異世界を楽しみたい転生者

Gai

少年期[229]神は・・・・・・ダンジョンは見放していなかった

「・・・・・・はぁ~~~~、正直話にならなかったな。戦術は魔物にしては高かったのだろうけど、個々の力があれではな・・・・・・正直ゼルートの方が当たりだったみたいだな」

多数のモンスターに襲われても実力差が大きく離れているので、ルウナは戦っている最中に何度かゼルートの戦いをチラ見していた。

「リザードマンソルジャー・・・・・・では無い気がするな。その更に上位種といったところか。成長したスケイルグリズリーといい、ゼルートは本当に運が良いな」

一般の冒険者からすれば寧ろ運が悪く、最悪の状況なのだがルウナにとっては羨ましい状況だった。
だが、天は・・・・・・いや、ダンジョンはルウナを見放してはいなかった。

「――――――ッ!!!! ・・・・・・なんだ、いるじゃないか、個の力が強い奴が。中々良い一撃だな」

不意打ちとはいえ攻撃を避けた自身の髪に爪を掠らせた魔物に称賛を送った。

「ただ、殺気が駄々漏れ過ぎたな。それではいくら気配を殺していても、脚力が他とはレベルが違っても意味がないぞ」

「・・・・・・・・・・・・」

ルウナの言葉にロックパンサーは反応せずに睨み付けている。

(体や爪が岩で覆われている・・・・・・ロックパンサーか。ランクは確かCだったか? それにしてもあの脚力は中々の物だな。もう少し反応が遅れていたらかなりのダメージを喰らっていた筈だ。厄介な瞬発力だな・・・・・・まぁ、そこが良いところでもあるな)

強敵と呼べる相手が現れた事でルウナは嬉々として好戦的な笑みを浮かべていた。

そして身体強化を再び使い、手足に魔力を纏わせて構えを取る。
臨戦態勢に入ったルウナの表情に先程浮かべた笑みは既に消え、自分の命を狙って来るロックパンサーを見据えていた。

少しの間静寂の時間が流れ・・・・・・ロックパンサーが先に動き出した。

爪の上から覆われた鋭い岩。ゼルートが戦ったような成長したスケイルグリズリーが魔力を使って手足に岩を纏わせたのとは違い、自身の特性として爪や体に岩を纏っている。

なので魔力が切れたからといって纏っている岩が崩れ落ちる事は無い。

「ハッ!!!」

振り下ろされた右爪に対してルウナも魔力を纏った右爪で応戦する。
ほんの一瞬だけ力が拮抗するが自身の力ではルウナを押し切る事が出来ないと悟ったロックパンサーは、直ぐに空中で回転してルウナの頭に蹴りを入れようとした。

(今日は上から攻撃が来ることが多いな。というか・・・・・・なんて体幹をしているんだこのロックパンサーは。普通その状態から蹴りという選択肢が出るか?)

ロックパンサーの蹴りに驚きながらもルウナはバク転で蹴りを躱す。
そして直ぐに攻撃に移ろうとロックパンサーが着地した瞬間を狙い、片手だけを地面について体を無理やり捻って逆に横から蹴りをぶち込もうとした。

しかしロックパンサーの足が地面に着く方が速く、ほんの少し足を曲げで後ろへ飛びのいた。

結果的にルウナの蹴りをロックパンサーも躱す事が出来たが、今まで生きて来た経験からルウナの蹴りが自分の岩を砕いて体にダメージを与えると分かり、ルウナに対して警戒心を強めた。

「・・・・・・あんな少しのタメであそこまで跳べるのか。あの脚力と体幹・・・・・・そう簡単にダメージを与える事は出来無さそうだ」

真剣な表情は変わっていないが、ロックパンサーの強さに内心では闘争心が燃え上がっていた。

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