漆黒王の英雄譚
第18話 さあ、やろうか
俺達は全員が城の正門に集合した。
「よし、集まったな。」
俺は集まったことを確認して口を開いた。
「久しぶりですわね、アルト」
「久しぶりだな。アリア、アリス。危険な司令を出して済まなかったな。怪我はないか?」
「問題ないっすよ」
「そうか、それは良かった。それじゃあ次の仕事に行こうか」
「なかなか大変そうですわね。」
「だろ?お前は好きそうだけどな」
「それは言わないで欲しいですわ」
「悪かった。改めて新しい作戦を伝える。久しぶりに全員で行う作戦だ。楽しみだな」
「と言っても結局戦うのは旦那とアドミレアの嬢ちゃんなんだろ?」
「まあな。まずフィゼルとカムイにはこの城の中にいる一般人を全て城の外に出してもらう。」
「了解」
「残りの6人はあれを使って城ごと結界で覆ってくれ。六角界陣でいい。張り終わったらその上からさらに三乗障壁を重ねがけしてくれ。」
「随分と用心するんだな」
「ああ、念の為な。俺の嫌な予感ってのはよく当たる」
「良くってほどでもないと思いますわよ?まあ、今回は私も嫌な予感というものはしますわね」
「そうか。まあ、それで頼む。」
「了解なのじゃ」
さて、作戦開始と行きますか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さて、これで全員か?」
「そうみたいだな」
俺はカムイと一緒に城の一般人を避難させていた。
途中隠れていたっぽい皇帝的な人達を見つけたけど直ぐに転移させて無視したので何も無かった。
「もしもし、避難は完了したぞ。」
『了解っす。これから結界を貼るんで直ぐに脱出してくださいっす』
「分かってるよ。ほれ、掴まりな」
「お前に掴まるのは釈然としないが仕方が無い」
カムイはフィゼルの肩を掴んた。
「まったく、【転移】」
フィゼルとカムイは城から脱出した。
その直後城を大きく覆うように強力な結界がいくつも張られた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「どうやらあっちは終わったみたいだな」
「そのようです。こちらも早く終わらせてしまいましょう」
「ああ、頼んだぞアドミレア」
「お任せ下さい」
アルトにアドミレアがついてきた理由は封印を解くためだった。
アルトは5歳からの5年間で人間がこなすような訓練ではなく、さらに過酷な訓練を積んでいた。その結果、力を封印しなくては世界の容量的に危険な状態になってしまったのだ。その封印をしているのがアドミレアである。封印は全部で八段階に別れている。普段は全てを封印した状態で過ごしているが、実際アルトは既に第二封印までの力を封印無しに制御することが出来ている。そして今回アルトは気配の強さとその数から第三段階まで解放すればある程度の余裕を持って倒すことが出来ると判断した。そしてその封印の解放をアドミレアに頼んでいたのだ。
「『我世界の管理者なり。我は封印の管理者権限をアルベルト・クロスフィードに譲渡し、副管理者となる。これより第一門、第二門、第三門を解放す。今こそ解き放て、無垢なる封印よ』」
するとアドミレアから強い輝きがアルトの中に入っていき、アルトの身体にはこれまで見えなかった八本の大きな鎖が巻き付いていた。そしてそのうちの一番外側にある鎖から三本が弾け飛び鎖は見えなくなった。
「アドミレア?」
アルトは驚きの顔をする。それは別に鎖を見たからでも封印が解けたからでもない。アドミレアが封印の管理者権限をアルベルト渡すと言ってきたことだった。
「もちろん未だ全ての力を制御できているわけではありません。しかし、それでも大丈夫だと判断して譲渡しました。安心してください。副管理者権限は私にありますから何かあった時はとめます。」
「そ、そうか。」
突然の深い信頼にしどろもどろするアルトは「急になんなんだ?」と呟きながら城の通路を進んでいく。
そして気配がある部屋の前で止まった。
「ここだな。アドミレアはどうする?一緒に戦うか?」
「いえ、見てますよ。マスターの師匠としてしっかりと見届けます」
「そうだったな、それじゃあちゃんと見ててくれよ?」
「ええ、もちろんです」
アルトは重い扉に触れ、それを開けた。
「たのもぉー!」
元気よく挨拶(?)をしながら中に入ると中には8人ほどの男女がいた。そしてアルトはすぐさまこの8人が邪神の手先だということが分かった。
「よく来ましたね、神の使徒よ」
「へぇ、よく俺が神の使徒だって分かったな。」
「もちろんです。その忌々しいオーラは愚神共の使徒そのもの。」
「タクロスさん達を愚神・・・ね」
「さすがにこの数の敵ではいくら神の使徒と言っても敵わないでしょう。さあ、始めましょうか」
「そうだな。久しぶりにこんなに怒ったぜ?思いっきりぶつけてやるから覚悟しろよ?」
「痩せ我慢は得意なようですね。」
「そっちはいいのか?そんな少人数で。後で負けて人数が足りませんでしたって言っても助けてやらねぇぞ?」
「貴様・・・」
全員からさっきが立ち上がる。どうやらかなり怒っているようだ。随分短気だな。
「それじゃあ、やろうか」
アルトは全身から魔力を迸らせる。
「殺す・・・!」
相手も全員がこの帝国の将軍達以上の圧倒的な魔力を迸らせる。
そして少しの沈黙の後、誰かの唾を飲む音ど同時に互いに動き始めた。
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