仮面の英雄

サヤカ ユウノ

訓練開始

  木剣を作るのに少し時間がかかったが、体感的にまだ9時だ。昼飯までまだ時間がある。
  ん?、まてよ。俺が家お出たのが7時くらいで、移動にだいたい20分。そして、木剣作りが40分程度。一時間もたっていないが木剣のクオリティは高い。
  もう戦闘職じゃなく生産職になろうか。
  ……くだらない現実逃避はやめて真剣に考えるか。さっきまで訓練しようと意気込んでいたのに現実逃避し始めたのには理由がある。……訓練の仕方がわからないのだ。実際、生まれてから剣なんて一度も持ったことはないし、生前は年がら年中帰宅部だ。まあ、柄の悪い不良に襲われたときは傘で何度か撃退したが、今の俺に必要なのはそんなにわか剣術ではなく、正真正銘の剣術なのだ。
  家族も自分の身も、自分で守らなくてはならない。あのとき力があったら、なんてことにはなりたくない。
  よし、ヤル気が出て来た。何事も最初が肝心だ、真剣にしよう。


  剣を構え、まぶたを下ろして集中する。


「ふぅ」


  イメージだ、今の俺は歴代最強と言われた勇者だ。剣を持てば強大な魔物を瞬く間に切り倒し、戦場に出れば敵軍が数分で壊滅したと言われ、それ故に最強と呼ばれ今もなお語り継がれる勇者だ。
  イメージはできた、あとはそれに従うだけだ。


  カッと目を見開き凝縮された一瞬のうちに、標的にした木の幹を何万回も斬りつける。斬撃の一つ一つは決して無駄の無い動きで放たれ、次の瞬間には木の幹は塵になった。


《天剣術 Level.1を習得しました》
《魔闘術 Level.1を習得しました》


  その声が頭の中に響き、俺が地面に木剣突き刺した。瞬間……


パンッ


という音が鳴り響き、俺の両腕が弾け飛んだ。

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