一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
12 王道を行く者達70
ギャアギャアと騒がしい森の中、ここはバール森林と言う。 リーゼ達はこの森の中を馬車で疾走していた。 馬車を引くキーが全力で走っているが、何時息切れするのかも分からない。
「マッドさん変な所で止まらないでよ? こんな所で止まったら休むにも休めないわよ。」
「ええ、大丈夫です、任せてくださいよ。 あと十分は平気です!!」
「・・・・・もう一度聞くけど、どれぐらいですって?」
「あと九分ぐらいですよ。 戦い過ぎて耳でも悪くなりましたか? あれだけ全力で走れば、キーちゃんだって疲れますからね。」
見る限り森が途切れる気配は無い、キーが止まる前に、やるべきことをやらなければならない。
「マッドさん、止まるのが分かるのなら、次からもう少し前に言ってくれないかしら。 いきなり止まられると困るのよ。」
「はい!! 次からは気を付けます!!」
「此処でやられたら次なんて無いんだけどね・・・・・じゃあ皆、キーちゃんが止まる前に、戦いの準備をするわよ。 私は馬車の周りに幾つか焚火を作るわ、流石に火の中には突っ込んで来ないでしょう。 後は馬車の周りを囲んで護りましょう。」
「速いのは良いが、自分で止まる場所を決められないのなら、普通の馬車の方が良かったかもな。」
「ハガンさん、キーちゃんだって頑張ってるんです!! これまで敵を振り切ってくれたのもキーちゃんのおかげでしょう、キーちゃんに謝ってください!!」
「確かにそうだ、悪かったなキー。」
「ふふふ、分かれば良いのですよ!!」
「マッドさんは馬車の中で待機よ、焚火の火が燃え移らない様に、水の球を作っといてね。」
「お任せくださいリーゼさん、見事やり遂げてみせましょう!!」
時間が来て、本当にキーが止まると、リーゼ達は急いで戦いの用意をしていく。
「こんな所で何時間も止まっていられないからね、三十分居られるかどうかも分からないわよ。」
「マッド、危険になったら多少無理をしてでも出発させろよ、最悪は此処で永久に眠る事になるぞ。」
「はい、私も死にたくないですからね。」
静寂が続き十分敵の気配は無い。 更に五分がしてガサリと茂みが鳴り、何かが居る気配がしている。
「何かいるみたいだよ、皆注意してくれ。」
「一匹とは限らないからね、配置を動かないでよ?」
ラフィールの忠告を聞くも、リーゼ達は配置を動く事なく、自分の見える範囲を護り続ける。 敵が集団だった場合、其方へと向かった瞬間後から、そんな事だってあり得るからだった。
少しずつ時が経過し、ガサッと草木が鳴る。 何かが居る気配はするが、一向に襲って来る気配は無い。 だがその気配は、一つ二つと増えていき、十を超えた頃に、敵の攻撃が始まった。 茂みから一斉に跳び出し、四方から一斉に飛び掛かられた。
出て来ているのは犬の様な白い獣だった、赤い瞳をぎらつかせ、馬車の周りを十匹以上に囲まれている。
六つもの焚火が燃えている為、ある程度は来る方向を予測できる。 襲い掛かる犬達を斬り伏せ、馬車を護る。 しかし時間が経つ度に敵の数は増え、リーゼ達は不利になっていった。
「これ以上は無理だ、マッド、馬車を出発させろ!! 急げ、全員乗り込め!!」
「ちょっと多過ぎだね、さあ逃げるよ!!」
「乗ったわ、ラフィール、早く!!」
「危なッ!!」
ラフィールは二匹の敵の攻撃を食らうが、防壁により護られれた。
「乗ったよ、さあ出してくれ!!」
「頑張ってくださいキーちゃん!! 出発しますよ!!」
馬車が動き出すが、敵の足は速く、すぐ後ろから追って来ている。
「マッド、もっと飛ばさないと追いつかれるよ!! またこんな所で止められたら如何にもならないからねぇ!!」
「分かっていますよ!! ですがこれ以上の速度は無理です、何とか撃退してください!!」
白い犬の魔物はキーの速度と同等ぐらいで、追いつかれる事はないが、先にキーの体力が尽きれば一瞬で囲まれてしまうだろう。
「後から迎撃するわ、ラフィール、魔法をお願い!!」
「応!! 風よッ標的を吹き飛ばせッ!」
風の魔法が、敵の中心にぶつかると、暴風が白い犬達の大半を吹き飛ばす。 だが犬達は上空で体制を立て直し、地面にスタっと着地する。 少しだけ距離を開け、何事も無かった様に追って来ている。
「駄目か、こんな森の中であんまり使いたくないけど、魔法を使うしかないわね。」
「待ちなよ、魔法は限界があるんだろ? もしもの時の為に取っときなって。 こいつを使ってみなよ、リーゼちゃんでも使えると思うよ。」
「これは弓、じゃないわね、何これ?」
「クロスボウって奴さ、結構高かったから一つしか買えなかったけどね、矢を先端にセットして、尻にあるレバーを回してみなよ、限界まで弦が引かれたらカチって音がするからさ、後は狙いを定めて撃つだけさ。」
「分かった、やってみるわ。」
リーゼは、言われた通りにレバーを回すと、キリキリと弦が引かれていく。 限界まで弦が引かれ、敵の額を狙いトリガーを引き絞った。 鋭い風切り音と共に、矢が真っ直ぐに飛んで行った。 ガッ、と一匹に付き刺さり倒れるが、敵の数はまだ多い。
「うん、使えるわ、ラフィール、変わりの矢を頂戴。」
「おう、矢は沢山あるからドンドン射ってくれ。」
リサは弓を使い犬達を射っていく。 ガタガタと揺れる馬車では狙いが定まらないが、大量に居る為に当てるのは容易だった。 倒すには至らなくても、傷を負ったものは速度を落とし、馬車との距離を広げて行った。
「四、五、・・・・・八匹。 残り八匹だね。 後少し、さあ矢を寄越しなよ。」
「くッ、数が少なくなって中々当たらないわね。 もう矢が少ないわ、ラフィール、代わりを早く!!」
「直ぐ持ってくる!!」
「ひぃ、前からも来てますよ!! 如何するんですこれ!!」
「マッドはこのまま突っ込め、ラフィール、手を貸してくれ!!」
「行きますよ~、キーちゃん!!」
「分かった・・・・・風よッ標的を吹き飛ばせッ!」
風の魔法は、迫る敵の群れを上空に吹き飛ばし、その下を馬車が通過して行く。 ハガンは馬車の上に登り、追って来た犬の魔物へと、飛ばされた魔物二匹を蹴り飛ばした。 不意に現れた巨大な玉(魔物)を避けきれず、魔物同士がぶつかり倒れた。 リーゼ達の射撃により数は減り、残りは四匹。
「このまま此処で弓を使ってても良いけど、そろそろ矢が勿体ないね。 残りは四匹だし、一気にやっちまおうじゃないか。」
「そうね、他のが来る前に倒しちゃいましょうか。 マッドさん馬車を止めて、接近して殲滅するわ!」
「分かりました、キーちゃんには寄らせないでくださいね!!」
馬車のスピードが緩み、馬車の後ろから飛び込んでくる一匹を、飛び出しながらリーゼが一閃!! 馬車から飛び降り、着地したリーゼを狙い、敵三匹が襲い掛かる。 リサの弓が一匹を撃退し、ラフィールの盾がリーゼを護る。 リーゼの上からハガンが蹴りを放ち、敵の頭蓋をくだくと、盾にぶつかった最後の一匹にリーゼが止めを刺した。
「こんな所で止まってる訳にはいかない、他の魔物が出る前に出発するぞ!!」
敵を倒し、直ぐに馬車に乗り込むと、マッドが出発の合図を掛ける。
「皆さん乗りましたね、さあ行きますよ!!」
再び馬車が森の出口へと向かい走り出した。
「マッドさん変な所で止まらないでよ? こんな所で止まったら休むにも休めないわよ。」
「ええ、大丈夫です、任せてくださいよ。 あと十分は平気です!!」
「・・・・・もう一度聞くけど、どれぐらいですって?」
「あと九分ぐらいですよ。 戦い過ぎて耳でも悪くなりましたか? あれだけ全力で走れば、キーちゃんだって疲れますからね。」
見る限り森が途切れる気配は無い、キーが止まる前に、やるべきことをやらなければならない。
「マッドさん、止まるのが分かるのなら、次からもう少し前に言ってくれないかしら。 いきなり止まられると困るのよ。」
「はい!! 次からは気を付けます!!」
「此処でやられたら次なんて無いんだけどね・・・・・じゃあ皆、キーちゃんが止まる前に、戦いの準備をするわよ。 私は馬車の周りに幾つか焚火を作るわ、流石に火の中には突っ込んで来ないでしょう。 後は馬車の周りを囲んで護りましょう。」
「速いのは良いが、自分で止まる場所を決められないのなら、普通の馬車の方が良かったかもな。」
「ハガンさん、キーちゃんだって頑張ってるんです!! これまで敵を振り切ってくれたのもキーちゃんのおかげでしょう、キーちゃんに謝ってください!!」
「確かにそうだ、悪かったなキー。」
「ふふふ、分かれば良いのですよ!!」
「マッドさんは馬車の中で待機よ、焚火の火が燃え移らない様に、水の球を作っといてね。」
「お任せくださいリーゼさん、見事やり遂げてみせましょう!!」
時間が来て、本当にキーが止まると、リーゼ達は急いで戦いの用意をしていく。
「こんな所で何時間も止まっていられないからね、三十分居られるかどうかも分からないわよ。」
「マッド、危険になったら多少無理をしてでも出発させろよ、最悪は此処で永久に眠る事になるぞ。」
「はい、私も死にたくないですからね。」
静寂が続き十分敵の気配は無い。 更に五分がしてガサリと茂みが鳴り、何かが居る気配がしている。
「何かいるみたいだよ、皆注意してくれ。」
「一匹とは限らないからね、配置を動かないでよ?」
ラフィールの忠告を聞くも、リーゼ達は配置を動く事なく、自分の見える範囲を護り続ける。 敵が集団だった場合、其方へと向かった瞬間後から、そんな事だってあり得るからだった。
少しずつ時が経過し、ガサッと草木が鳴る。 何かが居る気配はするが、一向に襲って来る気配は無い。 だがその気配は、一つ二つと増えていき、十を超えた頃に、敵の攻撃が始まった。 茂みから一斉に跳び出し、四方から一斉に飛び掛かられた。
出て来ているのは犬の様な白い獣だった、赤い瞳をぎらつかせ、馬車の周りを十匹以上に囲まれている。
六つもの焚火が燃えている為、ある程度は来る方向を予測できる。 襲い掛かる犬達を斬り伏せ、馬車を護る。 しかし時間が経つ度に敵の数は増え、リーゼ達は不利になっていった。
「これ以上は無理だ、マッド、馬車を出発させろ!! 急げ、全員乗り込め!!」
「ちょっと多過ぎだね、さあ逃げるよ!!」
「乗ったわ、ラフィール、早く!!」
「危なッ!!」
ラフィールは二匹の敵の攻撃を食らうが、防壁により護られれた。
「乗ったよ、さあ出してくれ!!」
「頑張ってくださいキーちゃん!! 出発しますよ!!」
馬車が動き出すが、敵の足は速く、すぐ後ろから追って来ている。
「マッド、もっと飛ばさないと追いつかれるよ!! またこんな所で止められたら如何にもならないからねぇ!!」
「分かっていますよ!! ですがこれ以上の速度は無理です、何とか撃退してください!!」
白い犬の魔物はキーの速度と同等ぐらいで、追いつかれる事はないが、先にキーの体力が尽きれば一瞬で囲まれてしまうだろう。
「後から迎撃するわ、ラフィール、魔法をお願い!!」
「応!! 風よッ標的を吹き飛ばせッ!」
風の魔法が、敵の中心にぶつかると、暴風が白い犬達の大半を吹き飛ばす。 だが犬達は上空で体制を立て直し、地面にスタっと着地する。 少しだけ距離を開け、何事も無かった様に追って来ている。
「駄目か、こんな森の中であんまり使いたくないけど、魔法を使うしかないわね。」
「待ちなよ、魔法は限界があるんだろ? もしもの時の為に取っときなって。 こいつを使ってみなよ、リーゼちゃんでも使えると思うよ。」
「これは弓、じゃないわね、何これ?」
「クロスボウって奴さ、結構高かったから一つしか買えなかったけどね、矢を先端にセットして、尻にあるレバーを回してみなよ、限界まで弦が引かれたらカチって音がするからさ、後は狙いを定めて撃つだけさ。」
「分かった、やってみるわ。」
リーゼは、言われた通りにレバーを回すと、キリキリと弦が引かれていく。 限界まで弦が引かれ、敵の額を狙いトリガーを引き絞った。 鋭い風切り音と共に、矢が真っ直ぐに飛んで行った。 ガッ、と一匹に付き刺さり倒れるが、敵の数はまだ多い。
「うん、使えるわ、ラフィール、変わりの矢を頂戴。」
「おう、矢は沢山あるからドンドン射ってくれ。」
リサは弓を使い犬達を射っていく。 ガタガタと揺れる馬車では狙いが定まらないが、大量に居る為に当てるのは容易だった。 倒すには至らなくても、傷を負ったものは速度を落とし、馬車との距離を広げて行った。
「四、五、・・・・・八匹。 残り八匹だね。 後少し、さあ矢を寄越しなよ。」
「くッ、数が少なくなって中々当たらないわね。 もう矢が少ないわ、ラフィール、代わりを早く!!」
「直ぐ持ってくる!!」
「ひぃ、前からも来てますよ!! 如何するんですこれ!!」
「マッドはこのまま突っ込め、ラフィール、手を貸してくれ!!」
「行きますよ~、キーちゃん!!」
「分かった・・・・・風よッ標的を吹き飛ばせッ!」
風の魔法は、迫る敵の群れを上空に吹き飛ばし、その下を馬車が通過して行く。 ハガンは馬車の上に登り、追って来た犬の魔物へと、飛ばされた魔物二匹を蹴り飛ばした。 不意に現れた巨大な玉(魔物)を避けきれず、魔物同士がぶつかり倒れた。 リーゼ達の射撃により数は減り、残りは四匹。
「このまま此処で弓を使ってても良いけど、そろそろ矢が勿体ないね。 残りは四匹だし、一気にやっちまおうじゃないか。」
「そうね、他のが来る前に倒しちゃいましょうか。 マッドさん馬車を止めて、接近して殲滅するわ!」
「分かりました、キーちゃんには寄らせないでくださいね!!」
馬車のスピードが緩み、馬車の後ろから飛び込んでくる一匹を、飛び出しながらリーゼが一閃!! 馬車から飛び降り、着地したリーゼを狙い、敵三匹が襲い掛かる。 リサの弓が一匹を撃退し、ラフィールの盾がリーゼを護る。 リーゼの上からハガンが蹴りを放ち、敵の頭蓋をくだくと、盾にぶつかった最後の一匹にリーゼが止めを刺した。
「こんな所で止まってる訳にはいかない、他の魔物が出る前に出発するぞ!!」
敵を倒し、直ぐに馬車に乗り込むと、マッドが出発の合図を掛ける。
「皆さん乗りましたね、さあ行きますよ!!」
再び馬車が森の出口へと向かい走り出した。
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