転移したらダンジョンの下層だった

Gai

四十二話完・成!!

ソウスケがフィギュア作りの作業を始めてから数時間が経ち、太陽は丁度真上まで登っていた。
そして当のソウスケはそんな事には全く気付いておらず、作業に夢中だった。


作業中に風の魔力を使えば、効率的に作業が進むんじゃないのかと思いついたソウスケは、実行に移し結果上手くいった事で、さらにのめり込んでしまい昼食の事も頭からすっぽ抜けていた。


そして作業を終えたソウスケの手元には、数体のモンスターの木のフィギュアがあった。
ヤスリで表面を丁寧に仕上げた事で、中々の出来栄えになっていた。


「よし。元々木工のスキルレベルが五もあったから、結構まともなやつが出来たな」


ソウスケは自分で作り上げたフィギュアを、満足気な顔で眺めていた。


「ゴブリンとウッドモンキーにリザードマン。本物と比べても殆ど変わりはなさそうだな。これだけ上手く作る事が出来るんだったら、モンスターを作る事に慣れたら人を作ってみるのもいいかもな」


この世界での楽しみが増えたことで、ソウスケのテンションは上がっていたが、ようやく作業を始めてから既に昼になっている事に気が付いた。


「・・・・・・おぉ、マジか。もう昼になってたのか。そんなに集中していたのか。というか、昼になったんだったら、ギルドに行って解体してもらったモンスターの換金代をもらわなきゃな」


今日のメインの用事を思い出し、ソウスケは固くなった体をパキパキと鳴らしながら、食堂におりてまずは昼食を済ませた。


宿を出てギルドに向かっている間のソウスケの顔は、終始ニヤニヤしていた。


(結構な量のモンスターの解体をお願いしたからな。素材や魔石の値段はそこまで分からないけど、もしかしたら数千万ぐらいはいったりするかもな。倒したモンスターの体が殆どあるんだからそれくらいの値段が付いても、正直可笑しくはないと思うんだよな)


モンスターの素材、魔石を換金して貰えるお金の額にソウスケは夢を膨らませていたが、そこで重要な事を思い出した。


(そう言えば俺のアイテムボックスの中は、時が止まってるんだったよな。ならモンスターの肉とかは半分ぐらいは持っておいた方が良さそうだな。いや、モンスターの武器や防具に使える素材や、錬金術で造れる物に必要な素材や魔石も半分くらい貰っておいた方が良さそうだな。金は確かに欲しいけど、別に贅沢なニート生活がしたい訳じゃないからな。おし、セーレさんに言ってそうして貰おう)


最終的な考えが纏まったところで、ようやくソウスケはギルドの前に着き、ドアを開けた。


「よいしょと。・・・・・・うん。相変わらず酒場も併用してるから、酒の匂いが常にするな。ギルとの職員さん達はよくこんな匂いの中仕事できるな。もしかしたら、受付より後ろの方だけ匂いを遮断するマジックアイテムでも使ってるのかな? それなら顔をしかめずに仕事をしている事に納得できるんだけどな。・・・・・・錬金術で消臭玉とか造れるかな?」


匂いを消すと言う魔法が既にあるのは分からなかったが、冒険者や料理人の間で需要があるかもしれないと思ったソウスケは、そのアイデアを頭の片隅に置いておいた。


そして受付の方に目を向けると、セーレを発見したので直ぐにセーレがいる受付所に向かった。


「セーレさん、こんにちは」


「あら、こんにちはソウスケ君。ここに来たのは解体の件についてで合っているかしら」


「はい、そうなんですけど・・・・・・少しお願いがあるんですけど良いですか?」


セーレは少しの間考え込むと、ソウスケの考えが何となくわかったのか、取りあえず受付の奥にある部屋にソウスケを連れて行くことにした。


「ソウスケ君、取りあえず奥に開いている部屋があるからそこに行きましょう」


「分かりました」


ソウスケは、何故セーレが今この場でモンスターの換金の話をしないのかが、大体ではあるが予測できたので戸惑はずセーレの後に着いて行った。



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