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転移したらダンジョンの下層だった

Gai

百三十話前方・・・・・・ではなく後方注意

ソウスケの指先から放たれる毒を喰らい続けたクイーンスナイプビーは徐々にだが動きが遅くなっていき、ソウスケの攻撃が殆ど避けきれていなかった。

実験が成功したソウスケはニヤニヤしながら締めに掛かろうとしていた。

「連続で使い続ける事でレベルが一つだけ上がって、しっかりと効果が表れる事が確認できたしそろそろ終わりにするか」

確実に動きを鈍らせるためにソウスケは突きの速度を上げた。

自分に向かって来る風の弾丸の速度が上がったのを見て、より命の危機を感じたクイーンスナイプビーは魔力の残量を気にせず奥の手を使い、ソウスケに向かって突っ込んで来た。

「!? ・・・・・・どうなっているんだ?」

ソウスケは自分が放った風の弾丸がクイーンスナイプビーの少し手前で弾かれた事に動揺し、大きくバックステップをして種を見破るため常に距離を取りながら攻撃を続けた。

(・・・・俺のウィンドカーテンとは違うな。ただ、効果は殆ど同じ。使っている魔力はおそらく風・・・・・・そうか、羽から風の振動を周囲に出しているのか)

しっかりとした理屈はソウスケも分からなかったが、羽に目を凝らすと風の魔力が小刻みに出ているのを確認できたソウスケは無駄撃ちを止め、大きく後ろに跳んでから双剣に風の魔力を一気に溜めて先程の風の刃とは比べものにならない物を放った。

風の刃はクイーンスナイプビーを真っ二つに出来る程大きく、攻撃範囲も先程の物比べて広がっていた。
もう少しソウスケクイーンスナイプビーの距離が短ければ直撃して勝負を決まっていたかもしれないが、ソウスケの技を放つ際の予備動作が大きかった為、どんな攻撃が放たれるのか予測できたクイーンスナイプビーは風の刃を避けた後、スピードを失速させずにソウスケに突っ込んだ。

勝負を決める筈の一撃を避けられたソウスケの表情に焦りは無く、片足が地面に着くと同時に地面を蹴ってクイーンスナイプビー同様に相手に向かって突っ込んだ。

双剣に魔力を纏わせていないソウスケにクイーンスナイプビーは疑問を感じたが相手が空中では動きが取れないと思い、好機を逃さず針に風の魔力を纏わせてソウスケに向かって放った。

このクイーンスナイプビーは肝心な事を忘れていた。ソウスケはナイトスナイプビーとの戦いの時に跳躍にスキルで空中を蹴って移動していた。
それをクイーンスナイプビーは見ていた筈だが戦いの終盤の中で集中力が切れていたのか、完全にその事が頭の中から抜けていた。

ソウスケとしては跳躍を使わずとも避ける方法はあったが、今回は単純に体を後ろに仰け反って風を纏った毒と麻痺付きに針を躱した。

前から向かって来るもう一つの攻撃を躱すために。

「ッーーー!!!」

「よし! 狙い通りだ。これからは前だけじゃなくて後ろにも気を付けるんだな・・・・・・ってお前に次は無かったな」

ソウスケが先程放った風の斬撃が方向を転換し、クイーンスナイプビーの頭部と胸部を後ろから綺麗に切断した。
風の刃はそのまま後ろへ飛んで行き、木を十近く切り倒してから地面にぶつかり、傷跡を残して消えた。

そしてソウスケは最後まで手を抜かずに頭部と腹部に風の刃を放って動きを完全に停止させた。

「あのまま俺とその針で斬り合っていたら・・・・・・風の刃がお前の首に届く前にもしかしたらがあったかもしれなかったのにな」

たらればを口に出しながらも、ソウスケの顔を満足そうな表情だった。

「お疲れ様ですソウスケさん。最後の放った風の刃お見事でした。あれは狙ってやっていたんですよね」

「ああ、完全に目の前の俺にしか集中していなかったからな。多分上手くいくだろうと思ってその場で試してみたんだよ」

今更かなりの博打だったよなとソウスケは思いながらステータス画面を開いた。

「・・・・・・やっぱり毒のスキルのレベルが上がって二になっているな。それと・・・・・・やぱりあったな、遠隔操作」

「遠隔操作、ですか。そういえば弓でも同じような出来る方がいましたね・・・・・・でも、多分性能は違う気がしますね。ソウスケさん、その遠隔操作があれば方向転換は何回でも出来るんですか?」

ミレアナは自分より年上の人達が行っていた技とソウスケに新しく発現したスキル、遠隔操作が似た様な物だと思ったが、もしかしたらと思ってソウスケに遠隔操作の性能を尋ねた。

「一応出来るには出来るな。ただ、レベルによって操れる距離や回数は変わってくるだろうな。しかし実戦で使うってなれば少し苦労する筈だ。まぁ、俺の場合は並列思考のスキルを持っているから頭が混乱する事は無いだろう・・・・・・と、思う」

「そうですか・・・・・・仮に私が遠隔操作のスキルを手に入れた時に何かアドバイスとかありますか」

メインの武器が弓のミレアナはもし遠隔操作のスキルを得る事が出来れば戦いの幅が大きく広がると思い、スキルを得た時に短時間で扱えるようになるために、目の前でぶっつけ本番で成功させたソウスケからの助言が欲しかった。

「ん~~~・・・・・・俺は蛇腹剣がメインの武器だから、刃を伸ばした縮めたりするのと体を動かすのに意識を分けなきゃいけないんだよ。だから何か一つの動作をしながらもう一つの動作をする・・・・・・並行詠唱を鍛えれば良いんじゃないか?」

「なるほど・・・・分かりました!!! 私も頑張ってソウスケさんみたいにこう・・・・・・魔法を自在に操れる様に頑張ります!!!」

ミレアナとしては真面目に答えたつもりだったが、ミレアナの魔法を操る動きが可愛らしく、綺麗な容姿とのギャップもあってソウスケは可愛すぎだろと思いながら、思わず顔を逸らしてしまった。

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