仮面の英雄

サヤカ ユウノ

木剣作り

「綺麗だ…」


  森の中はそんなことを呟いてしまうくらい綺麗だった。
  大きな木が何本も等間隔に並んでいて、葉の隙間から差す光が心地いい。


「誰だよこの森が薄気味悪いなんて言ったやつ。……先生か、先生しかいないか」


  誰に言われたのか気になって思い出してみるが、孤児院で話したことがあるのが先生しかいないことに気づく。


「我ながら悲しい人生送ってるなー。まあ、にんげんかどうかすらあやしいけどな。……こんなとこで突っ立ってても仕方ないか。まずは、木剣作らないとな。時間は有限、時は金なりだ」


  ざっと周囲を見回してみる。
  そしたら、足元に落ちている30センチくらいの木の枝をみつける。それを手にとって木の幹に向かって軽く一閃。振り終わった姿勢で止まって居ると手にしていた木の枝が砕け散り、それと同時に木の幹枝で切った部分がずれる。


「よし、つぎは木を削れるものを作ってっと」


  そう言いながら手のひらサイズの石をもう一つの小石で砕いてナイフの形にして木を削りだす。


「本当は砕くんじゃなくて研いで作りたかったんだけどな〜」


  実際研いだ時の方が切れ味がいいが、あまり時間をかけられないし、今の設備?ではかなり時間がかかる。
  考え事をしながらして居ると、いつのまにか木剣ができていた。仕上げに柄の部分に魔導刻印を彫るために石のナイフを当てる。


《魔道具作成 Level.10を再習得しました》


  お、スキル習得か。最近あんまりなかったからか、少し嬉しい。
  よし、手に入ったってことは使えるってことだ、最大限使おうじゃないか。まあ、木剣だから硬くするだけでいいけどな。
  刻印を掘り終わったところで手が止まる。
  木剣に硬化の魔導刻印を彫るだけの簡単な作業だったし、あまり時間もかからなかった。なのに、そのこと自体……いや、自分の今日の行動に強烈な違和感を感じるのはなぜだろう。
  今日の行動を振り返れば何かわかるかもしれない。
  まず、孤児院の外に出た。たまに外出はしてたしこれはいい。
  つぎ、森に来た。初めて森に来たけどそこまでおかしいことじゃない。
  そのつぎ、枝で木を切った。……うん、明らかにおかしい。そもそも木って枝で切れるのか?、それ以前に枝でものを切れ-------


バキッ


  俺の何かに隙間が出来るような音がする。


「さっさと木剣の素振り始めるか。筋肉もつけなくちゃいけないしな」



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