職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)
第十四話 冒険者ギルド
 「それで優はどうやってその国を奪うつもりなの?」
 「それは、 お前が頼みの綱だ。 お前最初あった時空間を歪ませて穴見たなもの作ってでてきただろう? あれを城の中に発生させて、 俺を中に送り込むことは可能か?」
 「可能よ。 でも無料で手伝うのは嫌」
 「子供かお前は!」
 「優は等価交換の法則って知ってる?」
 「そんなもの某有名漫画を読んだことのある俺が知らないわけ……ああ。 なるほど。 そういうことか」
 「どうやら優は理解できたようね」
 
 ルーは含みのある笑みを浮かべ、 優はそのことに少々呆れていた。
 
 「はぁ……それでルーは俺に何をして欲しいんだ?」
 「私の要求なんてシンプルなものよ。 唯優が私と一晩一緒に過ごして、 その間私が何をしようが、 絶対に文句を言わないっていう条件をのんでくれるならいいわよ」
 
 -それ確実に俺の貞操狙う気だろう……
 ルシファーの瞳はまるで餌を狙う獣のような眼差しをしていた。
 -だがコイツの力を借りないと城を奪うことのできる可能性はかなり下がる
 -背に腹は代えられんか……
 「あ、 補足しておくけど私との約束を先に守ってもらうから」
 「わかった。 その条件を呑もう」
 「よし契約成立ね」
 その後優は当日の日程を詳細にルーに語った。
 「さて、 話も終わったことだし、 そろそろ元の世界に返してくれないか? それとお前から貰った
装備だが俺が必要と言ったとき以外は、 お前が預かっておいてくれ」
 「了解よ。 それじゃあ現実世界で」
 ルーのその言葉を最後に優は気を失った。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「戻ってきたか」
 
 優は目が覚めるとひとまず自身の体を確認した。
 優はルーと契約した際に禁呪を使用している。
 その為自身の体にどこか異常がないか確かめたかったのだ。  
 「異常はなさそうだな。 それとどうやら俺は不死になったことで禁呪の死ぬというデメリットは完全に消えたようだな。 ということは想像魔術の方もこれで完全に無制限に使えるようになったわけか」
 ただ優はこれらの魔法を無制限に使えるにはなったとは言っても雪達の前では使用する気はなかった。
 それは偏に優が自身の事を雪達に“化け物”と言われることを恐れたからだ。
 もしそんなことを雪達が言われたら優の心は耐えることはできないだろう。
 ただ雪達の場合優が不死の存在になったと言っても多分恐れることはないだろう。
 その事は優も理解している。 唯もしもという可能性が拭うことができなかったのだ。
 
 「そう言えば照山の奴の姿が見えないな」
 優の周りに雪達が寝ていることはすぐに確認できた。
 だがどこを見てもクラス一のイケメン照山の姿が見えなかった。
 「優」
 ルーはそんな挙動不審な姿の優に声を掛けた。
 優はルーの姿を確認すると照山の捜索を打ち切った。
 元々優にとっては照山という人間の価値はその程度しかないのだ。 
 「ああ。 ルーか」
 「何? そのリアクション少し酷くないかしら?」
 「普通こんなもんだよ」
 「まあいいわ。 それで体の体調はどう?」
 「体に問題はない。 どうやらお前に貫かれた場所も治ってるようだ。 唯服に穴が開いちまってな……」
 優の胸元の部分にはルーに胸を刺しつかれたときにできたであろう穴がパックリとしていた。
 「ご、 ごめんなさい……」
 「別に気にしなくていい。 何せあの時俺はお前と殺し合いしていたんだからな。 それなのにも関わらず今仲良く話している状況の方が異常なんだからな」
 
 優は「ハハハ!」 と声を上げて笑った。
 唯ルーは予想外にもかなり気にしている様子であった。
 
 「おいおい。 そんな顔するなよな。 俺が気にしてないって言ってるんだからさ」
 「でも……」
 「でももへったくれもない。 それにこの程度の事で怒るほど俺は小さな人間じゃないよ。 だからお前はさっきの自身に満ち溢れた態度で笑ってりゃいいんだよ」
 「……わかったわ」
 
 -コイツ絶対納得してないだろう。 全く変に律儀な奴だ
 「ねぇ優。 一ついいかしら?」
 「貴方の近くにいる四人。 どうやら目を覚まし始めたようよ?」
 「そういうのは早く言え!」
 「それじゃあ私は一旦消えさせてもらうわね」
 「お前との会話もこれでしばらくできなくなるのか」
 「何さびしいの?」
 「そんなわけないだろう!」
 「もう。 照れちゃって!」
 「照れてねぇよ!」
 「うふふ。 冗談よ」
 
 -コイツ人の事をからかういやがって……
 -でもいつもの調子が戻ってきたということか
 優は少しからかわれた事にいら立ちを覚えたがそれよりもルーがいつものペースに戻りつつあり、 そちらに安堵した気持ちの方が強かった。
 「ちなみに私と優は契約紋でリンクした状況にあるから直接言葉で交わさなくても脳内で会話することが可能よ」
 「契約紋ってそんな効果もあったのか」
 「だから優がそこの女と必要以上仲良くした場合は容赦なく言うから覚悟してね」
 「分かったよ。 ほらさっさと消えろ」
 
  するとルーの姿はだんだん消え、 ついには視認できなくなった。
 「う、 う~ん。 ここはどこ?」
 四人の中で一番初めに目が覚めたのは雪の様であった。
 「おはよう雪。 体は大丈夫か?」
 「うん。 大丈夫だよ。 そんなことより私はなんでこんなところで寝ていたの? 優君は何か知ってる?」
 ー雪に嘘はつきたくはないけどこの場合は仕方ないんだ。 我慢してくれ
 優は自分の良心が少々痛んだが仕方ないと割り切りるほかなかった。
 「さあ。 実は俺も今起きたところなんだ」
 「そうなんだ。 でもなんで優君の服は、 破れてるの?」
 雪の指摘は鋭かった。
 「さ、 さあ誰かが寝てる間に悪戯でもしてたんじゃないのか?」
 
 -この理由は自分で言うのもなんだがかなりひどい
 雪は優の事をいぶかし気に見つめた。
 「ふ~ん。 優君なにか隠してるでしょ?」
 「え、 ええと……」
 
  -やっぱり幼馴染のこいつには嘘は通じないか。 だがそれならどうする
 ユウは必死に言い訳を考えた。
 だが雪はそんな必死な優の様子を見て追及するのをやめた。
 「優君が私に嘘をつくなんてよっぽどの理由なんでしょう?」
 「まあ、 はい……」
 「わかった。 それならもうこれ以上は追及しないよ。 それに他の子が起きた時も私がうまく言ってあげる」
 「雪……」
 
 ー流石は我が最高の幼馴染! 
 -もし最初に起きたのがお前じゃなかったら大変な事になっていたぜ!
 ただ雪とて当然ただでそこまでする気はなかった
 「そ、 それでね。 そのかわりというか……その……」
 「なんだ? はっきり言ってくれないとわからないぞ?」
 「今度私とデートして!」
 
 -うう……断られたらどうしよう
 普通雪ほどの美少女に言われたら動揺しないほうがおかしいのにも関わらず優は雪のその言葉に何一つ動揺していなかった。
  
 「いいぞ」
 「え、 いいの! 嘘じゃないよね!」
 「なんで嘘つく必要があるんだよ」
 -や、 やった! 今度服買わなくちゃ! それにどこ回ろうかな~ ああ、もう最高の気分!
 雪の脳内ではすでに優とのデートプランの事でいっぱいであり、 顔は嬉しさの余りかかなり崩れていた。
 
 「おい雪。 大丈夫か?」
 「ほぇ? あ、 うん。 大丈夫だよ」
 「ならいいんだけど体調悪いならいつでも言えよ?」
 「う、 うん」
 
 -優君に心配かけちゃった……でも心やっぱり優君は優しいな。 こんな私を心配してくれるなんて……
 雪の中でまた優の評価が上がったのだが優は相変わらずそのことに気が付かなかった。
 「あ、 優君他の皆も起き始めたようだよ?」
 「マジか!」
 そこからはシア、 詩織、 胡桃という順で目を覚ました。
 目を覚ました四人は雪と同じで優の服の穴の事について指摘したがそこは雪がうまく説明し、 無事ごまかす事ができた。
 「優さんこれからどうしますか?」
 「まず城に戻るという選択肢は論外だな。 お前の父親を悪く言いたくはないのだがあの野郎は、 俺たちに嘘をついた。 その時点であいつの元に戻るという選択肢は論外だ」
 「優ちゃんそれ以外にもメリットはあるわよ?」
 「流石姉さんだな」
 「ぶ~胡桃も理解してたし」
 「おいおい。 いじけるなよ胡桃。 お前が理解していることもちゃんと知ってるから」
 「あの優君。 私は理解できてないんだけど?」
 「私もわかりません」
 「はぁ……あなたたちそれ本当に言ってるの?」
 「そうだとしたら本当に馬鹿なんだね!」
 「コラ! 二人とも煽るんじゃない! 大体俺だって別にそんなに頭いいわけじゃないんだから!」
 「もしかして優君本気で言ってる?」
 「無論だ」
 「優さん。 前々から思ってましたけど自己評価低すぎませんか?」
 「え?」
 「優ちゃん。 この場合私もこいつらに同意するわ」
 「姉さんまで!?」
 「お兄ちゃんってさ。 世間一般の人間と比べると十分頭いいほうだと思うよ? まあ私に言われるのは不本意かもしれないけど……」 
 「嘘だろ……」
 「嘘じゃないよ。 大体優君の周りの人間が異常なんだよ」
 「そ、 そうか」
 「まあこの話は一旦置いといてさっきの話の続きですが……」
 「ああ。 それで俺たちが城に戻らないことのメリットだが俺達の存在が隠蔽されることだ」
 「なんでそうなるの?」
 「俺達はの育成は多分王が極秘裏に行っていたんだ」
 「なんで極秘裏に行っていたの?」
 「そんなもん決まっている。 俺達を呼んだ方法が非人道的な行いだからだよ。 だから王は俺たちの中から最小限の人間だけを勇者として台頭させようとした。 そして選ばれなかった人間の死は隠蔽するつもりだったというわけだ」
 「なるほど。 そういうことだったんですか」
 「だがこれは今の俺達にとってはメリットに変わる。 何せ俺たちの存在は元々いないことになっているんだからな。  その場合俺達は完全に自由に動ける。 そこからはこの世界を回って自分たちの世界に帰る方法について探せばいいと思う」
 「私も優君の意見に賛成かな」
 「私も優ちゃんの意見に賛成よ」
 「胡桃も!」
 
 だが賛成の三人とは反対にシアの表情は少し暗いだった。
 「どうしたんだシア?」
 「え、 あの……」
 「お前の言いたいことは代々わかる」
 シアは優がこの世界から自分の世界に変える時置いて行かれてしまうと思い不安なのだ。
 
 「安心しろ。 俺がこの世界から変える時お前の事もちゃんと連れて行くから」
 優はシアの頭を優しく撫でた。
 シアは優のそんな態度が嬉しく、 顔からは涙を流しており、 頭を賛成の意味を込めて何度も降っていた。
 「さてシアの同意も得られたことだし、 まずこのダンジョンから出て街を目指そうか。 確か城の下には城下町があるんだよなシア?」
「はい」
 「ならそこでしばらく纏まった金を稼ごう」 
 「稼ぐのはいいけど優君はどうやって稼ぐつもりなの?」
 「冒険者ギルドで働くのはどうですか? 自分で言うのもなんですが私たち実力だけは結構なものだと思っています。 ですのであそこなら稼ぎやすいのでないでしょうか」
優は数秒考えこむような仕草を示すよゆっくりと頷いた。
 「うん。 俺はシアの意見に賛成だ。三人もそれでいいか?」
 「「「うん」」」
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 城下町はダンジョンを出てから二時間ぐらいかかった。
 その間ルーは優に先ほどシアの頭を撫でたことなどその他もろもろの事を脳内で話されたまに大声を上げてしまった為、 そのたび四人には怪訝そうな顔をされた。
 「やっとついた……にしても活気が凄いな」
 城下町には様々な露店があり、 店の店主が大声を上げ、 商品のたたき売りをしている様子などが多々見受けられた。
 だが優はそんなことよりヒューマン以外にも様々な種族にいることに目がいき、 その中でも猫型の獣人の女性の事が気になった。
優は昔から動物が好きで、 特に猫が好きであった。
その為その女性の事をジッと見つめていたのだが、 そんな優の姿に嫉妬した五人によって優は袋叩きにされた。
 「止まるんじゃねぇぞ……」
 
 優の今の状態は満身創痍というにふさわしい状況であった。
 
 「優君。 何意味の分からないこと言っているの?」
 「そんな事よりも早く入りましょうよ!」
 「お兄ちゃん大丈夫? 辛いなら胡桃が肩かそうか?」
 「胡桃さん。 その役目は私がやるので結構です」
 「お前ら俺は大丈夫だから喧嘩はするな」
 「「わかりました(わかったよ)」」 
 「さてそれでシア。 ここで働くためには何をすればいいんだ?
 「そうですね。 まずは冒険者登録をしなければなりません。 それにつきましてはあそこにいる受付の人にお願いすればしてもらえます。 ちなみに登録は、 名前を言うだけで可能です。 偽名でも登録は可能です」
 「了解。 まあとりあえずさっさと列に並ぼうぜ」
 
 優たちがそう言うと優を先頭に列に並んだ。
 ルーについては外で待機である。
 ルーの魔法はあくまで姿を消すだけであり、 触れられれば一発でばれてしまうためだ。
 冒険者登録のペースはかなり早いため優の番はあっという間であった。
 「こんにちは! 冒険者ギルドへようこそ! ご利用は、 初めてですか?」
 「……」
 優の担当は若い犬型の獣人の女性であった。
 「あのどうかしましたか?」
 「ハッ! なんでもありません!」
 
 -いかんいかん。 ついあの耳に触りたいという衝動が出てしまった……
 だが嫌がる相手の耳を触りなんてした暁には即豚箱送りである。
 その為優は己の衝動を抑えるのに必死であった。
 「そうれならよかったです。 ではまず初めにこちらの紙に名前を書いてください」
 「わかりました」
 
 優は名前を書く際自分の苗字は書かず、 カタカナで書いた。
 「ユウ様ですね。 今からギルドカードを発行しますので少しお待ちください。 ちなみにギルドカードをなくした場合は、 金貨一枚で再発行が可能ですができる限りなくさないように注意してくださいね」
 ユグドラシルでは金貨や銀貨をお金として使われている。
 お金を価値としては銅貨、 銀貨、 金貨、 白金貨の順にあがっていく。
 銅貨百枚で銀貨一枚になり、 銀貨千枚で金貨一枚になる。
 白金貨至っては、 金貨一万枚分の価値がある。
 「では今からギルドカードを発行させていただきます。その間時間が結構ありますので階級についての説明をしたいのですがユウ様は冒険者ギルドの階級についてご存じでしょうか?」
 「知らないので説明していただけるとありがたいです」
 「わかりました」
 女性は優にニッコリと笑顔を向けると説明を始めた。
 「まず階級の数は全部で七個あります。 下から順にF、 E、 D、 C、 B、 A、 Sとなっています。 また階級によってプレートの色はそれぞれ異なり、 F級は白。 E級は黄。  D級は緑。 C級は赤。 B級は青。 A級は紫。 S級は黒となっております。 以上です」
 「わかりやすい説明ありがとうございました」
 「いえいえ。 お気になさらないでください。 これもお仕事ですから」
 「そう言ってもらえると幸いです。 それでなんですが冒険者ギルドではモンスターの素材を換金することは可能ですか?」
 「はい。 可能ですよ」
 「じゃあこれ全部換金お願いします」
 優はそう言おうとダンジョン内で手に入れたモンスターの素材を全て取り出し、 机の上に置いた。
 そのあまりの量の多さに受付嬢は驚愕の表情を露わにせざるを得なかった。
 
 「こ、 こんなにですか! それにこの中の一つにブラックマンティスの素材もあるじゃないですか!」
 「ブラックマンティス?」
 「知らないんですか? 別名死神と呼ばれる黒色の大きなカマキリですよ! 討伐レベルは、 S級相当なんですよ!」
 「そ、 そうなんですか。 それは知りませんでした」
 -ヤバい。 これ完全に悪目立ちするやつだ……
 だが今更そんなこと思ってもすでに手遅れである。
 「換金についてもしばらくギルド内で少しお待ちください! いいですか! 絶対ですよ!」
 「は、 はぁ……」
 受付嬢の優の返事も聞かず、 カウンターの奥へと走っていった。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 「お待たせしました! こちらが今回ユウ様が持ってきていただいた素材の換金額なります」
  机の上には金貨が2000枚。 銀貨が500枚。 銅貨が100枚置かれていた。
 
 「へぇ結構いったなぁ」
 「そりゃあS級相当のモンスターがいるんですから当然ですよ! それとこちらがギルドカードになります」
 「ありがとう」
 優はギルド―カードを受け取ると雪達と合流しようとしたのだが雪達の周りには人だかりができており、 雪以外の三人からは今にも周りの冒険者たちを殺しそうなほどすさまじい殺気を放っていた。
 「それは、 お前が頼みの綱だ。 お前最初あった時空間を歪ませて穴見たなもの作ってでてきただろう? あれを城の中に発生させて、 俺を中に送り込むことは可能か?」
 「可能よ。 でも無料で手伝うのは嫌」
 「子供かお前は!」
 「優は等価交換の法則って知ってる?」
 「そんなもの某有名漫画を読んだことのある俺が知らないわけ……ああ。 なるほど。 そういうことか」
 「どうやら優は理解できたようね」
 
 ルーは含みのある笑みを浮かべ、 優はそのことに少々呆れていた。
 
 「はぁ……それでルーは俺に何をして欲しいんだ?」
 「私の要求なんてシンプルなものよ。 唯優が私と一晩一緒に過ごして、 その間私が何をしようが、 絶対に文句を言わないっていう条件をのんでくれるならいいわよ」
 
 -それ確実に俺の貞操狙う気だろう……
 ルシファーの瞳はまるで餌を狙う獣のような眼差しをしていた。
 -だがコイツの力を借りないと城を奪うことのできる可能性はかなり下がる
 -背に腹は代えられんか……
 「あ、 補足しておくけど私との約束を先に守ってもらうから」
 「わかった。 その条件を呑もう」
 「よし契約成立ね」
 その後優は当日の日程を詳細にルーに語った。
 「さて、 話も終わったことだし、 そろそろ元の世界に返してくれないか? それとお前から貰った
装備だが俺が必要と言ったとき以外は、 お前が預かっておいてくれ」
 「了解よ。 それじゃあ現実世界で」
 ルーのその言葉を最後に優は気を失った。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「戻ってきたか」
 
 優は目が覚めるとひとまず自身の体を確認した。
 優はルーと契約した際に禁呪を使用している。
 その為自身の体にどこか異常がないか確かめたかったのだ。  
 「異常はなさそうだな。 それとどうやら俺は不死になったことで禁呪の死ぬというデメリットは完全に消えたようだな。 ということは想像魔術の方もこれで完全に無制限に使えるようになったわけか」
 ただ優はこれらの魔法を無制限に使えるにはなったとは言っても雪達の前では使用する気はなかった。
 それは偏に優が自身の事を雪達に“化け物”と言われることを恐れたからだ。
 もしそんなことを雪達が言われたら優の心は耐えることはできないだろう。
 ただ雪達の場合優が不死の存在になったと言っても多分恐れることはないだろう。
 その事は優も理解している。 唯もしもという可能性が拭うことができなかったのだ。
 
 「そう言えば照山の奴の姿が見えないな」
 優の周りに雪達が寝ていることはすぐに確認できた。
 だがどこを見てもクラス一のイケメン照山の姿が見えなかった。
 「優」
 ルーはそんな挙動不審な姿の優に声を掛けた。
 優はルーの姿を確認すると照山の捜索を打ち切った。
 元々優にとっては照山という人間の価値はその程度しかないのだ。 
 「ああ。 ルーか」
 「何? そのリアクション少し酷くないかしら?」
 「普通こんなもんだよ」
 「まあいいわ。 それで体の体調はどう?」
 「体に問題はない。 どうやらお前に貫かれた場所も治ってるようだ。 唯服に穴が開いちまってな……」
 優の胸元の部分にはルーに胸を刺しつかれたときにできたであろう穴がパックリとしていた。
 「ご、 ごめんなさい……」
 「別に気にしなくていい。 何せあの時俺はお前と殺し合いしていたんだからな。 それなのにも関わらず今仲良く話している状況の方が異常なんだからな」
 
 優は「ハハハ!」 と声を上げて笑った。
 唯ルーは予想外にもかなり気にしている様子であった。
 
 「おいおい。 そんな顔するなよな。 俺が気にしてないって言ってるんだからさ」
 「でも……」
 「でももへったくれもない。 それにこの程度の事で怒るほど俺は小さな人間じゃないよ。 だからお前はさっきの自身に満ち溢れた態度で笑ってりゃいいんだよ」
 「……わかったわ」
 
 -コイツ絶対納得してないだろう。 全く変に律儀な奴だ
 「ねぇ優。 一ついいかしら?」
 「貴方の近くにいる四人。 どうやら目を覚まし始めたようよ?」
 「そういうのは早く言え!」
 「それじゃあ私は一旦消えさせてもらうわね」
 「お前との会話もこれでしばらくできなくなるのか」
 「何さびしいの?」
 「そんなわけないだろう!」
 「もう。 照れちゃって!」
 「照れてねぇよ!」
 「うふふ。 冗談よ」
 
 -コイツ人の事をからかういやがって……
 -でもいつもの調子が戻ってきたということか
 優は少しからかわれた事にいら立ちを覚えたがそれよりもルーがいつものペースに戻りつつあり、 そちらに安堵した気持ちの方が強かった。
 「ちなみに私と優は契約紋でリンクした状況にあるから直接言葉で交わさなくても脳内で会話することが可能よ」
 「契約紋ってそんな効果もあったのか」
 「だから優がそこの女と必要以上仲良くした場合は容赦なく言うから覚悟してね」
 「分かったよ。 ほらさっさと消えろ」
 
  するとルーの姿はだんだん消え、 ついには視認できなくなった。
 「う、 う~ん。 ここはどこ?」
 四人の中で一番初めに目が覚めたのは雪の様であった。
 「おはよう雪。 体は大丈夫か?」
 「うん。 大丈夫だよ。 そんなことより私はなんでこんなところで寝ていたの? 優君は何か知ってる?」
 ー雪に嘘はつきたくはないけどこの場合は仕方ないんだ。 我慢してくれ
 優は自分の良心が少々痛んだが仕方ないと割り切りるほかなかった。
 「さあ。 実は俺も今起きたところなんだ」
 「そうなんだ。 でもなんで優君の服は、 破れてるの?」
 雪の指摘は鋭かった。
 「さ、 さあ誰かが寝てる間に悪戯でもしてたんじゃないのか?」
 
 -この理由は自分で言うのもなんだがかなりひどい
 雪は優の事をいぶかし気に見つめた。
 「ふ~ん。 優君なにか隠してるでしょ?」
 「え、 ええと……」
 
  -やっぱり幼馴染のこいつには嘘は通じないか。 だがそれならどうする
 ユウは必死に言い訳を考えた。
 だが雪はそんな必死な優の様子を見て追及するのをやめた。
 「優君が私に嘘をつくなんてよっぽどの理由なんでしょう?」
 「まあ、 はい……」
 「わかった。 それならもうこれ以上は追及しないよ。 それに他の子が起きた時も私がうまく言ってあげる」
 「雪……」
 
 ー流石は我が最高の幼馴染! 
 -もし最初に起きたのがお前じゃなかったら大変な事になっていたぜ!
 ただ雪とて当然ただでそこまでする気はなかった
 「そ、 それでね。 そのかわりというか……その……」
 「なんだ? はっきり言ってくれないとわからないぞ?」
 「今度私とデートして!」
 
 -うう……断られたらどうしよう
 普通雪ほどの美少女に言われたら動揺しないほうがおかしいのにも関わらず優は雪のその言葉に何一つ動揺していなかった。
  
 「いいぞ」
 「え、 いいの! 嘘じゃないよね!」
 「なんで嘘つく必要があるんだよ」
 -や、 やった! 今度服買わなくちゃ! それにどこ回ろうかな~ ああ、もう最高の気分!
 雪の脳内ではすでに優とのデートプランの事でいっぱいであり、 顔は嬉しさの余りかかなり崩れていた。
 
 「おい雪。 大丈夫か?」
 「ほぇ? あ、 うん。 大丈夫だよ」
 「ならいいんだけど体調悪いならいつでも言えよ?」
 「う、 うん」
 
 -優君に心配かけちゃった……でも心やっぱり優君は優しいな。 こんな私を心配してくれるなんて……
 雪の中でまた優の評価が上がったのだが優は相変わらずそのことに気が付かなかった。
 「あ、 優君他の皆も起き始めたようだよ?」
 「マジか!」
 そこからはシア、 詩織、 胡桃という順で目を覚ました。
 目を覚ました四人は雪と同じで優の服の穴の事について指摘したがそこは雪がうまく説明し、 無事ごまかす事ができた。
 「優さんこれからどうしますか?」
 「まず城に戻るという選択肢は論外だな。 お前の父親を悪く言いたくはないのだがあの野郎は、 俺たちに嘘をついた。 その時点であいつの元に戻るという選択肢は論外だ」
 「優ちゃんそれ以外にもメリットはあるわよ?」
 「流石姉さんだな」
 「ぶ~胡桃も理解してたし」
 「おいおい。 いじけるなよ胡桃。 お前が理解していることもちゃんと知ってるから」
 「あの優君。 私は理解できてないんだけど?」
 「私もわかりません」
 「はぁ……あなたたちそれ本当に言ってるの?」
 「そうだとしたら本当に馬鹿なんだね!」
 「コラ! 二人とも煽るんじゃない! 大体俺だって別にそんなに頭いいわけじゃないんだから!」
 「もしかして優君本気で言ってる?」
 「無論だ」
 「優さん。 前々から思ってましたけど自己評価低すぎませんか?」
 「え?」
 「優ちゃん。 この場合私もこいつらに同意するわ」
 「姉さんまで!?」
 「お兄ちゃんってさ。 世間一般の人間と比べると十分頭いいほうだと思うよ? まあ私に言われるのは不本意かもしれないけど……」 
 「嘘だろ……」
 「嘘じゃないよ。 大体優君の周りの人間が異常なんだよ」
 「そ、 そうか」
 「まあこの話は一旦置いといてさっきの話の続きですが……」
 「ああ。 それで俺たちが城に戻らないことのメリットだが俺達の存在が隠蔽されることだ」
 「なんでそうなるの?」
 「俺達はの育成は多分王が極秘裏に行っていたんだ」
 「なんで極秘裏に行っていたの?」
 「そんなもん決まっている。 俺達を呼んだ方法が非人道的な行いだからだよ。 だから王は俺たちの中から最小限の人間だけを勇者として台頭させようとした。 そして選ばれなかった人間の死は隠蔽するつもりだったというわけだ」
 「なるほど。 そういうことだったんですか」
 「だがこれは今の俺達にとってはメリットに変わる。 何せ俺たちの存在は元々いないことになっているんだからな。  その場合俺達は完全に自由に動ける。 そこからはこの世界を回って自分たちの世界に帰る方法について探せばいいと思う」
 「私も優君の意見に賛成かな」
 「私も優ちゃんの意見に賛成よ」
 「胡桃も!」
 
 だが賛成の三人とは反対にシアの表情は少し暗いだった。
 「どうしたんだシア?」
 「え、 あの……」
 「お前の言いたいことは代々わかる」
 シアは優がこの世界から自分の世界に変える時置いて行かれてしまうと思い不安なのだ。
 
 「安心しろ。 俺がこの世界から変える時お前の事もちゃんと連れて行くから」
 優はシアの頭を優しく撫でた。
 シアは優のそんな態度が嬉しく、 顔からは涙を流しており、 頭を賛成の意味を込めて何度も降っていた。
 「さてシアの同意も得られたことだし、 まずこのダンジョンから出て街を目指そうか。 確か城の下には城下町があるんだよなシア?」
「はい」
 「ならそこでしばらく纏まった金を稼ごう」 
 「稼ぐのはいいけど優君はどうやって稼ぐつもりなの?」
 「冒険者ギルドで働くのはどうですか? 自分で言うのもなんですが私たち実力だけは結構なものだと思っています。 ですのであそこなら稼ぎやすいのでないでしょうか」
優は数秒考えこむような仕草を示すよゆっくりと頷いた。
 「うん。 俺はシアの意見に賛成だ。三人もそれでいいか?」
 「「「うん」」」
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 城下町はダンジョンを出てから二時間ぐらいかかった。
 その間ルーは優に先ほどシアの頭を撫でたことなどその他もろもろの事を脳内で話されたまに大声を上げてしまった為、 そのたび四人には怪訝そうな顔をされた。
 「やっとついた……にしても活気が凄いな」
 城下町には様々な露店があり、 店の店主が大声を上げ、 商品のたたき売りをしている様子などが多々見受けられた。
 だが優はそんなことよりヒューマン以外にも様々な種族にいることに目がいき、 その中でも猫型の獣人の女性の事が気になった。
優は昔から動物が好きで、 特に猫が好きであった。
その為その女性の事をジッと見つめていたのだが、 そんな優の姿に嫉妬した五人によって優は袋叩きにされた。
 「止まるんじゃねぇぞ……」
 
 優の今の状態は満身創痍というにふさわしい状況であった。
 
 「優君。 何意味の分からないこと言っているの?」
 「そんな事よりも早く入りましょうよ!」
 「お兄ちゃん大丈夫? 辛いなら胡桃が肩かそうか?」
 「胡桃さん。 その役目は私がやるので結構です」
 「お前ら俺は大丈夫だから喧嘩はするな」
 「「わかりました(わかったよ)」」 
 「さてそれでシア。 ここで働くためには何をすればいいんだ?
 「そうですね。 まずは冒険者登録をしなければなりません。 それにつきましてはあそこにいる受付の人にお願いすればしてもらえます。 ちなみに登録は、 名前を言うだけで可能です。 偽名でも登録は可能です」
 「了解。 まあとりあえずさっさと列に並ぼうぜ」
 
 優たちがそう言うと優を先頭に列に並んだ。
 ルーについては外で待機である。
 ルーの魔法はあくまで姿を消すだけであり、 触れられれば一発でばれてしまうためだ。
 冒険者登録のペースはかなり早いため優の番はあっという間であった。
 「こんにちは! 冒険者ギルドへようこそ! ご利用は、 初めてですか?」
 「……」
 優の担当は若い犬型の獣人の女性であった。
 「あのどうかしましたか?」
 「ハッ! なんでもありません!」
 
 -いかんいかん。 ついあの耳に触りたいという衝動が出てしまった……
 だが嫌がる相手の耳を触りなんてした暁には即豚箱送りである。
 その為優は己の衝動を抑えるのに必死であった。
 「そうれならよかったです。 ではまず初めにこちらの紙に名前を書いてください」
 「わかりました」
 
 優は名前を書く際自分の苗字は書かず、 カタカナで書いた。
 「ユウ様ですね。 今からギルドカードを発行しますので少しお待ちください。 ちなみにギルドカードをなくした場合は、 金貨一枚で再発行が可能ですができる限りなくさないように注意してくださいね」
 ユグドラシルでは金貨や銀貨をお金として使われている。
 お金を価値としては銅貨、 銀貨、 金貨、 白金貨の順にあがっていく。
 銅貨百枚で銀貨一枚になり、 銀貨千枚で金貨一枚になる。
 白金貨至っては、 金貨一万枚分の価値がある。
 「では今からギルドカードを発行させていただきます。その間時間が結構ありますので階級についての説明をしたいのですがユウ様は冒険者ギルドの階級についてご存じでしょうか?」
 「知らないので説明していただけるとありがたいです」
 「わかりました」
 女性は優にニッコリと笑顔を向けると説明を始めた。
 「まず階級の数は全部で七個あります。 下から順にF、 E、 D、 C、 B、 A、 Sとなっています。 また階級によってプレートの色はそれぞれ異なり、 F級は白。 E級は黄。  D級は緑。 C級は赤。 B級は青。 A級は紫。 S級は黒となっております。 以上です」
 「わかりやすい説明ありがとうございました」
 「いえいえ。 お気になさらないでください。 これもお仕事ですから」
 「そう言ってもらえると幸いです。 それでなんですが冒険者ギルドではモンスターの素材を換金することは可能ですか?」
 「はい。 可能ですよ」
 「じゃあこれ全部換金お願いします」
 優はそう言おうとダンジョン内で手に入れたモンスターの素材を全て取り出し、 机の上に置いた。
 そのあまりの量の多さに受付嬢は驚愕の表情を露わにせざるを得なかった。
 
 「こ、 こんなにですか! それにこの中の一つにブラックマンティスの素材もあるじゃないですか!」
 「ブラックマンティス?」
 「知らないんですか? 別名死神と呼ばれる黒色の大きなカマキリですよ! 討伐レベルは、 S級相当なんですよ!」
 「そ、 そうなんですか。 それは知りませんでした」
 -ヤバい。 これ完全に悪目立ちするやつだ……
 だが今更そんなこと思ってもすでに手遅れである。
 「換金についてもしばらくギルド内で少しお待ちください! いいですか! 絶対ですよ!」
 「は、 はぁ……」
 受付嬢の優の返事も聞かず、 カウンターの奥へと走っていった。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 「お待たせしました! こちらが今回ユウ様が持ってきていただいた素材の換金額なります」
  机の上には金貨が2000枚。 銀貨が500枚。 銅貨が100枚置かれていた。
 
 「へぇ結構いったなぁ」
 「そりゃあS級相当のモンスターがいるんですから当然ですよ! それとこちらがギルドカードになります」
 「ありがとう」
 優はギルド―カードを受け取ると雪達と合流しようとしたのだが雪達の周りには人だかりができており、 雪以外の三人からは今にも周りの冒険者たちを殺しそうなほどすさまじい殺気を放っていた。
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