一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
10 結婚への道
壊れたロッテの剣を買い替える為べノムは武器工場へと足を運んだ。
そこにいた男、アクロスに剣の作成を頼むが、とんでもない額の最上ランクの武器を買わされる。
ロッテに告白されべノムは断ったのだが、それでも求められて二人は結婚する事になった…………
べノム・ザッパー(王国、探索班) アスタロッテ(べノムの部下)
バール (バール(王国、探索班伝令係))
あれからロッテを送り届け、少しだけ時間を貰った。
卑怯者とか何か色々言われていたが、俺にだって準備があるのだ。
結婚するには男としてそれなりの恰好を付けたいのだが。
「困った、どうにも金がねぇ……」
この国の結婚なんて殆ど口だけの事なんだが、一応恰好として指輪でも送ろうとでも思っていた。
しかし店の値段を見ると結構高い。
親父に交渉したが、剣の値段をまけて貰う事も出来ず、俺の懐には請求書しか入っていなかった。
「へ~、隊長はそれで俺の所に来たと? まあ俺はモテますからね、相談するには打って付けでしょうけど、それにしても隊長って貧乏なんですね」
俺はギリギリ頼りになりそうなバールを尋ねていた。
「うるせぇ、出費がかさんだだけだ。少し前には指輪ぐらい買える金はあったんだよ!」
この態度からみるに、バールに相談したのは間違いだったかもしれない。
「まああれですよ。金が無いのなら作っちゃえば良いんですよ。隊長だって余ってる剣ぐらい持ってるでしょう? それを斬って指輪ぐらい作れるんじゃないですかね?」
「は? 俺が作るのか? まあ頑張れば指輪っぽくは出来そうだが、サイズとか合わせるのは難しそうだぞ」
バールは自作しろと言っているが、結構至難の業のような気がする。
「まあその辺はプロにやって貰えば良いんじゃないですかね? 出来る限りやっとけば、お金も安く済むでしょう」
なる程、しかしそうすると、ロッテの指のサイズを調べなければ。
何とか計る手はないだろうか?
まあそれはそれとして、バールの槍なら小さな鉄に穴を開けるぐらいは出来そうだ。
「バール手伝ってくれ、お前なら鉄に穴を開けるぐらい出来るだろう?」
俺は頭を下げて頼み込んだ。
「任務でもないし命令じゃないですよね? 俺も最近ちょっと金欠だったんですよー……飯一週間分で」
どうやら飯をおごらなきゃいけないらしい。
「高い! 三日で勘弁しろ! そもそも金が無いから相談に来たんだぞ」
「じゃあもう三日で良いですから、ちゃんと朝昼晩三回ですからね!」
出費は痛いがこれもロッテのためだ。
受け入れるしかないだろう。
「おう、準備が出来たらまた呼びに来るぜ。その時は頼むぞ」
「ういー」
俺はバールと別れ、家に居るロッテに会いに行った。
たぶん機嫌が悪いと思う。
あれだけやって結婚を待たせてるからなぁ。
ロッテの部屋を覗くと、何だかボーッとしている。
落ち込んでるのかもしれないな。
よし少し話してみるか。
「ロッテ、何ボーっとしてるんだよ、任務は終わってるのか?」
俺はさりげなく肩を抱いて笑いかけてみたんだが。
「べノムが私にあれだけの事をして、結婚もしてくれないから困ってるんだけど?」
やっぱり思った通りだったようだ。
「け、結婚しないとは言ってないだろ。一週間待ってくれってだけだよ。俺にも色々準備があるんだ」
「本当に? 体だけが目的で捨てられたりしない?」
「しねぇって! それよりちょっと手を見せてくれ、アツシに聞いたんだが掌で運勢を占う事が出来るんだと。教えて貰ったから見てやるよ」
「それって結婚より大切な事なのー? 私ちょっとガッカリしてるんだけど」
「……そ、そうだ、結婚の事も占ってやるよ。ほら手を貸せって」
強引にロッテの手を掴み、指を見つめ、怪しまれない様に一本ずつ指を触っていく。
確か薬指だったよな?
丹念に指を触り、その大きさを確かめる。
「……もしかしてべノム、私としに来たの? 体だけが目的で結婚とかする気がないんでしょ? ……それはちょっとやだなぁ……」
「ちゃんと一週間後にするって言ってるだろ。俺を信じて待ってろよ」
「一週間って何! 何で一週間なの?! 私と結婚するのにそんなに覚悟いるの!」
こりゃあちょっと駄目だ。
ここまで不安にさせてたらこれ以上隠しとくのは無理だな。
サプライズは出来なかったがしょうがねぇ。
「あのなぁロッテ、実はお前にプレゼントを作ってるんだ。だからそれが完成するまで待ってくれないか? もしお前が待てないって言うのなら、この場で結婚宣言してもいい。どうする?」
「……分かった、待ってる。その代わりもうちょっとだけ一緒にいてね」
「ああ、良いぜ」
っと不安そうなロッテと一緒に居てやったのだが、結局少しは少しじゃなくなって、後六日しか時間が無くなってしまった。
そしてバールを呼び出し、指輪作りを始めている。
「よっしゃぁ、やるぞ! バール準備は良いか!」
ロッテに見られると不味いので、王国の外の新門の近くで作業を始めていた。
ここなら来ないはずだ。
「あぁ、はいどうぞ」
バールはさっぱりやる気が無い。
大丈夫だろうか此奴。
「もうちょっと気合入れろよ! 飯もおごっただろうが!」
俺はもうなけなしの金で食事をご馳走している。
頑張って貰わないと困る。
「はぁ、でも久しぶりに腹いっぱい食べたんで、ちょっと眠くなってきました」
「お前、もし寝たらお前の家の中家探しして、お前が大事にしてるエロ絵全部破り捨ててやるからな!」
「それやったら結婚する前に殺しますんで、絶対止めてください」
居直りやがった、此奴がやるって言ったらマジでやるからな。
家探しは止めとこう。
「兎に角始めるぞ! お前の槍捌きに掛かってるんだからな!」
 俺は昔使っていた剣を地面へと突き刺し、それを指輪の大きさに刻んでいく。
それにバールが穴を開けていくのだが、中々上手く開けられないようだ。
穴の大きさがまちまちで、割れてしまう物もあった。
だが材料は沢山ある。
今は殆ど使わないが、貯蔵の剣を三十本程持って来ていた。
「さあ次行くぞ!」
「へ~い」
そして二時間後。
「何で一つも上手く行かないんだ!」
全然作れる気配がなく、俺は壊れた残骸を投げ捨てた。
「え~、だって結構難しいんですよ。力を入れすぎると大穴が開いちゃいますし、軽くやると割れちゃいますし、やっぱり買った方が良いんじゃないですか? 俺の事は気にしなくていいですよ。もう朝驕ってもらいましたし」
こいつ、面倒臭くなってきたんじゃないだろうな?
「今更言うなよ! もう十本以上も駄目にしてるんだ、剣だってタダじゃねぇんだぞ!」
「でも隊長、飯三日分じゃ割に合わない気がしてきました。もうちょっと増やしてくれませんか?」
まさかこいつ、ワザと失敗してた訳じゃねぇよなぁ?
……だが此奴に逃げられたら指輪の作成が出来なくなってしまう。
「分かった。もう一日分位は付けてやる。だから頑張ってくれよ」
俺はその交渉をうけいれたのだが。
「二日で」
更に足元を見るこいつに怒りがわいて来る。
だが一応手伝って貰っているから我慢せざるを得ない。
「……いいだろう。だが絶対最後まで付き合ってもらうからな!」
作業を続けるが一向に上手く行く気配がない。
そして持って来た材料が無くなってしまった。
「もう材料が無いですよ。如何するんです? 諦めますか?」
バールはやる気なさそうにしている。
「俺に考えがある。エルを呼んでこの材料を熔かしてもう一回だ!」
俺は即座に飛び立ち、仕事をしていたエルを無理やり連れて来た。
何とか説得し、夜中を過ぎた辺りでようやく納得のいく出来の指輪を作ったのだった。
指輪の仕上げはプロに任せ、七日後の夜、俺はロッテの前に立って居る。
「何? ようやく覚悟が決まったの?」
既に呆れた様子のロッテに。
「ああ、そうだ。ちょっと時間が掛かっちまったけど、納得のいく物が出来たんだ。これを受け取って欲しい。ロッテの指に合わせて作ったんだぜ」
俺は跪きロッテの指に指輪をはめた。
「俺と結婚してくれないか?」
「……もっちろん、ちゃんと幸せにしてよね!」
ロッテの顔に笑顔が戻り、少しだけ涙ぐんでいた。
そこにいた男、アクロスに剣の作成を頼むが、とんでもない額の最上ランクの武器を買わされる。
ロッテに告白されべノムは断ったのだが、それでも求められて二人は結婚する事になった…………
べノム・ザッパー(王国、探索班) アスタロッテ(べノムの部下)
バール (バール(王国、探索班伝令係))
あれからロッテを送り届け、少しだけ時間を貰った。
卑怯者とか何か色々言われていたが、俺にだって準備があるのだ。
結婚するには男としてそれなりの恰好を付けたいのだが。
「困った、どうにも金がねぇ……」
この国の結婚なんて殆ど口だけの事なんだが、一応恰好として指輪でも送ろうとでも思っていた。
しかし店の値段を見ると結構高い。
親父に交渉したが、剣の値段をまけて貰う事も出来ず、俺の懐には請求書しか入っていなかった。
「へ~、隊長はそれで俺の所に来たと? まあ俺はモテますからね、相談するには打って付けでしょうけど、それにしても隊長って貧乏なんですね」
俺はギリギリ頼りになりそうなバールを尋ねていた。
「うるせぇ、出費がかさんだだけだ。少し前には指輪ぐらい買える金はあったんだよ!」
この態度からみるに、バールに相談したのは間違いだったかもしれない。
「まああれですよ。金が無いのなら作っちゃえば良いんですよ。隊長だって余ってる剣ぐらい持ってるでしょう? それを斬って指輪ぐらい作れるんじゃないですかね?」
「は? 俺が作るのか? まあ頑張れば指輪っぽくは出来そうだが、サイズとか合わせるのは難しそうだぞ」
バールは自作しろと言っているが、結構至難の業のような気がする。
「まあその辺はプロにやって貰えば良いんじゃないですかね? 出来る限りやっとけば、お金も安く済むでしょう」
なる程、しかしそうすると、ロッテの指のサイズを調べなければ。
何とか計る手はないだろうか?
まあそれはそれとして、バールの槍なら小さな鉄に穴を開けるぐらいは出来そうだ。
「バール手伝ってくれ、お前なら鉄に穴を開けるぐらい出来るだろう?」
俺は頭を下げて頼み込んだ。
「任務でもないし命令じゃないですよね? 俺も最近ちょっと金欠だったんですよー……飯一週間分で」
どうやら飯をおごらなきゃいけないらしい。
「高い! 三日で勘弁しろ! そもそも金が無いから相談に来たんだぞ」
「じゃあもう三日で良いですから、ちゃんと朝昼晩三回ですからね!」
出費は痛いがこれもロッテのためだ。
受け入れるしかないだろう。
「おう、準備が出来たらまた呼びに来るぜ。その時は頼むぞ」
「ういー」
俺はバールと別れ、家に居るロッテに会いに行った。
たぶん機嫌が悪いと思う。
あれだけやって結婚を待たせてるからなぁ。
ロッテの部屋を覗くと、何だかボーッとしている。
落ち込んでるのかもしれないな。
よし少し話してみるか。
「ロッテ、何ボーっとしてるんだよ、任務は終わってるのか?」
俺はさりげなく肩を抱いて笑いかけてみたんだが。
「べノムが私にあれだけの事をして、結婚もしてくれないから困ってるんだけど?」
やっぱり思った通りだったようだ。
「け、結婚しないとは言ってないだろ。一週間待ってくれってだけだよ。俺にも色々準備があるんだ」
「本当に? 体だけが目的で捨てられたりしない?」
「しねぇって! それよりちょっと手を見せてくれ、アツシに聞いたんだが掌で運勢を占う事が出来るんだと。教えて貰ったから見てやるよ」
「それって結婚より大切な事なのー? 私ちょっとガッカリしてるんだけど」
「……そ、そうだ、結婚の事も占ってやるよ。ほら手を貸せって」
強引にロッテの手を掴み、指を見つめ、怪しまれない様に一本ずつ指を触っていく。
確か薬指だったよな?
丹念に指を触り、その大きさを確かめる。
「……もしかしてべノム、私としに来たの? 体だけが目的で結婚とかする気がないんでしょ? ……それはちょっとやだなぁ……」
「ちゃんと一週間後にするって言ってるだろ。俺を信じて待ってろよ」
「一週間って何! 何で一週間なの?! 私と結婚するのにそんなに覚悟いるの!」
こりゃあちょっと駄目だ。
ここまで不安にさせてたらこれ以上隠しとくのは無理だな。
サプライズは出来なかったがしょうがねぇ。
「あのなぁロッテ、実はお前にプレゼントを作ってるんだ。だからそれが完成するまで待ってくれないか? もしお前が待てないって言うのなら、この場で結婚宣言してもいい。どうする?」
「……分かった、待ってる。その代わりもうちょっとだけ一緒にいてね」
「ああ、良いぜ」
っと不安そうなロッテと一緒に居てやったのだが、結局少しは少しじゃなくなって、後六日しか時間が無くなってしまった。
そしてバールを呼び出し、指輪作りを始めている。
「よっしゃぁ、やるぞ! バール準備は良いか!」
ロッテに見られると不味いので、王国の外の新門の近くで作業を始めていた。
ここなら来ないはずだ。
「あぁ、はいどうぞ」
バールはさっぱりやる気が無い。
大丈夫だろうか此奴。
「もうちょっと気合入れろよ! 飯もおごっただろうが!」
俺はもうなけなしの金で食事をご馳走している。
頑張って貰わないと困る。
「はぁ、でも久しぶりに腹いっぱい食べたんで、ちょっと眠くなってきました」
「お前、もし寝たらお前の家の中家探しして、お前が大事にしてるエロ絵全部破り捨ててやるからな!」
「それやったら結婚する前に殺しますんで、絶対止めてください」
居直りやがった、此奴がやるって言ったらマジでやるからな。
家探しは止めとこう。
「兎に角始めるぞ! お前の槍捌きに掛かってるんだからな!」
 俺は昔使っていた剣を地面へと突き刺し、それを指輪の大きさに刻んでいく。
それにバールが穴を開けていくのだが、中々上手く開けられないようだ。
穴の大きさがまちまちで、割れてしまう物もあった。
だが材料は沢山ある。
今は殆ど使わないが、貯蔵の剣を三十本程持って来ていた。
「さあ次行くぞ!」
「へ~い」
そして二時間後。
「何で一つも上手く行かないんだ!」
全然作れる気配がなく、俺は壊れた残骸を投げ捨てた。
「え~、だって結構難しいんですよ。力を入れすぎると大穴が開いちゃいますし、軽くやると割れちゃいますし、やっぱり買った方が良いんじゃないですか? 俺の事は気にしなくていいですよ。もう朝驕ってもらいましたし」
こいつ、面倒臭くなってきたんじゃないだろうな?
「今更言うなよ! もう十本以上も駄目にしてるんだ、剣だってタダじゃねぇんだぞ!」
「でも隊長、飯三日分じゃ割に合わない気がしてきました。もうちょっと増やしてくれませんか?」
まさかこいつ、ワザと失敗してた訳じゃねぇよなぁ?
……だが此奴に逃げられたら指輪の作成が出来なくなってしまう。
「分かった。もう一日分位は付けてやる。だから頑張ってくれよ」
俺はその交渉をうけいれたのだが。
「二日で」
更に足元を見るこいつに怒りがわいて来る。
だが一応手伝って貰っているから我慢せざるを得ない。
「……いいだろう。だが絶対最後まで付き合ってもらうからな!」
作業を続けるが一向に上手く行く気配がない。
そして持って来た材料が無くなってしまった。
「もう材料が無いですよ。如何するんです? 諦めますか?」
バールはやる気なさそうにしている。
「俺に考えがある。エルを呼んでこの材料を熔かしてもう一回だ!」
俺は即座に飛び立ち、仕事をしていたエルを無理やり連れて来た。
何とか説得し、夜中を過ぎた辺りでようやく納得のいく出来の指輪を作ったのだった。
指輪の仕上げはプロに任せ、七日後の夜、俺はロッテの前に立って居る。
「何? ようやく覚悟が決まったの?」
既に呆れた様子のロッテに。
「ああ、そうだ。ちょっと時間が掛かっちまったけど、納得のいく物が出来たんだ。これを受け取って欲しい。ロッテの指に合わせて作ったんだぜ」
俺は跪きロッテの指に指輪をはめた。
「俺と結婚してくれないか?」
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