一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
6 朱殷(しゅあん)の髪と攫われた赤子 16
イクシアンというこの女は、この国の治安を守る、警察という組織の人間らしい。 この屋敷へと潜入捜査をしているという。 この名前も本名なのか怪しいものだ。
この屋敷の長であるブラッグは、他国との戦争を仕掛けようとしている、ある組織のメンバーと言われているが、真相は分からないそうだ。 だからこそこの屋敷へと潜入しているのだろう。 私の方もそれなりの情報を流す事にした。
「では此方の事を話そうか。 私が王国から来た事は話したな。 私は女王陛下からの依頼で、王国で事件を起こした首謀者を追っている。 何となくでこの屋敷へと侵入してみたが、どうやら少しは当たりだったようだな。 お前の情報があれば此方も助かる。 どうだろう、協力しないか? 私の能力は、中々魅力的だろう?」
「確かに、透明になれるその魔法は潜入にはもってこいの能力ですね。 この屋敷の中であれば、私以外には見つける事は出来ないでしょうね。 宜しい、なら一時の仲間としましょうか。 地図を見せます、私の言った場所を調べて来てください。 落ち合うのは今居るこの場所で。 勿論誰かに発見されるようなヘマをしたとしても、私は関知いたしませんので、そこの所をお忘れなく」
「分かっている。 お前に求めるのは。情報の面だけだ」
「それでは、この屋敷の地図を見てください。 今居る場がこの地点です。 私が調べて欲しいのは、四か所。 まず一つ目は、ブラッグの娘がいるという部屋。 私が勤め出してから、一切姿を見ておりません。 食事も与えられておりませんし、扉には鍵が掛かっていて、本当に居るとしても、生きているのかも怪しいでしょう」
「その娘っていうのは、他のメイド達でも見た事が無いのか? お前以上に長く勤めている者は居るだろう」
「娘の姿を見た人は居ます。 ただし、四年程前にはですが。 生きているのなら、もう二十五にはなるのでしょうね」
二十五、私よりも年上か。 生きているのか、死んでるのか、その部屋を覗かなければ確認出来ないか。
「他に質問は? 無いのなら次にいきますよ?」
「ああ、続けてくれ」
「二つ目は地下への扉です。 エントランスホールに黒い蓋がありますが、絶えず人が居るので、私がそれを開ける事が出来ません。 貴女なら何とか入る事が出来るのではないでしょうか」
「夜中出歩く事は出来ないのか? 誰も居ない時間に調べればいいだろう」
「それは無理です。 私達メイドは、自室がある区画に閉じ込められて出る事が出来ません。 夜調べる事は不可能です」
「私がやるしかないという事か・・・・・分かった。 夜まで隠れて、行ってみる事にしよう」
「では三つ目です。 屋敷の裏手にある大きな倉庫の中には、昼夜問わず見張りが立って、私達メイドは近づく事も出来ません」
「また面倒な所だな。 見張りが居る中で、扉が勝手に開いたら不自然だろう。 姿が見えないというだけでは無理だな。 一度は見てみるが、それで無理なら諦めるぞ」
「それで構いません。 他が本命かもしれませんからね。 調べて欲しい事はもう一つ、最後はブラッグの寝室の奥にある扉の中です。 その場所が一番何かある可能性が高いでしょう」
「了解だ。 しかし夜まで留まるとなると、何か食料を頼みたい。 直ぐに脱出する積もりだったから、持って来ていないんだ。 あともう一つ、この屋敷の外のカフェに、クスピエって子供みたいな奴が居るはずだ。 そいつに伝えてくれないか、今日は帰れないと」
「必ず伝えましょう」
イクシアンから調べるのを頼まれたのは四か所。 誰も入らせてもらえないという娘がいるという部屋。 黒い蓋で塞がれている地下室。 屋敷の裏手にある大きな倉庫。 ブラッグの寝室の奥にある扉の中。
まず私は、娘がいるという部屋へ行ってみる事にした。 とりあえず近くにあるその部屋へと向かうと、私はその部屋の扉のノブをゆっくりと回してみた。
・・・・・駄目だ、中から鍵が掛かっている。 こちら側に鍵穴が見当たらないという事は、やはり中には誰か居るのだろう。
私の姿は消えている、誰か出て来たとしても大丈夫だろう。 私は意を決して、その扉を叩いた。
・・・・・やはり返事は無い。 こうなれば声でも掛けてみるべきだろう。 私は少し考えた、中の人物が出て来る為には、どんな言葉が良いだろうか。 私は周りの状況を確認して、中の人物に向かい、声を掛けてみた。
「大変ですお嬢様。 家の中で炎が、早く出て来ないと大変な事になりますよ。 早く逃げてください、早く! 急いでください、煙がそこまで来てしまいます!」
ガタッと中から音が聞こえた。 私は扉の横に張り付き、中の人物が出て来るのを待った。 ガタガタと音が続き、バンッと扉が開くと、中に居た女性がとび出し、家の外へと走って行ってしまった。
美しい女性だった。 一つだけ気になる事と言えば、鼻に一筋の傷があるった。 もしかしたら、あれを見られたくないから、閉じこもっていただけなのかもしれないな。 私は直ぐに部屋の中へと入ってみたが、普通の女性の部屋にしか見えなかった。 流石にこの部屋に妙な組織の情報があるとは思えない。 私は次の場所へ向かう事にした。
エントランスは人が大勢で入りしている、あの場所はまだ調べる事が出来ない。 人が出入りしている今の内に、外の倉庫とやらを見て来る事にしよう。
私は元来た道を戻り、屋敷の入り口へと戻った。 その途中で、戦闘の有った通路を見たが。 壁に刺さった矢は回収しているが、穴の開いた部分は見当たらなかった。 イクシアンが直したのだろうか? あの女なら、何をしても不思議ではないな。
私は外の倉庫へ到着すると、倉庫の扉の前を護る男が一人居た。 あまりやる気は感じられないが、それでも簡単にはいかなそうだ。 倉庫の扉にも鍵が掛けられていて、簡単には入れそうにない。 この場所は諦めて、ブラッグの部屋へと行ってみるか。
ブラッグの部屋の前、扉は開け放たれている。 中には先ほど来た客と、もう一人居る男がブラッグなのだろう。 私は部屋の中へと入り、二人の話に聞耳を立てた。
この屋敷の長であるブラッグは、他国との戦争を仕掛けようとしている、ある組織のメンバーと言われているが、真相は分からないそうだ。 だからこそこの屋敷へと潜入しているのだろう。 私の方もそれなりの情報を流す事にした。
「では此方の事を話そうか。 私が王国から来た事は話したな。 私は女王陛下からの依頼で、王国で事件を起こした首謀者を追っている。 何となくでこの屋敷へと侵入してみたが、どうやら少しは当たりだったようだな。 お前の情報があれば此方も助かる。 どうだろう、協力しないか? 私の能力は、中々魅力的だろう?」
「確かに、透明になれるその魔法は潜入にはもってこいの能力ですね。 この屋敷の中であれば、私以外には見つける事は出来ないでしょうね。 宜しい、なら一時の仲間としましょうか。 地図を見せます、私の言った場所を調べて来てください。 落ち合うのは今居るこの場所で。 勿論誰かに発見されるようなヘマをしたとしても、私は関知いたしませんので、そこの所をお忘れなく」
「分かっている。 お前に求めるのは。情報の面だけだ」
「それでは、この屋敷の地図を見てください。 今居る場がこの地点です。 私が調べて欲しいのは、四か所。 まず一つ目は、ブラッグの娘がいるという部屋。 私が勤め出してから、一切姿を見ておりません。 食事も与えられておりませんし、扉には鍵が掛かっていて、本当に居るとしても、生きているのかも怪しいでしょう」
「その娘っていうのは、他のメイド達でも見た事が無いのか? お前以上に長く勤めている者は居るだろう」
「娘の姿を見た人は居ます。 ただし、四年程前にはですが。 生きているのなら、もう二十五にはなるのでしょうね」
二十五、私よりも年上か。 生きているのか、死んでるのか、その部屋を覗かなければ確認出来ないか。
「他に質問は? 無いのなら次にいきますよ?」
「ああ、続けてくれ」
「二つ目は地下への扉です。 エントランスホールに黒い蓋がありますが、絶えず人が居るので、私がそれを開ける事が出来ません。 貴女なら何とか入る事が出来るのではないでしょうか」
「夜中出歩く事は出来ないのか? 誰も居ない時間に調べればいいだろう」
「それは無理です。 私達メイドは、自室がある区画に閉じ込められて出る事が出来ません。 夜調べる事は不可能です」
「私がやるしかないという事か・・・・・分かった。 夜まで隠れて、行ってみる事にしよう」
「では三つ目です。 屋敷の裏手にある大きな倉庫の中には、昼夜問わず見張りが立って、私達メイドは近づく事も出来ません」
「また面倒な所だな。 見張りが居る中で、扉が勝手に開いたら不自然だろう。 姿が見えないというだけでは無理だな。 一度は見てみるが、それで無理なら諦めるぞ」
「それで構いません。 他が本命かもしれませんからね。 調べて欲しい事はもう一つ、最後はブラッグの寝室の奥にある扉の中です。 その場所が一番何かある可能性が高いでしょう」
「了解だ。 しかし夜まで留まるとなると、何か食料を頼みたい。 直ぐに脱出する積もりだったから、持って来ていないんだ。 あともう一つ、この屋敷の外のカフェに、クスピエって子供みたいな奴が居るはずだ。 そいつに伝えてくれないか、今日は帰れないと」
「必ず伝えましょう」
イクシアンから調べるのを頼まれたのは四か所。 誰も入らせてもらえないという娘がいるという部屋。 黒い蓋で塞がれている地下室。 屋敷の裏手にある大きな倉庫。 ブラッグの寝室の奥にある扉の中。
まず私は、娘がいるという部屋へ行ってみる事にした。 とりあえず近くにあるその部屋へと向かうと、私はその部屋の扉のノブをゆっくりと回してみた。
・・・・・駄目だ、中から鍵が掛かっている。 こちら側に鍵穴が見当たらないという事は、やはり中には誰か居るのだろう。
私の姿は消えている、誰か出て来たとしても大丈夫だろう。 私は意を決して、その扉を叩いた。
・・・・・やはり返事は無い。 こうなれば声でも掛けてみるべきだろう。 私は少し考えた、中の人物が出て来る為には、どんな言葉が良いだろうか。 私は周りの状況を確認して、中の人物に向かい、声を掛けてみた。
「大変ですお嬢様。 家の中で炎が、早く出て来ないと大変な事になりますよ。 早く逃げてください、早く! 急いでください、煙がそこまで来てしまいます!」
ガタッと中から音が聞こえた。 私は扉の横に張り付き、中の人物が出て来るのを待った。 ガタガタと音が続き、バンッと扉が開くと、中に居た女性がとび出し、家の外へと走って行ってしまった。
美しい女性だった。 一つだけ気になる事と言えば、鼻に一筋の傷があるった。 もしかしたら、あれを見られたくないから、閉じこもっていただけなのかもしれないな。 私は直ぐに部屋の中へと入ってみたが、普通の女性の部屋にしか見えなかった。 流石にこの部屋に妙な組織の情報があるとは思えない。 私は次の場所へ向かう事にした。
エントランスは人が大勢で入りしている、あの場所はまだ調べる事が出来ない。 人が出入りしている今の内に、外の倉庫とやらを見て来る事にしよう。
私は元来た道を戻り、屋敷の入り口へと戻った。 その途中で、戦闘の有った通路を見たが。 壁に刺さった矢は回収しているが、穴の開いた部分は見当たらなかった。 イクシアンが直したのだろうか? あの女なら、何をしても不思議ではないな。
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