漆黒王の英雄譚
第12話 相談
「というわけで【絶剣】のメンバーでガムスタシアに乗り込みます。皆さんにはその間、ガムスタシアに攻め込んで欲しいんです」
「つまり短期決戦にするという事だね?」
「はい。」
ここにいるのは各国の代表達だ。アシュレイを怒らせてしまったあと部屋に何度問いかけても出てきてくれないため先にこちらに来て作戦会議を行っていた。
「うーん」
全員が難しい顔をする。
「正直我々は既に祖国をガムストロに取り込まれてしまっている。何かを口出しする権利はない。しかしこれは・・・・・・」
俺が助けた国王のひとりがそう言った。
「さすがにアルト君達がキツすぎやしないかい?アルト君とあの仲間の人達が強いと言っても敵のど真ん中に突っ込んで行ったらさすがに・・・・・・」
「なんの問題もありません。【絶剣】は1人で国ひとつは潰せます。それに俺は彼らよりもさらに圧倒的に強い。問題ありません」
「むぅ・・・しかしそこまでなのかい?あの人達が1人で国ひとつに相当するなんて。正直信じられないよ」
「さすがに証明できませんね、試しに国ひとつ潰して、という訳にも行きませんし。どうにか信用してくれませんか?」
「うーん・・・」
ハドルフさんが悩んでいるとリュシュトベルト帝国の代表のカサールが声を上げた。
「それほどまでに自信があるならばやってみればいいじゃないですか。我々全員を前にしてここまで大口を叩いたんです。これはやらせてみるべきかと」
おお、カサールさんは信用してくれるみたいだ・・・・・・ん?あ、違うな。なんでだろう。まるで親のかたきのように睨んでくるんだが?
(こいつが王女と陛下の言っていたアルベルト・クロスフィード。戦死さえしてしまえばあのお嬢様はこっちのものだ)
「別に王都で篭城戦でも構いません。半日あれば終わりますし。どちらにせよガムスタシアには行かなきゃいけないのでダメですか?」
「・・・・・・分かった。しかし何かあったら直ぐに逃げてくること。そして必ずここに戻ってくること、これが条件だ。これが守れないなら行っては行けない」
「分かりました。」
「そうか。それではアルベルト・クロスフィード、申し出を受諾し、君に任務を言い渡す。侵略国ガムストロ帝国帝都ガムスタシアに潜入し帝都を制圧せよ。」
「はっ、謹んでお受け致します」
そうして俺がガムスタシアに乗り込むことが決まった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
会議のあと俺はハドラーの所にでも行くかと思い城の廊下を歩いているとリュシュトベルト代表で来ているカサールさんに会った。俺は会釈して通り過ぎようと思ったのだが、カサールさんの方から話しかけてきた。
「アルベルト・クロスフィード君だよね?」
「ええ、先程の会議はお疲れ様でした。」
「いやぁ、君は10歳と聞いたよ。その年で凄いと思うよ。国の方針を決める会議に出席出来るのだからね」
「ありがとうございます。カサールさんもまだお若いのに騎士長に就任されているその力量。素晴らしいとおもいます」
「それはそれは、ありがとう。そう言えば5年前エミリア皇女殿下がお世話になったとか」
「?。ええ、5年前に少しばかりですがお会いしたことがありましたね。」
「実は私エミリア皇女殿下と縁談がありまして、」
「それは、おめでとうございます。カサールさんのような良い方と巡り会うことが出来るエミリア皇女殿下もさぞお喜びでしょう」
「あははは。そうでも無いですよ。しかしなかなかエミリア皇女殿下が心を開いて下さらないのですよ。」
「そうですか、実は5年前私も心を開いて下さらなかったのですよ。結局、数回短く言葉を交わす程度で別れてしまいました」
「そうだったのですか。それは残念です。ぜひ仲良くなる方法を教えてもらおうと思ったのですが。」
「すみません。あまり人付き合いは得意な方ではないので」
「ふふふ、今日の様子を見てるとそうとは思えませんね」
「そうですかね?あははははは」
「ええ、ふふふふふ」
互いに笑い合っている2人はそれは奇妙だった。しかしその直後互いに足を踏み出し睨み合う。
「てめぇ、エミリアをどうするつもりだ?」
「そちらこそ。私の邪魔はしないでくださいね」
互いに殺気をぶつけながら睨み合う。近くの花瓶が割れ、近くにいた使用人は震えながら走り去って行った。
「けっ、今日のところは見逃して置いてやるよ。俺が居ないところでこの国とエミリア達に変なことしてみろ。必ず殺す」
「できるものならやって見なさい。あの程度の殺気で私に向かってきたのは褒めますがその程度で私は殺せませんよ」
「・・・・・・・・・」
そのままカサールは去っていった。
残ったアルトはその場に立ったままカサールの去った方向を見ていたが突然笑いだした。
「くふふふ、あはははははっ!」
「旦那も酷いもんだな。それにしてもその程度では私は殺せませんよ・・・・・・ぐははは!カッチョイイいぃ」
その声がするとアルトの影が蠢き影から男がでてきた。この男はアルトが作った組織【絶剣】の《虚空》のアダムスだ。
「それよりも会議の話は聞いてたな。あいつらに帰ったら集まるように言っておいてくれ。」
「了解。それじゃあなぁ。それとお嬢さんは部屋の中にこもったままなのかも確認しておくよ。」
「さっさと行け!」
「へーい」
そう言うと再びアダムスは影の中に入ってどこかへ行ってしまった。
「はぁ・・・・・・どうすっかな。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それはアルトが悪いね」
「やっぱりか。」
今俺はハドラーの私室にいる。あの後ハドラーの部屋に行ってアシュレイとの事を相談したのだ。
「と言うより正直僕も反対だよ。アルト達がガムスタシアに乗り込むなんて」
「お前まで・・・・・・」
「本当は姉上が言うべきなんだろうけど。エルヴィンさんも父上も姉上もみんなこう思うと思うよ。どうしてアルトが行かなきゃ行けないんだってね。それはそうだろう。エルヴィンさんからしてみればまだ5歳の息子が危険な目にあっているのに自分は何も出来ず、挙句の果て旅に出てしまう始末、君の母上方だって思っているし兄弟の人たちも思っているだろうね。父上から見れば自分の治める国の命運をまだ齢10歳の子供にさずけなければならない無力感、それは騎士団長のアルペリーニさんもだろうね。そしてアシュレイ姉上は自分にやっと出来て、大好きな婚約者が自分から危険な方を選んで進んでいく。その度に傷付いて感じる無力感。それを5年前の事件の度に思ったはずだ。そして旅から帰って、やっと一緒にいられると思ったら次は敵の黒幕がいる場所に飛び込んでいくという。もちろん僕もだ。どうしてアルトがそんなことをしなきゃ行けないんだって思うよ。それが例え神々が示した道なのだとしてもね。変わりはいくらでもいたはずだ。」
「それは・・・・・・」
確かに・・・言われてみればそうかもしれない。5年前タクロス様達に宣言した日からずっと俺がやらなければいけないと思ってきた。この旅の中でもずっとそう思ってきた。【絶剣】の奴らは気が付いたら出来ていた。意識して作ったわけじゃなかった。
「君は考えたことがあるかい?置いて行かれる者の気持ちを、その心を。自分の大切な人が1人でどこまでも言ってしまって自分達が置いてかれ隣に一緒にいることが出来ない自分の不甲斐無さ、無力感、劣等感、そして悔しさを。姉上はこの5年間ですごく努力をしてきた。アルトに追いつこうとがんばってたよ。隣に一緒に立てるようにって。」
「・・・・・・・・・」
「君は5年前こう言ったね。『力を持つものはそれを行使し、責任を果たす義務がある。俺は力あるものとし、その責任を果たさなくちゃならない』って。けど僕はそう思わない。例え君が勇者だとしても、神の使徒だとしても人間であることには変わりない。僕もこの5年間でいろんなことを見てきた。まだ父上達ほどじゃないけどね。けどそれでも分かる。人間は脆い。状況や心次第で意図も簡単に壊れてしまう。人間は1人では生きていけない。誰かと支えあって生きていけるんだ。人間だけじゃない。国も街も集落も魔物も。全て命あるものはそうやって生きてるんだと僕は思う。」
「ハドラー・・・・・・」
そう言えば前世では『人という字は人と人が支えあって出来ている』とかいってる人もいたな。
「アルト、君が1人で戦い続ける必要ない。そんなのは義務ではない。それならばアルトは既にその義務を達成している」
「ん?なんでだ?」
「だって君は既にこの国を救っている。それも3回。これで充分じゃないか。それ以上は欲張りって物さ。いい加減肩の荷を降ろせよ。人に頼れ。周りを見ろ、君はひとりじゃないはずだ」
「・・・・・・・・・」
「さ、帰った、帰った。僕はこれからやらなきゃいけない事があるからね。アルトは家にでも帰って話でもしてきたらいい」
「お、おい・・・」
俺は席を立たされるとそのまま部屋を追い出されてしまった。
「はぁ・・・ひとりじゃない・・・か。・・・・・・帰るか」
アルトはその足で王城を後にした。
「つまり短期決戦にするという事だね?」
「はい。」
ここにいるのは各国の代表達だ。アシュレイを怒らせてしまったあと部屋に何度問いかけても出てきてくれないため先にこちらに来て作戦会議を行っていた。
「うーん」
全員が難しい顔をする。
「正直我々は既に祖国をガムストロに取り込まれてしまっている。何かを口出しする権利はない。しかしこれは・・・・・・」
俺が助けた国王のひとりがそう言った。
「さすがにアルト君達がキツすぎやしないかい?アルト君とあの仲間の人達が強いと言っても敵のど真ん中に突っ込んで行ったらさすがに・・・・・・」
「なんの問題もありません。【絶剣】は1人で国ひとつは潰せます。それに俺は彼らよりもさらに圧倒的に強い。問題ありません」
「むぅ・・・しかしそこまでなのかい?あの人達が1人で国ひとつに相当するなんて。正直信じられないよ」
「さすがに証明できませんね、試しに国ひとつ潰して、という訳にも行きませんし。どうにか信用してくれませんか?」
「うーん・・・」
ハドルフさんが悩んでいるとリュシュトベルト帝国の代表のカサールが声を上げた。
「それほどまでに自信があるならばやってみればいいじゃないですか。我々全員を前にしてここまで大口を叩いたんです。これはやらせてみるべきかと」
おお、カサールさんは信用してくれるみたいだ・・・・・・ん?あ、違うな。なんでだろう。まるで親のかたきのように睨んでくるんだが?
(こいつが王女と陛下の言っていたアルベルト・クロスフィード。戦死さえしてしまえばあのお嬢様はこっちのものだ)
「別に王都で篭城戦でも構いません。半日あれば終わりますし。どちらにせよガムスタシアには行かなきゃいけないのでダメですか?」
「・・・・・・分かった。しかし何かあったら直ぐに逃げてくること。そして必ずここに戻ってくること、これが条件だ。これが守れないなら行っては行けない」
「分かりました。」
「そうか。それではアルベルト・クロスフィード、申し出を受諾し、君に任務を言い渡す。侵略国ガムストロ帝国帝都ガムスタシアに潜入し帝都を制圧せよ。」
「はっ、謹んでお受け致します」
そうして俺がガムスタシアに乗り込むことが決まった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
会議のあと俺はハドラーの所にでも行くかと思い城の廊下を歩いているとリュシュトベルト代表で来ているカサールさんに会った。俺は会釈して通り過ぎようと思ったのだが、カサールさんの方から話しかけてきた。
「アルベルト・クロスフィード君だよね?」
「ええ、先程の会議はお疲れ様でした。」
「いやぁ、君は10歳と聞いたよ。その年で凄いと思うよ。国の方針を決める会議に出席出来るのだからね」
「ありがとうございます。カサールさんもまだお若いのに騎士長に就任されているその力量。素晴らしいとおもいます」
「それはそれは、ありがとう。そう言えば5年前エミリア皇女殿下がお世話になったとか」
「?。ええ、5年前に少しばかりですがお会いしたことがありましたね。」
「実は私エミリア皇女殿下と縁談がありまして、」
「それは、おめでとうございます。カサールさんのような良い方と巡り会うことが出来るエミリア皇女殿下もさぞお喜びでしょう」
「あははは。そうでも無いですよ。しかしなかなかエミリア皇女殿下が心を開いて下さらないのですよ。」
「そうですか、実は5年前私も心を開いて下さらなかったのですよ。結局、数回短く言葉を交わす程度で別れてしまいました」
「そうだったのですか。それは残念です。ぜひ仲良くなる方法を教えてもらおうと思ったのですが。」
「すみません。あまり人付き合いは得意な方ではないので」
「ふふふ、今日の様子を見てるとそうとは思えませんね」
「そうですかね?あははははは」
「ええ、ふふふふふ」
互いに笑い合っている2人はそれは奇妙だった。しかしその直後互いに足を踏み出し睨み合う。
「てめぇ、エミリアをどうするつもりだ?」
「そちらこそ。私の邪魔はしないでくださいね」
互いに殺気をぶつけながら睨み合う。近くの花瓶が割れ、近くにいた使用人は震えながら走り去って行った。
「けっ、今日のところは見逃して置いてやるよ。俺が居ないところでこの国とエミリア達に変なことしてみろ。必ず殺す」
「できるものならやって見なさい。あの程度の殺気で私に向かってきたのは褒めますがその程度で私は殺せませんよ」
「・・・・・・・・・」
そのままカサールは去っていった。
残ったアルトはその場に立ったままカサールの去った方向を見ていたが突然笑いだした。
「くふふふ、あはははははっ!」
「旦那も酷いもんだな。それにしてもその程度では私は殺せませんよ・・・・・・ぐははは!カッチョイイいぃ」
その声がするとアルトの影が蠢き影から男がでてきた。この男はアルトが作った組織【絶剣】の《虚空》のアダムスだ。
「それよりも会議の話は聞いてたな。あいつらに帰ったら集まるように言っておいてくれ。」
「了解。それじゃあなぁ。それとお嬢さんは部屋の中にこもったままなのかも確認しておくよ。」
「さっさと行け!」
「へーい」
そう言うと再びアダムスは影の中に入ってどこかへ行ってしまった。
「はぁ・・・・・・どうすっかな。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それはアルトが悪いね」
「やっぱりか。」
今俺はハドラーの私室にいる。あの後ハドラーの部屋に行ってアシュレイとの事を相談したのだ。
「と言うより正直僕も反対だよ。アルト達がガムスタシアに乗り込むなんて」
「お前まで・・・・・・」
「本当は姉上が言うべきなんだろうけど。エルヴィンさんも父上も姉上もみんなこう思うと思うよ。どうしてアルトが行かなきゃ行けないんだってね。それはそうだろう。エルヴィンさんからしてみればまだ5歳の息子が危険な目にあっているのに自分は何も出来ず、挙句の果て旅に出てしまう始末、君の母上方だって思っているし兄弟の人たちも思っているだろうね。父上から見れば自分の治める国の命運をまだ齢10歳の子供にさずけなければならない無力感、それは騎士団長のアルペリーニさんもだろうね。そしてアシュレイ姉上は自分にやっと出来て、大好きな婚約者が自分から危険な方を選んで進んでいく。その度に傷付いて感じる無力感。それを5年前の事件の度に思ったはずだ。そして旅から帰って、やっと一緒にいられると思ったら次は敵の黒幕がいる場所に飛び込んでいくという。もちろん僕もだ。どうしてアルトがそんなことをしなきゃ行けないんだって思うよ。それが例え神々が示した道なのだとしてもね。変わりはいくらでもいたはずだ。」
「それは・・・・・・」
確かに・・・言われてみればそうかもしれない。5年前タクロス様達に宣言した日からずっと俺がやらなければいけないと思ってきた。この旅の中でもずっとそう思ってきた。【絶剣】の奴らは気が付いたら出来ていた。意識して作ったわけじゃなかった。
「君は考えたことがあるかい?置いて行かれる者の気持ちを、その心を。自分の大切な人が1人でどこまでも言ってしまって自分達が置いてかれ隣に一緒にいることが出来ない自分の不甲斐無さ、無力感、劣等感、そして悔しさを。姉上はこの5年間ですごく努力をしてきた。アルトに追いつこうとがんばってたよ。隣に一緒に立てるようにって。」
「・・・・・・・・・」
「君は5年前こう言ったね。『力を持つものはそれを行使し、責任を果たす義務がある。俺は力あるものとし、その責任を果たさなくちゃならない』って。けど僕はそう思わない。例え君が勇者だとしても、神の使徒だとしても人間であることには変わりない。僕もこの5年間でいろんなことを見てきた。まだ父上達ほどじゃないけどね。けどそれでも分かる。人間は脆い。状況や心次第で意図も簡単に壊れてしまう。人間は1人では生きていけない。誰かと支えあって生きていけるんだ。人間だけじゃない。国も街も集落も魔物も。全て命あるものはそうやって生きてるんだと僕は思う。」
「ハドラー・・・・・・」
そう言えば前世では『人という字は人と人が支えあって出来ている』とかいってる人もいたな。
「アルト、君が1人で戦い続ける必要ない。そんなのは義務ではない。それならばアルトは既にその義務を達成している」
「ん?なんでだ?」
「だって君は既にこの国を救っている。それも3回。これで充分じゃないか。それ以上は欲張りって物さ。いい加減肩の荷を降ろせよ。人に頼れ。周りを見ろ、君はひとりじゃないはずだ」
「・・・・・・・・・」
「さ、帰った、帰った。僕はこれからやらなきゃいけない事があるからね。アルトは家にでも帰って話でもしてきたらいい」
「お、おい・・・」
俺は席を立たされるとそのまま部屋を追い出されてしまった。
「はぁ・・・ひとりじゃない・・・か。・・・・・・帰るか」
アルトはその足で王城を後にした。
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