無欲、転生させられ世界をとる

makoch

神の威厳

「もう少しでこいつを器としてこの世に産まれることができたというのに……
 きさま、何者だ?」
「私を見て気付かぬか?」

 と、ナーファは魔人族がナーファの正体に気付くことを疑っていないように言った。

「も、もしや……お前は!?」
 
 期待の眼差まなざしで見つめるナーファ

「いや、誰だよ?ただのガキじゃないか。
 ガキはお母さんの乳でも吸っときな。」

 その時大地が大きく揺れた。
 
「おいおい、なんだこの揺れは?」

 挑発した魔人族本人はこの揺れを起こしている張本人が目の前にいることにまだ気付いていない。

(『強制睡眠きょうせいすいみん』、
強制転移きょうせいてんい』)

 と魔法を唱えて、何が起こっているのか分からない父と母、サラさんを眠らせ、安全な場所へと転移させた。

「おい、クソ魔人族。てめぇは私を怒らせた!何がガキだよ……私はガキじゃないもん。」
「今魔法を使ったのは貴様か。貴様、ただのガキじゃねぇな。」

 魔人族の声は、よく聞くと女だということがわかった。

「まずお前をめっためっためたにしてやる。『神意解放』しんいかいほう!」
「何がめっためたにしてやる!だ。こう見えて私は魔人族の中でも上位に位置して……」

 ナーファが神意解放とやらをした瞬間、ぶつぶつと何かを言っていた魔人族は口を開いて固まっていた。

「お、お前神なのか?」
今更いまさら気付いても遅いわ!さあ、上位の魔人族ならそれらしく戦闘準備するがよい。」

 魔人族は神を前にどうするか、楽しみに成り行きを見ていたら

「こうなったら腹をくくるしかねぇな。」
「ようやく覚悟を決めたか。さあ来い!」
「ガキとか言って本当にすみませんでした!私に悪気はなかったのです。どうか、どうかご慈悲を……」

 なんとその魔人族は全身を地面に投げだし、綺麗な土下座をしたのだった。

 これにはさすがのナーファも驚き、口をパクパクさせていた。

「お前は上位の魔人族、という誇りがないのか?」
「誇りだけで生きてはいけないんだよ。私は女だというだけで周りからバカにされてきた。
 この仮面を付けたのだって……」

 などと魔人族は昔の自分語りを始めた。

「わかるぞ。見た目でバカにされるのは屈辱的だよな。」

 割とナーファも楽しそうに話している。

 小1時間ほど話し合ってようやく魔人族の処罰が決まったらしい。

「無罪!」

 ナーファにどうなったか聞いたところそう言われた。
 
 理由は、あの魔人族がルーチェに憑依ひょういしなければルーチェは産まれることすらできなかったから、だそうだ。

 本当は死産しざんだったはずのルーチェに魔力を与え延命させたのがあの魔人族だったらしい。
 それと、ナーファがあの魔人族を気に入ったというのも理由の1つだそうだ。

「今日からこの魔人族と一緒に住むぞ!お兄ちゃんに拒否権はないからな。」
「よろしくな。」

 仮面を外した魔人族はそう言って微笑んだ。

 「おい魔人族とやら。お前が分離してもルーチェは生きられるのか?」

 ずっと疑問だったことを聞いた。

「ああ、問題ない。生きるのに必要な魔力は与えたからな。
 それよりこれからお世話になる訳だから色々やって欲しいことがあれば何でも言ってくれ。」

 そうやってなし崩し的に魔人族の同居が決まったのだった。両親にはどうやって説明するのやら。

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