞれに、剣と、盾と、弓のマークが飾られていた。
三軒とも、結構新しい建物だった。
その三軒の中心には、広い空き地があり、大きな看板が設置されていて、俺達はその看板を見て確認したが、この三軒の建物は、全て宿屋で、それぞれ、剣の宿、弓の宿、もう一つが盾の宿と、マークと同じ宿らしい。
剣を扱う者や、前衛で戦う者は、剣のマークの宿に、弓や、後方で戦う者は、弓のマークの宿に、盾を持って護りを得意とする者は、盾の宿にしか泊まれないという、とても面倒なルールがあると看板に記載されている。
俺は正直、その宿の中が如何なっているのか、とても気になっている。
「え~っと、どうする? 別れて宿に泊まってみるか?」
「いやあ、僕が思うに、何処に泊まっても面倒臭いと思うんだよね。そもそも条件も面倒臭いし、同じ場所に三件並びというのも凄く怪しいし。絶対何かあるから、関わらない方が無難だと思うんだよね」
「そうだな、リッドの言う事も一理ある。明日になればブリガンテの町にも入れるんだ、この場で野宿というのも悪くはないぞ?」
「それで良いんじゃない? わざわざ妙な事に首を突っ込む必要はないでしょう」
どうも俺以外の意見は統一されている。
我が儘を言って、泊まらせてもらうのは無理でも、少し覗いて見るぐらいは良いだろうと、宿を覗いて見る事にした。
「俺はちょっと気になるから、宿の中を少し見せて貰って来るぜ。見るぐらいなら良いだろ?」
「待て、レティが行くのなら私も行くぞ。私も多少気になっていたからな」
「う~ん、僕は此処で待っているよ。母さん一人だけ残して行けないからね」
「あら、私はそんなに弱くないわよ? でもそうねぇ……親子二人の時間というのも悪くないかもしれないわね」
リーゼさんとリッドの二人は、仲良く食事の準備を始めている。
何かそう急がなくても良さそうだ。
俺はストリアと、ゆっくり見て回るとしよう。
俺達はまず、弓のマークの宿を尋ね、宿の扉を開いてみた。
ガチャッと開いた扉の奥には、いたって普通の宿屋が現れた。
宿の中には、弓とか飾られているだろうと思ったのだが、特に何も見当たらない。
カウンターには宿の主人と思われる、オールバックでヒゲ面の男が座っていて、此方の恰好をじっくり見ている。
「あんた達、弓は扱えるんだろうな?」
「いや、まあ、クロスボウなら扱えるけど、俺達は別に泊まりに来たんじゃないんだ。何でこんな変な事になってるのか知りたくってさ。良ければ教えてくれないかな?」
質問に答えてやったのに、何故か俺の事は無視され、ストリアに質問をしている。
よっぽど弓に拘りがあるのか?
「だったらそこの女、お前は弓を扱えるのか?!」
「私か? うむ、弓なら使えるぞ。それが一体どうしたというのだ?」
「おお! だったら是非俺のチームに入ってくれ! 宿は無料でも構わないから!」
「はぁ? よく分からんけど、まずは事情を説明してくれ。ストリアだって理由が分からなきゃ手を貸せないぞ」
「そうだな、理由を話してくれれば、それから考えよう」
「では話してやろう。実はな…………」
俺達は、宿の親父のアーノルドから、一時間ぐらいの無駄に長い話をされるのだが、その内容を簡単に説明すると、三つの宿を経営している三人は、全員が元冒険者だったのだが、もう一人の仲間がが体を壊した為に、引退して宿を経営するようになったそうだ。
最初は仲良く一つの宿を経営していたのだが、もう一人の仲間(女)に、誰が告白するのかもめた為に、三人はガチの勝負をしたらしい。
だが結局決着がつかず、三人は喧嘩別れしたと。
それで自分達で決着がつかないなら、同じ武騎種を扱える冒険者に代わりをやって貰おうということだった。
その対戦が行われるのが、丁度明日で、人が居ないと不戦敗になると言っている。
受けるかどうかは、仲間と相談するからと、俺達は二人の元に戻って行った。
「ふ~ん、なる程ね。やってみたら良いんじゃない? 私達は関わらないから、ここで野宿しているわ。良いわよねリッド?」
「そうだね。二人とも頑張って来てね。僕も応援してるから」
「ええええ、止めないのか?! 止めてくれると思っていたのに!」
「実戦をつめるというのなら、経験しておいて損はないわよ。人間との対戦なら、比較的安全だからね。まあたぶん殺される様な事はないと思うわよ。怪我しても治してあげられるし」
「話は決まったな。では宿に戻るとするか」
「お、おう…………」
俺達は宿の親父に了解したと伝えると、この宿で部屋を与えられた。
因みにストリアとは別々の部屋である。
…………やっぱりリッドの言う通り、関わらないのが正解だったかも。
もう日は落ち、夜となり、それでも、もう少しだと、ラグナードの町へ向かうのだが、まあ無事に到着する事は出来たんだ。
それは出来たんだが……ただ、その門はガッチリ閉まって、高い壁の上に、外を見張って居る兵士が居るだけだった。
「うおい、ちょっと門を開けてくれませんかー!」
俺は大きな声で、門を開けてと懇願したが、相手は此方を見て居るだけで、門を開ける動きは一向にない。
どうせ朝まで待てと言うのだろう。
「門は開けてくれないみたいだわね。 う~ん、じゃあ野宿の準備でもしてみましょうか。町の近くなら比較的安全だからね」
「ん、そうだな。じゃあ始めるとしよう。レティもちゃんと手伝うんだぞ?」
「言われなくても分かってるよ」
「じゃあ母さん、この辺りに焚き火でも………ッファ!」
ヒュンっと、準備を始めようとしたマッドの足元近くに、一本の矢が射ち込まれた。
「こわッ! いきなり矢を射ち込まないで欲しいんだけど! ちょっと警告ぐらいして欲しいよ!」
角度から見ると、たぶん上に居る兵士が放った物だ。
「ん、矢に何か付いてるぞ?」
その矢には、紙が取り付けられていて、俺はそれを手に取った。
矢に括り付けられた紙は、広げると地図になっており、この近くに宿があるのを知らせている。
此処で野宿をするなということだろうか?
だったら口で言えば良いのに。
「町の前だと邪魔だったみたいだわね。じゃあこの地図の場所に行ってみましょうか」
「おう、そうしようぜ!」
俺は馬車に乗り込もうと足を掛けたが、
「レティ、出した物を片付けるのを手伝ってよね」
「お、おう」
そういえばと、俺は片付けを手伝うのだった。
パッと片づけを終えた俺達は、その地図に描かれた場所へと向かい、三十分程度で到着した。
その場所は、村と言うには住宅が少なく、集落と呼ぶにも、少々建物が少ない気がする。
確認するまでもなく、たった三軒の建物だけが、向かい合って建っている。
それぞれに、剣と、盾と、弓のマークが飾られていた。
三軒とも、結構新しい建物だった。
その三軒の中心には、広い空き地があり、大きな看板が設置されていて、俺達はその看板を見て確認したが、この三軒の建物は、全て宿屋で、それぞれ、剣の宿、弓の宿、もう一つが盾の宿と、マークと同じ宿らしい。
剣を扱う者や、前衛で戦う者は、剣のマークの宿に、弓や、後方で戦う者は、弓のマークの宿に、盾を持って護りを得意とする者は、盾の宿にしか泊まれないという、とても面倒なルールがあると看板に記載されている。
俺は正直、その宿の中が如何なっているのか、とても気になっている。
「え~っと、どうする? 別れて宿に泊まってみるか?」
「いやあ、僕が思うに、何処に泊まっても面倒臭いと思うんだよね。そもそも条件も面倒臭いし、同じ場所に三件並びというのも凄く怪しいし。絶対何かあるから、関わらない方が無難だと思うんだよね」
「そうだな、リッドの言う事も一理ある。明日になればブリガンテの町にも入れるんだ、この場で野宿というのも悪くはないぞ?」
「それで良いんじゃない? わざわざ妙な事に首を突っ込む必要はないでしょう」
どうも俺以外の意見は統一されている。
我が儘を言って、泊まらせてもらうのは無理でも、少し覗いて見るぐらいは良いだろうと、宿を覗いて見る事にした。
「俺はちょっと気になるから、宿の中を少し見せて貰って来るぜ。見るぐらいなら良いだろ?」
「待て、レティが行くのなら私も行くぞ。私も多少気になっていたからな」
「う~ん、僕は此処で待っているよ。母さん一人だけ残して行けないからね」
「あら、私はそんなに弱くないわよ? でもそうねぇ……親子二人の時間というのも悪くないかもしれないわね」
リーゼさんとリッドの二人は、仲良く食事の準備を始めている。
何かそう急がなくても良さそうだ。
俺はストリアと、ゆっくり見て回るとしよう。
俺達はまず、弓のマークの宿を尋ね、宿の扉を開いてみた。
ガチャッと開いた扉の奥には、いたって普通の宿屋が現れた。
宿の中には、弓とか飾られているだろうと思ったのだが、特に何も見当たらない。
カウンターには宿の主人と思われる、オールバックでヒゲ面の男が座っていて、此方の恰好をじっくり見ている。
「あんた達、弓は扱えるんだろうな?」
「いや、まあ、クロスボウなら扱えるけど、俺達は別に泊まりに来たんじゃないんだ。何でこんな変な事になってるのか知りたくってさ。良ければ教えてくれないかな?」
質問に答えてやったのに、何故か俺の事は無視され、ストリアに質問をしている。
よっぽど弓に拘りがあるのか?
「だったらそこの女、お前は弓を扱えるのか?!」
「私か? うむ、弓なら使えるぞ。それが一体どうしたというのだ?」
「おお! だったら是非俺のチームに入ってくれ! 宿は無料でも構わないから!」
「はぁ? よく分からんけど、まずは事情を説明してくれ。ストリアだって理由が分からなきゃ手を貸せないぞ」
「そうだな、理由を話してくれれば、それから考えよう」
「では話してやろう。実はな…………」
俺達は、宿の親父のアーノルドから、一時間ぐらいの無駄に長い話をされるのだが、その内容を簡単に説明すると、三つの宿を経営している三人は、全員が元冒険者だったのだが、もう一人の仲間がが体を壊した為に、引退して宿を経営するようになったそうだ。
最初は仲良く一つの宿を経営していたのだが、もう一人の仲間(女)に、誰が告白するのかもめた為に、三人はガチの勝負をしたらしい。
だが結局決着がつかず、三人は喧嘩別れしたと。
それで自分達で決着がつかないなら、同じ武騎種を扱える冒険者に代わりをやって貰おうということだった。
その対戦が行われるのが、丁度明日で、人が居ないと不戦敗になると言っている。
受けるかどうかは、仲間と相談するからと、俺達は二人の元に戻って行った。
「ふ~ん、なる程ね。やってみたら良いんじゃない? 私達は関わらないから、ここで野宿しているわ。良いわよねリッド?」
「そうだね。二人とも頑張って来てね。僕も応援してるから」
「ええええ、止めないのか?! 止めてくれると思っていたのに!」
「実戦をつめるというのなら、経験しておいて損はないわよ。人間との対戦なら、比較的安全だからね。まあたぶん殺される様な事はないと思うわよ。怪我しても治してあげられるし」
「話は決まったな。では宿に戻るとするか」
「お、おう…………」
俺達は宿の親父に了解したと伝えると、この宿で部屋を与えられた。
因みにストリアとは別々の部屋である。
…………やっぱりリッドの言う通り、関わらないのが正解だったかも。
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