二百十二話別の冒険

依頼内容を一日と経たずに達成したソウスケ達は探索速度を上げて下層へ進む。

「いくら低ランクのモンスターとは言え、まさか数時間程度で終わるなんて、ちょっと予想外だったな」

「良い意味で裏切られたってところですね。戦闘時間も殆ど掛からずに終わったので時間の節約にはなりましたね。このまま順調に進めば今日中に四階層には着きそうですね」

「ああ、四階層までは特に珍しいモンスターや薬草とかが有る訳では無いから、スピードも落とす必要もない」

ソウスケは四階層の地図と、四階層の情報が載っている紙を見ながら判断する。
殆どで出会う事が無く、その階層に不相応な実力を持っていていて素材も価値がある物であればモンスター。非常に生息地が限られており、周囲には厄介なモンスターが生息している。

そんな感じの少し特別感があるモンスターや薬草等を探すのに時間を使っても良いかもしれないと考えていたが、四階層までの地図にはそういった情報が全くなかった。

精々このモンスターは新人達には荷が重いや、この薬草と薬草は似ているので採集する際に間違えない様にしてください等の情報しか載っていない。

「もしかしたらソウスケさんの望む情報が地図には載っていないだけで、探せば珍しいモンスターや薬草が上層にあるかもしれませんよ」

「・・・・・・・・・・・・その可能性は捨てきれないな」

上層で美味しいエリアがあれば、ベテラン辺りの冒険者はそれをギルドには伝えずに自分達で独占する事は珍しい話では無い。

基本的に冒険者はソウスケの様に懐が温かい訳では無い為、お金にはある程度の執着がある。
そういった冒険者達は他の同業者たちがお金を払って情報を求めて来たとしても、大した情報を教える事は無い。

「そんな冒険をするのもありだとは思うが、一応今回は目的があって潜っている訳だからそういった冒険はまた今度にしよう」

「分かりました。それでは取りあえず目指せ十階層ってところですね」

「ああ、そういう事だ。一応六階層から十階層まではペースを落として探索を進めるけどな」

言い終えると前方に二体のグリーンワームを発見したソウスケは壺の中から二つ石を取り出して投擲する。
走りながらでも命中のスキルの補正もあり、少しの狂いなもなく激突する。

「視界に入ったから取りあえず石を投げつけたんだが・・・・・・なるほど、グリーンワームって名前なのか」

「体の中にある酸性のを持っていて、ランクFにしては素材の買い取り額が高いと思いますが今ここで解体してしまいますか？」

「いや、解体すれば多少なりとも時間が掛かる訳だし・・・・・・野営前に済ませてしまおう」

「野営前にですね、覚えておきます。素材を収納する容器はどうしますか？」

ミレアナの言葉に、特にこれといった容器を持っていないソウスケはどうしようかと頭を捻る。

(そういった入れ物は全然持っていなかったな。牙とか爪はそのままアイテムボックスに入れていたけど、内臓とかはギルドが用意してくれた入れ物に入れていたしな。余っている入れ物は持ってないし。まぁ、また今回もダンジョンの時と同じようにギルド専属の解体士さん達にお願いするのがベストだろうな)

前回大量に倒したコボルトその上位種にコボルトキングの解体は二人で行ったが、終わった後の辛さが半端では無かった為、今回ダンジョンで倒したモンスターの解体は基本的には遠慮したいと言うのが本音だった。
しかし折角解体のスキルを持っているので、あまり宝の持ち腐れにしたくないという思いもある。

そしてその日の探索が終わり、野営の準備をする前にグリーンワームの解体を行う。
解体を行っている最中に血の匂いに釣られてモンスターがやって来る事もあったが、上層のモンスター程度は二人の投擲で片付く為、特にハプニングは起きずに終わった。