一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
20 王道を行く者達53
「それじゃあアイウスに会って来ようかしら。ラフィールは戻ってて良いわよ」
「お、俺も行くよ。リーゼちゃん一人じゃ危ないだろ! ほら、もしかしたら魔物とか出るかもしれないし!」
「別に何も起こらないと思うけどね。まあいいわ、来たいなら来て良いわよ。彼も気にしないと思うし」
「ははは……彼、ね…………」
リーゼの向かったその家は、特に変わった所のない、何処にでもある様な普通の家だった。
リーゼはその家の扉を叩き、中からアイウスが現れる。
カッコいいという訳でもなく、ブサイクというわけでもない。
茶色の髪をしたアイウスという男は、何処にでも良そうな普通の男だった。
「あれ、リーゼだ、帰って来たんだね。もう旅は良いのかい? 話も聞きたいし、ちょっとお茶でも飲んで行きなよ」
「ええいいわよ。でも少しだけね。仲間を待たせているし、此処にはちょっと寄っただけだからね」
「それじゃあ入って……あれ、その人は誰?」
「ああ、ラフィールね。私と一緒に旅をしているの、何か貴方の事が気になったんですって」
「え、僕を? そっかー、そういう人もいるよね。ラフィールさん? 結構格好良いし、僕、この人でやろうと思うんだ。リーゼは此処でお茶でも飲んでてよ」
「ラフィールったら気に入られたみたいね。私は此処で待っているから、行って来たら?」
「そうだね、ちょっと話をしたいし、ちょっと行って来るよ。長くなるようなら、先に戻ってて良いからね」
「ええ、そうするわ」
アイウスに連れられ、奥の部屋へと連れて行かれるラフィール。
部屋の奥から二人の声が聞こえて来る。
「お、おい、何で体を触るんだ。や、止めろ、服を脱がせるな! ちょっと待ってくれ、お、おい!」
「大丈夫、ちょっと絵を描くだけだから。ちょっと、裸の絵を描くだけだから! 最近描きたいものがなかったんだよね。まさかリーゼが持ってきてくれるとは思わなかったよ!」
「ちょっと落ち着こう。お、俺はそういう事をやるつもりはないから」
「大丈夫だよ、綺麗に描くから。綺麗に描くから!」
「リーゼちゃん助けてえええええ!」
ラフィールの悲鳴を特に気にせず、リーゼはゆっくりとお茶を飲み干す。
「あ、このお茶美味しいわ。ちょっと買ってみようかしら」
「アイウスがあの状態になったら時間掛かりそうだわね。ラフィール、私先に帰ってるから、ゆっくりしておくと良いわよ。じゃあ頑張ってね」
「置いて行かないでくれえええええ!」
リーゼが家に戻ると、皆が腹を空かせて待ちわびていた様だ。
何を買って来たかと、家の入り口に集まり、食材を物色している。
「ただいま、夕飯は直ぐ作るわ。皆はもうちょっと待っててね」
「お帰り、リーゼ、ラフィールの奴は如何したんだ? 道にでも迷ったのか?」
「友達の所に行ってきたんだけど、何か気に入られたみたいで、絵のモデルにされているわ。彼が描き終わったら帰ってくるでしょ」
「ああ、彼奴か。俺も何度か描かれた事があるが…………彼奴はしつこいからな。まあ心配する事もないだろう」
「何ですかその人、私ちょっと興味がありますよ。私の雄姿も描いて貰えないでしょうかね?」
「さあ如何かしら? 彼は描きたいものしか描かないから。でもマッドさんと気が合いそうだわね。もしかしたら頼めば描いて貰えるかもね」
「それなら是非紹介して欲しいです! さあ早く行きましょう。もう料理なんて後で良いですから!」
「じゃあマッドさんはご飯抜きね。料理を作り終えたら連れてってあげるわね」
「えっ!! ちょっと待ってください、それだとご飯を抜かれる意味が…………」
「何? 朝食も抜きでいいのね?」
「いえ、やっぱり行きません! ご飯優先でお願いします!」
「リーゼちゃん、私も手伝うよ、これでも少しぐらいなら料理出来るんだよ」
「それじゃあお願いします。この鶏をさばいてくださいね」
リーゼ達は、ローストチキン、ポテトサラダ、シチュー、にパン等を作り、皆で美味しく食べた。
ラフィールはまだ戻って来ていないが、絵のモデルは直ぐに終わるものではない。
もしかしたら今日は戻って来ないだろう。
「結局戻って来なかったわね。あの人モデルを絶対逃がさないから、ラフィールは今頃空腹で泣いてるかも」
「絵が描き終われば、食事ぐらい食わせてくれるさ。彼奴は変な奴だが、そう悪い奴じゃないからな。まあ明日になれば戻って来れるだろうさ」
「サタニアも追って来る気配がないし、少しぐらいならゆっくりしても良いかもね。追って来ると思っていたんだけど、この花は必要無かったのかしらね? もしかしたら必要だったのは根の方だったり?」
リーゼの手にある花の蕾は、時が止まった様にその姿を留め、未だに枯れる気配はなかった。
「リーゼさん、それ花瓶にでも入れておけば咲くんじゃないでしょうか? ちょっと咲いた所を見てみたいですね」
「う~ん、花瓶ならあると思うけど、咲くのかしらこれ? …………まあ良いか、彼奴が追って来ないなら、持ってても仕方がないし。え~っと花瓶、何処にあったかしら…………物置かな?」
物置から花瓶を探し出し、水を入れて、その花を生けた。
リーゼ達は食事をとり、夜が更けると眠りに付く。
朝、ラフィールがクタクタになりながら戻って来ている。
そこにもう一人の客が現れた。
この近くに住むクロッカスという人物だ。
その人物は、ハガンに頼み事があるらしいと、リーゼがハガンを呼ぶと、その二人が話し始めた。
「お久しぶりですクロッカスさん、今日は如何かされましたか? 何かご用でしょうか?」
「戻って来られて、そうそうに悪いのですが、この村の近くに魔物の群れが確認されまして、ハガンさんのお力を、また貸しては貰えないでしょうか? 余り強いものではないらしいのですが、戦える者が居なくて困っていたのです。如何にかお力をお貸頂きたいのです」
「なる程、魔物ですか。分かりました、私もこの村に居を構える一人ですからね、その頼み、お引き受けいたしましょう」
「私も行くわよ、自宅が襲われたらたまらないからね! 皆で行きましょう、手が多い方がいいんでしょ?」
「…………そうだな、帰る家が無くなったら困るしな。リーゼ、他の奴を起こして来い。直ぐに出発するぞ!」
「ええ、ラフィールは辛いかもしれないけれど、まあ頑張って貰いましょうか」
グッタリと眠り続けるラフィールを叩き起こし、五人は村の入り口へと向かう。
そこに居たのは、村の大人の戦える者達で、全員がリーゼの知り合いだった。
「お、俺も行くよ。リーゼちゃん一人じゃ危ないだろ! ほら、もしかしたら魔物とか出るかもしれないし!」
「別に何も起こらないと思うけどね。まあいいわ、来たいなら来て良いわよ。彼も気にしないと思うし」
「ははは……彼、ね…………」
リーゼの向かったその家は、特に変わった所のない、何処にでもある様な普通の家だった。
リーゼはその家の扉を叩き、中からアイウスが現れる。
カッコいいという訳でもなく、ブサイクというわけでもない。
茶色の髪をしたアイウスという男は、何処にでも良そうな普通の男だった。
「あれ、リーゼだ、帰って来たんだね。もう旅は良いのかい? 話も聞きたいし、ちょっとお茶でも飲んで行きなよ」
「ええいいわよ。でも少しだけね。仲間を待たせているし、此処にはちょっと寄っただけだからね」
「それじゃあ入って……あれ、その人は誰?」
「ああ、ラフィールね。私と一緒に旅をしているの、何か貴方の事が気になったんですって」
「え、僕を? そっかー、そういう人もいるよね。ラフィールさん? 結構格好良いし、僕、この人でやろうと思うんだ。リーゼは此処でお茶でも飲んでてよ」
「ラフィールったら気に入られたみたいね。私は此処で待っているから、行って来たら?」
「そうだね、ちょっと話をしたいし、ちょっと行って来るよ。長くなるようなら、先に戻ってて良いからね」
「ええ、そうするわ」
アイウスに連れられ、奥の部屋へと連れて行かれるラフィール。
部屋の奥から二人の声が聞こえて来る。
「お、おい、何で体を触るんだ。や、止めろ、服を脱がせるな! ちょっと待ってくれ、お、おい!」
「大丈夫、ちょっと絵を描くだけだから。ちょっと、裸の絵を描くだけだから! 最近描きたいものがなかったんだよね。まさかリーゼが持ってきてくれるとは思わなかったよ!」
「ちょっと落ち着こう。お、俺はそういう事をやるつもりはないから」
「大丈夫だよ、綺麗に描くから。綺麗に描くから!」
「リーゼちゃん助けてえええええ!」
ラフィールの悲鳴を特に気にせず、リーゼはゆっくりとお茶を飲み干す。
「あ、このお茶美味しいわ。ちょっと買ってみようかしら」
「アイウスがあの状態になったら時間掛かりそうだわね。ラフィール、私先に帰ってるから、ゆっくりしておくと良いわよ。じゃあ頑張ってね」
「置いて行かないでくれえええええ!」
リーゼが家に戻ると、皆が腹を空かせて待ちわびていた様だ。
何を買って来たかと、家の入り口に集まり、食材を物色している。
「ただいま、夕飯は直ぐ作るわ。皆はもうちょっと待っててね」
「お帰り、リーゼ、ラフィールの奴は如何したんだ? 道にでも迷ったのか?」
「友達の所に行ってきたんだけど、何か気に入られたみたいで、絵のモデルにされているわ。彼が描き終わったら帰ってくるでしょ」
「ああ、彼奴か。俺も何度か描かれた事があるが…………彼奴はしつこいからな。まあ心配する事もないだろう」
「何ですかその人、私ちょっと興味がありますよ。私の雄姿も描いて貰えないでしょうかね?」
「さあ如何かしら? 彼は描きたいものしか描かないから。でもマッドさんと気が合いそうだわね。もしかしたら頼めば描いて貰えるかもね」
「それなら是非紹介して欲しいです! さあ早く行きましょう。もう料理なんて後で良いですから!」
「じゃあマッドさんはご飯抜きね。料理を作り終えたら連れてってあげるわね」
「えっ!! ちょっと待ってください、それだとご飯を抜かれる意味が…………」
「何? 朝食も抜きでいいのね?」
「いえ、やっぱり行きません! ご飯優先でお願いします!」
「リーゼちゃん、私も手伝うよ、これでも少しぐらいなら料理出来るんだよ」
「それじゃあお願いします。この鶏をさばいてくださいね」
リーゼ達は、ローストチキン、ポテトサラダ、シチュー、にパン等を作り、皆で美味しく食べた。
ラフィールはまだ戻って来ていないが、絵のモデルは直ぐに終わるものではない。
もしかしたら今日は戻って来ないだろう。
「結局戻って来なかったわね。あの人モデルを絶対逃がさないから、ラフィールは今頃空腹で泣いてるかも」
「絵が描き終われば、食事ぐらい食わせてくれるさ。彼奴は変な奴だが、そう悪い奴じゃないからな。まあ明日になれば戻って来れるだろうさ」
「サタニアも追って来る気配がないし、少しぐらいならゆっくりしても良いかもね。追って来ると思っていたんだけど、この花は必要無かったのかしらね? もしかしたら必要だったのは根の方だったり?」
リーゼの手にある花の蕾は、時が止まった様にその姿を留め、未だに枯れる気配はなかった。
「リーゼさん、それ花瓶にでも入れておけば咲くんじゃないでしょうか? ちょっと咲いた所を見てみたいですね」
「う~ん、花瓶ならあると思うけど、咲くのかしらこれ? …………まあ良いか、彼奴が追って来ないなら、持ってても仕方がないし。え~っと花瓶、何処にあったかしら…………物置かな?」
物置から花瓶を探し出し、水を入れて、その花を生けた。
リーゼ達は食事をとり、夜が更けると眠りに付く。
朝、ラフィールがクタクタになりながら戻って来ている。
そこにもう一人の客が現れた。
この近くに住むクロッカスという人物だ。
その人物は、ハガンに頼み事があるらしいと、リーゼがハガンを呼ぶと、その二人が話し始めた。
「お久しぶりですクロッカスさん、今日は如何かされましたか? 何かご用でしょうか?」
「戻って来られて、そうそうに悪いのですが、この村の近くに魔物の群れが確認されまして、ハガンさんのお力を、また貸しては貰えないでしょうか? 余り強いものではないらしいのですが、戦える者が居なくて困っていたのです。如何にかお力をお貸頂きたいのです」
「なる程、魔物ですか。分かりました、私もこの村に居を構える一人ですからね、その頼み、お引き受けいたしましょう」
「私も行くわよ、自宅が襲われたらたまらないからね! 皆で行きましょう、手が多い方がいいんでしょ?」
「…………そうだな、帰る家が無くなったら困るしな。リーゼ、他の奴を起こして来い。直ぐに出発するぞ!」
「ええ、ラフィールは辛いかもしれないけれど、まあ頑張って貰いましょうか」
グッタリと眠り続けるラフィールを叩き起こし、五人は村の入り口へと向かう。
そこに居たのは、村の大人の戦える者達で、全員がリーゼの知り合いだった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
22803
-
-
3
-
-
11128
-
-
238
-
-
52
-
-
1
-
-
20
-
-
2813
-
-
35
コメント