異世界を楽しみたい転生者

Gai

少年期[250]やっと理解出来た

「人を見た目で判断するな。よく先輩から言われていたが・・・・・・今ようやく理解できた気がするな」

ゼルートにボスへ挑むパーティーの順番を聞かれた男の冒険者は、未だに震えている自身の手を見る。

「見た感じ、まだ十五にもなっていない少年があれほどの力を感じさせるなんてな。規格外にも程があるんじゃないか?」

人を見た目で判断してはいけないと、心の底から理解出来た男だがそれでもゼルートから感じる強さは普通ではないと、自身の経験からそう判断する。

ゼルートが平均的に身長が低く、寿命が長いドワーフなら男は素直に納得できたが、完全に見た目が人族なため相当腕の立つ奴以外は初見で少年の実力は感じ取れないだろうと断言出来た。

「おい、大丈夫か。手が震えっぱなしだぞ」

「あ、ああ。もう少しすれば収まる筈だ」

いつもとは違う男の弱気な反応に仲間は珍しく思い、声を掛けて来た少年について男に尋ねる。

「・・・・・・お前に声を掛けて来た少年はそんなにヤバい奴だったのか? 確かに少年から発せられた魔力から考えると見た目とは不釣り合いな実力は持っていそうだが」

「お前の言っている事は正しい。あの少年は絶対に見た目とは不釣り合いな実力を持っている。なぁ、冒険者になった時に先輩の冒険者から人を見た目で判断するなって言われなかったか」

「・・・・・・確かにそんな事を言ってくれた先輩もいたな」

「俺は今、それを心底理解する事が出来た。俺には一瞬だけ少年が俺の喉元に刃を突きつける姿を錯覚した。お前がそういった錯覚を見ていないって事は、少年が上手くそこら辺を調節したんだろう」

ゼルートをモンスターで例えるなら、ゴブリンの皮を被ったドラゴンだと男は思った。
感じた内容に少しも嘘は盛っていない、ありのままの感想。

男はその後、パーティーメンバーに少年のパーティーの人とは絶対に面倒事を起こさない方がいいと伝えた。
普段なら仲間たちは男の言葉を完全には信用せず、半分は冗談だと捉える。
しかし今回は自身達も狙いを定められた訳ではないが、その余波を感じ取った結果。男の言う通りに行動した方が良いと、冒険者として培った経験が答えた。



ゼルート達が夕食の準備を終えると、当然の様に周囲の冒険者から視線が集まる。
その視線に対してゼルート達は特に気にしていなかったが、リシアだけは少し後ろめたい表情をしていた。

「な、なんか前回と同じように周囲の冒険者さんからの視線がこう・・・・・・随分と強い気が」

「確かにリシアの言う通り、視線が多く集まるな。他のパーティーの夕食を見れば分からない事ではないがな。その辺りはどう思っているんだゼルート」

カネルからの質問にゼルートはどう返していいのか分からず、一旦手を止めて考え始める。

(まぁ・・・・・・確かに恵まれているだろうな。魔法に関しては神様が俺の体を弄ったのではと疑うくらい高性能だからな。それに分けて欲しいなら交渉に来れば考えなくもないからな。非常事態って訳でもないし)

考えた末、ゼルートが至った結論は冒険者には難しく感じる提案だった。

「単純に考えれば、料理の腕が高い冒険者がパーティーにいれば少しは解決すると思うな。長持ちする材料とか現地で食べる事が出来る果物や魔物。そこら辺の知識があって後は常にフライパンや包丁、調味料を持っていれば食事事情はかなり改善されるんじゃないですかね」

ゼルートの考えを聞いたアレナは確かにその通りだと思った。料理が出来る冒険者、そういった存在がパーティーに一人いるだけでかなり変わって来る。
過去にそういった冒険者に会った事がある。しかしランクはベテランから上級と言える者達ばかりなので、ベテラン以下の冒険者達には難しい話だと、アレナは苦笑いしながら夕食を食べ続ける。

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