一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
4 朱殷(しゅあん)の髪と攫われた赤子 31
体力が尽き、クスピエが空中から降下して来ている。 あのままだと地上にぶつかって命は無い。 それを助けようと、馬車の上部からバールが叫んでいる。
「ラフィイイル! クスピエちゃんが落ちるぞ! 絶対に落とすんじゃないぞ!」
「もう向かってますよ! クソッ、間に合わない! キーちゃん急いでくれ! 射程までもう少し・・・・・。 暴風よッ、吹き返せ!」
ラフィールの魔法が発動し、クスピエの落ちるスピードが、ほんの少しだけ落ちた気がする。 それでもクスピエは馬の前に落ちて行く。 おじさんはそれを見越して、馬車の上部から走り出していた。 ラフィールの足を踏みつけ、馬の頭を踏みつけ、落下していくクスピエへと跳び付いた。
おじさんはクスピエの体をしっかりと掴み、体を引き寄せると、背中から地面へと落ちて行った。
「おじさん、クスピエ 生きているか?!」
「大丈夫、ちゃんと生きているよ。 ほらこの通り」
「こ、股間が顔に・・・・・ううう、ぶん殴りたいのに動けない・・・・・。 後で殺す」
「助けてやったのに酷い言われようだなぁ。 う~ん、馬車にでも放り込んでおくか」
「私達は敵の残骸を確認しに行く。 おじさんはクスピエの面倒でも見ておいてくれ」
私が敵の元へと到着すると、親父が既に戦いを始めていた。 クスピエに斬り落とされた顔無しが、ウネウネと蠢き、その体を元に戻そうとしている。 それを邪魔する様に親父が剣を振るっているが、幾ら斬り付けてもダメージが与えられていない様に見える。
何処かに核の様な物があると思うんだが、私にはそれが何処に有るのかさえ分からない。 あれだけ斬られても掠る事も無いとなると、そんなものは無いのだろうか? 炎で燃やそうにも、もう油は使ってしまったし、他に弱点は・・・・・。
「うおおおおおおおおお、如何すりゃいいんだこれ! 斬った端から再生してくるぞ! どうやって倒すんだこんな奴!」
「加勢する!」
私も参戦して敵の体を刻んで行くのだが、やはりダメージが有る様には見えない。 打撃ならと剣を平らにしてぶつけてみるが、結果は一緒だった。
頭、首、腕、体、足、背中の翼、何処を斬り付けても手応えが無い。 唯一堅い物と言えば、クスピエと戦っっていた時に使っていた槍だろうか。 今その槍は地面に落ちて、散らばった敵の体の中に埋まっている。
「親父、地面を斬れ!」
「おうよ! ッらあああああああああ!」
親父の剣が、何度も地面に叩きつけられている。 地面に槍があったなら、一発は当っている筈なのだが。 手応えは無さそうだ。
・・・・・槍じゃ無いのか? なら一体何処に?
私は別の場所へ落ちたのじゃないかと、辺りを見回してみたが、有ったのは、遠くに見えた敵の抜け殻だけだった。 待て、あれは本当に抜け殻なのか? もしもあれが抜け殻では無くて、あれこそが本体だとしたら・・・・・。
「親父、この場は任せたぞ。 私は敵の本体を叩きに行く」
「おう、この位俺一人でも十分だ! 気を付けて行って来い!」
私は頷き、再び馬車へと乗り込んだ。
「ラフィール、あの巨体が本体だ! あっちを倒さない限り、こっちの顔無しは止まらない。 反転して本体に向かうぞ!」
「うん分かったよ。 さあ行くぞキーちゃん、反撃の時間だ!」
馬(鳥)が反転して、敵の本体へと向かって行く。 クスピエは馬車の中で眠っている。 おじさんの手も空き、何とか二人で戦えそうだ。 ラフィールにはこのままレティ―とクスピエの面倒をみてもらおう。
私達が球体の前にまで到着した時には、球体のその周りには、帝国の兵士達が周りを取り囲んでいた。 動かないそれに警戒を続け、武器で突いて様子を確かめている。 あれが死んだ振りをしているなら、周りにいる全員危険だ。 私はその兵士達に叫び、警戒を与えた。
「おい! その化け物はまだ死んでいないぞ! その周りから全員直ぐに退避しろ!」
「う・・・・・た、退避! 全員退避だ! 後方から射撃準備!」
私の声を聴くと、帝国の兵士達は、直ぐに敵から離れて行く。 こと魔物との戦いにおいて、警戒心が強いのは良い事だ。 例えそれが名も知らない女からの忠告だとしても、可能性があるなら退くのは常識だ。 あの指揮官は優秀なのだろう。
帝国の兵士達が敵から離れ始めると、動きを見せなかった黒色の殻が、大地を震動させて動来始めた。 割れた卵の殻の様だったものは、二つに割れて、大地の様に広がっている。 その中央には黒い人の姿が見えた。 あの顔こそドライン・レーゼシュルトのものだ。 たぶんあれがこの巨体の弱点だ。
「うはははははは、もう少し時間稼ぎをしようと思っていたが、どうやらバレてしまったらしい。 さあ、全員纏めて掛かって来るが良いわ、全てを葬りつくしてくれるわ!」
そのドラインは、私達を挑発している。 どうせあの上に乗ったのなら、親父と戦っているアレを出現させるのだろう。 私は無駄な挑発には乗らず、ボウガンを構えてドラインに向かって矢を放った。
風切り音を響かせて、矢はドラインに向かって行く。 しかしドラインに当たる直前に、顔無しの兵士が現れてそれを防いでしまった。 その顔無しが一人二人と増えていってる。
このまま遠距離攻撃だけでは難しいな。 敵が沸きあがると知れれば対処は出来るか? 私達の動きに、帝国兵達も乗ってくれると有難いんだが。
「おじさん、行けるな?」
「当然、何時でも良いぜ」
「じゃあ行くぞおじさん、中央突破だ!」
「りょーかい!」
私達が走り出すと、周りで待機していた帝国兵達が、一斉に動き始めた。
「何をしている、他国の奴等に負けるな! 帝国は帝国兵の力で護るんだ! 全軍進めええええええええ!」
正直二人だけでは厳しかった。 私の動きに合わせてくれた兵士達に感謝しよう。 そして敵の体の上で、大乱闘が始まった。
「ラフィイイル! クスピエちゃんが落ちるぞ! 絶対に落とすんじゃないぞ!」
「もう向かってますよ! クソッ、間に合わない! キーちゃん急いでくれ! 射程までもう少し・・・・・。 暴風よッ、吹き返せ!」
ラフィールの魔法が発動し、クスピエの落ちるスピードが、ほんの少しだけ落ちた気がする。 それでもクスピエは馬の前に落ちて行く。 おじさんはそれを見越して、馬車の上部から走り出していた。 ラフィールの足を踏みつけ、馬の頭を踏みつけ、落下していくクスピエへと跳び付いた。
おじさんはクスピエの体をしっかりと掴み、体を引き寄せると、背中から地面へと落ちて行った。
「おじさん、クスピエ 生きているか?!」
「大丈夫、ちゃんと生きているよ。 ほらこの通り」
「こ、股間が顔に・・・・・ううう、ぶん殴りたいのに動けない・・・・・。 後で殺す」
「助けてやったのに酷い言われようだなぁ。 う~ん、馬車にでも放り込んでおくか」
「私達は敵の残骸を確認しに行く。 おじさんはクスピエの面倒でも見ておいてくれ」
私が敵の元へと到着すると、親父が既に戦いを始めていた。 クスピエに斬り落とされた顔無しが、ウネウネと蠢き、その体を元に戻そうとしている。 それを邪魔する様に親父が剣を振るっているが、幾ら斬り付けてもダメージが与えられていない様に見える。
何処かに核の様な物があると思うんだが、私にはそれが何処に有るのかさえ分からない。 あれだけ斬られても掠る事も無いとなると、そんなものは無いのだろうか? 炎で燃やそうにも、もう油は使ってしまったし、他に弱点は・・・・・。
「うおおおおおおおおお、如何すりゃいいんだこれ! 斬った端から再生してくるぞ! どうやって倒すんだこんな奴!」
「加勢する!」
私も参戦して敵の体を刻んで行くのだが、やはりダメージが有る様には見えない。 打撃ならと剣を平らにしてぶつけてみるが、結果は一緒だった。
頭、首、腕、体、足、背中の翼、何処を斬り付けても手応えが無い。 唯一堅い物と言えば、クスピエと戦っっていた時に使っていた槍だろうか。 今その槍は地面に落ちて、散らばった敵の体の中に埋まっている。
「親父、地面を斬れ!」
「おうよ! ッらあああああああああ!」
親父の剣が、何度も地面に叩きつけられている。 地面に槍があったなら、一発は当っている筈なのだが。 手応えは無さそうだ。
・・・・・槍じゃ無いのか? なら一体何処に?
私は別の場所へ落ちたのじゃないかと、辺りを見回してみたが、有ったのは、遠くに見えた敵の抜け殻だけだった。 待て、あれは本当に抜け殻なのか? もしもあれが抜け殻では無くて、あれこそが本体だとしたら・・・・・。
「親父、この場は任せたぞ。 私は敵の本体を叩きに行く」
「おう、この位俺一人でも十分だ! 気を付けて行って来い!」
私は頷き、再び馬車へと乗り込んだ。
「ラフィール、あの巨体が本体だ! あっちを倒さない限り、こっちの顔無しは止まらない。 反転して本体に向かうぞ!」
「うん分かったよ。 さあ行くぞキーちゃん、反撃の時間だ!」
馬(鳥)が反転して、敵の本体へと向かって行く。 クスピエは馬車の中で眠っている。 おじさんの手も空き、何とか二人で戦えそうだ。 ラフィールにはこのままレティ―とクスピエの面倒をみてもらおう。
私達が球体の前にまで到着した時には、球体のその周りには、帝国の兵士達が周りを取り囲んでいた。 動かないそれに警戒を続け、武器で突いて様子を確かめている。 あれが死んだ振りをしているなら、周りにいる全員危険だ。 私はその兵士達に叫び、警戒を与えた。
「おい! その化け物はまだ死んでいないぞ! その周りから全員直ぐに退避しろ!」
「う・・・・・た、退避! 全員退避だ! 後方から射撃準備!」
私の声を聴くと、帝国の兵士達は、直ぐに敵から離れて行く。 こと魔物との戦いにおいて、警戒心が強いのは良い事だ。 例えそれが名も知らない女からの忠告だとしても、可能性があるなら退くのは常識だ。 あの指揮官は優秀なのだろう。
帝国の兵士達が敵から離れ始めると、動きを見せなかった黒色の殻が、大地を震動させて動来始めた。 割れた卵の殻の様だったものは、二つに割れて、大地の様に広がっている。 その中央には黒い人の姿が見えた。 あの顔こそドライン・レーゼシュルトのものだ。 たぶんあれがこの巨体の弱点だ。
「うはははははは、もう少し時間稼ぎをしようと思っていたが、どうやらバレてしまったらしい。 さあ、全員纏めて掛かって来るが良いわ、全てを葬りつくしてくれるわ!」
そのドラインは、私達を挑発している。 どうせあの上に乗ったのなら、親父と戦っているアレを出現させるのだろう。 私は無駄な挑発には乗らず、ボウガンを構えてドラインに向かって矢を放った。
風切り音を響かせて、矢はドラインに向かって行く。 しかしドラインに当たる直前に、顔無しの兵士が現れてそれを防いでしまった。 その顔無しが一人二人と増えていってる。
このまま遠距離攻撃だけでは難しいな。 敵が沸きあがると知れれば対処は出来るか? 私達の動きに、帝国兵達も乗ってくれると有難いんだが。
「おじさん、行けるな?」
「当然、何時でも良いぜ」
「じゃあ行くぞおじさん、中央突破だ!」
「りょーかい!」
私達が走り出すと、周りで待機していた帝国兵達が、一斉に動き始めた。
「何をしている、他国の奴等に負けるな! 帝国は帝国兵の力で護るんだ! 全軍進めええええええええ!」
正直二人だけでは厳しかった。 私の動きに合わせてくれた兵士達に感謝しよう。 そして敵の体の上で、大乱闘が始まった。
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