最強暗殺者、冒険者になる
暗殺者は学校へ行く(ために入試を受ける) 中編
   「ぐっ...」
  
     俺は上体を起こす。
     ゆっくりと深呼吸しながら先程のことを思い出していた。
     (俺はアリス様の部屋で倒れてしまったのか...くそっ!トラウマは克服したつもりだったのだが...)
      「起きたか。思い出せるか?」
      「ああ...申し訳ない」
      「まずはコーヒーでも飲まないか?」
   いつもなら、私が入れます。というところだが、何故か今は言う気になれなかった。
      「ああ、頼む...」
   
      「はい。コーヒーだ」
      「ありがとう」
    
   「ふふっ。レインは素の方が格好いいぞ」
   
   「やっぱり取り繕っていたのはバレていたか」
   「当たり前だろう?従者を気に掛けるのも上に立つものの義務だ」 
  そう言ってアリス様は本題を切り出した。 
   「なあ。レイン。過去にあったことを話してくれないか...?」
    思い出したくない。己の無力さを。
しかし口から出た言葉は気持ちとは正反対だった。
   「わかった...。どこから話そうか...」
    俺はアリス様にポツリ、ポツリと話し出し
た。
   「なあ。レイン。過去にあったことを話してくれないか...?」
  
   私はこの言葉がどれほどレインを傷つけるのかをわかっていて、それでも言ってしまった。
少しの静寂のあと、レインは少しづつ語りだした。
  
   「...俺は『あの日』、庭で剣を振っていたんだ。余りにも夢中になっていたから、ーーーが迫ってくるのに気が付かなかったんだ。」
 
    「ーーーが迫ってくると、村民達は必死 に...命懸けで戦ったんだ。ーーーは卑劣だった。女を人質にとって、俺達を降伏するように促したんだ」
   「女達は覚悟を決めていた。『私達はいいからーーーを倒して』と言っていた。だから村民達は必死に戦ったーー」
ーー俺を除いて。
   「俺は皆が戦っている間、逃げることしか出来なかった...!怯えて、隠れて生き残ることしか考えていなかったんだ!!」
   
    その姿は、幼い少年を想起させるほど
恐怖に駆られていた。
    「それで、俺は...あの惨禍から、1人だけ、生き残ったんだ...」
   
    まるで、懺悔をするように。
レインは怯えていた。断罪に。拒絶に。
  人の視線に。
レインが暗殺者になった理由が分かった。
    
    私は思わずレインを抱き締めた。
   「大丈夫。私は...レインを...拒絶しないよ。ーー」
ーー生き残ってくれてありがとう
   「アリス...さま...」
   「わ、私は...レインの事が......。いや、なんでもない。さあ、明日は入試だ。早く寝てしまおう」
   「特別に私の部屋で寝ることを許可してやる!か、かか、感謝しろよ!?」 
  「ありがとうございます...アリスさま」
  こうして1つの出来事が終わりを告げた。
   「ふふ。アリスとレイン。同じ部屋で寝ちゃって♡今後が楽しみだわ♡」
   面倒事を残して。
   
    私が起きた時には既にレインが起きていた。
    「おはよう。アリス」
    「っ...随分と口調が砕けたな」
    「ああ。あの口調は...過去の自分から逃げるためのだったんだ。アリスのお陰で少し自分を受け入れられたよ。ありがとう」
    「やっぱりレインはそっちの方が格好いいぞ」
   
    「世辞はいらん。それより朝食をご夫妻が準備して下さった。食堂に行こう」
    「世辞じゃあないんだが...まあいい。了解した」
    レインに名前を呼ばれてドキッとしたが黙っておく。
  
     「おはよう。父上、母上」
     「あら、アリス。おはよう」
     「おはようございます。ご夫妻。」
    「おお、レインか。おはよう。昨夜はお楽しみだったな?」
    「はい。アリス...様に過去を打ち明けました。」
     「そうか。アリスは何か?」
     「受け止めてくださいました。アリス様には、大変感謝をしております」
     
      「そうか...じゃあ、絶対に入試、受からなきゃな」
      「はい。『絶対に』受かってみせます」
       
      私達は遠くからレイン達を見ていた。 
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コメント
kou(こう)
はい。投稿者です。前後編と言ったにもかかわらず中編を挟んでしまい申し訳ございません!書きたいことが多すぎて2話に纏められませんでした...。今後このようなことが内容に努力致します!!