異世界を楽しみたい転生者

Gai

少年期[308]余裕があるから

「よう、ちょっと話さないか」

「・・・・・・別に構わないですよ」

いきなり自身に話しかけて来た男と連れの女性をゼルートは不快感を感じさせない程度に短時間で見定める。

(・・・・・・さっきの冒険者よりは腕が上みたいだな。ランクは俺と同じD、もしくはCってところか。パーティーメンバーは計二人・・・・・・いや、もしかして他の仲間とは今別行動か?)

一先ずゼルートは二人が何故自分に声を掛けて来たのかを尋ねる。

「俺達になんの用ですか?」

「別にやましい考えは無いぞ。単にさっきお前達に絡んできた奴らを一撃でぶっ飛ばした見て興味が出て、少し話してみたいと思ったんだよ」

「本当にごめんね、こいつ結構考え無しで動く事が多いのよ」

ゼルートとしては仲間だけで飯を食べたいという訳でも無かったので、別に嫌という訳では無かった。
仲間に目を向けるも、アレナ達も特に不快感は表さなかった。

お互いに自己紹介を済ますと、先に男の方ゼルート達に質問する。

「ゼルート君達は何でこんな街に来たんだ?」

「依頼を達成するために近くに森まで来ていたんですよ。そうしたら大勢のバインドキャットに襲われているパーティーを見つけて助けたんですよ。それで時間も時間だったんでここまで送って来たって感じです」

「へぇーーーー。結構優しんだなゼルート君は」

「そうですか? 結構普通だと思うんですけど」

目の前で魔物や盗賊に襲われている人を助ける。襲われている人が過去に因縁のある人物であればそのまま放置するかもしれないが、そうでなければ基本的に助ける。
それがゼルートの考えだった。

「いやいやいや、そんな事無いぞ。なぁ、シーナ」

「まっ、結構余裕のある冒険者じゃなきゃ、無償で同業者を助ける事は少ないわ。それにまだ冒険者に成り立てのルーキーなら自分の事で精一杯だから尚更ね」

(結構余裕があるか・・・・・・確かに懐には余裕が超ある。それが俺が人とは少し違う考えを持っている原因の一つか。確かに速く成り上がって良い暮らしをしたいルーキーに同じルーキーを助ける余裕なんて普通に考えてないか)

勿論ルーキー同士だからこそ助け合おうと考える者もいるが、それでも生活が懸かっているため、無償で助ける事は殆ど無い。

「それで、依頼内容ってのは魔物の討伐か?」

「はい、サーベルタイガーを一頭討伐するってのが依頼内容です」

「・・・・・・マジでか。サーベルタイガーってCランクの魔物だぞ」

「それは知ってますよ。でも、俺達なら負ける事は無いかと」

シーナはゼルートの言葉を虚言だとは思わなかった。

(さっきこの子達に話しかけた酔っぱらい共は少なくとも酔いが回っていたとしても冒険者になったばかりのルーキーに負ける程弱くは無い。それを結構渋めの顔のお兄さんと年頃の女の子と、ゼルート君より背が低い男の子が一撃で倒したんだから討伐できる可能性は十分・・・・・・というか必ず倒せそうね)

ゼルート達の実力を正確に把握出来た訳では無いが、少なくともCランク程度の実力を持つ冒険者が六人もいればサーベルタイガーを余裕を持って倒す事が出来る。

「まぁ、お前らはそれだけの自身があっても可笑しくは無いな、この街の近くの森でサーベルタイガーをねぇ・・・・・・確かに奥の方に行けばちょいちょい目撃するって聞くな。でも、それよりサーベルタイガーに関しては大きい情報があったな」

「どんな情報ですか?」

男の言う大きな情報が気になったゼルートは交渉も糞も無く真正面から情報の内容を尋ねてしまった。

男はゼルートからなんの交渉も無く訪ねて来る様子に呆気に取られる。

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