職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)
第六十四話 傷心sideミカ
 「連絡が取れない……そっちはどう?」
 「私もダメ……」
 ルーとミカの二人は焦っていた。
 何せ優との連絡が丸一日取れない状況なのである。
 今まで連絡をほぼ毎日とっていた分その事実は、 二人にとって予想以上の不安とストレスを与えていた。
 「やっぱり僕のせいだ……」
 マチルダは優が捕まったのが自分のせいだと昨日から激しく後悔し続けていた。
 そのせいかマチルダは昨日から一睡もしておらず、 自傷行為をし始めるほど彼女は酷く追い詰められていた。
 「あんたのせいじゃないわよ私だって……」
 「そうです。 そんな事言ったら私だって何もできませんでした……」
 優が消えてダメージを受けているのは何も三人だけではない。
 ミスティはいつもの強気な姿勢は完全になりを潜め、 エレンもうっすらではあるが目の下に隈が出来ていた。
 「全く。 なんで優はこんな奴らを庇ったのかしら本当に反吐が出るわ…… 」
 
 ルーはぽろっと自身の本音を漏らしてしまう。
 ルーにとって三人の安否など正直どうでもよかった。
 彼女にとって最も大事なことは優の身の安全であり、 それ以外のことなど本当にどうでもよかった。
 だからこそ優が自分の元から離れる原因になった三人の事をどうしても許せる気にはなれなかった。
 「大体あなた達は一体どれだけ優に迷惑をかけていたのか分かっているの? あのダンジョンでもし優がいなかったらあなた達なんて何度殺されていたことか」
 三人は唯黙ってルーの罵倒雑言ともいえる言葉を受け入れていた。
 何せルーの言うことは正しいのである。
 だからこそ三人は反論できない。
 「ねぇ黙って聞いているんじゃなくて何かいたらどうなの?」
 「「「……」」」
 「黙ってないで何か言いなさいよ 」
 ルーの凄まじい迫力に思わず三人は、 瞳に恐怖の色を浮かべる。
 そんな三人の様子にルーの怒りは限界を迎える。
 「なんで優はこんな奴らを助けたのか本当に理解に苦しむわ。 もういい。 貴方達を助けるよう優に命令されていたけどこんな奴ら生かす価値もないわ。 だから私が殺してあげる」
 「それは認められない」
 そう声を上げたのは予想外なことにミカであった。
 「何? 貴方だって優とこいつらのせいで離されて苛立っているんでしょう? ならいいじゃない殺せば」
 「それは認められない。 だってそれは優の意志に反することだから」
 「意志って……貴方優の本心がわかるとでも言うの?」
 「わかる。 少なくとも貴方よりは理解している」
 「ハッ  言ってくれるわね…… 」
 ミカの言葉にルーの殺意は完全に三人からミカに向いていた。
 ー第一段階クリア。 次は……
 ルーを怒らせたのは完全にミカの計画通りであった。
 ミカはルーが自分と同じで独占欲が非常に強い相手だということを昔からよく知っていた。
 だからこそミカはルーよりも自分の方が優の事を知っていると言い、 殺意を三人から移させたのだ。
 無論ミカとて善意で彼女たちを助けたわけではない。
 ミカにとって優の命令は絶対なのだ。
 ただ優からの命令がなかったとしても彼女は確実に動いていた。
 彼女は曲がりなりにも天使である。
 だからこそ迷える人間をどうしても放っておくことはできないのだ。
 
 「死になさい 」
 「そうはいかない」
 今のルーは冷静じゃないということもあり、 攻撃がいかんせん単調になっていた。
 対してミカは非常に冷静であり、 ルーの攻撃はミカに全くあたりもしなかった。
 「クソ  なんで当たらないのよ…… 」
 「その程度の攻撃当たるわけない。 それとも私に手加減しているの?」
 「言ったわねこのクソ女 」
 先程よりもルーの攻撃が速くなる。
 だがそれはあくまで速さだけであり、 攻撃がより単調になっていた。
 「そこ」
 
 ミカの拳がルーの腹にめり込み、 ルーの体から骨の軋む音がする。
 ミカの攻撃は別段特別でもなんでもなく、 普段のルーならばいたって簡単にさばけるような攻撃であった。
だが今の完全に頭に血が上っている状態の彼女ではそれを防ぐ術はなかった。
 
 「ガハッ…… 」
 ミカの拳が余程効いたのかルーは口から血を吐き出し、 必死に立ち上がろうとするが完全に膝が笑っていた。
 そんな弱っている状況をミカは見逃さない。
 「少し眠っていて」
 
 ミカはルーの後ろに回るとそのまま彼女の頭を地面に強く叩きつける。
 それが致命的となり、 ついにはルーは意識を手放し、 ピクリとも動かなくなった。
 「な、 なんで……  貴方達仲間なんでしょう…… 」
 その惨状にいち早く反応したのはミスティであった。
 「別に。 私は優の命令を果たすために彼女が邪魔だから排除しただけ」
 「え? でも……」
 「そんな事よりも貴方達はいつまで落ち込んでいるの?」
 「そう言われてもどうしろって言うんですか? 国とでも戦えというんですか…… 」
 
 エレンは悲痛そうな声を上げる。
 彼女の言う通り優から連絡が取れない以上彼を取り返すにはもはやそれしかない。
 だがそれは最も愚かな行為であり、 常人ならば思いもつきもしない発想である。
 「うん」
 「え?」
 「国と戦って優を取り戻す。 いい考え」
 「ちょ、 ちょっと待ちなさい。 え? 国と戦うですって? そんなの無理よ  だってこっちは全員で突撃してもたったの五人。 それに対して相手は何十万人よ? いくら私達が強いからってそんなの無理よ 」
 「じゃあ貴方は優の事を諦めるの?」
 「それは……」
 「別に私は止めはしない。 ただそれは貴方の優に対する思いはその程度だったってだけ」
 「言ってくれるわね…… 」
 ーよしくいついた
ミカはわざとミスティの気持ちを軽んじるような発言をしたのだ。
 ミカとて彼女が優の事を本気で慕っているのは理解しているつもりである。
 その恋慕の念は彼女の感じる限り三人の中で最も大きい物であった。
 だからこそ自分が一番されたくない優への気持ちを馬鹿にすることによって彼女の心に火をつけようとしたのだ。
 
 「いいわよ  やってやろうじゃない 」
 「え!? いいんですかミスティさん  ここは貴方の祖国なんですよ!?」
 「そんな事知ったこっちゃないわよ  私は自分の国より優の事が大事なのよ  てかあんたはどうするの やるのやらないの  どっち 」
「私は……」
 
 エレンはためらっていた。
 何せ相手は国なのである。
 そんな相手に喧嘩を売るなど正直命を捨てるようなものだ。
 迷っているエレンにミカは容赦ない一言をかける。
 「貴方は恋が何かよくわかっていない」
 「え?」
 「貴方は結局のところ優の事を好きだと口では言っていても本当は好きじゃない。 だからこそそこで迷う。 本当に好きなのならばすべての事を投げ捨てでも好きな人を守ろうとする」
 その一言にエレンはハッとし、 己の考えを恥じた。
 
 「ごめんなさい。 ミカさん。 私が間違っていました。 こんなこと迷うまでもありませんでしたね」
 「じゃあ……」
 「ええ。 私も参加します。 それとミカさん。 私のこの気持ちは偽物なんかじゃありません。 ユウさんを思っているこの気持ちは、 紛れもない本物です。 その点は間違えないでください」
 
 勿論その事をミカはあらかじめ知っている。
 ただエレンを立ち直らせるためにその気持ちを少々利用しただけに他ならないのだが、 それが予想外に効きすぎてしまい、 ミカは少々後悔する。
 -さて後の問題は……
 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
 先程から謝り続けているマチルダであった。
 彼女の傷はミカの想定していたものよりずっと深く、 彼女を立ち直らせるのは至難の業であった。
 だがミカにはそんな彼女を立ち直らせる術が一つだけあった。
 それは……
 「私もダメ……」
 ルーとミカの二人は焦っていた。
 何せ優との連絡が丸一日取れない状況なのである。
 今まで連絡をほぼ毎日とっていた分その事実は、 二人にとって予想以上の不安とストレスを与えていた。
 「やっぱり僕のせいだ……」
 マチルダは優が捕まったのが自分のせいだと昨日から激しく後悔し続けていた。
 そのせいかマチルダは昨日から一睡もしておらず、 自傷行為をし始めるほど彼女は酷く追い詰められていた。
 「あんたのせいじゃないわよ私だって……」
 「そうです。 そんな事言ったら私だって何もできませんでした……」
 優が消えてダメージを受けているのは何も三人だけではない。
 ミスティはいつもの強気な姿勢は完全になりを潜め、 エレンもうっすらではあるが目の下に隈が出来ていた。
 「全く。 なんで優はこんな奴らを庇ったのかしら本当に反吐が出るわ…… 」
 
 ルーはぽろっと自身の本音を漏らしてしまう。
 ルーにとって三人の安否など正直どうでもよかった。
 彼女にとって最も大事なことは優の身の安全であり、 それ以外のことなど本当にどうでもよかった。
 だからこそ優が自分の元から離れる原因になった三人の事をどうしても許せる気にはなれなかった。
 「大体あなた達は一体どれだけ優に迷惑をかけていたのか分かっているの? あのダンジョンでもし優がいなかったらあなた達なんて何度殺されていたことか」
 三人は唯黙ってルーの罵倒雑言ともいえる言葉を受け入れていた。
 何せルーの言うことは正しいのである。
 だからこそ三人は反論できない。
 「ねぇ黙って聞いているんじゃなくて何かいたらどうなの?」
 「「「……」」」
 「黙ってないで何か言いなさいよ 」
 ルーの凄まじい迫力に思わず三人は、 瞳に恐怖の色を浮かべる。
 そんな三人の様子にルーの怒りは限界を迎える。
 「なんで優はこんな奴らを助けたのか本当に理解に苦しむわ。 もういい。 貴方達を助けるよう優に命令されていたけどこんな奴ら生かす価値もないわ。 だから私が殺してあげる」
 「それは認められない」
 そう声を上げたのは予想外なことにミカであった。
 「何? 貴方だって優とこいつらのせいで離されて苛立っているんでしょう? ならいいじゃない殺せば」
 「それは認められない。 だってそれは優の意志に反することだから」
 「意志って……貴方優の本心がわかるとでも言うの?」
 「わかる。 少なくとも貴方よりは理解している」
 「ハッ  言ってくれるわね…… 」
 ミカの言葉にルーの殺意は完全に三人からミカに向いていた。
 ー第一段階クリア。 次は……
 ルーを怒らせたのは完全にミカの計画通りであった。
 ミカはルーが自分と同じで独占欲が非常に強い相手だということを昔からよく知っていた。
 だからこそミカはルーよりも自分の方が優の事を知っていると言い、 殺意を三人から移させたのだ。
 無論ミカとて善意で彼女たちを助けたわけではない。
 ミカにとって優の命令は絶対なのだ。
 ただ優からの命令がなかったとしても彼女は確実に動いていた。
 彼女は曲がりなりにも天使である。
 だからこそ迷える人間をどうしても放っておくことはできないのだ。
 
 「死になさい 」
 「そうはいかない」
 今のルーは冷静じゃないということもあり、 攻撃がいかんせん単調になっていた。
 対してミカは非常に冷静であり、 ルーの攻撃はミカに全くあたりもしなかった。
 「クソ  なんで当たらないのよ…… 」
 「その程度の攻撃当たるわけない。 それとも私に手加減しているの?」
 「言ったわねこのクソ女 」
 先程よりもルーの攻撃が速くなる。
 だがそれはあくまで速さだけであり、 攻撃がより単調になっていた。
 「そこ」
 
 ミカの拳がルーの腹にめり込み、 ルーの体から骨の軋む音がする。
 ミカの攻撃は別段特別でもなんでもなく、 普段のルーならばいたって簡単にさばけるような攻撃であった。
だが今の完全に頭に血が上っている状態の彼女ではそれを防ぐ術はなかった。
 
 「ガハッ…… 」
 ミカの拳が余程効いたのかルーは口から血を吐き出し、 必死に立ち上がろうとするが完全に膝が笑っていた。
 そんな弱っている状況をミカは見逃さない。
 「少し眠っていて」
 
 ミカはルーの後ろに回るとそのまま彼女の頭を地面に強く叩きつける。
 それが致命的となり、 ついにはルーは意識を手放し、 ピクリとも動かなくなった。
 「な、 なんで……  貴方達仲間なんでしょう…… 」
 その惨状にいち早く反応したのはミスティであった。
 「別に。 私は優の命令を果たすために彼女が邪魔だから排除しただけ」
 「え? でも……」
 「そんな事よりも貴方達はいつまで落ち込んでいるの?」
 「そう言われてもどうしろって言うんですか? 国とでも戦えというんですか…… 」
 
 エレンは悲痛そうな声を上げる。
 彼女の言う通り優から連絡が取れない以上彼を取り返すにはもはやそれしかない。
 だがそれは最も愚かな行為であり、 常人ならば思いもつきもしない発想である。
 「うん」
 「え?」
 「国と戦って優を取り戻す。 いい考え」
 「ちょ、 ちょっと待ちなさい。 え? 国と戦うですって? そんなの無理よ  だってこっちは全員で突撃してもたったの五人。 それに対して相手は何十万人よ? いくら私達が強いからってそんなの無理よ 」
 「じゃあ貴方は優の事を諦めるの?」
 「それは……」
 「別に私は止めはしない。 ただそれは貴方の優に対する思いはその程度だったってだけ」
 「言ってくれるわね…… 」
 ーよしくいついた
ミカはわざとミスティの気持ちを軽んじるような発言をしたのだ。
 ミカとて彼女が優の事を本気で慕っているのは理解しているつもりである。
 その恋慕の念は彼女の感じる限り三人の中で最も大きい物であった。
 だからこそ自分が一番されたくない優への気持ちを馬鹿にすることによって彼女の心に火をつけようとしたのだ。
 
 「いいわよ  やってやろうじゃない 」
 「え!? いいんですかミスティさん  ここは貴方の祖国なんですよ!?」
 「そんな事知ったこっちゃないわよ  私は自分の国より優の事が大事なのよ  てかあんたはどうするの やるのやらないの  どっち 」
「私は……」
 
 エレンはためらっていた。
 何せ相手は国なのである。
 そんな相手に喧嘩を売るなど正直命を捨てるようなものだ。
 迷っているエレンにミカは容赦ない一言をかける。
 「貴方は恋が何かよくわかっていない」
 「え?」
 「貴方は結局のところ優の事を好きだと口では言っていても本当は好きじゃない。 だからこそそこで迷う。 本当に好きなのならばすべての事を投げ捨てでも好きな人を守ろうとする」
 その一言にエレンはハッとし、 己の考えを恥じた。
 
 「ごめんなさい。 ミカさん。 私が間違っていました。 こんなこと迷うまでもありませんでしたね」
 「じゃあ……」
 「ええ。 私も参加します。 それとミカさん。 私のこの気持ちは偽物なんかじゃありません。 ユウさんを思っているこの気持ちは、 紛れもない本物です。 その点は間違えないでください」
 
 勿論その事をミカはあらかじめ知っている。
 ただエレンを立ち直らせるためにその気持ちを少々利用しただけに他ならないのだが、 それが予想外に効きすぎてしまい、 ミカは少々後悔する。
 -さて後の問題は……
 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
 先程から謝り続けているマチルダであった。
 彼女の傷はミカの想定していたものよりずっと深く、 彼女を立ち直らせるのは至難の業であった。
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