漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第25話 戦後処理



俺達は今王城にいる。

「アドミレア、お茶飲むか?」

「私がやりますよ。マスターは座っていてください。」

「たまには俺がやるから。それでどうする?」

「それではいただきます」

アルトは紅茶を取り出してお湯を入れてカップに入れたのをアドミレアに渡した。

「それにしても遅いですね。」

ここは王城の部屋のひとつだ。王城に来た時はほとんどこの部屋なので随分とくつろいでいる。直ぐに行くからとハドルフさん達に言われ、ここで待っているのだが。

「まあ、みんな忙しいんでしょ。戦後処理も終わってないし、アルペリーニさんもガムスタシアに行ってるから人でも足りないんだと思う」

「私達は行かなくてよかったのですか?」

「正直ここまでやったんだから後よろしくって感じ?まあ、行こうとしても行けなかったのもあるよな」

「そうですね。それにしても双星の使徒があの年齢まで生きているとは思いもしませんでした。しかも両方とも」

「やっぱり稀なんだな。」

双星の使徒であるアルヘナとカストルを覚えているだろうか?戦争を終えてからの1週間はほとんどこの2人に時間を使った。
そう、封印を解いたのだ。

「上手くいってよかったよ。元の魔力量が少ないから少しずつ入れるしかなかったしね」

結果から言って封印は解けた。しかし解く時に2人の魔力量が少なくて一度に魔力を込めると一気に魔力限界を超えて死んでしまう可能性があったのだ。そのためゆっくりと、本当にゆっくりと入れていたら俺が寝ずに3日かかった。その後は俺はぐっすりと眠り今だ眠っているカストル達を看病したりしていたのでほとんど休んでいない。

「ちゃんと紋章が収まってたから大丈夫だと思うけど、まだ注意が必要だな」

「ええ、長い間の栄養失調と筋肉量の少なさ、肺活量の低さなど基礎的身体能力が圧倒的に足りていません。ゆっくりとリハビリするしかないでしょうが、無理にすると本当に壊れてしまいそうです」

「ほんとだな」

話をしているとハドルフさん達がやってきた。

「待たせたね。」

入ってきたのは国王陛下であるハドルフさん、宰相のキキリクさん、親父、そして始めてみる人だ。

「いえ、国王陛下。激務の中ありがとうございました」

「大丈夫さ。今日は彼を紹介しようと思ってね。シュメル、挨拶を」

「はい。初めましてアルベルト様、私はハドルフ国王陛下の代から外務卿を務めることになりましたシュメル・タジャートと申します。以後お見知り置きを」

「ご丁寧にありがとうございます。私はアルベルト・クロスフィードです。よろしくお願いします」

軽い挨拶が終わったところでハドルフが介入してくる。

「さて、今回シュメルを紹介したのはいくつかの理由がある。まず1つ目は今回の戦争で連合を結んで私達は勝利した。そこで問題になるのが成果をどう山分けするかだ。要するに東や北の国との国交問題だね。2つ目が敗戦国ガムストロについて、3つ目は捕虜についてだ。」

「随分と仕事が多いのですね。お疲れ様です」

「いえいえ、確かに大変ですが楽しくやらせて頂いてます。」

「今回紹介したのはアルト君の意見を聞きたかったからなんだ」

「俺のですか?」

「そう、今回ガムストロを制圧、そして捕虜を確保出来たのはほとんどアルト君のおかげだからね。」

「そうですか・・・」

しかし意見とは何をいえばいいんだろ。具体的な問題が欲しい。


「と言っても聞きたいのはひとつだけでね。捕虜についてだよ。」

「捕虜・・・ですか」

捕虜と言ったらやっぱりガムスタシアの住民と将軍、そして皇族だろう。


「はい。現在外務卿である私が連合との賠償金や今回の戦争の報酬に着いて話し合っています。その中で住民に関しては国に返すということが決まっています。しかし捕えられた将軍9名と皇族、皇帝についての審議が滞っています。意見としては死刑、永久牢獄刑、もしくは生かしたまま帝都に戻しガムストロ自体を属国とする。しかしその場合どの国の属国にするのかまた審議しなければなりません。」

「なるほど・・・」

かなり難しいところだな。できれば殺したくはない。しかし今回ガムストロに苦しめられた国は数多くある。その不満などを解消するにはそれしか無いのだろうか。

「そうだ。いいこと思いついた」

突然ハドルフさんが何かを閃いた。


「陛下、どのような方法でしょうか」

「うん、全部アルト君にあげよう」

「はい?」

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