無欲、転生させられ世界をとる

makoch

神獣の尾

「今から私が言う『延命の丸薬えんめいのがんやく』を作るために必要な物は材料の調達に大きな危険が伴う。」

 その言葉には俺の覚悟を問うているような響きがあった。

「何が必要なのか教えてくれ。この身を削る覚悟はできている。」

 俺は迷わなかった。この平穏な日々を守りたい。俺は自分でも驚く程この家族にほだされていたらしい。
 前世では毎日に変化がなく、何1つ不自由がなかった。
 だからこそ、そんな日々に飽きていたのに……

「必要な素材は全部で4つ。1つ目は『ヒッポグリフの尾』。」

 ヒッポグリフ……この世界にいるということは本などで知っていた。
 
 前半身がわし、後半身が馬という気性の荒い生物だ。知能が高く、上手くいけば騎乗もできるという。

「ヒッポグリフは懐いた者に自分の尾を与えるという。いつでもどこにいても匂いで位置が分かるようにだ。」

 そもそもヒッポグリフを懐かせるということがかなり難しい。
 気高いため力では屈しない。しっかりコミュニケーションをとらない限り懐かせることは難しいだろう。

「殺して尻尾を剥ぎ取ろうなどとは考えないことだ。死んでしまったヒッポグリフの尾には力が宿らない。」

 俺が考えていたことに対して先回りして釘を刺してきた。

「私は今回のことに対して助言しか与えることができない。リリムと協力して死なないように気を付けてくれ。」
「タイガ、一緒に頑張りましょうね!」

 リリムはこんな状況なのに少し楽しそうだった。

「リリム、遊びではないからな。そこのところ肝に銘じろよ。」

 つい冷たい言い方になってしまった。

「ごめんなさい……気を付けるわ。」

 リリムだって平気なはずが無いのに。くそっ、落ち着け俺……

「すまないリリム。言い方が少しキツかった。」
「気にしないで。あなたの気持ちは分かるから。私も何も出来ないことが悔しいの。絶対に母上を助けましょう?」
「もちろんだ。」

 俺が学校に入学する頃には皆が笑顔でいられるよう頑張ろうと思った。

「目的地に転移させてやる。用が済み次第念話ねんわで私に話しかけろ。ではな!母上の命運はお前達に掛かっている。」

 その直後目の前が真っ白になった。

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