一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
10 見える姿と見えないえない心
メギド達は帝国を破り、王国は平和な日常が続いていた。 平和過ぎて退屈していたメギドは、城を飛び出そうと、画策する…………
メギド(王国、国王) タイタン(王国、将軍)
奴隷商人(禿) 売られた子供達
メギドは退屈している。
帝国を滅ぼし一年もすると、書類にサインをする仕事が毎日永遠と繰り返されていた。
王としての職務も、体が魔物になった所で何も変わっていない。
妃であるイモータルも、この頃何か調べものをしているようで、構って貰えずメギドは少し寂しかった。
「あ~、何か面白い事はないのか?」
メギドは独り言を呟き、窓の外を見上げた。
空は果てしなく青く澄み切っている。
翼をいっぱいに広げて飛び立ちたい衝動に駆られた。
だからやっぱり飛んで行こうと、窓を全開に開け放つ。
「よし、脱出しよう」
窓に手をかけてメギドは飛び出したのだが、その瞬間ガシッと脚を掴まれて動けなくなる。
普通の人間ならば、軽く持ち上げる事も出来たのだが、脚を掴んだこの男は違った。
「メギド様、書類残っていますよ?」
そういわれて振り向くと、そこには毛むくじゃらの魔獣が一人立って居た。
この男もキメラ化している人間で、タイタンと言う魔獣である。
そのまま飛び立とうとしても、とてつもない力で掴まれて全く動けない。
メギドは仕方なく部屋に戻ると、とりあえずタイタンを説得してみる事にした。
「実はな、イモータルに用事があってだな。少し約束をしていたんだよ」
「イモータル様なら隣の図書室にいますよ」
「…………」
タイタンに即答されて、メギドは黙ってしまった。
だが、脱出する為にはここで諦めてはならない。
続けてメギドは、次の作戦に移った。
「ああ分かっている。だから町で、お菓子でも買って来てやろうかと思ってな」
タイタンはそれを聞くと、おい、入ってきて良いぞと、扉の方に呼びかけた。
扉が開き、「メギド様、お菓子をお持ちしました」っと、メイドが入って来てしまう。
行動を全て読んでいるのだろう。
メギドとしては、お前は俺の親か何かかと言いたい気分である。
「…………」
このままでは逃げられないと悟り、一つため息をついた。
「はぁ、分かった。少し便所に行ってから再開するよ。じゃあ行って来る」
「では、私もご一緒に…………」
タイタンは、便所までついてくる気だった。
このままでは王という名のカゴの鳥である。
だからメギドは部屋の扉を開けて左に曲がった瞬間に、全力で走り、タイタンから逃げだした。
後ろから追いかけて来そうだったが、全力で逃げるメギドに、タイタンは追いつきそうにもなかった。
そんなメギドの背に、タイタンは思いっきり叫んでいた。
「待てやコラッ、戻って来て仕事しろやおいッ!」
「二日ぐらいで戻るから、心配するなよ!」
窓から飛び立ったメギドに、翼の無いタイタンは追い掛ける事が出来ず、メギドは逃走に成功したのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
メギドは城下町の店で、顔を隠せるローブを買い、王都の外に飛び出していた。
まずは空を楽しみ、とりあえず今の自分の国がどうなっているのかを確認する事にしたのだ。
空をフヨフヨと浮きながら、国にある村や町を探している。
「おっ、あれか?」
王国の南にある森を飛び越え、端の方にある小さな町、プラーナ。
その町の手前で地面に降り、顔を隠す為にローブを被る。
目的も持たずに来た為、道なりに歩いて町へと入った。
この町には特に変わった所は見られない、何も問題はないらしい。
上の人間がどんな姿だろうと、自分の生活が今までと変わらなければ、気にする事もないのかも知れない。
町の中を歩いていると、少し前の方が騒がしい。
メギドは気になったので、人混みを掻き分け、一番前に進んで行く。
「子供?」
みすぼらしいと言っても良いぐらい、酷い恰好の男の子が倒れている。
十歳ぐらいだろうか?
「おいアンタ、あれは何があったんだ?」
「ああ、何やらあの子が粗相をしてしまったらしいよ」
周りの人に話を聞いて、それが何なのか何となく分かった。
倒れていた子は元帝国の国民で、どうやら親に売られて来たらしい。
帝国は王国によって王城を落とされているが、国民の大半は生き延びている。
今でも帝都で暮らしている人々も多い。
だが王族を失った事で治安が悪化して、食うに困った親達が子供を泣く泣く手放したのだ。
その子供の主といえる人買いを見ると、頭の禿げ上がった男であった。
百八十センチぐらい背はあり、かなりガタイも良い男である。
メギドは何があったのかと様子を窺い、地面に食糧を入れた袋が落ちているのを発見した。
子供が物を落としたからか、それを叱ったのだろう。
叱ると言えば聞こえはいいが、男の子の体には男に蹴られたあとが幾つも残っている。
もう二度と刺せない様にと、罰を与えたのだ。
メギド少し腹が立った。
自分の国に人買いが来た事も、子供が蹴られた事も。
そして誰も助けに入らない事も。
あの男は魔族が王国を収めた事を知り、子供でも売りつけに来たのだろう。
子供でも食べると思っているのかもしれない。
「おいお前。王国では人買いは禁止のはずだぞ」
メギドは男を睨みつけ、警告の言葉を発する。
それでも人買いの男は怯まない。
こちらをジロリと睨みつけ、威嚇しながら怒鳴りつけて来た。
「うるさい! お前には関係無いだろうがッ! とっとと向うに行きやがれ!」
倫理的には問題があるかもしれないが、人買い自体はそこまで悪い仕事ではない。
食うに困った者達に金を与えて、食事の人数を減らせるからだ。
どこかの国の話では、どうにもならない時は子供を殺して埋めたなんて話もある。
それに売られた子供達は、全員が不幸になる訳ではない。
金持ちのメイドになったり、店で働かせたり、それなりに暮らしている者達も居るには居るのだ。
売る側が真面であれば、そこまで問題ではない。
だがこの男に関しては、とてもそうには見えなかった。
メギドはまた少し頭に来ていたが、我慢をして、もう一度警告をする。
「国からッ、出て行けッ、このハゲ野郎!」
メギドから少しだけ本音が出たが、まあ仕方が無い話しだろう。
子供を足蹴にするこの男には、良い薬である。
「黙れッッ、このやろ…………」
「うるさい死ねッ!」
メギドは男が何か言う前に、頭に来たので思わずぶん殴ってしまった。
死ねと言ったが、さすがに手加減している。
ふっとび転がっているが、男は死んではいないだろう。
だがその勢いでフードがめくれて、メギドの姿が人々に晒されてしまった。
「ば、化け物だあああああああ!」
姿を見た町人は、凄い勢いで逃げて行く。
「いや、何もしないから」
そう言った所で、誰も聞いてはくれなかった。
もう姿を見られてしまったので、隠す必要もなくなっている。
子供達をこのままにはしておけず、仕方なく力を使って、男と子供を国の外まで運ぶ事にした。
檻の中に入れられた子供達を見るが、あまり気分の良い物ではなかった。
隣国であるブリガンテとの国境近く。
全員を降ろすと、メギドは城に戻ろうと思い至った。
だが数歩進み、そこでメギドは足を止める。
男は兎も角、子供達の事が気になって仕方なかったのだ。
「ああああああ、もうしょうがない!」
メギドは寝ている男を引っぱたき、叩き起こし、フードをかぶらずに男を脅した。
「おい、俺は見ての通り魔族だ。金は払ってやるから、子供を全て貰っていく。分かったなら二度とこの国に来るんじゃないぞ。あとまた子供に酷い事をするなら、何処に居ても殺しに行くからな。分かったか!」
「ひいいいいいいい、分かりましたああああああああ」
男はそれを聞いて頷くと、金も持たずに子供達を置いて逃げて行ってしまった。
持って行かないのならと金を拾い上げ、子供達を城に連れて行く事にする。
子供達をこの場に置き去りにして、もし死なれても困るのだ。
「物凄く怒られそうな気がするが、まあ仕方が無いよな?」
子供達を連れて城に帰ると、メギドは当然の様に怒られた。
この国の王だというのに、とっても怒られた。
タイタンには軽く殴られ、軽くとは言え、あの力で殴られたら相当痛いのである。
「王様殴んなッ、こんにゃろう!」
「そんな事より、この子供達どうするんだ。こんなに沢山の子供どうやったって貴方一人で育てられないですよね?!」
メギドとて子供のことは考えてはいた。
子供のない親達に、引き取ってもらえないだろうかと思案していたのだ。
だがそれも、そこそこ裕福でなければならない。
また売られでもされたら本末転倒である。
実際に、そんな家を探したが、城下には五人しか受け取り手が居なかった。
城にも引き取りたいと望む者も何人か居たが、それでも子供達が七人残り、仕方なく使用人として城に置く事になる。
幸いにも助けられた為か、魔物の様な姿を見ても怯える事はなかった。
七人には名前も付けられていなかったので、メギドは、それぞれに名前を与えたのだ。
一人目はルーキフェート。
黒髪の、一番小さな女の子だった。
歳の頃は六歳ぐらいだろうか。
二人目はイブレーテ。
この中では一番お姉さんの様だ。
髪を短髪にしている。
勝気そうな顔をメギドに向けて、しっかりとしがみ付いていた。
三人目はシャーイーン。
倒れていた男の子で、ルーキフェートとは兄妹らしい。
助けてくれたメギドに恩を感じている。
四人目はアンリマイン。
白髪で短髪にしている女の子だ。
酷い目に遭ったと言うのに、誰にでも笑顔を向ける優しい子である。
五人目はパーズ。
黒髪の男の子で、メギドの事を恥ずかしそうに見つめている。
その姿にあこがれを抱いているのかもしれない。
六人目はマーニャ。
愛らしい顔をした女の子だ。
将来は人々に愛される子になるだろう。
七人目はラヴィ―ナ。
金髪で髪を伸ばした女の子である。
とても美しく、動かなければ綺麗な人形にも見えた。
メギドは、七人それぞれに仕事を与えて分担させた。
七人は城の中で全員元気にやっていけている。
だが暫くして、隣国から噂が流れた。
片角の魔族が、無理やり子供を攫って行ったと。
メギド(王国、国王) タイタン(王国、将軍)
奴隷商人(禿) 売られた子供達
メギドは退屈している。
帝国を滅ぼし一年もすると、書類にサインをする仕事が毎日永遠と繰り返されていた。
王としての職務も、体が魔物になった所で何も変わっていない。
妃であるイモータルも、この頃何か調べものをしているようで、構って貰えずメギドは少し寂しかった。
「あ~、何か面白い事はないのか?」
メギドは独り言を呟き、窓の外を見上げた。
空は果てしなく青く澄み切っている。
翼をいっぱいに広げて飛び立ちたい衝動に駆られた。
だからやっぱり飛んで行こうと、窓を全開に開け放つ。
「よし、脱出しよう」
窓に手をかけてメギドは飛び出したのだが、その瞬間ガシッと脚を掴まれて動けなくなる。
普通の人間ならば、軽く持ち上げる事も出来たのだが、脚を掴んだこの男は違った。
「メギド様、書類残っていますよ?」
そういわれて振り向くと、そこには毛むくじゃらの魔獣が一人立って居た。
この男もキメラ化している人間で、タイタンと言う魔獣である。
そのまま飛び立とうとしても、とてつもない力で掴まれて全く動けない。
メギドは仕方なく部屋に戻ると、とりあえずタイタンを説得してみる事にした。
「実はな、イモータルに用事があってだな。少し約束をしていたんだよ」
「イモータル様なら隣の図書室にいますよ」
「…………」
タイタンに即答されて、メギドは黙ってしまった。
だが、脱出する為にはここで諦めてはならない。
続けてメギドは、次の作戦に移った。
「ああ分かっている。だから町で、お菓子でも買って来てやろうかと思ってな」
タイタンはそれを聞くと、おい、入ってきて良いぞと、扉の方に呼びかけた。
扉が開き、「メギド様、お菓子をお持ちしました」っと、メイドが入って来てしまう。
行動を全て読んでいるのだろう。
メギドとしては、お前は俺の親か何かかと言いたい気分である。
「…………」
このままでは逃げられないと悟り、一つため息をついた。
「はぁ、分かった。少し便所に行ってから再開するよ。じゃあ行って来る」
「では、私もご一緒に…………」
タイタンは、便所までついてくる気だった。
このままでは王という名のカゴの鳥である。
だからメギドは部屋の扉を開けて左に曲がった瞬間に、全力で走り、タイタンから逃げだした。
後ろから追いかけて来そうだったが、全力で逃げるメギドに、タイタンは追いつきそうにもなかった。
そんなメギドの背に、タイタンは思いっきり叫んでいた。
「待てやコラッ、戻って来て仕事しろやおいッ!」
「二日ぐらいで戻るから、心配するなよ!」
窓から飛び立ったメギドに、翼の無いタイタンは追い掛ける事が出来ず、メギドは逃走に成功したのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
メギドは城下町の店で、顔を隠せるローブを買い、王都の外に飛び出していた。
まずは空を楽しみ、とりあえず今の自分の国がどうなっているのかを確認する事にしたのだ。
空をフヨフヨと浮きながら、国にある村や町を探している。
「おっ、あれか?」
王国の南にある森を飛び越え、端の方にある小さな町、プラーナ。
その町の手前で地面に降り、顔を隠す為にローブを被る。
目的も持たずに来た為、道なりに歩いて町へと入った。
この町には特に変わった所は見られない、何も問題はないらしい。
上の人間がどんな姿だろうと、自分の生活が今までと変わらなければ、気にする事もないのかも知れない。
町の中を歩いていると、少し前の方が騒がしい。
メギドは気になったので、人混みを掻き分け、一番前に進んで行く。
「子供?」
みすぼらしいと言っても良いぐらい、酷い恰好の男の子が倒れている。
十歳ぐらいだろうか?
「おいアンタ、あれは何があったんだ?」
「ああ、何やらあの子が粗相をしてしまったらしいよ」
周りの人に話を聞いて、それが何なのか何となく分かった。
倒れていた子は元帝国の国民で、どうやら親に売られて来たらしい。
帝国は王国によって王城を落とされているが、国民の大半は生き延びている。
今でも帝都で暮らしている人々も多い。
だが王族を失った事で治安が悪化して、食うに困った親達が子供を泣く泣く手放したのだ。
その子供の主といえる人買いを見ると、頭の禿げ上がった男であった。
百八十センチぐらい背はあり、かなりガタイも良い男である。
メギドは何があったのかと様子を窺い、地面に食糧を入れた袋が落ちているのを発見した。
子供が物を落としたからか、それを叱ったのだろう。
叱ると言えば聞こえはいいが、男の子の体には男に蹴られたあとが幾つも残っている。
もう二度と刺せない様にと、罰を与えたのだ。
メギド少し腹が立った。
自分の国に人買いが来た事も、子供が蹴られた事も。
そして誰も助けに入らない事も。
あの男は魔族が王国を収めた事を知り、子供でも売りつけに来たのだろう。
子供でも食べると思っているのかもしれない。
「おいお前。王国では人買いは禁止のはずだぞ」
メギドは男を睨みつけ、警告の言葉を発する。
それでも人買いの男は怯まない。
こちらをジロリと睨みつけ、威嚇しながら怒鳴りつけて来た。
「うるさい! お前には関係無いだろうがッ! とっとと向うに行きやがれ!」
倫理的には問題があるかもしれないが、人買い自体はそこまで悪い仕事ではない。
食うに困った者達に金を与えて、食事の人数を減らせるからだ。
どこかの国の話では、どうにもならない時は子供を殺して埋めたなんて話もある。
それに売られた子供達は、全員が不幸になる訳ではない。
金持ちのメイドになったり、店で働かせたり、それなりに暮らしている者達も居るには居るのだ。
売る側が真面であれば、そこまで問題ではない。
だがこの男に関しては、とてもそうには見えなかった。
メギドはまた少し頭に来ていたが、我慢をして、もう一度警告をする。
「国からッ、出て行けッ、このハゲ野郎!」
メギドから少しだけ本音が出たが、まあ仕方が無い話しだろう。
子供を足蹴にするこの男には、良い薬である。
「黙れッッ、このやろ…………」
「うるさい死ねッ!」
メギドは男が何か言う前に、頭に来たので思わずぶん殴ってしまった。
死ねと言ったが、さすがに手加減している。
ふっとび転がっているが、男は死んではいないだろう。
だがその勢いでフードがめくれて、メギドの姿が人々に晒されてしまった。
「ば、化け物だあああああああ!」
姿を見た町人は、凄い勢いで逃げて行く。
「いや、何もしないから」
そう言った所で、誰も聞いてはくれなかった。
もう姿を見られてしまったので、隠す必要もなくなっている。
子供達をこのままにはしておけず、仕方なく力を使って、男と子供を国の外まで運ぶ事にした。
檻の中に入れられた子供達を見るが、あまり気分の良い物ではなかった。
隣国であるブリガンテとの国境近く。
全員を降ろすと、メギドは城に戻ろうと思い至った。
だが数歩進み、そこでメギドは足を止める。
男は兎も角、子供達の事が気になって仕方なかったのだ。
「ああああああ、もうしょうがない!」
メギドは寝ている男を引っぱたき、叩き起こし、フードをかぶらずに男を脅した。
「おい、俺は見ての通り魔族だ。金は払ってやるから、子供を全て貰っていく。分かったなら二度とこの国に来るんじゃないぞ。あとまた子供に酷い事をするなら、何処に居ても殺しに行くからな。分かったか!」
「ひいいいいいいい、分かりましたああああああああ」
男はそれを聞いて頷くと、金も持たずに子供達を置いて逃げて行ってしまった。
持って行かないのならと金を拾い上げ、子供達を城に連れて行く事にする。
子供達をこの場に置き去りにして、もし死なれても困るのだ。
「物凄く怒られそうな気がするが、まあ仕方が無いよな?」
子供達を連れて城に帰ると、メギドは当然の様に怒られた。
この国の王だというのに、とっても怒られた。
タイタンには軽く殴られ、軽くとは言え、あの力で殴られたら相当痛いのである。
「王様殴んなッ、こんにゃろう!」
「そんな事より、この子供達どうするんだ。こんなに沢山の子供どうやったって貴方一人で育てられないですよね?!」
メギドとて子供のことは考えてはいた。
子供のない親達に、引き取ってもらえないだろうかと思案していたのだ。
だがそれも、そこそこ裕福でなければならない。
また売られでもされたら本末転倒である。
実際に、そんな家を探したが、城下には五人しか受け取り手が居なかった。
城にも引き取りたいと望む者も何人か居たが、それでも子供達が七人残り、仕方なく使用人として城に置く事になる。
幸いにも助けられた為か、魔物の様な姿を見ても怯える事はなかった。
七人には名前も付けられていなかったので、メギドは、それぞれに名前を与えたのだ。
一人目はルーキフェート。
黒髪の、一番小さな女の子だった。
歳の頃は六歳ぐらいだろうか。
二人目はイブレーテ。
この中では一番お姉さんの様だ。
髪を短髪にしている。
勝気そうな顔をメギドに向けて、しっかりとしがみ付いていた。
三人目はシャーイーン。
倒れていた男の子で、ルーキフェートとは兄妹らしい。
助けてくれたメギドに恩を感じている。
四人目はアンリマイン。
白髪で短髪にしている女の子だ。
酷い目に遭ったと言うのに、誰にでも笑顔を向ける優しい子である。
五人目はパーズ。
黒髪の男の子で、メギドの事を恥ずかしそうに見つめている。
その姿にあこがれを抱いているのかもしれない。
六人目はマーニャ。
愛らしい顔をした女の子だ。
将来は人々に愛される子になるだろう。
七人目はラヴィ―ナ。
金髪で髪を伸ばした女の子である。
とても美しく、動かなければ綺麗な人形にも見えた。
メギドは、七人それぞれに仕事を与えて分担させた。
七人は城の中で全員元気にやっていけている。
だが暫くして、隣国から噂が流れた。
片角の魔族が、無理やり子供を攫って行ったと。
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