職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

三十四話 アリシアの決意

 俺は、 風呂から出た後アリシアに酒を勧められたので、 俺達の部屋には、 ベランダがあったので、 今は、 そこで星を見ながら一緒に酒を飲んでいる。
 今日俺が、 飲んでいる酒はワインだ。
 この世界にワインがあるのは、 あまり驚きはしなかったが、 俺自身ワインは、 初体験のため少し緊張している。
 ちなみにアリシアは、 結構お酒を飲むらしい。
 俺は、 アリシアにワインを飲んだことをないと伝えるとおいしい飲み方を教えてくれた。
 そして俺は、 アリシアの言われた通りにワインを一口飲んでみた。


 「どうだ? うまいか?」
 

 アリシアは、 俺がなんて言うか興味津々のようだ。


 「ああ、 うまいぞ。 少し変わった味なんだな」
 「そうか。 それは、 よかった。 なあ、 ファントム一つ質問していいか?」
 「ああ、 別に構わないぞ?」


 俺は、 そう言いながらまたワインを飲んだ。
 個人的には、 前酒場で飲んだものの方が好きなんだが、 これはこれでありだな。


 「お前の目的は、 一体なんだ?」
 

 俺は、 アリシアにいきなりそう言われ口に含んだワインを吹き出しそうになった。


 「い、 いきなりそんなことを聞いてどうしたんだ?」
 「純粋に気になったから聞いてみただけだ」
 「そうか」


 俺の目的か。
 それは、 さすがにアリシアには、 話せないな。
 こいつは、 確かに信用できる。
 だがそれでもこいつには、 話せない。
 ジークに話すのは、 全然問題ないのだが、 なぜかアリシアには、 話したくないと感じた。


 「すまない。 それもいえない」
 「お前は、 そればかりだな。 そんなに私は信用できないのか?」
 「違う。 お前は、 信用できる人間だと俺も頭では理解してるんだ。 だがなぜか、 お前だけには話せないと感じるんだ」
 「それは何故だ?」
 「それが、 言葉にできたら苦労しない。 だが一つだけ言えることはある。 俺は、 この国を強くしよう。 そしてもっと国民の生活を豊かにして、 犯罪人などの数も今より減らし、 人にとって理想的な国を作ると。 それと同時に俺は自分の目的を完了させるためなら、 ありとあらゆる人間を利用し、 騙すこともするがな。 だから、 あまり俺のことは信用しないほうがいいぞ?」
 「ふふふふ」
 「おい。 自分でも恥ずかしいことを言っている自覚は、 あるんだから笑うな」
 「違う違う。 私は、 お前がこの国を理想郷にできることを確信している。 だから、 その部分に笑ったのではない」
 

 こいつ俺のことを高く評価しすぎじゃないのか?


 「なら、 何処がおかしかったんだよ」
 「それは、 お前が目的のためならありとあらゆる人間を利用し、 騙すこともするといった部分だ。 お前には、 そんなことできるわけないのにな」
 「そんなことがなぜお前にわかる」
 「わかるさ。 何せお前は、 初めは私のことを道具として利用するつもりだったんだろ?」
 「なぜお前がそれを知っている」
 「ジークから聞いたのだ」
 「そうか」


 あのおっさん余計なこと言いやがって


 「それで話を戻すが、 そんなお前は結局私のことを今は、 道具として見ていないだろ?」
 「それは、 おっさんにお願いされたからであってな……」
 「いや。 お前は、 仮にジークにお願いされていなくても結局今と同じ道をたどっていただろうな」
 「なぜそう言い切れる。 また俺のことを優しいというつもりなのか?」
 「ああ、 何度でもいうさ。 お前は、 口では人を利用するとは言っても最後は、 見捨てられずその人を助けてしまう。 そんな誰よりも不器用で、 そして誰よりも優しい奴だとな」
 「忘れたのか? 俺は、 王派の兵士をためらいなく皆殺しにし、 お前の父親と兄を残酷にに殺したんだぞ? それのどこが優しい奴なんだ?」
 「あれは、 私の予想だと王派の連中については、 なるべく痛みを感じないように殺したんだろ? それと父上と兄上の方は、 ユリシアのことをひどく言われたのだろう? そしてお前は、 初めはユリシアに詫びる気があれば殺しは、 すれどもあそこまでひどく殺すつもりは、 なかったのではないか?」
 「違う。 俺は、 王派の連中についてはただ楽な殺し方だったから糸を使って殺しただけだ。 王と王子については、 ただあいつらが憎くて、 殺したかっただけだ」
 「違わない」
 「お前に俺の何がわかる!」


 正直今の俺は、 あまり冷静では、 ないのだろう。
 これ以上俺は、 自分の心に踏み込んでほしくない。


 「わからないさ。 何せお前は、 私に自分のことについて一切話してくれない。 だが、 そんなお前がどんな人間よりも優しい奴だということだけはわかる」
 「俺は……」
 「なあ、 なぜお前はそこまで自分を認めないんだ? お前は、 今まで周りの人間にもそう言われてきたのではないのか?  なぜそこまで頑なに否定しようとするんだ」
 「それは……」
 「その理由についても私が、 この際言ってやる。 そうでも思わないとお前は、 耐えられないんじゃないのか? お前は、 根が優しい分自分が他人に対して何をしたのかを理解している。 そしてこのままお前の目的を進めればお前は、 さらに人を殺すことになり途中でその重圧に耐えきれなくなり、 壊れてしまうかもしれないぞ?」
 「そんなことは、 わかってる! ああ、 認めてやるよ! 俺は、 お前の言う通り本音では、 誰も利用したくないさ! 誰も傷つけたくないし、 できる限り人殺しもしたくない! そして、 俺の計画を推し進めればいずれ自分が壊れるかもしれないことも理解している! それでも俺は、 止まるわけには、 いかないんだよ!」
 「お前の気持ちは、 人間ならだれもが感じていることだ。 だからお前は、 自分一人で解決しようとするのではなくもっと人に頼るべきだ」
 「頼れるわけないだろう! これは、 俺が自分で決めたことだ! それに他人を巻き込めるわけないだろ!」
 「なら、 私を頼れ! 私は、 お前の妻だ! 決してお前にとって他人なのではない! 夫を支えるのが妻の役目だろ!」
 「……」


 俺は、 何も言えなくなってしまった。
 何せ今アリシアは、 顔から大粒の涙を流している。
 きっと彼女は、 俺のことを深く愛してくれている。
 そんな俺が壊れるかもしれないと知ってとても不安なのだろう。 
 だが俺は、 そんな彼女の気持ちを知って、 さらに計画を止めるわけにはいかなくなった。
 

 「なあ、 ファントム。 まだ間に合う。 だから……」
 「それ以上言うな。 俺は、 もう止まれない。 止まるわけには、 いかない。 俺の手は、 すでに血で汚れている。 そんな俺が今ここで、 自分の信念を折り、 楽な道に逃げるわけにはいかない。 そうでないと俺が奪ったものは、 すべて無駄な命だということになってしまう。 だからたとえお前に何を言われようが、 止まるわけにはいかないんだ」
 「わかった。 なら、 私も一つ決意をしよう。 私は、 お前が自分の計画を進めて心が傷ついた時には、 私はお前のことを誰よりも強く抱きしめ、 お前のことを愛し、 慰めよう。 そしてお前が自身の道を見失いそうになったら、 その時は、 私が導いてやる」
 

 俺たちは、 その言葉を最後に話をきりあげ、 部屋の中に戻り、 ベットも一つしかなかったため、 同じベットで就寝した。
 寝る時アリシアは、 俺のことを抱きしめてきた。
 俺はというとベットに入るとさすがに二日間徹夜していたこともあり、 すぐに眠ってしまった。
 そして、 朝になると俺は、 いつもより早く起きルーにお願いして宿へと戻っていった。
 俺は、 宿に戻る前に、 アリシアに書置きを残しておいた。


 「おかえり優」
 「ただいまルー。 早速だがそろそろ計画を次の段階に移そうと思う」
 「わかったわ。 それで優は、 次にどうするつもりなの?」
 「次は、 エルフの国をもらう」


 俺は、 キメ顔でそう言った。


 「優に、 なに変な顔してるの?」
 「う、 うるさい!」



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