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転移したらダンジョンの下層だった

Gai

百三話先輩からのアドバイス

「やりましたねソウスケさん！！」

「ああ、そうだな。まぁ、最後まで摸擬戦をやらずに終わったのに結果不合格だったら、普通にブチ切れてただろうな」

周りのFランクに昇格した接近戦タイプの冒険者と違い、ソウスケの表情は普段通りの物だった。
だが、ソウスケの後半の方のセリフを聞いた試験官のブライドとリーナはもしかしたらの未来を想像してしまい、額から汗が垂れていた。

(あの少年、ソウスケ君がブチ切れたら・・・・・・最悪な未来しか待っていないだろうな)

感情によって個人の力が変わると言う事をブライドはモンスターとの戦いで身をもって知っており、もしソウスケがそうなってしまったら自分では抑える事が出来ないだろうと思った。

考えたくない未来を想像したリーナが少し顔色を悪くしながら、ブライドと変わり遠距離タイプの受験者の合格者の名前を呼び始めた。

「今度は私と摸擬戦をした遠距離タイプの受験者達の合格者を発表します。ブライドがいった様に今回試験に落ちたからといって、もう二度と受けられない訳では無いわ。名前を呼ばれなかった者は次回の試験までに腕を上げて是非再挑戦をして欲しいわ。」

ブライドの時と同じように試験に再挑戦できると知った受験者達の表情は、若干だが安堵したものになっていた。

「それでは合格者の名前を呼んでいくわ。ーーーーー、ーーーーー、ミレアナ、計三人よ。八人中三人。合格者数は接近戦タイプの受験者と同様半分以下と結果は良くないけれど、落ちた人達全員は遠距離はほぼ合格ラインに達していたのよ。ただ、やはりもう少しメインの遠距離以外の武器、サブの武器を使えるようになって欲しいのが私の本音ね」

リーナは一旦言葉を切ってから、目を大きく見開いて過去を思い出すように話を再開した。

「私達、後衛職は確かに前衛の仲間が頑張っていてくれるから、戦いの最中に怪我を負う事は少ないわ。でも、絶対に安全という訳では無いの。何時後ろから奇襲が来るか分からない、何時モンスターや盗賊の攻撃が前衛を超えて私達に襲い掛かるか分からないのが現実よ。だから、今後は体術でもいいから何かしらの接近戦の戦い方を覚えて。本職並みに戦えるようになれとは言わないは。そんな事私だって無理だからね」

自分は大して接近戦は出来ないという言葉に、接近戦タイプの受験者達はリーナとミレアナの短剣での斬り合いを思い出し、あの戦いぶりで本職並みと言えないのかと再び自信を喪失しかけていた。

頭が項垂れ、意気消沈している接近戦タイプの受験者達を見たブライドは、気持ちが分からないでもないので表情が苦笑いになっていた。

(まぁ、あれだけの戦いを見せられて本職並み実力は無いなんて言われたらこう・・・・・・なんて言えばいいんだろうな？　とりあえず自信は無くすだろうな。正直ミレアナさんと接近戦縛りで戦ったとしても、俺は絶対に勝てるなんて宣言は出来ないな)

リーナと摸擬戦をしている時のミレアナの表情を思い出し、ブライドはミレアナの底が予測できない強さに少し嫉妬していた。

(ソウスケ君もそうだが、ミレアナさんも高い才能を持ち、良い師もいて努力を欠かさなかったんだろうな)

二人の強さの理由を予想したブライドだが、ミレアナに関しては当たっているが、ソウスケの場合は神のサービスにより一定まで育っているスキルに、中々厄介で成長しているとも言えるマイナーな武器。
そしてダンジョンの下層から一番下まで行く時にモンスターを倒して得た経験値、レベルによるものなのであり、才能やセンスはそこそこあるが良い師と努力を欠かさずというのは、全くの見当違いだった。

「そう言う訳だから、今回落ちた人達には出来れば諦めずに努力して再挑戦してほしいわ。そして今回の試験で受かった人達も、一名を除いて接近戦でどうにか対処、逃走出来るレベルとは言えないわよ」

リーナの厳しい言葉を聞いたミレアナを除いた合格者たちは焦りや落ち込みの情を浮かべていた。

「だから慢心せずに技量を高めなさい。慢心、油断は自分達の命に関わるミスを犯す原因になるわ。パーティーメンバーに迷惑を掛けたくなかったら、今回Fランクに昇格したからといって満足しない様に。私からは以上よブライドからは何か言う事はある？」

「そうだな・・・・・・俺がまだお前らと同じように新人だった時に役に立った事をアドバイスしてやる。スキルの中に投擲っていうスキルがある。文字の意味の通り物を投げる時に補正がされるスキルだ」

ブライドのアドバイスの内容を聞いたソウスケは、以前助けたランクDの幼馴染同士でパーティーを組んでいる冒険者達を思い出していた。

「投げるのは短剣や短槍、そこら辺に落ちている石ころでも投擲のスキルを鍛えればある程度のランクのモンスターには、攻撃になるかどうかは置いておいて奇襲や撹乱にはなる。覚えていて損は無い」

受験者達は今まで軽視していた投擲のスキルに対し今後空き時間に投擲に時間を費やそうと思う者や、練習に必要な物に費用は掛からないので話が終わった後に直ぐ投擲の訓練をしようと思う者もいた。

「後は盾やポーションの自分の身を守る物は買っておいた方が良いぞ。金は掛かるかもしれないが必要経費だと思って買っておいた方が後々後悔しなくて済むからな。取りあえず今できるアドバイスはそんなところだ」

今ここにいる受験者達はソウスケとミレアナ以外は殆ど金に余裕がない者達ばかりなので、ブライドから二つ目のアドバイスは直ぐに実行しようとは思わなかった。

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