一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

36 友人から借りた物は、後々その関係を壊すから気を付けよう。

「アリフガリアぁ?」


 俺が町の人に聞いた所、それがこの国の名前らしい。 ちなみにこの町の名前はラギラギースの町だ。 俺は王国の近くに、そんな国が存在すると聞いた事が無い。 俺はべノムを見て視線で訴える。


「俺を見られてもな・・・・・アリフガリアか、何処かで聞いた事があるような? 駄目だ、何処だったか忘れたぜ。」


「その国なら北方大陸にある、王国からはかなり離れた国だな。 私も殆ど知らない国だ、此処から戻るとなると、ザっと1ヶ月以上は掛かりそうだぞ。」


「はぁ、別大陸だと?! アホじゃねぇのかあの野郎、何処が七日で着くだ!! 俺は先に帰ってるぞ、これ以上ロッテを待たせる訳にはいかねえ!!」


「あのさべノム、王国が何処に有るのか分かるのか? 変な方向へ向かうと、もっと道に迷うかもしれないぞ?」


「うぐ・・・・・ストリー、お前は王国がどっちにあるのか分からないのか?」


「ハッキリした事は分からない、この国があると聞いた事があるぐらいだからな。 地図でもあれば良いのだが、何処かに売っていないものか・・・・・」


「あのー? 僕がマップを見てみましょうか? 色々試してみましたが、こっちの世界でもある程度は力を使えるみたいです。 地図ぐらいなら何時でも見る事が出来ますよ。」


「流石メイ、使える男だな!! やはり持つべき物は、便利な勇者だな!!」


「・・・・・もしかして馬鹿にしていませんか?」


「全然してないよ、むしろ頼もしく感じているぞ。 便利な道具として。」


「やっぱりしてるじゃないですか!! 謝らないと手伝ってあげませんからね!!」


「ただの冗談だって、怒ったなら謝るからさ。 俺は命の恩人なんだし、このぐらい許してくれよ。 な、良いだろメイ。」


「・・・・・果てしなく納得出来ませんが、一応命を救われたのも事実ですからね。 今回だけは許してあげます、でももう二度目は無いですからね!!」


「おう、分かったぜ。」


 ちょっとからかい過ぎたか? しかしメイがマップを使えるんなら、一度あの世界に行った俺でも使えるのかな? 後でちょっと試してみるか。


「おおおい、言い合いが終わったならよぉ、早く地図を見せてくれよ。 俺は早く帰りてぇんだ。」


「すみません、自分にだけしか見られないんです。 地面に書いてみますから、それで確認してくれませんか?」


「それで良いから、チャッチャとやってくれねぇか。」


「では・・・・・」


 メイが地面に地図を書いていく。 それによると王国の北、ラグナードよりも更に北、海を越えて北の大陸。 そこからずっと東へ行ってちょっと北の方にある国だった。 俺をこっちの世界に戻してくれたのは有難いが、こんなひどい目に合わされるとは思わなかった。 帰ったらあの天使をぶん殴る、そう俺は心に決めた。


「良し分かった、じゃあ俺は帰るから、お前達は適当に帰って来い。 じゃあ元気でやれよ。 じゃあな!!」


 飛び立とうとするべノムを、俺は肩を掴んで止めた。


「なあべノム、俺金持ってないんだけど? 旅費を置いてってくれないか?」


「ああん? あの世界で裸で呼ばれたのに、そんなの俺が持ってるわきゃねぇだろ。」


「・・・・・ストリーは?」


「アツシの世界で殆ど使ってしまった、あと残りはこのぐらいだ。」


 思った以上に少ない、これじゃあ今日の食事も食べられないぞ。 俺はフレーレ様を見るが、ふるふると頭を振っている。


「言っとくが、俺を引き止めても、金の事はどうにもなんねぇぞ? 一度戻って取って来てやっても良いが、それにもかなり時間が掛かるからな。 まあ諦めて自分達で何とかしろよ。 ま、王国に仕事が溜まってるし、俺ぁ行くぜ。 じゃあ生きてたらまた会おうぜ。」


「おい、逃げんな!!」


 俺の声を無視して、べノムが飛んで行ってしまった。 帰る為の貴重な戦力が減ってしまったじゃないか、金も無いのに俺達だけでどうしろってんだ!!


「アツシ、お金無いって如何するのよ? 私達こんな所で餓死しちゃうって言うの?! 何か手があるんでしょ? ねぇアツシ?」


「こんな所まで連れて来られて、私は野宿なんて出来ませんよ!! 如何するんですか!!」


 仕方ない、さっきまで揶揄からかってたけど、今度はお願いする番だ。 お返しで後で何言われるか分からないけど、背に腹は代えられない。


「メイ、悪いけど金になるもの何かないか? 返せる当ては一切ないけど、頼むぜメイ。」


「お金の貸し借りはしたくは無いですけど、今回ばかりは仕方がないでしょうね。 その代わりアツシさんが全額返してくださいよ、女性に払わせるのは僕の趣味じゃありませんから。」


「おう、任せとけ!!」


 メイから貰ったのは、上等な宝石だった。 これを売れば十分に生活はして行けると思う。 この町に良い換金所があれば良いけど。 変な所へ入って、二束三文にしかならないとかは勘弁して欲しい。


「それとですね、僕達は此処を動かなくても帰れそうですよ。 べノムさんのパーティー登録が切れてないみたいなんで、目的の場所にまで到着すれば、僕達は転移魔法で一瞬で着く事が出来ます。 僕達はべノムさんが到着するのをのんびり待ってましょうか。」


「「「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」」


「これで何の問題も無くなったな。」 「メイ君素敵!!」 


「私の息子も、もう少し使えれば・・・・・」


 おい母ちゃん、俺だって結構頑張ってるんだぞ。


「流石私のお婿さんだわー、お礼にキスしてあげようかー?」


「い、いえ、まだそう決めた分けじゃありませんので・・・・・」


「じゃあまず町の探索だな。 おいメイ、盛ってないで行くぞ。」


「だ、誰も盛ってなんていませんって!! アツシさん、訂正してくださいって!!・・・・・」 


 町の中を探索し始める俺達、この町は何ていうか・・・・・不思議? ファンシー? そんな町だった。 殆どの建物は下地から派手で、その上から何か妙な模様が描かれて、目が痛くなる様な配色をしている。






 聞いた話によると、これは一人の学者の意見を取り入れた物らしい。 その学者が言うには、この配色にすると魔物が襲って来ないとか言ってた様だが。 まあ町の人にとっては藁をも掴む感じでやってみたんだろうけど、実際少し被害が減ったらしいから驚きだった。 これで被害が減るのなら有りなんだろうけど・・・・ こんな物が王国にまで流行り出したら、王国の雰囲気が台無しになりそうだ。 



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