少年期［２４３］逃がす訳ないだろ

一瞬で自分達との距離を詰めて来たゼルートを見た蛮族冒険者はぎょっとした表情になり、腰巾着の二人は慌てて後退り、腰から地面に転んでしまう。

「な、お・・・・・・お前、今どうやってい、移動したんだ」

「それをお前に教える義理は無いだろ。てか、声震えてるぞ。店ではあんなに威勢が良かったのにどうしたんだ？？」

ゼルートはニヤニヤと笑いながら蛮族冒険者を挑発する。内心では会話すらせずに取りあえずボコボコにしたいと思っているが、先程の三人の会話が聞こえていた訳では無いのでまだ手は出さない。

自身に向かって挑発してきたゼルートに対し、警戒心が一気に高まる。

（こ、こいつ・・・・・・あの距離を一瞬で詰めたのは、何かしらのマジックアイテムを使ったからか？　それとも・・・・・・こんなガキが俺の目で追う事が出来ない速さを持っているっていうのか！！？？）

蛮族冒険者はコネでＢランクの冒険者になった訳では無く、一応ギリギリのラインで試験に合格してるのである程度の修羅場は潜ってきている。

そのため心情的には前者の考えであって欲しいのだが、冒険者として積み重ねて来た経験がそれを否定する。

蛮族冒険者は苛立ちを隠す事が出来ず、舌打ちをしながら前者の考えであって欲しいと僅かな希望にすがり、マジックアイテムの効果を阻害する効果を持つインディションクリスタルを発動する。

「・・・・・・何をしたかは内容は知らないけど、俺に何かをしたのは分かった。つまり・・・・・・なんで俺達の後を付けていたのか弁明のチャンスは要らなくて、俺と敵対するって事で良いんだな」

反省の色を全く感じさせない蛮族冒険者に対してゼルートは獰猛的な笑みを浮かべ、右足で地面を踏みつける。
すると三人の足裏から石の槍が伸びて足の甲を貫通する。

「痛っつ！！　な、なんだこりゃぁ、ぁ」

「ぎゃああああ！！！　こ、こいつ今詠唱無しでま。魔法を・・・・・・」

「ば、バラスさん！！マジックアイテムで何とか出来ないんすか」

当然の痛いみに混乱する三人。ザーキスは蛮族冒険者・・・・・・バラスから今回の為に買ったマジックアイテムでこの状況をどうにか出来ないのかと聞くが、相手の弱点を突いたり動きを阻害、または攻撃を防ぐ武器や道具しか買っておらず、ポーションの類はあまり上等な物は持ってきていなかった。

そしてバラスが痛みを我慢して石の槍から足を抜こうとするが、それを黙って見ているほどゼルートは甘くない。

「何かってに槍から抜こうとしてるんだよ。抜いて良い訳ないだろ」

ゼルートは殆ど自力では抜けない様にするため、石の槍の先端を操作して、アンカー型の返しを造る。

「なっ！！！！　てめぇーーー・・・・・・こ、これじゃぁ抜く事が出来ねぇだろ！！！」

「当たり前じゃん。お前らを逃がさないようにするための返しなんだからよ。お前ら・・・・・・もしかしてここから生きて帰れると思ってるのか？」

ゼルートは三人の下品な会話は聞こえていなかったが、三人が持っているマジックアイテムを鑑定眼を使って調べた結果、自分達を攻撃するためのマジックアイテムや動きを封じる、又は状態異常にするマジックアイテムが多くあった。

明らかにダンジョンに潜るための道具ではなく、同じ同業者を狙う装備。
そして中でも特にゼルートの目を引くマジックアイテムがあった。

「・・・・・・どこでそんなマジックアイテムを手に入れたのかは知らねぇけど、お前らがどういう目的で俺らの後を付いてきたのかは完全に理解した」

マジックアイテムを鑑定し終えたゼルートの顔には、明確な怒りが現れていた。

「おい、お前ら・・・・・・楽に死ねると思うなよ」


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