転生した先はダンジョンのラスボスだったけどとりあえず放棄する

ノベルバユーザー278774

リスタート

(痛っ!)
  少年は、暗闇の中で激痛に襲われた。正面から痛みを感じたので今はうつ伏せの状態なのだろう。
  目を開けようにもまぶたが重く感じ、目は開けられない。体が全く動かない。だが、他の感覚は生きているようだ。残った感覚で、周りの情報を得ようと試みた。
  周りは湿っぽく、冷たい。石が敷かれているようなので、宮殿か遺跡なのだろう。
  周りはとても静かで、生き物の気配はない。ここにいるのは彼だけらしい。
  最初は腕にも力が入らなかったが、少しずつ動かせるようになってきた。目も開けられたので、立ちあがり、辺りを見回してみる。
  そこは、無数の柱の支えている広い空間だった。柱に埋め込まれた無数の宝石はどういう原理なのかすべて優しい緑の光を発しており、床や柱に入ったひび割れは、この遺跡に長いこと人々が使っていないことを物語っていた。彼の真上の天井だけが円形に上へのびており、そこから大量の鎖が垂れ下がっている。 
   その位置から少し奥に、数十段程度の階段があり、その一番上には玉座がある。まるでRPGのダンジョンのボスの部屋さながらの世界観だ。
(そうだ、自分の見た目はどんな感じだ?)
  姿見はないが、この体も元は他人のものなのだ、自分のこと位知っておかないと困る。
  まず、声が出せるか確認してみた。
「...あ、あー。」
  最初はかすれた声だったが、それでも何度も出すと調子も出てきてとりあえず安心した。
  体は十代後半といったところか。細身だが少しは筋肉がついている。ただ、かなり垢まみれで汚い。
  服は少しぼろぼろで所々擦りきれてしまっている。
  髪は銀で背中をおおうほどの長髪だが、長いこと洗っていないのか、ボサボサで色がくすんで見える。全身垢だらけの今すぐ風呂に入りたくなる姿だ。ただ、ノミのような虫などはついていなかった。
  胸板の中心には水晶のようなものがあるが、今は触れないでおくことにした。
  ここまでで、一度情報を整理してみる。
  これが夢でなく、この転生先がファンタジー世界であれば恐らくこの場所がどこかのダンジョンなのは間違いなく、ここはその最深部―――つまりラスボスがいるべき所なのだろう。
  問題はラスボスがどこにいるのか―――なのだが、周りに生き物がいる気配はない。ここにいるのは彼ただ一人だ。となると、ひとつの答えにたどり着く。
(もしかして...俺なの?ラスボス?)
  初めはできれば認めたくなかった。なにせ、ダンジョンのラスボスということは、多くの冒険者の相手をしなければならないからだ。最悪すぐに命を落しかねない。
  だが、自分がラスボスと考えると合点のつく要素も見つかる。
  真上には鎖が垂れ下がっており、先ほどは言わなかったが足元にいくつか所々錆びた鎖の破片が転がっている。そして最初に受けた叩きつけられるような激痛。それは初めは鎖で上に吊り下げられていたが、錆びてぼろぼろになった鎖が何かの拍子に壊れて落ちたのではないだろうか。
  しかも、誰かが最近までここにいた痕跡がほぼ無く、おまけに彼自信も髪も全く手入れされていないどころか、体すらろくに洗っていない。つまり、ここからは全くと言っていいほど出たことがないとすると...
  彼がラスボス。ということになる。
(いくらなんでも鬼畜生過ぎるぞ神様...!)
  いくらなんでも戦闘経験の欠片もないのにダンジョンのラスボスと言うのは厳しすぎる。
  しかもこの部屋だけでも部屋の壁が見えないほどかなりの広さだ。こんなに大きな遺跡ならすぐにでも冒険者が来るかも知れない。
(落ち着け...落ち着け...大丈夫、きっと大丈夫だ...)
  彼はどうにか心に余裕をつくろうとした。必死で思考の逃げ道を探し出す。
  ここには最近まで生き物が他にいた様子がない。となればここは人がそうそう入ってこられないような秘教にあるのかも知れない。もしくは、既にどこかの冒険者が攻略したダンジョンで人も魔物も全く近づいて来ないのかも知れない。
  こんなことを考えているとそうかも知れない。ならば安心だろうと思っていた。
  その5分後に冒険者達が入って来るまでは。

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