転移したらダンジョンの下層だった

Gai

二百四十話・・・・・・エグイ

「・・・・・・まるで相手にならなかったな」

「そうですね。フォレストゴーレムを相手にここまで圧勝とは」

二十階層のボス部屋にいたモンスターはゴーレムの上位種にあたるフォレストゴーレム。
一般的なゴーレムと同様に足や腕を飛ばす・・・・・・別名ロケットパンチやキックが出来る。

そして失った部分は当然の様に再生する。だが、フォレストゴーレムはボス部屋が小さな森という地の利があり、普通のゴーレムと比べて再生速度が速い。

移動する際にも魔力を消費する事で足裏から木を伸ばし、遅い移動速度を補う。
その動きにはザハークも面食らってしまい、攻撃をモロに受けてしまった。

弱点であろう火の攻撃を受けても直ぐに燃えている個所を切り離し再生する。

余りにも今まで十階層から二十階層まで戦って来たモンスターとは戦い方の錬度が違った。
しかしオーガへと進化したザハークはそれを物ともしない。

再生するならばそれ以上に速くフォレストゴーレムの体を壊していく。
気付いた時には二体の周囲にはフォレストゴーレムの破片が散らばっていた。

それをソウスケは戦いの邪魔にならない様にせっせと回収していた。

そしてフォレストゴーレムとザハークの戦いが始まって約三分、フォレストゴーレムの魔力が完全に切れてしまい、再生する事が出来なくなった。

「いやーーーーー、見事の蹂躙劇だったな」

「見事かどうかは分りませんが、戦いの選択肢としてはトレントと戦った時のソウスケさんと同じく良い選択肢だったと思います。フォレストゴーレムの素材も多く手に入りましたし」

「それな。ザハークがフォレストゴーレムの体をボコボコにしたから素材に関しては三体分ぐらいは手に入ったかもしれないな」

ザハークが戦っていた本体も含めればソウスケは四体分のフォレストゴーレムの素材を手に入れた事になる。

ただ、ソウスケはフォレストゴーレムの魔石だけを取り除き、完全に動かなくなった体を蛇腹剣に喰らわせた。

「・・・・・・木魔法のレベルが上がったみたいだな」

木魔法のスキルレベルが上がった事で使えるようになった魔法を試す為にソウスケは無詠唱で魔法を使った。

「スパイラルウッドペイン」

回転する事で貫通力が上がった木の槍はボス部屋に生えている木々を容易に貫き、ソウスケの意志で動きが止まると急激に木の槍から枝が生え始めた。

木の槍から生えた枝は木を抉り、地面に根を張った。

「・・・・・・凄いな。木魔法ってこんなエグイんだな」

「スキルレベルが上がっていくほど木の本質が増すらしいですよ」

「木の本質とはどういう事ですかミレアナさん」

スパイラルウッドペインの威力に驚きながらもまだそこまで知識が無いザハークが尋ねる。

「木は水や日光を養分として育ちます。ただ、魔法で生み出された木は少し違います。水や日光だけでなく、様々な物を養分とみなし成長します」

「・・・・・・つまり魔力とか血でも栄養としてみなすって事か」

「はい。寧ろ血や魔力などの方が養分として上等らしいです。昔国と国の戦争に参加した事がある方が言っていました」

ミレアナの言葉にソウスケは背筋が震えた。
今目の前で自分が放ったスパイラルウッドペインから全方向に放たれた枝に貫かれた木々や地面を人だと考えると・・・・・・地獄絵図にしか見えなかった。

「というか、木魔法が使える人っているんだな」

「そうですねぇ・・・・・・そもそも木魔法を使わなくても精霊魔法使えば木を扱う事は出来ます。ですが木魔法のスキルを習得している方はハイ・エルフの中でも少ないです」

元々はモンスターが持つスキルな為、魔法の扱いを得意とするエルフの上位互換に位置するハイ・エルフであっても使える人物は多くない。

ボスとの戦いが終わり、宝箱を回収して柱に登録したソウスケ達は直ぐに地上へと戻った。

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