一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
20 喋るのも人間、聴くのも人間。
教会の中は広く、そして大勢の人間で溢れている。 俺達は、その場所で名前の記入や、募金を募っている、二人のシスターに、話を聞いてみる事にした。
「あの~、ノーツという男の人を御存知ないでしょうか? この場所に来たと思うのですが。 えっ~と、特徴はですねぇ・・・・・。」
「はぁ、何分いらっしゃられる人数が多いので、一か月前と言われても、如何にも覚えておりません。 シスター・ラブレンス貴女はどうです?」
「う~ん、私も覚えていないですね。 せめて何時来られた方なのかが分かれば、思い出せるかもしれませんが。」
「なら、一ヶ月前の名簿とかありませんか? もし名前を書き込んでいたなら、手掛かりが見つけられるかもしれません。 どうかお願いします、それをみせてくれませんか? 此処に居る彼女の恋人が、行方不明なんです!!」
「うええええええ!! ち、違うよ!! 恋人じゃなくて、友達なんですけど!! でも行方不明になったのは本当なんです、協力して貰えませんか?!」
「何やら緊急事態の様ですね。 プリーストに話を通して来ますので、少々この場でお待ちください。 行きますよ、シスター・ラブレンス。」
「え? お一人で十分なのでは?」
「良いから来るのです。 こういう時は、気を効かせるものなのですよ。」
「あ、はい!!」
二人のシスターが、奥へと行ってくれたらしい。 この隙に、見ろという事なのだろう。 俺が手を付けようとする前に、ダイヤさんが、もうカウンターの中へと入っていた。 積極的に行動してくれるのは有難いが、指示をする前にやられてしまうと、俺が此処に居る意味がなくなってしまいそうだ。
「ダイヤさん、何か見つかりましたか?」
「あった、偽名だけど、ノーツの字が載ってる!! やっぱり此処に来てたみたい!!」
文字の癖まで知っているとは、よく見ているな。 よっぽど好きだったのか?
「ほう、どんな名前なんですか? 参考までに聞かせてください。」
「んと、暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムだって。」
「え? もう一度お願いします。」
「暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムです。」
どうも聞き違いでは無かったらしい。 ノーツは、独特の感性を持っている様だ。
「な、何だか斬新な名前ですね。 まあ分かり易いですけど・・・・・。」
「うん、ノーツってそういう所あるから、簡単に分かるんだよね。 多少変わってる所も有るけど、良い奴なんだ。」
なる程、文字の形じゃなくて、そういう名前を使ってる事を知っていたのか。 だったら本人で間違いないのだろう。 しかしこんな場所で、そんな名前を使うとは、中々気合の入った人物だな。
こんな名前だったなら、あのシスター達も憶えているかもしれないな。 あの二人が戻って来たら、もう一度聞いてみるとしよう。
俺達が名簿を元に戻すと、タイミング良く、シスター達が戻って来ていた。 人の出入りもあるので、離れて見ていたのかもしれないな。
「すみません。 残念ながら、名簿は見せる事が出来ないみたいなのです。 何か他の事で協力が出来るのならば、私達は、惜しみなくお手伝いいたしますよ?」
「では・・・・・え~っとダイヤさん、どんな名前でしたっけ?」
「暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムです。」
「それです、それそれ。 その人物に、心当たりは有りませんか? その人が、ノーツさんと言うんですけど。」
「ああ、その人なら覚えていますよ。 名前が特徴的で、忘れられなかったので。 泣きながら懺悔室に入られていたのを、覚えています。」
「懺悔室ですか、有難うございます。 ではその時に、その部屋のおられたのは、誰だか分かりますでしょうか?」
「はい、確か今日と同じで、セローリ様が入られていたと思います。 今でも懺悔室に居られると思いますよ。」
「カールソンさん、今直ぐに行こう!! ほら早く!!」
「ちょっと、引っ張らないでくださいよ。 ではお二人共、有難う御座いました。 懺悔室に行ってみますね。」
「神のご加護がありますように。」「ように。」
俺達は、懺悔室に向かった。 前には三人程並んでいたが、二十分もすると、俺達の順番が回って来た。 俺達は二人で懺悔室に入り、セローリというプリーストと会う事が出来た。
懺悔室の奥。 小さな穴に格子がしてあり、向うの状態は見えない。 その向こう側に、セローリが居るのだろうか?
「この懺悔室での言葉は、絶対に秘密にされます。 どうぞ安心してお話になってください。 罪の告白、在りし日の過ち。 どのような物でも、神はお許しになられます。 さあ罪人よ、全てをさらけ出すのです。」
声は女性のものだ。 セローリさんとは女性だったのか。 兎に角ノーツの話を聞いてみるとするか。
「セローリさん、ですよね? 実は私、新聞記者をしている、カールソンという者なんですが。 え~っとそれでですね、隣にいる女性はダイヤさんと言いますが、彼女の友人が行方不明になったと言うんですよ。 その人物が、この懺悔室に寄ったとまでは確認が取れているのですが・・・・・私達に彼の情報を教えてもらえないでしょうか? 確か、此処に来た名前は、太陽の大地の者とかそんな感じだったと思います。
「カールソンさん、暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムですよ。」
「ああそうでした、それですそれです。 その名前です。 セローリさん、如何にかその人の事を、教えてもらえませんか?」
「・・・・・先ほども申しましたが、この場所でのお話は、絶対に口外いたしません。 それが例えどんな理由であったとしてもです。 私が喋ってしまえば、今まで懺悔された全ての人々を裏切ってしまう事になるからです。 どうぞ別のお話をしてはくれませんか?」
「そんな!! 折角此処まで来たのに、教えてくれたって良いでしょ、ケチィ!!」
どうしよう。 此処で聞き出せなければ、手掛かりが途切れてしまう。 何とか聞き出す事は出来ないか? あの偽名を使えば? ・・・・・やってみるしかないか。
「まあ待ってくださいダイヤさん。 もう少し話を聞きましょう。 ではこういうのはどうでしょうか、私達が知りたいのは、ブリザードさんの事じゃありません。 私が知りたいのは、ノーツさんの事です。 どうでしょうか、ノーツさんの事を教えてくれませんか?」
「詭弁ですね。 結局は同じ人ではありませんか。 私には、皆を裏切る事は出来ません。」
「詭弁であれ何であれ、貴女の言葉で、二人の人間を救えるかもしれないのですよ? 神様は、こんなに心配しているダイヤさんを見捨てるのですか? 行方不明になっている人はどうなってるのか分からないんですよ!! それが神様のやる事でしょうか!!」
「う・・・・・し、しかし・・・・・。」
「どうやら無理だったようですね。 どうやら神様は、都合の良い人しか助けてくれないようですよ。 可哀想に、友人を無くしたダイヤさんは、これから辛い人生を歩んで行くのでしょうね。」
「もう私神様なんて信じないんだから!!」
「ま、待ってください!! ブリザードさんの事ではなくて、ノーツさんの事を話しましょう。 神様は弱い人間を、放っておいたり致しませんから!!」
勝った!! いや、勝ち負けではないけれど、兎に角これで足取りが分かるかもしれない。
「あの~、ノーツという男の人を御存知ないでしょうか? この場所に来たと思うのですが。 えっ~と、特徴はですねぇ・・・・・。」
「はぁ、何分いらっしゃられる人数が多いので、一か月前と言われても、如何にも覚えておりません。 シスター・ラブレンス貴女はどうです?」
「う~ん、私も覚えていないですね。 せめて何時来られた方なのかが分かれば、思い出せるかもしれませんが。」
「なら、一ヶ月前の名簿とかありませんか? もし名前を書き込んでいたなら、手掛かりが見つけられるかもしれません。 どうかお願いします、それをみせてくれませんか? 此処に居る彼女の恋人が、行方不明なんです!!」
「うええええええ!! ち、違うよ!! 恋人じゃなくて、友達なんですけど!! でも行方不明になったのは本当なんです、協力して貰えませんか?!」
「何やら緊急事態の様ですね。 プリーストに話を通して来ますので、少々この場でお待ちください。 行きますよ、シスター・ラブレンス。」
「え? お一人で十分なのでは?」
「良いから来るのです。 こういう時は、気を効かせるものなのですよ。」
「あ、はい!!」
二人のシスターが、奥へと行ってくれたらしい。 この隙に、見ろという事なのだろう。 俺が手を付けようとする前に、ダイヤさんが、もうカウンターの中へと入っていた。 積極的に行動してくれるのは有難いが、指示をする前にやられてしまうと、俺が此処に居る意味がなくなってしまいそうだ。
「ダイヤさん、何か見つかりましたか?」
「あった、偽名だけど、ノーツの字が載ってる!! やっぱり此処に来てたみたい!!」
文字の癖まで知っているとは、よく見ているな。 よっぽど好きだったのか?
「ほう、どんな名前なんですか? 参考までに聞かせてください。」
「んと、暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムだって。」
「え? もう一度お願いします。」
「暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムです。」
どうも聞き違いでは無かったらしい。 ノーツは、独特の感性を持っている様だ。
「な、何だか斬新な名前ですね。 まあ分かり易いですけど・・・・・。」
「うん、ノーツってそういう所あるから、簡単に分かるんだよね。 多少変わってる所も有るけど、良い奴なんだ。」
なる程、文字の形じゃなくて、そういう名前を使ってる事を知っていたのか。 だったら本人で間違いないのだろう。 しかしこんな場所で、そんな名前を使うとは、中々気合の入った人物だな。
こんな名前だったなら、あのシスター達も憶えているかもしれないな。 あの二人が戻って来たら、もう一度聞いてみるとしよう。
俺達が名簿を元に戻すと、タイミング良く、シスター達が戻って来ていた。 人の出入りもあるので、離れて見ていたのかもしれないな。
「すみません。 残念ながら、名簿は見せる事が出来ないみたいなのです。 何か他の事で協力が出来るのならば、私達は、惜しみなくお手伝いいたしますよ?」
「では・・・・・え~っとダイヤさん、どんな名前でしたっけ?」
「暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムです。」
「それです、それそれ。 その人物に、心当たりは有りませんか? その人が、ノーツさんと言うんですけど。」
「ああ、その人なら覚えていますよ。 名前が特徴的で、忘れられなかったので。 泣きながら懺悔室に入られていたのを、覚えています。」
「懺悔室ですか、有難うございます。 ではその時に、その部屋のおられたのは、誰だか分かりますでしょうか?」
「はい、確か今日と同じで、セローリ様が入られていたと思います。 今でも懺悔室に居られると思いますよ。」
「カールソンさん、今直ぐに行こう!! ほら早く!!」
「ちょっと、引っ張らないでくださいよ。 ではお二人共、有難う御座いました。 懺悔室に行ってみますね。」
「神のご加護がありますように。」「ように。」
俺達は、懺悔室に向かった。 前には三人程並んでいたが、二十分もすると、俺達の順番が回って来た。 俺達は二人で懺悔室に入り、セローリというプリーストと会う事が出来た。
懺悔室の奥。 小さな穴に格子がしてあり、向うの状態は見えない。 その向こう側に、セローリが居るのだろうか?
「この懺悔室での言葉は、絶対に秘密にされます。 どうぞ安心してお話になってください。 罪の告白、在りし日の過ち。 どのような物でも、神はお許しになられます。 さあ罪人よ、全てをさらけ出すのです。」
声は女性のものだ。 セローリさんとは女性だったのか。 兎に角ノーツの話を聞いてみるとするか。
「セローリさん、ですよね? 実は私、新聞記者をしている、カールソンという者なんですが。 え~っとそれでですね、隣にいる女性はダイヤさんと言いますが、彼女の友人が行方不明になったと言うんですよ。 その人物が、この懺悔室に寄ったとまでは確認が取れているのですが・・・・・私達に彼の情報を教えてもらえないでしょうか? 確か、此処に来た名前は、太陽の大地の者とかそんな感じだったと思います。
「カールソンさん、暗黒の太陽、凍れる大地より舞い降りる者。 ブリザード・フレイムですよ。」
「ああそうでした、それですそれです。 その名前です。 セローリさん、如何にかその人の事を、教えてもらえませんか?」
「・・・・・先ほども申しましたが、この場所でのお話は、絶対に口外いたしません。 それが例えどんな理由であったとしてもです。 私が喋ってしまえば、今まで懺悔された全ての人々を裏切ってしまう事になるからです。 どうぞ別のお話をしてはくれませんか?」
「そんな!! 折角此処まで来たのに、教えてくれたって良いでしょ、ケチィ!!」
どうしよう。 此処で聞き出せなければ、手掛かりが途切れてしまう。 何とか聞き出す事は出来ないか? あの偽名を使えば? ・・・・・やってみるしかないか。
「まあ待ってくださいダイヤさん。 もう少し話を聞きましょう。 ではこういうのはどうでしょうか、私達が知りたいのは、ブリザードさんの事じゃありません。 私が知りたいのは、ノーツさんの事です。 どうでしょうか、ノーツさんの事を教えてくれませんか?」
「詭弁ですね。 結局は同じ人ではありませんか。 私には、皆を裏切る事は出来ません。」
「詭弁であれ何であれ、貴女の言葉で、二人の人間を救えるかもしれないのですよ? 神様は、こんなに心配しているダイヤさんを見捨てるのですか? 行方不明になっている人はどうなってるのか分からないんですよ!! それが神様のやる事でしょうか!!」
「う・・・・・し、しかし・・・・・。」
「どうやら無理だったようですね。 どうやら神様は、都合の良い人しか助けてくれないようですよ。 可哀想に、友人を無くしたダイヤさんは、これから辛い人生を歩んで行くのでしょうね。」
「もう私神様なんて信じないんだから!!」
「ま、待ってください!! ブリザードさんの事ではなくて、ノーツさんの事を話しましょう。 神様は弱い人間を、放っておいたり致しませんから!!」
勝った!! いや、勝ち負けではないけれど、兎に角これで足取りが分かるかもしれない。
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