職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

第二十六話 再戦

 時は移り優の今の状況はというと今まさに王女に対し求婚中であった。
 優が何故そのような行為に及んでいるのかはいたってシンプルな理由である。
 優は、 王女と結婚し王になりたいのだ。
 無論優は、 アリシアに対し行為をもってこのようなことはしていない。
 それに王になりたいのだというのならアリシアを殺してしまったほうが楽である。
 だがそれができない理由があった。
 それはアリシアの容姿がユリシアに非常に似ており、 剣を抜こうとした瞬間シアの笑顔が優の頭によぎるのだ。
 優とてそのような可能性も存在しうるとあらかじめ想定はしていた。
 だが実際にその状況に遭遇し、 優は自身が自分の想定していたよりもユリシアの事を大切に思っていたことを知り、 その姉であるアリシアの事を殺すことはできないと悟ってしまったのだ。
 その為優は、 アリシアを自分の妻に迎え死ぬまで利用しようと心に決めたのだ。
 またこの方法には他にもメリットは存在する。
 そのメリットとは、 革命を抑制することができるのだ。
 力で人を支配するだけでは、 民衆はついてこない。       
 優はそれをよく理解していた。
 だからこそ優が無理やり玉座についた場合必ず革命は発生する。
 そのたびに力づくで国民を抑えていてはいづれ国民はいなくなってしまう。
 また優も力をそのような事に使いたくはなかった。
 そのためにも優は、 ここでなんとしてもアリシアを口説き落とし結婚しなければならなかった。
 ただ王になるだけならアリシアと結婚するのではなく、 すでに優に対して好意を持っているユリシアと結婚すると言った手段もあるが、 優はそれを自身の中で禁じてと定めていた。
 ユリシアと結婚した場合、 まず初めに自身の計画が雪達に知られる可能性があるのだ。
 それだけでなく優は、 ユリシアをもう二度と城に戻したいとは思っておらず、 道具のように扱うなどもっての他だと考えていた。
 

 「さて王女様。 返答はいかに?」
 「仮面野郎をぶち殺せ!」
 「俺たちの王女様に何してくれてんだ!」


 周りの人間は、 優の言葉に怒りをあらわにした。
 

 「黙れ。 お前らに聞いているのではない。 部外者は黙っていろ」


 優はそう言いながら周りに強烈な殺気を放った。
 すると先ほどまで優に対し暴言を浴びせていた人たちは、 そのさっきのあまりの大きさに声すら上げることができなくなってしまい、 気が弱い者は気絶してしまっていた。
 だがそんな強烈な殺気を浴びせられて尚行動できるものが一人だけいた。


 「ファントム様と申しましたかな?」
 

 剣神ジーク・シュタインである。
 優はジークが前に出てきた時仮面の下で少し悲し気な表情を浮かべた。
 今の優は、 ジークの何倍、 いや何十倍強いと言っても差し支えはなかった。
 ジークもその事を理解しており、 顔には死を覚悟した男の顔をしていた。
 そんなジークの気持ちを一か月程度の付き合いとは言え、 優には理解できてしまったのだ。


 「剣神ジーク・シュタイン様。 私に何かようですかな?」
 「いえ。 少々私と手合わせしていただけませんか?」


 このタイミングで殺し合いではなく、 手合わせというジークの言葉に優は少し困惑の表情を浮かべた。
 そののちアリシアの方を見たがアリシアは、 未だ気持ちの整理ができていない状況であり、 優はそれを知るとジークの申し出を受け入れる旨を伝えた。
 優がこの提案を受け入れたのには二つ理由がある。
 一つは、 ジークの考えを知りたいという気になったからだ。
 二つ目はこの国の最強戦力である剣神を倒せば周りも自分の実力を認めると考えたからだ。




 「ルールは?」
 「特にありませんよ。 魔法でもなんでも使いたい放題。 ただし相手が参ったと言ったらか死んだら終わりです」
 「ほう。 殺しもありと?」
 「ええ」
 「それなら早く決着がつきそうですね」


 優のこの言葉は、 もちろんブラフだ。
 この言葉には、 “ここでビビって引いてくれるなら引いて欲しい” そんな優の気持ちが籠っていた。
 だがそんな優の期待は、 当然裏切られる。
 



 「ほほほ。 私ももう年ですがそれでも剣神。 そう易々とやられるわけにはいきませんな」
 ーやっぱりダメか……


 優はため息をつくとジークと距離を取り、 剣を構えた。


 「おや大分変った型をしていますね」
 「そうですかな?」


 優は今回右手には反逆の大剣ルシファー、 左手にはリボルトナイフとかなりアンバランスな組み合わせで望んていた。
 それに対しジークは、 以前とと同じく直剣と盾である。
 ジークの武器のレベルは相当な物であったが優の武器には到底及びはしていなかった。




 「ではいきますよ!」


 律儀にジークはそう言うと優とジークの試合は始まった。
 優は、 ジークが一体どうやって攻めてくるのか考えを深く巡らしていたがその思考はすぐに放棄することとなった。
 何せジークは真正面から突っ込んできたのだ。


 「ふざけているのか! 正面から突っ込むなんて愚策だと言ったのはあんただろう!」


 優は怒りのあまりついいつもの口調に戻ってしまった。
 だが優が怒声を上げている間にもジークは、 盾の武技であるバニッシュを優目掛け放ってきた。
 バニッシュは主に相手の武器を弾き飛ばす武器である。
 この武技は至ってシンプルな効果だがその分使用者の筋力が上がれば上がるほどすさまじい効果を発揮する。
 だが逆を言えば自身の筋力が相手より低ければその技は、 不発に終わるどころかかえって大きな隙を生み出してしまう技なのだ。


 「もういい。 これで終わりだ」


 優は、 ジークの盾目掛けすさまじい速度で蹴りを放った。
 その蹴りの威力はすさまじくジークの盾は、 あっという間に壁際まで吹き飛ばされしまった。
 そして優は、 怯んだジークの首目掛け大剣ふったがそこは剣神。
 優の想定していたよりも早く怯みから回復し、 優の大剣を剣を両手で持ち、 その軌道をすれすれで逸らすことに成功した。


 「まさか。 実力差がこれほどあるとは、 少々想定外ですな」
 「あなたの力はその程度なのですか? それでも剣神と呼ばれるほどの男なのですか?」
 「いやはや。 耳が痛いですな」


 口調こそ戻っているものの優は、 未だ怒り狂っていた。
 何せ自分の尊敬していた人物から最も愚策と言われる戦法を取られたのである。
 これは相手を侮っていると言ってもかごんではないと優にはそう感じていたのだ。
 肝心のジークはというとやはり先ほど優の大剣を逸らした際の衝撃が完全には抜けきっておらず、 両手ともに痺れていた。


 「さて今度はこちらから行きましょうか」


 優はそう言うと優は、 ジーク目掛けジグザグに走行し、 大剣を思い切り振りかぶった。
 ジークの剣は先ほど優の攻撃をさばいた際すでにひびが入っており、 防げても後一撃が限界であった。
 ジークとてそれは理解しており、 優の大剣を受け流そうと試み、 受け流すことには何とか成功したが、 優の左手にはリボルトナイフが握られており、 優は受け流された瞬間大剣を話し、 その勢いを利用したままリボルトナイフでジークの剣を完全に破壊した。


 「これで終わりですね」


 優は、 そう言いながらジークの首筋に短剣を突き付けた。
 ジークは今まさに自身の命が脅かされているのにも関わらず何故か笑顔であった。


 「いやはや。 まさかこの私が、 負ける日が来ますとわ。 お見事です。 優様」
 

 ジークのそのか細い声を聴いた瞬間優は、 仮面の下で驚愕の表情を露わにした。
 

 「いつ気づいたんだ?」
 「最初からですよ。 ただ口調がいつもと違ったので怒ればいつも通りの口調に戻るかと思いましたのでわざとあんな馬鹿な戦法を取らせていただきました」
 -完全にやられた……


 優は、 首筋に突き付けていた剣を下ろし可笑しさの少し笑ってしまった。


 「全くくえないおっさんだな」
 「そうですかな?」
 「そうだよ……全く本当にあんたは……」
 「そんな事よりも優様。 生きていてくださって本当にありがとうございます」


 ジークの今にも泣きだしそうな顔を見て優の心は、 少し暖かい気持ちになった。


 「ええい! その顔やめろ! 恥ずかしくなるだろう!」 
 「すみません。 それでなのですがユリシア様は……」
 「生きてるよ。 それと俺の大切な奴らは全員生きてるよ。 あ、 それと勇者」
 「そうですか。 本当に本当によかった……訃報を聞いた時私はまた……」
 「ああもう! その話はあとだ! そんなことよりおっさん。 あのお姫様の名前とあのお姫様は、 なぜ女王になりたいのか教えてくれないか?」
 「……わかりました」


 ジークは優にアリシアの過去。 そして何故アリシアが何故女王になりたいのか包み隠さず伝えた。


 「なるほど。 理由はわかった」
 「優様は、 姫様をどうなさるおつもりなのですか?  優様はユリシア様のことを大切に思っておられる様子でしたからお二方をお殺しになったのでしょう。 ですが姫様は顔がユリシア様に似ておられるため、 殺さず道具として利用するつもりなのでしょうか?」
 「おっさん。 あんたエスパーかよ。 確かに俺は、 おっさんの言う通りあいつを死ぬまで利用するつもりだった。 だがまあおっさんの話を聞いて、 あの甘ちゃんがシアのことに頑張ってきたのは、 理解できる。 それにおっさんもあいつの事を大事に思っているようだからそれはやめにしようと思う」
 「ありがとうございます」
 「そんな事よりもなんであいつ。 アリシアは一度もシアに会いに行かなかったんだ? それにシアの最近の状況について知っていたのか?」


 優のその質問にジークは首を横に振り、 ゆっくり語りだした。


 「姫様はきっと最近のユリシア様の状況についてお知りになっていないでしょう。 何せ最近の姫様は、 かなり御多忙だったようですから」
 「なるほど。 その言葉であいつの望みが自身のエゴであることは理解した。 全くどいつもこいつも何故シアの事を理解できないんだが。 いいかジーク。 シアはいつ自分の待遇の改善を望んだんだ? あいつはなただ一人自分を愛してくれる人が欲しかっただけなんだよ。 それを理解できなかった時点で、 あいつにシアとかかわる資格は今後一切ない」
 「……そうですか」
  「全くそう落ち込むなよ。 それに人の話は最後まで聞け」
 「と言いますと?」
 「俺とて鬼じゃない。 あいつがシアのことを思って行動したのもまた事実だ。 だからこそ俺はあいつにも人並みの幸せ。 いや全世界の人間の中で最も幸せにしてやるとここに約束しよう」
 「……ありがとうございます。 姫様は、 今まで青春と呼べる時代のすべてを捨ててきました。 そんな姫様は、 どこか愛に飢えているようにも感じます。 だからそんな姫様に愛というものがどんなものか教えてください。 そうすれば私は、 優様のために行動すると約束しましょう」


 ジークは他の目があるにもかかわらず、 優の前で跪いた。
 その事は優だけでなく周りの人間すべてを驚かせた。


 「おい止めろ! 恥ずかしいだろう!」
 「ですが……」
 「もういいから早く立て!」
 「わかりました」
 「全く。 なぜおっさんは、 そこまであのお姫様にこだわるんだ?」
 「実は私には妻も子供がおりません」
 「へぇ……」
 「だからでしょうか。 姫様のことを自分の娘のように感じているのです」
 「なるほどな。 おっさんにとっては、 あいつが大事な者なのか。 ならば俺は、 さっきの約束全力で守らないとな」
 「はい。 姫様をよろしくお願いします」
 「任された。 にしても俺みたいな人でなしに任せていいのか?」


 優のその言葉がジークを冗談ととらえたのかジークは盛大に笑って見せた。
 

「おい! 何故笑う!」
「いえ。 優様があまりに可笑しな事を言われますから……」
「俺そんなおかしな事言ったか?」
「ええ。 いいですか優様。 優様は決して人でなしなのではありませんよ。 優様は、 とてもおやさしい方です。 それは優様のユリシア様に対する扱いを見ていればきっと誰だってそう理解できると思いますよ」
 「全くどいつもこいつも俺のことを優しいとか言いやがって、 俺は自分にとって大切な者を守るためならどんなことでもするような男だぞ? そんな俺が優しい人間なわけないだろ」
 

 優はその言葉をジークに言うとゆっくりとアリシアの元へと近づいていった。


 「ジーク様から詳しいあなたの事情は、 聴きました。 そして初めに言わせてもらいます。 あなたの願いは、 エゴです」
 「……私の願いがエゴだと?」
 「はい。 そしてあなたが救いたかった第二王女ユリシアは、 もう死んだのです」
 「ユリシアが死んだ?」


 アリシアの目からは絶望の色が見て取れた。
 だが優は言葉を止めない。
 

 「これは、 すべてあなたのせいですよ。 あなたは、 一度でも自分から彼女に会いに行ったのですか? そして彼女に自分の気持ちは話したのですか? 話していないのでしょう? だからあなたのその願いはエゴです。 そしてそんな貴方は全てが間に合わなかった。 全てあなたのせいですよ」
 「わ、 私は遅かったのか?」
 「いいえ。 速度の問題ではありません。 あなたは、 自分では妹を助けるためと言っておきながら、 最後の最後で、 彼女のことを無視し、 女王になることを優先した。 そのせいで貴方は一番守りたかったものを失い、 与えられた報酬は、 意味のない玉座という席だけです」
 「わ、わたしはぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 

 アリシアは、 優のその言葉に遂に耐え切れなくなり、 年相応の少女のように激しく泣き叫んだ。
 その様子に、 彼女を今まで近くで見てきた人物は目を見開いた
 アリシアは強い女性である。 その為今まで人前で泣くといった行為をしたことがなかったのだ。
 みな慰めの言葉をアリシアに向ける中優だけは違い、 優しい言葉どころか彼女の胸倉をつかみ、 残酷な言葉を浴びせつづけた。


 「泣けばゆるされると思ってんじゃねぇぞ小娘。 理由はどうあれお前は、 ここまで革命軍を組織し、 彼らに夢を見せてきた。 その代償としてお前は、 次期女王にならなくちゃいけない。 だから今更泣いてやっぱりやめますなんて言うのは、 俺が決して許さない」
 「な、 なら私はどうすれば……」
 「お前が無理ならこの俺がやってやる! 俺がお前の代わりにこいつらを導いてやる! この国は、 お前の父のせいで治安がよくない。民衆の中にももしかしたらお前の妹と同じ立場の人間がいるかもしれない。 その人間を助けたいとあんたは思わないのか?  俺ならそれを自分が死ぬまで続けるね。 それが、 最低限の罪滅ぼし。 ケジメって奴だろう? それだけじゃない。 この国は、 他の種族の国に比べて圧倒的に弱い。 今のままだといつか魔王軍に本気で攻められた時あっという間にこの国は崩壊する。 だが案ずるな。 その点も全部俺一人で何とかしてやる! だからお前は俺の妻になれ! これは、 契約みたいなものだ。 お前は、 俺のことを愛さなくていい。 だが俺は、 そんなお前のことを愛そう! たとえお前が、 周りの人間から憎まれようが、 迫害されようが俺が、 自分の命を懸けてお前を守ってやっる! そしてこの世のどの人間よりもお前を幸せにしてやる! それをここに誓おう!」
 「た、 確かにお前は強い。 だが一人で魔王軍や魔物の進行を防ぐなんて人間ができるわけがない!」
 「できるさ。 何せ俺こそ正真正銘の化け物なんだからな」


 優はそう言うと普段は手袋をして隠している自身の右腕に刻まれた契約紋をこの場にいるもの全員に見せつけた。


 「な!? そ、 それは契約紋!? しかも六枚羽のものだと!?」
 「ああ、 そうだよ。 俺は、 人類で多分一人しか存在しないであろう六枚羽の契約者だ」
 「そ、 そんな馬鹿な! あんな化け物と契約できる人間がいるわけがない」
 「だが、 いるんだよ。 いい加減理解しろよ。 甘ちゃんお姫様」
 「私は、 甘ちゃんなのではない!」
 -やっと反論できる程度には気力が回復したようだな


 優はそのアリシアの言葉を聞きアリシアの胸倉をつかむ手を離した。


 「じゃあお前は認めないのか?」
 「いいや。 貴様の強さを見て認めざるをえないということも理解している。だから私は、 お前の言葉を信じてみようと思う。 皆の物私はコイツの求婚の申し込みを受けよう思う異論は認めん!」
 「ひ、 姫様ですが……」
 「認めないといっただろう!」
 「ひっ!?」
 「ありゃりゃ……こりゃもしかしたら恐妻家になりそ……」
 「何か言ったかファントム?」
 「い、 いや何でもない……」
 「そうか。 ならいい。 それとこれからよろしく頼むぞ我が夫よ」
 「言い方古いな……」
 ーだがまあ何とか成功はしたな……ふぅ疲れた……


 やっと目的も果たし終え優は、 休憩しようかと思ったタイミングで想定外の出来事が発生した。


 「も、 申し上げます!」
 

 革命軍に中で伝令係と思われる男性がかなり焦った様子で部屋の中に入ってきたのだ。


 「なんだ? 一体どうした?」


 今のアリシアは、 先程まで落ち込んでいた様子は微塵もなく、 それどころかいつもより凛としており、 女性としての魅力がさらに増したかのように思えた。
 だがそんあアリシアの表情¥は、 伝令係からの言葉を聞いた瞬間少し曇りを見せた。


 「ワ、 ワイバーンの群れがこちらに向かっています! その数およそ百頭!」
 「な!? このタイミングで、 ワイバーンの群れだと!?」
 

 ワイバーンとは、 竜種と呼ばれる種族の中では最弱ではあるのだが、 一頭でもS級レベルのモンスターである。
 その生物の群れとなると革命をし終え、 兵力が弱っている今のアーククラフトでは、 対応するのは至難の業と言えた。
だが唯一被害を最小限に抑える方法があった。
 それは……


 「頼めるかファントム?」


 優である。
 今の優にとってワイバーンなど雑魚モンスターに変わりなかった。
 だから優はアリシアにそう言われ二つ返事でかえした。


 「わかりましたよ。 先ほどにも述べたように私一人で何とかしましょう。 それにちょうどいい機会ですのででここらで次期国王である私の実力を見せるとしましょうか。 何か私の戦闘姿を国民に見せられる道具とかありませんか?」
 「ある。 しかしそれを使うのには、 一人お前以外にもついていかなければならない」


 その言葉にジークが名乗りを上げた。


 「その役は、 私がやりましょう。 姫様たちは、 国民の非難をお願いします。 リーゼロッテ様も非難の準備を」
 



 その言葉にリーゼロッテは、 優の身を案じ少しためらう様子を見せたが優が行けと首を振ると大人しく兵士とともにその場を後にした。


 「さて。 それではジーク様よろ……」
 「いや待て。 その役には私が行く」
 

 そのアリシアの言葉にジークと優は少々面を喰らった。
 だがアリシアは、 そんな二人の様子を気にすることなく顔に笑みを浮かべながら言葉をつづけた。
 

 「私は、 この男の妻になるものだぞ? この男が命を懸けるというのなら妻である私が命を懸けるのもまた道理であろう?」
 ーなるほど。 その心意気嫌いじゃないぜ……


 優は目でジークにアリシアと行きたいと訴えかけるとジークは首を縦にふった。


 「許可も出たことですし、 それじゃあ行きましょうか姫様」


 優はアリシアに近づくとあっさりアリシアを持ち上げ、 その態勢は俗に言うお姫様抱っこというものであった。


 「な、 ななななな! お前いきなり何をするんだ! 下ろせ!」
 「無理です。 それに目的に行くにはこれが最適解なんですよ。 何せ私馬より速いですから。 ですからアリシアが来る場合この状態が最速なんです」
 「今私のことをア、 アリシアと呼んだか?」
 「ええ、 そうですよ? いつまでも様付けは、 疲れますし、 奥さんに様つけるのもどうかと」
 

 優のその言葉を最後にアリシアは、 俯いたまま何も言わなくなってしまい、 優はその事を少々不思議に思いつつも気にせずワイバーンの群れ目掛けて夜の街を駆けた。

コメント

  • 白華

    主人公めっちゃ偉そうだな

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