一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

27 帰りの道

 ジュリアンの屋敷。 屋敷へと届いた連絡を受け、ジュリアンは動揺していた。


「あの父上が負けた、だと・・・・・相当な力を手に入れたと思っていたのに!! これでも足りないとなれば、もっと研究を積み重ねなければならないという事か!! ・・・・・ならばとことんまでやってやる、この俺が王となる為にな!!」


 コンコンコンコンっと扉を叩く音がする。 この屋敷にいる人間は限られる、この屋敷の主は居なくなり、ジュリアンの母親は体調を崩し寝込んでしまっている。 残っているのはメイドがただ一人。


「ジュリアン様、お茶をお持ちしました。」


「入れ。」


 ランセフォーゼがジュリアンの机にお茶を置くと、そのまま立ち去ろうと歩み始める。 ジュリアンはその腕を掴み引き止め、体を引き寄せて強引に唇を奪った。 その数秒後、ランセフォーゼの意識は闇に飲まれて行った。


「材料は幾らでもある、しかしまた人を雇わなくてはな。 ふふふ、さあ、実験を開始しよう。」


 暗い研究をしている、物凄く明るい研究室。 その部屋は昼の様に照らされ、寝台にランセフォーゼが寝かされていた。 その意識が戻らぬままに、彼女の体は何人もの研究者に弄り回され、その姿は徐々に人であった事すら分からぬ程の化け物となって行った。


 彼女の意識が戻ったのは三日後。 目を開けた時に見た景色は、ジュリアンの屋敷でもなく、実験室の寝台でもなかった。 ブリガンテの町も、国境の砦も見えない、誰も通らない様な大地に捨てられていた。


「ごごは?」


 自分の発した声に驚くと、ふと自分の手を見つめる。 見つめたそれが自分の手だとは思えなかった。 余りの恐怖に震え出し、その手で自分の顔を触ってみた。 それは何時も触っていた自分の肌の感触ではない、砂に塗れているとはいれ、暖かさが微塵も感じられない。 耳も、鼻も、それに頭には髪の代わりに、何か大きな物が生えていた。


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 誰かに助けを求める為に、何処に行くかも分からず、ただ歩き始めた・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ブリガンテの町の宿、アツシ達は戻って来ていた。 あの砦から戻り数日、交代要員も到着し、俺達は帰りの準備を進めている。


「忘れ物は無いよな?」


 忘れて行っても大した物は無いが、一応確認すると、俺は帰りの馬車へと乗り込んだ。 乗り心地は凄く狭い。 今四人乗りの馬車に六人が詰め込まれている感じだ。 一応馬は、その分二頭になっているが、途中で人数が増えたから乗って来た馬車が狭くなったのだ、馬だけ増やすんじゃなく、どうせならこっちも変えてほしかった。


「忘れ物はないだろうな? もう取りには戻れないぜ? じゃあ良いな、行くぞ。」


 俺達はそれに返事をすると馬車が動き出した。 運転するのはクロッケルで、俺は椅子と椅子の間にある脚を置く為のスペースに座らされている。 そんな俺を見かね、ストリーが提案をして来た。


「アツシ、狭いし私の上に座っても良いんだぞ?」


「それなら俺が下になるよ、俺の方が重いし、無理させたくないからな。」


「そうか、ならそうさせてもらおう。」


 俺は交代で座席に座ると、ストリーが俺の太腿に乗って来た。 その位の事じゃ別に何とも思わないんだが、馬車が揺れる度にストリーのお尻が揺れ、俺の股間が刺激されていく。 そんな俺の事を感じているストリーは、小さな声で話しかけて来た。


「お、おいアツシ、別に嫌って訳じゃないんだが、その、ちょっと今は駄目じゃないのか?」


「し、仕方ないだろ、馬車の揺れで刺激されちゃったんだから。 ちょっと我慢してくれよ。 俺もまさかこうなるとは思ってなかったし・・・・・」


「分かった、じゃあ私は下で座っておくから、お前は収まるまでそこで待ってろ。」


「それは不味い、ストリーが居なくなったら俺の物体が大きく成ってる事がバレるじゃないか。 そうだストリー、こっちを向いて座ってくれないか? そうすれば刺激が少なくなると思うんだ。」


「う、ちょっと恥ずかしいが・・・・・分かった、それで収まるのならそうしよう。」


 ストリーは体勢を変え俺の方に向き直ると、足を広げて俺の太腿に乗って来る。 俺は落ちない様に、ストリーの腰に手を添える。 この体勢なら俺の股間には刺激はいかない。 しかし、肩に手を置かれ、馬車で揺らされてるそれはもう、ストリーの顔も赤く、何だか凄く、物凄くエロい!! なんかそういう事をしている気分になってくる。 これで収まれなんて無理な話だ。 


 だが俺達を見ている女三人は、それをチャンスと見て動き始めた。 イバスの腰の上を狙い始めた。 まずレーレが俺と同じ所に座っているイバスを誘う。


「イバス様、そんな場所ではお疲れでしょう、どうぞこの私の椅子にお座りください。 遠慮しなくて良いのですよ。 さあ!!」


「じゃあレーレは下で良いわね。 ねぇイバス、私の隣に座ったらどう? 折角レーレが下に行ってくれるって言ってるし。」


「私はそんな事を言ってるのではありません!! 私はイバス様の上に乗りたいだけなのですから!!」


「あら~レーレちゃん、良く私の前で言ったわね? そこは私の席だから貴女は足踏みにでもなっていなさい。 さあイバスさん、下が嫌だというのなら私の上に来てくださいな。」


「待ってお姉ちゃん、だったら私の場所を譲ってあげるわ。 私ならちょっと背中を預ける脚を貸してくれればいいのよ?」


「いや、僕は此処でいいですから・・・・・」


「「「遠慮しなくて(良いですよ!!)(良いのよ!!)(良いのですよ!!)」」」


五月蠅うるさい、少し黙れ!!」


 そんな三人を一瞬で黙らせるストリーなのだが、今回は少し違った。


「じ、自分だけ良い思いをしておいて私達に当たらないでください!!」


「そ、そうよ!! 何時までも私達が言いなりになってると思ったら大間違いだからね!!」


「まずはそこから降りたらどうなんですか!!」


「ほう、私に挑むか。 では何時でも掛かってくるがいい。」






 そんな三人の言葉にストリーが応じた。 俺の膝から降りると、拳を握って三人へと挑んで行く。 ここが狭い馬車の中だと忘れてるんだろうか。 こんな中で四人が暴れるから、俺とイバスまでもが巻き込まれる。 まあ兎に角そんな感じで馬車は進み続けた。



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