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職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

第二十七話 VSワイバーン

 ワイバーンの群れは城を出てから約十分ほどの距離に滑空していた。


 「き、 気持ち悪い……」


 優の足の速さはすさまじく、 お姫様抱っこされていたアリシアはその速さについて行けず、 顔が青ざめていた。


 「大丈夫ですか?」
 「お前もっと丁寧に運べないのか? 仮には私は、 女性なんだぞ?」
 「すみません。 今の優先順位としましては、 一速くワイバーンを殲滅することの方が重要でしたから」
 「全く。 もういい。 それと伝え忘れていたが明日はお前を国民の皆に紹介するだから絶対に来るのだぞ!」


 アリシアはそう言うと優から少し離れた位置の場所に道具を準備し始めた。
 アリシアの取り出したものは、 ビデオカメラと非常に似ており、 優はその道具が何なのか質問せずにはいられなかった。


 「その道具は何というのですか?」
 「これか? これは、 マジックビジョンというものだ。 これに魔力を注ぐと遠い場所にもその場所の映像がリアルタイムで送ることができるのだ」
 「なるほど。 それでアリシアは、 それを何分ぐらい使えるんですか?」
 「大体一時間ぐらいが限界だな。 だが一時間でワイバーンの群れを殲滅するなんていくらお前でも……」


 そういうアリシアの表情はかなり苦々しい顔をしていた。
 それは偏に自身の力不足を恨んでいるからこそ出る表情であった。
 アリシアは、 人間の中ではかなり多い部類に入っている。
 そんなアリシアが何故一時間しか持たせられないかと言うとそれは偏にマジックミラーの燃費がかなり悪いのだ。
 その為マジックミラーは城の魔術師複数人で使うものなのだ。


 「了解しました。 なら一時間以内に片付けさせてもらいます」


 優のその飄々とした声にアリシアは、 驚きを隠すことはできなかった。
 「は? お前は馬鹿なのか? いくらお前が六枚羽の契約者でかなりの実力の持ち主だとしてもワイバーンの群れを一時間で殲滅できるわけがない!」
 「それはすぐに証明してみせるので姫様はそこで黙って見ててください」


 優のその言葉にアリシアは、 笑わずにはいられなかった。


 「ハハハ! お前は本当にすごい奴だよ」
 「それは、 褒めてるんですか?」
 「もちろん。 だから嬉しそうにしろ」
 「おや。 無駄話をしている間にも、 どうやらワイバーンの群れが来たようですね」
 「む。 無駄話とは、 本当に失礼な奴だな貴様は!」


 ワイバーンは、 基本群れで行動する生物である。
 群れということは当然その中にリーダーが存在し群れのリーダーはワイバーンの中で最も体の大きい物がそれにあたる。
 またワイバーンの群れは、 リーダーに絶対服従であり、 群れのリーダーが攻撃された際は、 その手下がその攻撃した物へと一斉に襲い掛かる習性がある。
 優は、 この習性を城で本を読んで理解しており、 今回はその習性を利用した作戦を立てていた。


 「さてまずは……」


 優はまず手始めに群れのリーダーを狙うように巨大な弓とその弓専用の矢を想像魔術を使い作り出した。
 この弓は、 破壊の弓を優なりにカスタマイズした物であり、 優は破壊の弓改と名付けていた。
 矢の方は、 ダイヤモンドを素材にイメージして制作していた。
 これは偏にワイバーンの鱗が固いのが原因であり、 半端な材質だと鱗を貫通出来ないからだ。


 「お前……それ一体どうやって……」


 アリシアは、 破壊の弓改への興味を隠し切れないようで、 もしアリシアに尻尾が生えていたとしたら確実にその尻尾は物凄い速さで動いていただろう。
 優はそんな様子のアリシアには気づいていたものの流石に会話をする余裕はなかったようで、 アリシアの事を無視したまま弓の弦を大きく引きそして……


 「くらえ!」


 リーダーの頭目掛けて思い切り放った。


 「グォォォォォォォォォォォォ!」


 優の放った矢は凄まじい速さで飛んでいき、 見事ワイバーンのリーダーを撃ち落とすことに成功した。
 普通の魔物ならすでに絶命していてもおかしくない一撃を喰らったのにもかかわらずワイバーンは、 まだ生きていた。
 それどころか優を敵と認識し、 自分を傷つけた優に対し強い怒りをあらわにしていた。


 「アリシア! とりあえずお前は、 自分の身を守ることだけを考えろ!」
 「わ、 わかった」


 そんな様子を感じ取った優は、 いつもの口調でアリシアに逃げるように伝え、 リボルトナイフを作る前にお遊びで作った巨大な鎌を作り出した。
 この鎌の素材は、 優がダンジョンで苦戦したブラックマンティスを使っており、 その刀身は深淵のように黒く、 死神が持っている鎌を彷彿とさせるシルエットだった。


 「ルーと契約してから初の死闘だ。 精々俺を楽しませてくれよ!」


 優は別段戦いが好きな性格ではない。
 ではなぜ今このようなことを言ったかというとそれはやはり優も自身の命が危険に晒されていることに少なくとも緊張し、 恐怖しているのだ。
 優はまだ高校二年生の子供である。
 そんな子供が自身の命が危険に晒された場合、 泣き叫んでも全くおかしくはない。
 だが優は、 アリシアに約束したのだ。 ワイバーンを殲滅してやると。
 だからこそこのような発言をし、 自分の弱音を打ち払ったのだ。


 「「「「グルゥゥゥゥゥゥゥ!」」」」


 リーダーが撃ち落とされたことにより普通のワイバーンも地上に降下し始め、 今は優に対し唸り声をあげていた。
 優はこの状況に対し、 真正面からワイバーンの群れへと突っ込むことを選択した。
 

 「正面から突っ込むなんて自殺行為だ! お前さっき自分でそう言っていただろう!」


 優とてそんな事理解している。
 それなのにも関わらず優は、 その方法を選択した。
 それは偏に優には自信があったのだ。
 自身のスピードに対して圧倒的なまでの。


 「な!?」


 優とワイバーンまでの距離は、 代々50mほどである。
 この世界で最速と言われる人間でもこの距離を詰めるのに最速だったとしても2秒はかかってしまう。
 だが優は違った。
 なんと優はその距離をおよそ図ることが不可能なほどの速さで詰め、 その速さを乗せた一撃を群れの内一頭に放ち、 そのまま首を切り落としたのだ。
 そんなあまりの光景にアリシアは、 唯呆然として見守るほかなかった。


 「ハハハ! もっと! もっとだ!」
 

 優は、 全身がワイバーンを殺した際の返り血によって真っ赤になっているのにも気づかず、 ただひたすら殺戮を続けた。 
 

 「ガァァァァァァァァァァァァ!」
 「うるさい!」


 優は手に持っていた鎌を方向を上げた個体へと投げつけ首を切断する。
 その間にも他の個体は次々に優へと迫っており、 それを優は蹴りや拳を放ってうまくいなし、 その隙にまた新しい鎌を作り出し真っ二つに切り裂いた。




 「ええい……きりがないな……」


 優が何故鎌しか使わないかと言うとそれは、 鎌という武器が印象に残りやすいからだ。
 本来鎌とはあまり武器には適しておらず、 扱いも非常に難しい。
 それなのにも関わらず人気があるのは、 それはやはりカッコよさにある。
 だからこそ優は、 あえてその武器を使うことによって自身の技量を示しているのだ。
 

~~~~~~~~~~~


 「クリエイト」
 

 あれから五十分優は、 ワイバーンの群れをほとんど殲滅していた。
 もちろんいくら優が強いと言っても無傷ではおられず、 何度も攻撃をくらい体のいたるところの骨は何度もへし折れ、 その都度不死の回復力で回復をするといったことを繰り返していた。
 だがいくら不死の回復力が凄まじいと言っても優の体は、 すでに限界に近かった。


 「はあはあ。 このトカゲ野郎どもかなりしつこいな。 だからと言って禁呪を使うわけにはいけないな」
 

 優はあまりの辛さにそう不満を漏らさずにはいられなかった。
 優が禁呪を使えない理由それは、 禁呪の力が強大すぎるのが原因である。
 人間あまりにも強大な力には恐怖する。
 だからこそ優は、 ほどほどの強さを演出しなければならないのだ。


 「全く……禁呪を使わず、 さらに自分の実力を見せつけなくてはいけないなんて我ながら少々無謀すぎたか……でも今さら後悔しても遅いか……今はとにかく誰よりも早く動き確実にあいつらの命を刈り取る!」


 優は既に凄まじいスピードをしているのにも関わらずダメ押しと言わんばかりにアクセルを使いさらに自信を加速させ、 その勢いのまま遂には最後の一匹まで追いやった。


「はあはあ……後は……お前だけだ……」
 

 だが優の体は既に限界を迎えていた。
 不死の再生力は限界を迎え、 体の至る所が骨折していた。


 「クソ……こんなところで ……追われるかぁぁぁぁ!」


 優は叫んだ。 自身の体は既に限界で骨のきしむ音が自身の耳にまで聞こえてきていた。
 だがそんな痛みを優は、 叫び、 興奮することによってごまかし、 そしてついにはワイバーンの羽を切り落とした。


 「ガァァァァァァァァァァァァ!」


 ワイバーンは自身の羽がもがれたのがあまりにいたかったのか町まで届くほどの大きな悲鳴を上げた。
 

 「これでチェクメイトだ! くたばりやがれぇぇぇぇ!」
 

 優はそのまま尻尾を切り落とし、 止めに首を切り落とそうと考えていた。
 だがしかしそんな優の攻撃は、 実現することはなかった。


 「な……に……」


 ワイバーンは、 今までの優の殺し方を覚えていたのだ。
 そして今回も同じ手で来るであろうと読んでおり、 優の肩をそのまま喰いちぎった。
 

 「ファントムゥゥゥゥゥ!」


 アリシアは叫ばずにはいられなかった。
 ワイバーンの唾液には強い毒性があるのだ。
 そんな毒を直接受けた優は、 そのまま地面に崩れ落ち、 捕食されようとしていた。
 いくら羽がないワイバーンとは言えたかが普通の人間一人が突っ込んだところで状況が覆ることは決してない。
 だがアリシアはそれでも優を助けるために突っ込まずにはいられなかった。
 この時初めてアリシアは、 自分が優の事を愛していると自覚した。


 「ファントムはやらせん!」
 

 アリシアは、 ワイバーンの顔目掛け切りつけようとしたのだがそれはあっさりよけられ、 ワイバーンの尻尾という強烈なカウンターを入れられてしまい、 そのまま吹き飛ばされてしまった。


 「グッ……」
 -は、 早くファントムを助けないと……


 アリシアはそう思いながら必死に立ち上がろうとするがカウンターが全く立ち上がることができない。
 それどころかうまく呼吸することすらできない状況にあり、 口からは血が出ていた。
 それでもアリシアは、 優を助ける為に地面を這いずりながら優の元へと向かっていった。


 「わ……私は……」
  ーまた守れないのか……それだけは! 私の命を捨て出ても絶対に認めるわけにはいかない!


 「わ……私は!」
 「……もういい。 それ以上無理するな……」
 「え?」
 

 正面を見るとそこには優がワイバーンの首を切り落とす瞬間がアリシアの目には移しだされた。
 今の優はアリシアの体の何倍も重傷であった。
 それなのにもかかわらずたちあがれたのは、 アリシアが自身の命を救おうとする場面を目のあたりにしたからであった。


 「女は……男が守んなきゃいけないんだよ……だからお前はそのまま休んで……」


 優は、 最後まで言い切ることができず地面に崩れ落ちそうになったがそんな様子を察知したアリシアは、 立てるほどには回復しており、 優の体を地面に落ちぬよう優しく受け止めた。


 「全く。 お前は大した奴だよ」


 アリシアは優の額にキスをすると優を自身の背中に背負った。


 「早く。 城に戻らないと……」
 

 だがアリシアも限界だったようでその言葉を最後にそのまま気絶してしまった。


 「待ったく。 本当優は無理するんだから……」


 ルーはそう言いながらワープホールから出てきた。
 ルーがこの場にいるのは偏に優の身に危険が迫ったと感じたからだ。
 そして街の中に映し出された映像を見てこの場所を特定したのだった。


 「さてコイツどうしようかしら?」
 

 ルーはまるで汚物を見るかのような目でアリシアの事を見た。
 そしてアリシアの首をへし折ろうとした瞬間自身への強烈な殺気を感じた。


 「……ルー。 そいつは俺のだ……手を出すな……」


 そのさっきの正体は優であった。


 「優! なんで止めるの!」
 「り……ゆう……は……後で……言う。 だから……今は……」
 「分かったわよ! すでに優は死に体なんだから無理しないで!」
 「た……すか・……」
 「もうしゃべらないで!」




 ルーはそう言うと優を背負い、 アリシアとマジックミラーを城宛のワープホールに放り込むとその場を後にした。

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