一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

3 一番大変なのは、突貫工事を任された職人さんだった。

 数日が経ち、各国から選手がやって来て、町中でも聞いた名の戦士達がチラホラと見かける様になって来ている。 そろそろ開催日も近い。 俺達もそれなりの作戦等を考えた方が良いのかもしれない。 万が一にでも負けた場合は、イモータル様に絶対怒られるから。


 俺は隊長達の部屋へと行くと、女性二人に戦闘体勢をとられた。 何日も経ったというのに、まだ警戒されているらしい。 だったら、少しばかりウィットに富んだジョークでも発して、この場を和ませてやろうじゃないか。


「二人共、今日も美しいですね。 ちょっとそこで子作りでもしませんか? 俺だったら二人相手でもオッケーですから!」


「エルちゃん、こんな性獣に近寄ったら駄目よー。 触っただけで妊娠させられそうだもの。」


「・・・・うん。」


 何故か更に警戒されてしまった。 さっき言ったのはタダのジョークだったというのに。 何時かこの誤解を解かなければ。


「んでお前は何しに来たんだよ? まさかこの二人を襲いに来たとか言わねぇよな?」


「隊長それは違います、俺は強引に女性を襲ったりしませんから。 ちゃんと合意の上で最後まで行きたいだけです! ・・・・・まあそれは置いといて。 隊長、試合の事を何も相談しなくても良いんですか? 町中で強そうな戦士が集まって来ていましたよ。」


「あ~、そうだな、そろそろ作戦会議をしても良いかもな。 と言っても、選手が四人という事しか分からねぇんだよなぁ。 ・・・・・良し、お前ちょっと大会の本部に行って聞いて来い。 そんでルールとかキッチリ聞いて来い。」


 一人で行くのか、それは少し寂しい。 俺はエルとフレーレに声を掛けた。


「一人で行くのは寂しいんで、何方か付いて来てくれたりしませんか?」


「無理!」 「嫌!」


 二人は付いて来てはくれないらしい。 少しぐらい付き合ってくれても良いのに。


「俺は行かんぞ。」


「安心してください、俺も男二人で歩く気はありませんから。 一人で行って来ます。」


「おう、行って来い。」


 俺は結局一人で出掛け、大会が行われるであろう舞台へと向かった。 場所自体は知らなかったが、道行く人に話かけると、直ぐにその場所が判明した。


「此処か?」


 まだ日程までは日がある為に、会場にはまだ工事が入っている様だ。 状況を見る限りでは、後二、三日で完成しそうだ。


 俺は親方らしき人物に話を聞くと、この大会の運営に話を通してくれた。 そしてその人物に会うと、ルールの説明を求めた。 その人物はノアという男性らしい。 


「結論から言うと、無理ですね。 会場の整備が忙しくて、まだルールとか作ってないですもん。」


「えええ? もう後三日しかないのに、まだルールとか作ってないんですか? 出来れば急いで欲しいんですけど。」


「しょうがないじゃないですか! 急遽決まった大会なんですよ?! しかも国の代表を上げる舞台なんって、全然手を抜けないじゃないですか! 工事の人手が足りないんですよ! 文句を言うなら貴方も手伝ってください!」


 俺に手伝えと? う~む、このまま帰ったら何を言われるのか分からない。 多少でもルールの詳細を探らなければ。


「じゃ、じゃあ少し手伝って行くので、大まかな物で良いので、大会のルールを作ってください。」


「うおおおおおおおおおおおお、人手ゲットオオオオオオオオオオオ! じゃあ早速工事の指揮を任せますね。 私はルールの詳細を考えておきますから。 じゃあ頼みましたよ! いってらっしゃい。」


「え? 俺が指揮を取るの?」


「手伝うって言ったんだから、早く行って来てください! いけええええええええええ!」


 俺は訳も分からず放り出され、工事の指揮を取る事になってしまった。 ・・・・・本当に何故だ。 渡された図面を持って、俺は頑張って指揮をしだした。


「おい監督、この飾りは何処に付ける?」


「え? ああ、え~っと、あっちです。」


「バールさん、これは何処でしょう?」


「それは・・・・・そこに飾ってください。」


 俺は頑張って工事を進めて行く。 昼過ぎぐらいには立派に指揮をしだし、随分と工事が進んだ気がする。 ふう、久しぶりにちゃんと仕事をしたな。 もうそろそろ夕方になりそうだ。そろそろ仕事を終わらせて帰ろうじゃないか。


「お疲れ様でした。」


「「「「「お疲れっした!」」」」」


 全員と挨拶して、俺は満足して宿に帰った。 仕事を終えて風呂に入ると、俺は疲れて寝て眠ってしまった。 そんな中、隊長が俺の部屋へとやって来た。


「おい、起きろバール。 ちゃんとルールは聞いて来たんだろうな?」


「あ、そうだった。 すっかり忘れていました。」


「はぁ、お前は一体何しに行って来たんだよ。 子供の使いじゃねぇんだから、もうちっと真面に仕事して来いよ。」


「いや待ってください隊長、俺にだって言い分はあります。 大会本部に言ったらまだルールが作ってないって言うんですよ? 人手が足りないから手伝えって言われるし、俺だって頑張って来たんです。 文句を言うなら大会の人に言ってください。」 


「ああん? もう言い訳は良いから、明日もう一回行って来いや。 今度は絶対聞いて来るんだぞ。 分かったな?」


 隊長は、俺の言い分を全く聞いてはくれなかった。 本当の事しか言ってないのに、何故分かってくれないのか。


「りょうかーい。 じゃあ俺は疲れたから寝ますんで、じゃあお休みなさい。」


「ほんとに分かってんのか此奴。 明日絶対行って来いよ。」


「うい~。」


 次の日、俺はまたあの会場へと足を進ませていた。


「監督、これは何処へ運べば?」


「それはあっちに。 あ、それはそっちに運んでください。 安全確認を忘れずに。」


「「「「「はい、監督!」」」」」


 慣れた手つきで、俺は再び監督役として働き、その日の夕方になって、やっとの事でルールが作成され、俺はようやくそれを教えてもらった。



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