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秀典

14 探索部隊 (究極の魔法編END)

天使の知識を手に入れたロッテ、それを生かして魔法の試し打ちをしに王国の外へと向かった…………


べノムザッパー(王国、探索部隊)   アスタロッテ(べノムの部下)
他色々


「ふう、平和よね」

 王国からかなり離れた平地に、ロッテが地面に寝転がり、そんな事を言っていた。

「なめんなッ! 何処が平和だ! テメェの魔法で大惨事だコラ!」

 先日天使の知識を得たロッテは、その知識を生かして王国の外で魔法を使ったのだ。
 結果、圧倒的な暴力的な巨石が、天空から降って来てしまった。
 その石は途轍もないスピードで地面に落下すると、大量の土砂を巻き上げ暴風をまき散らす。

 ロッテと近くに居た俺だけは魔法の影響で守られていた。
 ここから王国までは相当離れていたが、王国にまで被害があるかもしれない。
 それだけでは終わらない。
 そんな音を聞きつけ、大量のキメラ達が集まって辺りを埋め尽くして行く。
 もしかしなくても大惨事である。

「おいどうすんだこれ。ちょっと多過ぎだろうが!」

 そこには大きなもの、小さいもの、空から現れたもの、地の底から現れたもの、兎に角沢山のキメラが集まっている。
 とても俺とロッテだけで相手に出来る数ではない。
 ロッテが魔法を使えば倒せるかもしれないが、二度目が更にとんでもない事になれば困るどころじゃない。

「ロッテ、倒れてる場合じゃないだろ。起きて戦えよ!」

「よっと、それじゃやりましょっか!」

 ロッテが跳び起きて剣を抜いた。
 こちらは二人で、相手は大量。
 適当に剣を振っても何かに当たるだろう。

「それじゃあもう一回さっきの行くよ!」

「止めろ! 王国にも被害が出るわ!」

 俺だって死ぬのは嫌だ、最終手段として使う必要があるかもな。

「んじゃ行くぞ。油断するなよロッテ!」

「おっけー! 幾らでも掛かって来なさい!」

「こんなに来られても困るわ!」

 チッ、とりあえず細かいのを叩いて数を減らすか。
 俺は固まっている兎の群れを狙い、大きな兎、一体、二体、三体、四体、止まらず斬り伏せ五体目を倒す。
 だが信仰するうちに、ガキィンと俺の斬撃止められてしまう。

 簡単に行くと思っていたが、鎧を着ているような大牛に進路を阻まれた。
 かなりの硬度で、こんな牛に時間をとられている暇はない。
 こいつはまだ後回しだ。
 他のは?

 考えている一瞬、上からの襲撃を受けた。

 これは飛行型か?!
 俺は巨大な鳥の攻撃を躱し、鳥の片翼を外套マントで斬り裂く。
 飛ぶ事が出来ず、その鳥が魔物の大群に落ちていく。

 ロッテはどうなってるかとそちらを見ると、あちらにも何体もの魔物が押し寄せて行く。
 俺がフォローしなければ。
 ロッテに向かうカマキリの足を切断し、その進行を止めると、更にもう一体を斬り裂いた。
 敵が多過ぎて間に合わない。
 その状況の中、ロッテは一つの魔法を完成させた。

「爆炎よ燃やし尽くせッ……エクスブレイズ!」

 ロッテの魔法が炸裂し、辺り一面を炎が包んで行く。
 何十匹ものキメラが倒れるが、まだまだ減った気がしない。
 キメラはワラワラと沸いて出ている。

「ちょっとキツイ、何か他の魔法はねぇのかよ」

「もう一回隕石落としとく?」

 メギド様に怒られそうだがやるしかねぇか?
 二人じゃキツイ。

「あら? からすが死にかけていますわよ。このまま見守っていましょうか」

 来たのはレアスか……この女、性格は悪いが、腕だけは良い。
 この際手伝って貰うしかねぇな。

「こっちにはロッテも居るんだ、早く手伝いやがれ!」

「……ふう、仕方ありませんわね。 ……では!」

 レアスの爪がキメラ達を引き裂く。
 しかし一人増えた所で、まだこちらは三人しかいない。
 向うは数もわからないぐらい大量に居る。
 だが騒ぎを聞きつけたのはレアスだけではないらしい。

「隊長、大変そうですね。ちょっとならお手伝いしましょうか?」

「バール、助かる! 助けてくれ」

「了解!」

 バールは腕を槍状にして、キメラを突き刺し倒して行く。
 それでも魔物の大群は果てしなく多い。
 だが、この状況でも負ける気がしねぇ。
 俺達の知り合いや仲間が、ドンドン駆けつけて来やがるからだ。 

「うわーいっぱい居るわねー。これは殴り放題だわ!」

「この勇者アーモンが来たからには、こんな敵など一掃してくれる!」

 他にも続々とキメラ達を追って来た者達が集まって来る。

「探索部隊、ほとんど揃ったんじゃねーか?」

「さあねぇ、全員揃えば七十二班だけど、まっ居る事にしましょうか!」

「べノム隊長、あんな爆発あったら誰だって見に来ますって」

「さっさと倒して宴会でもしましょうや。隊長の奢りで」

「おーいいんじゃね。じゃあ今夜は店を貸し切りで朝まで行こうぜ」

 周りで好き勝手言いやがって。
 言ってる奴等は誰だよ!
 魔物と味方で分かりゃしねぇ。

「あほかー! そんなん出来るか! 俺が破産しちまうじゃねぇかよ。そんな事よりこいつ達を殲滅するぞ!」

「奢りは無しですかー? やる気でないな、でもまあ頑張りましょうかね」

 全く頼もしい奴等じゃねぇか。
 じゃあ反撃開始だぜ!

「さあ行くぞお前等! 一体も逃がすんじゃねぇぞ!」

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』

 多くの兵の声がこだましている。
 兵士達はキメラ達を斬り、殴り、貫き、燃やし、凍らせる。
 果てしないほどに存在していたキメラ達は、我が頼もしき仲間達により減らされて行く。
 そして王国の周辺のキメラを殆ど全滅させたのだった。

 このおかげで一時キメラ達の被害は減ったが、すぐにまた増え始めた。
 キメラの繁殖力が凄まじく、きっとこれからも永久に付き合っていかなければならないだろう。

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