一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
9 最悪の一日
この日俺はレインさんに、二人っきりでデートしたいと誘われていた。 当然俺はそれに頷き、今現在に至る。 時刻は二時。 昼食を食べ、ちょっと落ち着いた頃だ。 その時間に中央広場へと、俺はやって来ていた。
今日は他に誰も居ないし、この日は俺にとってのチャンスと言える。 レインさんの心を、俺に引き寄せるチャンスだ。
約束の二時半を回り、そろそろ彼女がやって来る時間だ。 俺はもう少し待っていると、彼女が遠くから走って来た。
「アーモンさ~ん。 おまたせしました~。」
笑顔で走って来る彼女は、何時もよりも、とても美しい服装をしている。 俺の為に着て来てくれたと思うと、凄く嬉しい。 彼女も期待してくれているのだろう。
「こんにちはレインさん。 天気は少し曇っていますが、きっと良い日にしてみせますよ。 期待していてください。」
「そうですか~うふふ。 私も良い日にする為に、すごく頑張って来たんですよ。 アーモンさんは、お昼食べましたよね? 私、お弁当作って来たから、食べてくれませんか?」
言い方が少しおかしかった気がするが、言い間違えただけだと思う。 実は本当に食べて来たけど、折角作って来てくれた物を、無下に断る事は出来ない。
「勿論です!! レインさんの作って来た物なら、全部たべてしましますよ!!」
「良かった。 断られたらどうしようかと思っていました。 でも無理しないでくださいね? まだ色々用意していますから。 じゃあ、はいどうぞ。」
「嬉しいです、ありがとう御座います。 美味しくいた・・・だき・・・ま・・・・す・・・ね?」
その箱の中身を見た瞬間、俺は一瞬で凍り付いた。 見ただけで分かる、これは食時とは呼べない物だ。 定番のサンドウィッチが二切れと、異常に山盛りにされた唐揚げの様な物体。 衣はシナシナになって、油がコーティングされている様だ。 醒めた所に、冷えた油をぶちまけた感じだろうか。 所々衣が剥がれて、中の具が見えているが、衣に対して、具の比率が物凄く小さい。 これは一体どんな料理なんだろうか・・・・・。
しかし、一度食べると言ったから、それなりに食べなければならない。 これは無難にサンドウィッチから行くべきだろうか。 俺はその一切れを手に持って、口に運んだ。
「しょっぱ!! 辛、いや苦い。 でも後から来る無駄な甘さは、なんだこれ!!」
予想しなければならなかった。 唐揚げがあれだから、こっちも真面なはずがなかったのだ。 油断していた。
「お口に合いませんでしたか? これ、私の自信作なんですよ?」
「い、いや、美味しいですよ・・・・・。 食べます食べます。」
俺は無理やり口の中に詰め込み、それを咀嚼せずに飲み込んだ。 後から来る後味が気持ち悪い。 これであの唐揚げを食べるとなると、本気で覚悟をしなければ。 そう俺が躊躇っていると、レインさんは俺の口元に、唐揚げの様な油の塊を、三個も刺して運んできた。
「アーモンさん。 はい、アーン。」
「・・・・・え、ええ、頂きますね。 ・・・・・はぐっ・・・ふぐぅ!!」
覚悟はしていた、しかしこれは想像以上に油っぽい。 いやもう、油その物と言っても良い。 柔らかくなった衣が油を吸収して、予想以上の量の油が、口の中へ広がって行く。 先ほどの気持ち悪さが勢いを増して、俺の中から熱い何かが駆け抜けて行った。
此処で吐き出したら不味いと、力いっぱい口を押え、俺の頬が、パンパンに膨れている。 俺はレインさんの顔を見ない様に、ジェスチャーで此処を離れると伝え、俺は彼女を置き去りにして木陰へと向かった。 そして、彼女が見えない所で、口いっぱいに広がったそれを、思う存分吐き出した。
「うげええええええええええええええぇぇぇぇぇ・・・。 ッはぁ、はぁ・・・・・。 まさかこれ程とは・・・・・。」
これは困った。 まさかこれ程のレベルだとは思わなかった。 やはりアンリさんの方が・・・・・。 いや、もう今更変えられない。 男としてもそれは駄目だ。 例え彼女の食事が不味くとも、今から教えれば良いだけだ。 俺は決意を新たにして、彼女の元へ戻った。
「お、おまたせしました。 ちょっと落とし物をしてしまって。 ・・・ははは。」
「あら、そうなんですか? じゃあ食事もまだ残っていますし、全部たべてくださいね?」
これ以上この油を体に入れるのは、体にも良くないし、体が拒否している。 これは勇気をもって断ろう。
「いやあの、実はお腹いっぱいで、これ以上はちょっと・・・・・。」
「え~、そうなんですか? 折角一杯作って来たのに。 あ、なら特性ジュースなんてどうですか? 私、今日作って来たんですよ。 ほらこれです。」
特性ジュースとは、物凄く不安だ。 その色を見ると、完全には混じり切っていない、色々な色が残っている。 見たことも無い物体だ。 これを本当に飲んでも大丈夫なんだろうか・・・・・?
しかし、彼女の期待に満ちた目が、俺をそれに誘わせる。 手を震わせながら、その物体を口に運ぶと、その味に衝撃が走った。 これは油っこくもなく、しょっぱくもなく、辛くもなくて、苦くもない。 無駄に甘くもなく、そして、不味くない!!
「う、美味い!! 全く知らない味だけど、美味いですよこれ!!」
「・・・・・あら? それは良かったです。 ・・・・・ちょっと配合を間違えたかしら?」
配合とは何だろうか。 とても気になる。 だが今はそんな事は如何でも良い、彼女に俺を好きになって貰う事が、先決だ。 俺が何処かへ出かけようと提案する前に、彼女の方が先に声を掛けて来た。
「う~ん、それじゃあ、そろそろ効いて来ると思いますから、ちょっと移動しましょうか。」
「き、効いて来るとは?」
「アーモンさんは気にしなくてもいいんですよ。 そんな事より急ぎましょう、何時までも此処に居たら、日が暮れてしまいますよ?」
「え、ああ、はい。 そうですね。」
時々妙な事を言い出す彼女だが、きっと初めてのデートで緊張しているのだろう。 彼女に手を引かれ、楽し気に歩いていると、突然途轍もない痛みが、俺の腹を襲った。 これは何処かが悪いとか、そういう痛みじゃない、何時も感じているこの感じは・・・・・途轍もない便意だ!! 何故今? 此処に来る前に行って来たはずだが?!
あのおかしな料理を食べ過ぎたのか、それともあのジュースだろうか。 俺の腹は、とてつもない悲鳴を上げている。 このままでは不味いと、俺はレインさんに、その事を打ち明ける事にした。
「あのレインさん。 俺ちょっと便所に行きたいんで、ちょっと手を放してくれませんか?」
「あ、見てくださいアーモンさん。 あそこの店のアクセサリー、凄く可愛いと思いませんか? ちょっと行ってみましょうよ。」
俺の言う事を聞いてはくれず、若干レインさんの手にも、力が入っている様に思える。 俺の手を放したくないというのは分かるが、今はそういう場合じゃない!!
「いや俺便所に・・・・・レインさん、引っ張らないでください。 ヤバイです、本当にヤバイですから!!」
「え? 何かあったんですかアーモンさん? あ、ほら、あっちの者も良さそうですよ。 さあ早く早く。」
「手、手を!! ぬあああああああああああ、すいませんレインさん。 もう駄目です、俺はちょっと行って来ますから、ちょっと待っていてください!!」
レインさんの手を無理やり振りほどき、俺は近くにあった便所へと駆けこんだ。 俺は人生のピンチを乗り切り、なんとかそれに間に合った。 あのまま居たら、きっと町中の噂になっていただろう。 危うく俺のイメージが、崩れる所だった。
少し落ち着き、便所の中を見回すと、俺が求めていた物が見当たらなかった。
「ふ、拭く物が無いだって?! 今日は一体どうなっているんだ!!」
大丈夫、少し落ち着こう。 確か何か持っていたはずだ。 しかしその日は、何時も持ち歩いている筈のハンカチさえ見当たらず、服を破いて代用する事になった。
今日は他に誰も居ないし、この日は俺にとってのチャンスと言える。 レインさんの心を、俺に引き寄せるチャンスだ。
約束の二時半を回り、そろそろ彼女がやって来る時間だ。 俺はもう少し待っていると、彼女が遠くから走って来た。
「アーモンさ~ん。 おまたせしました~。」
笑顔で走って来る彼女は、何時もよりも、とても美しい服装をしている。 俺の為に着て来てくれたと思うと、凄く嬉しい。 彼女も期待してくれているのだろう。
「こんにちはレインさん。 天気は少し曇っていますが、きっと良い日にしてみせますよ。 期待していてください。」
「そうですか~うふふ。 私も良い日にする為に、すごく頑張って来たんですよ。 アーモンさんは、お昼食べましたよね? 私、お弁当作って来たから、食べてくれませんか?」
言い方が少しおかしかった気がするが、言い間違えただけだと思う。 実は本当に食べて来たけど、折角作って来てくれた物を、無下に断る事は出来ない。
「勿論です!! レインさんの作って来た物なら、全部たべてしましますよ!!」
「良かった。 断られたらどうしようかと思っていました。 でも無理しないでくださいね? まだ色々用意していますから。 じゃあ、はいどうぞ。」
「嬉しいです、ありがとう御座います。 美味しくいた・・・だき・・・ま・・・・す・・・ね?」
その箱の中身を見た瞬間、俺は一瞬で凍り付いた。 見ただけで分かる、これは食時とは呼べない物だ。 定番のサンドウィッチが二切れと、異常に山盛りにされた唐揚げの様な物体。 衣はシナシナになって、油がコーティングされている様だ。 醒めた所に、冷えた油をぶちまけた感じだろうか。 所々衣が剥がれて、中の具が見えているが、衣に対して、具の比率が物凄く小さい。 これは一体どんな料理なんだろうか・・・・・。
しかし、一度食べると言ったから、それなりに食べなければならない。 これは無難にサンドウィッチから行くべきだろうか。 俺はその一切れを手に持って、口に運んだ。
「しょっぱ!! 辛、いや苦い。 でも後から来る無駄な甘さは、なんだこれ!!」
予想しなければならなかった。 唐揚げがあれだから、こっちも真面なはずがなかったのだ。 油断していた。
「お口に合いませんでしたか? これ、私の自信作なんですよ?」
「い、いや、美味しいですよ・・・・・。 食べます食べます。」
俺は無理やり口の中に詰め込み、それを咀嚼せずに飲み込んだ。 後から来る後味が気持ち悪い。 これであの唐揚げを食べるとなると、本気で覚悟をしなければ。 そう俺が躊躇っていると、レインさんは俺の口元に、唐揚げの様な油の塊を、三個も刺して運んできた。
「アーモンさん。 はい、アーン。」
「・・・・・え、ええ、頂きますね。 ・・・・・はぐっ・・・ふぐぅ!!」
覚悟はしていた、しかしこれは想像以上に油っぽい。 いやもう、油その物と言っても良い。 柔らかくなった衣が油を吸収して、予想以上の量の油が、口の中へ広がって行く。 先ほどの気持ち悪さが勢いを増して、俺の中から熱い何かが駆け抜けて行った。
此処で吐き出したら不味いと、力いっぱい口を押え、俺の頬が、パンパンに膨れている。 俺はレインさんの顔を見ない様に、ジェスチャーで此処を離れると伝え、俺は彼女を置き去りにして木陰へと向かった。 そして、彼女が見えない所で、口いっぱいに広がったそれを、思う存分吐き出した。
「うげええええええええええええええぇぇぇぇぇ・・・。 ッはぁ、はぁ・・・・・。 まさかこれ程とは・・・・・。」
これは困った。 まさかこれ程のレベルだとは思わなかった。 やはりアンリさんの方が・・・・・。 いや、もう今更変えられない。 男としてもそれは駄目だ。 例え彼女の食事が不味くとも、今から教えれば良いだけだ。 俺は決意を新たにして、彼女の元へ戻った。
「お、おまたせしました。 ちょっと落とし物をしてしまって。 ・・・ははは。」
「あら、そうなんですか? じゃあ食事もまだ残っていますし、全部たべてくださいね?」
これ以上この油を体に入れるのは、体にも良くないし、体が拒否している。 これは勇気をもって断ろう。
「いやあの、実はお腹いっぱいで、これ以上はちょっと・・・・・。」
「え~、そうなんですか? 折角一杯作って来たのに。 あ、なら特性ジュースなんてどうですか? 私、今日作って来たんですよ。 ほらこれです。」
特性ジュースとは、物凄く不安だ。 その色を見ると、完全には混じり切っていない、色々な色が残っている。 見たことも無い物体だ。 これを本当に飲んでも大丈夫なんだろうか・・・・・?
しかし、彼女の期待に満ちた目が、俺をそれに誘わせる。 手を震わせながら、その物体を口に運ぶと、その味に衝撃が走った。 これは油っこくもなく、しょっぱくもなく、辛くもなくて、苦くもない。 無駄に甘くもなく、そして、不味くない!!
「う、美味い!! 全く知らない味だけど、美味いですよこれ!!」
「・・・・・あら? それは良かったです。 ・・・・・ちょっと配合を間違えたかしら?」
配合とは何だろうか。 とても気になる。 だが今はそんな事は如何でも良い、彼女に俺を好きになって貰う事が、先決だ。 俺が何処かへ出かけようと提案する前に、彼女の方が先に声を掛けて来た。
「う~ん、それじゃあ、そろそろ効いて来ると思いますから、ちょっと移動しましょうか。」
「き、効いて来るとは?」
「アーモンさんは気にしなくてもいいんですよ。 そんな事より急ぎましょう、何時までも此処に居たら、日が暮れてしまいますよ?」
「え、ああ、はい。 そうですね。」
時々妙な事を言い出す彼女だが、きっと初めてのデートで緊張しているのだろう。 彼女に手を引かれ、楽し気に歩いていると、突然途轍もない痛みが、俺の腹を襲った。 これは何処かが悪いとか、そういう痛みじゃない、何時も感じているこの感じは・・・・・途轍もない便意だ!! 何故今? 此処に来る前に行って来たはずだが?!
あのおかしな料理を食べ過ぎたのか、それともあのジュースだろうか。 俺の腹は、とてつもない悲鳴を上げている。 このままでは不味いと、俺はレインさんに、その事を打ち明ける事にした。
「あのレインさん。 俺ちょっと便所に行きたいんで、ちょっと手を放してくれませんか?」
「あ、見てくださいアーモンさん。 あそこの店のアクセサリー、凄く可愛いと思いませんか? ちょっと行ってみましょうよ。」
俺の言う事を聞いてはくれず、若干レインさんの手にも、力が入っている様に思える。 俺の手を放したくないというのは分かるが、今はそういう場合じゃない!!
「いや俺便所に・・・・・レインさん、引っ張らないでください。 ヤバイです、本当にヤバイですから!!」
「え? 何かあったんですかアーモンさん? あ、ほら、あっちの者も良さそうですよ。 さあ早く早く。」
「手、手を!! ぬあああああああああああ、すいませんレインさん。 もう駄目です、俺はちょっと行って来ますから、ちょっと待っていてください!!」
レインさんの手を無理やり振りほどき、俺は近くにあった便所へと駆けこんだ。 俺は人生のピンチを乗り切り、なんとかそれに間に合った。 あのまま居たら、きっと町中の噂になっていただろう。 危うく俺のイメージが、崩れる所だった。
少し落ち着き、便所の中を見回すと、俺が求めていた物が見当たらなかった。
「ふ、拭く物が無いだって?! 今日は一体どうなっているんだ!!」
大丈夫、少し落ち着こう。 確か何か持っていたはずだ。 しかしその日は、何時も持ち歩いている筈のハンカチさえ見当たらず、服を破いて代用する事になった。
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