一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

30 王道を行く者達81     王道を行く者達THE END?

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・ッッッ勝ッッたあああああああああああああ! 私の、私達の勝ちだあああああああああああああ!」


「ぐぁ・・・・・はっ、はッ・・・・・フフフッ、おめでとう・・・・・ございます・・・・・勝利の味はいかがですか? 私が求めていた勝利の味は・・・・」


 傷ついた仲間達が横たわり、今真面に立って居るのはリーゼだけだった。 マッドはたった一人で倒れた仲間の治療を続けている。


「そんなの嬉しいに決まってるじゃない! これで気兼ねなくお母さんを生き返せるわ。 私は戻るんだ、あの平和だった時間に!」


「この惨状を見てよくも言えたものですが、しかし、生き返る・・・・・ですか。 ・・・・・そうですか、あの子はそれを選んだのですね・・・・・でも貴女は本当にそれで良いのですか? 今持っている宝を無くして、昔の宝を求めるのですか?」


「生き返るのが何が悪いっての?! これでみんな幸せになれる、貴方だって好きな人と生きて行けるのよ、何が不満だって言うのよ!」


「・・・・・誰もが幸せになれる・・・・・本当にそうかしら? ・・・・・一つ教えてあげましょうか、その代償がどんな物かを・・・・・貴女の願いは叶えられるでしょう、その魔法を使うマッドの命と共に・・・・・二つの命を犠牲にして、一人を助けるその魔法は・・・・・マッドとその内に眠る、天使の魂を犠牲にして発動される・・・・・何方を救うのか、貴女は選ばなければならない・・・・・」


「・・・・・ッ私は・・・・・」


 ラフィールの治療を終え、マッドが此方へ向かって来る。 仲間三人の治療を終えると、イモータルの元へと走り寄る。


「リーゼさん、イモータル様の治療をしても良いでしょうか?」


「・・・・・好きにしたら? それよりマッドさん、私に言う事はないの?」


「ああ、そうですね、皆さんの治療が終わったら、直ぐにお母様を生き返らせてみせましょう。 大丈夫です、ちゃんと生き返るから安心してください」


「違うわよ! その女から聞いたわよ、マッドさんが死ななきゃ、お母さんが生き返らないって、その女の言ってる事は本当なの?! ちゃんと説明しなさいよ!」


「・・・・・少しお待ちください、その話はイモータル様の治療が終わってからに致しましょう」


 マッドが治療を終えると、そこにある棺の前に全員が集まっている。 その棺の中には、凍り付いたリーゼの母の姿があった。 久しぶりに見る母の姿に涙を堪える事が出来ず、崩れ落ちるリーゼ。 そしてそれを慰める様に立つ仲間の姿。  イモータルだけが背中を向けて、それを見ない様にしていた。


 イモータルは空を見上げる、時が来たように現れたのは、その子供だった者達の姿。 今では立派な大人となった七人と、ルーキフェートの腕に抱えられているメギドの姿だがある。


 その八人が地上へと降りると、イモータルの元へ向かって来ている。


「・・・・・ただいま・・・・・モーたん」


「・・・・・全く・・・・・何時までまたせたのかしら。 私はもうおばさんになってしまったのよ? でも、嬉しいわ・・・・・お帰り、なさい・・・・・メ―、ちゃん・・・・・」


 瞳から涙が溢れ、泣き出すイモータル。 二人がそっと抱き合い、一つの物語が終わりを告げる。 しかし物語はまだ終わる事は無い、王国の王、イブレーテが審判を下したからだ。


「母上、父上、私は王として裁かなければなりません。 王城を占拠し、何人もの犠牲者を出したメギドよ、貴方には罰を与えなければなりません。 父上・・・・・いえ、大罪人メギドよ、貴方には・・・・・貴方には死を持って償ってもらいます!」


「何を言っているのイブレーテ、折角救われたお父様に何てことを言うの!」


「ルキ、貴女は黙っていなさい、これは王としての決断です! 王でも無い者が王城を占拠し、何人もの怪我人や死者を出したのです! 死んで行った者達の為にも、私は王として裁かなければならないのです!」


「ですがそれでは余りにも、折角救われたお父様が・・・・・」


「ルキ、良いのです、私も王であった身なのです、その苦悩は分かります。 ですが、如何か、如何か母の願いを聞いてはくれませんか? たった一度、この願いを聞いてください。 お願いいたします、王よ・・・・・」


 地面に蹲り、祈る様に震える母の姿、その姿を見て心を変えない分けがなかった。 死を持って償えなければどう裁きを行うか・・・・・


「では一つ、大罪人メギドに申し付ける。 不幸にも私はまだ一人身・・・・・貴方には私の夫になってもらいます。 そして王として復帰しなさい!」


「イブレーテ! 貴女何を言っているのか分かっているの! お父様と結婚するなんて、何を考えているの!」


「ルキ、良いのですよ、イブも私の頼みを聞いてくれてありがとう。 もう私は満足したのです、これで、皆が幸せになったわ。 ・・・・・さようならメギド、幸せになってね」


「ま、待ってくれ、イモータル!! 俺を置いて行くな!! ま、待て・・・・・」


 イモータルは空へ舞い上がる。 その子供だった者達は誰も動く事が出来ずに居た。 ただ引き止めても、王国の地で悲しみに暮れるだけだと分かっているから。 イモータルは振り返りもせず、そのまま空へと消えて行く、これ以降彼女の姿を見た者は誰もいなかった。


「父上・・・・・いえメギド、これからは私の夫として生きて行ってもらいますよ。 でもこれで許されると思わないでください、貴方の起こした罪は余りにも重いのです。 これからは人々の為に死ぬまで尽くしなさい」


「・・・・・分かっているイブレーテ、俺が生き残るのはこれしかないのだろう」


 イブレーテに抱かれてメギドは王国へと帰って行く、一人、二人と消えていき、最後まで残ったのはルーキフェートだけだった。 後をチラリと振り返り、リーゼ達の顔を見る。 そんなルーキフェートに、リーゼは声を掛けた。


「ねぇ貴女、貴女はあの男の事を愛してたんじゃないの? 今物凄く悔しいんでしょう」


「・・・・・そうかもしれませんね、でも良いのです、私の願いは届いたのですから。 ・・・・・平民の貴方達と、もう二度と会う事は無いと思いますが、次に会うまで死なない様に生きて行きなさい。 では、さようなら。(ありがとう)」


 風に乗って何かが聞こえた気がした。 最後の一人ルーキフェートがこの場を去り、残されたのはリーゼ達と棺に居る母親だけだ。


「皆さん行ってしまわれましたか・・・・・さて、今度は私の番ですね」


「待ってよマッドさん、さっきの話本当なの?! 本当にそうしなきゃならないの?」


「約束したでしょう、私が、絶対に助けてあげます、安心してください! さあ始めますよ、このマッドの一世一代の晴れ姿です、とくとご覧ください!」


 マッドが渾身の魔法を唱え始めた。 マッドの体からは、火の様なオーラが立ち上り、その熱量によりリーゼ達は近づけないで居た。 


「駄目よ! もう・・・いい・・・か・・・ら・・・  ・・・もういい・・・から  ・・・・・マッドさんが居なくなったら、幸せになんてなれないもの・・・・・」


「一体何の話なんだい? 姉さんを生き返らせて終わりだろ? それともまだ何かあるのかい?」


「・・・・・その魔法を使ったら、マッドさんが死ぬわ。 お父さん助けて、私は如何したら良いの? 私はマッドさんに死んで欲しくない。 で、でも・・・・・」


「リーゼ、良く聞くんだ。 父と呼ぶのなら親としてお前に言わなきゃならない。 お前は仲間を犠牲にしても母親を助けたいのか? お前はそう思っていないだろ、死んだ人間が生き返るなんて事は有りはしないんだ。 今居る仲間と、もう”昔に死んでしまった母親と”何方を選ぶかなんて分かり切っているだろう。 ・・・・・もう時間が無さそうだ、今お前が止めなければマッドが死ぬぞ。 行けリーゼ、お前の手で止めて来い!」


 マッドの体が赤く変わって行く、血管が浮き上がり苦しそうだ。 それを見たリーゼは走り出した。 共に旅をした仲間を失わない為に。


「止ぉまぁれええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」


 燃える様な熱量の中に飛び込んで、魔法を止める為に、マッドの顔面を殴り飛ばした。 


「ぐほあああああああああああ!」


 リーゼに殴り飛ばされ、赤色に揺らめいていたオーラが消え始める。 マッドの体も赤から元の色へと戻り始めている。


「な、何をするんですかリーゼさん! 折角生き返ると言うんですよ、もう二度とチャンスは無いんですよ!」


「良いの、もう良いのよ・・・・・五人で生きて来れただけで十分だもの。 お母さんの事は・・・・・泣いて諦めるわ。 マッドさん、私の為に命を賭けてくれてありがとう」


 リーゼがマッドに抱き付き涙を流す、母親の死を乗り越える為に。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ベトムの村。 リーゼが生まれた村、五人は母親の棺を墓に埋葬し、祈りを捧げている。 全てを終えたリーゼは自分の家へと戻った。


「さてと、じゃあ俺は旅を続ける事にしたよ。 どうやらマッドに負けちゃったみたいだしね」


「ち、違うわよ! 私はマッドさんなんて別に・・・・・」


「そ、そうですよ、私達は別に・・・・・」


「隠さなくっても良いんじゃないかい? そんな恰好で言われても説得力ないよ。」


 リーゼの手はマッドと繋がれている。 見るだけで分かってしまうのは、むしろキッパリと諦められて良いのかもしれない。


「此処に残っても良いんだぞ?」


「あはは、止めとくよ、邪魔になるだろ、どっちともさ。 まあその代わりキーちゃんは貰って行くよ、あの子と居れば大抵は生き残れるからね。 まあ仲良くやってくれよ、俺の分までさ。 その内遊びに来るから、じゃあ元気でね」






 キーの馬車に乗り込み、ラフィールが旅立って行く。 愛用の剣と鎧をクローゼットにしまい込み、思い出と共にその扉を閉めた。




・・・


・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「どうですか! 生まれましたか! どうなんです、リーゼ!」


「ええ、生まれたわよ。 ほら、可愛い男の子でしょ。 これで私も母親かぁ、しっかり働いてよね、お父さん」


「ま、任せてください! リーゼとこの子の為に、しっかり働きますからね! うおおおおおおおおおおお、行きますよおおおおおおおおおおおおおお!」






 四年後、赤い髪の赤子が生まれた、その子が勇者の力があるかどうかは、まだ分からない。




                THE  END?














































               蠢く闇の正体、巡る世界。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 何処かの学校。           


 キーンコーンカーンコーン・・・・・


 パタン


「ふう、この歴史のお話はこれで終わりです、後は皆さんで自習してくださいね。 じゃあ明日からは次は時代に移りますよ。 ・・・・・さて、次の授業は、悪魔の殺し方について勉強しましょうね。 はい、じゃあページを開いて・・・・・・・・・じゃあ皆さん、気を付けて帰るんですよ。 くれぐれも悪魔を見つけたら殺しておいてくださいね」


「はーい、先生さよならー」「さよならー」「またねー」「また明日ねー」


 学校から出て行く子供達。


「今日はどうしようか?」


「う~ん、そうだなぁ、ただ悪魔を殺すのも飽きてきたし、拷問して虐めちゃおうか」


「「「それいいねー」」」






 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・・・・・・・プツン・・・・・・・・・・……………………………………・………………………………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



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