一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

9 何故か任命された私

 私はニックスと別れ、女王様の元へとやって来ていた。
 この場には作戦に向けて女教師達が時を待っている。
 そして私は女王様に怒られそうになっていた。


「それでお金を盗んだと?」


「あ、はい…………いや、助けになればなぁ、とか思いまして…………」


 う、不味いかしら。
 ちょっと怒られそうな雰囲気だわね。


「も、もちろん使っていませんよ。ちゃんと報告しに来たじゃないですか。ほら、二ックスは息子ですから、遺産継承ってことでいいんじゃないでしょうか…………」


「…………もうやってしまった物は仕方ないですね。今後は二度としない様にお願いしますよ。それとニックスさんから取り立てたお金も返してあげてくださいね。あんまり酷い事をしていると、貴女も捕まえてしまいますよ」


 私の事も調べられてるわね。
 まあいいか、そんなに使う予定もないし。


「はいただの冗談で断る積もりでしたし、まさか本当に一千万も持ってくるとは思いませんですから」


「このことは後で話すとして、今は校長の方ですね。さあ皆さん、校長を捕獲して此処へ連れてきてください。さあ、行ってらっしゃい。後にはこの私が控えていますよ!」


「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 女教師達の雄叫びが上がり、一斉に跳び出して行った。


 流石に命までは取らないと思うけど、それなりに酷い目には合うんじゃないかしら。


「貴方は行かないのですか? 校長に仕返しするチャンスですよ?」


「別に私は酷い目には合ってませんから。まあ皆を焚きつけた手前、一応見守っているだけですよ。でもどうするんですか女王様。お尻触ったぐらいじゃ牢にも入れられませんよね?」


「そうですねぇ、全員に校長のお尻でも叩かせれば気も晴れるでしょう。皆さんも泣き寝入りなんてせずに、ぶん殴ってやればいいんですよ。触られたらグーで殴ってやるぐらいの気でいれば、向うもそう簡単には触って来ませんよ。さて…………連れて来るまでは暇ですからね、お茶でも飲みながら待っていましょうか」 


「もちろんご一緒させてもらいますわ。王様とお茶を飲めるなんて光栄ですもの」


 女王様と私は、ゆったりとお茶を楽しみ、少しおしゃべりをして、校長が連れて来られるのを待った。


「は、放してくれ、俺が一体何をしたというんだ! …………ま、待ってくれ、この上は女王様の住まいではないのか!」


「貴方自分がした事を覚えて無いの! 私達のお尻や胸を揉んだくせに! もう大人しくしていなさい。女王様におかしなことをしたら、貴方の命なんて一瞬で終わりなんだからね!」


「もう貴方なんて怖くないんだから、さあ、キリキリ歩きなさい!」


 お茶を飲んでいると暫くして部屋の外から声が聞こえて来た。
 それは段々と近づいて来て、この部屋の扉が開らく。


 バタンと扉は開き、入って来たのは予想通りに校長と女教師達だった。
 校長のガスペルは、体を縛り付けられ、女王様の前に跪かせた。


「へ、陛下……あの、私が何かいたしましたでしょうか? 私はそんなに悪い事をした覚えはありませんよ…………」


「ふざけないで! 私達のお尻や胸を触った癖に!! 女王様、この人死刑にしましょう! こんな人がいたら私達は仕事が出来ません、校長を解任してください!」


 グラミーって結構過激なのねぇ、今までよっぽど溜ってたんでしょうね。
 これだけ人数がいるから気が大きく成ってるのかしら?


「流石に死刑には出来ませんが、校長解任は仕方ありませんね。これだけ部下に信頼されていなければ続ける事は無理でしょう。まあそれはそれとして、罰ですが、二度としない様に貴方のお尻を叩かせていただきます。さあ皆さん、一人三発までですよ。ルールは護って思いっきりやってくださいね。大丈夫ですよ、勿論終わったら治療してあげますから」


 女教師計三十六人で一人三発、合計百八発、木の棒を持った女達はそのお尻に怒りを込め、叩き付けてて行く。
 一発、二発と続いて行き、十発を越えた辺りで、ガスペルは痛みで声を上げ始めた。


「ぎゃああああああああああ!」


「もう一発!」


「うぎゃああああああああああああああああああ!」


 全てを終えた時にはガスペルは気絶していた。 心成しかガスペルの尻から煙が上がっている気がする。 


「さて、終わりましたね。皆さんスッキリしましたか?」


「はいもちろんです。この校長も居なくなるし、私達の職場も改善されます! …………でも、次の校長は誰にするんでしょうか? また同じ様な人だと私達も困ってしまいます」


 そうか、変わりの校長を探さないといけないんだ。
 それじゃあ代表してグラミーがやればいいんじゃないのかしら?


「大丈夫です、それはもう考えてありますので。此処はやはり気の許せる相手がいいでしょうね。と言うことでお願いしますねリアさん」


「え? あの、私魔法とか得意じゃなくって…………人に教えるのとかも苦手ですから…………」


「人に教えるのが苦手なら、弟子など取らないでしょう? 皆さんが落ち着くまでやってみてはいかがですか?」


 う、後で話すってこの事だったんですね。
 女王様の頼みじゃ、断ったら酷い事になりそうだ。


「い、一年だけなら……大丈夫……です」 


 弱みを握られた私は、それを受け入れるしかなかった。
 でも…………校長って何するんだろう?
 全てが終わると私はニックスにお金を返し、そしてその次の日、私は魔法学校を訪れた。
 私は何故か、今日から校長をやることになってしまった。


 魔法学校の門の前、警備員達は私をアッサリと通し、すでに私が校長だということを知られているらしい。


「お待ちしておりましたリア校長。私はルクレチア、貴方の教育係に任命されました。どうぞよろしくお願いします」


 ルクレチアという女の人、昨日の集まりには来なかったわね。
 こんな人が居たなら忘れないと思う。
 四十前後ぐらいかしら?


 この人は髪を頭上で束ね、メガネを掛けている。
 全身紫で染められて、教育者って雰囲気を醸し出している。


 教育係なんて付ける位なら、この人が校長をやれば良いのに。  


「それでは朝の朝礼に行きますわよ。大事な最初の挨拶ですので、変なことは言わずにお願いしますよ」


「あ~、うん、適当にがんばるわ。じゃあ行きましょうか」


「子供達に適当な事を教えないでくださいね! コホン、では案内します。校長、此方にいらしてください」


「あ、はい」


 大きな建物の中にずらりと並ぶ子供達、その年齢は幅広く、ルクレチアの話だと、七歳から十五歳位までらしい。
 私は壇上に上がると、子供達に挨拶を始めた。


「ん~と、私は今日から校長になったグレモリアよ! じゃあ一年間よろしくね」






 そして私は壇上から降りた。



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