A Living One

東堂タカノ

閑話

 気がつくと真っ白な空間に立っていた。
 先程眠りについた筈だ。なのに何故こんな所にいるんだ?
 辺りを見渡すがただ白いだけで何も無い。どこまでも無が続いている。
 本当にここはどこだ?
 そう思っていると何かを感じ、後ろを向く。すると、先程まで何も無かったはずの空間に玉座が現れた。勿論ただの玉座では無い。全体的にボロボロになり、所々崩れ落ち、座ってしまったら壊れるのではないかと思うほどに朽ち果てている。
 何よりも、異質だ。真っ白な空間にあるというだけでおかしいのに、禍々しさを感じる。それなのに恐れを感じていない。むしろ知っている、そんな気がしている。
 そう思っていると、背後から声をかけられる。


「やあ」


 その声に驚き後ろへ振り返る。しかしそこには誰もいない。


「こちらだ」


 そう言われ再び玉座の方を見る。そこには1人の男性が座っていた。銀色の髪は短く立てており、目は鷲のように鋭い。着ている服は所々破れ、元々は美しかったであろう筈の生地は薄汚れ輝きを失ってしまっている。褐色の肌は荒れヒビ割れたような模様が見え、まるで干上がった大地を思わせる。
 ただ、その身に纏うオーラは今まで出会った者の中で群を抜いている。意識を保とうとしなければ今にでも僕は倒れてしまうだろう。それ程までに強大で異質だ。


「初めましてと言うべきかな、ユール・シープ。私の名はシウル。君に寵愛を授けた者だ」


 かもしれないと思っていたが、本当に神、しかも荒神シウル。僕に寵愛を授けたくれた神だった。
 会いに来るとはゾーアから聞いていた。ただまさか今日だとは思わなかった。そう考えていると荒神が口を開く。


「ふむ。何やらとても驚いているな。フラワから何か聞かなかったのか?」


 フラワさんから?いや、そんな事は…まさかあの時の言葉はこの事を言っていたのか。
 僕は口を開いていいのか分からず黙っていた。
 僕が何も言わないのを不思議に思ったのか荒神が首を傾げ、僕に言ってくる。


「どうした。何故何も話さない。好きに話して構わない」


 荒神からの許しは得た僕は話しかける。


「気をつけなさいとは言われましたが、まさかこの事だとは思ってもいませんでした」


「成る程な。そういうわけか。だが、こうして会ったのだその事はもうどうでも良いな。取り敢えず話をしよう。席につくといい」


 そう言った荒神は腕を振るう。すると、玉座の前に机と椅子が現れる。そのどちらも玉座とは打って変わり、純白の綺麗な物だった。僕は促されたように席に着いた。僕が座ったのを確認すると荒神が話し始める。


「さて、何から話そうか。よし、君の質問に答える形にしようか。早速だが何かあるかい?」


 荒神はそう聞いてきた。いきなり質問か…


「こんな事は貴方に聞くべきではないと思うのですが、加護と寵愛について詳しく聞きたいです」


 荒神は嫌な顔1つせず頷いてくれた。


「構わない。少し長くなるが構わないな。では、話そう。まず加護とは下界の者達が唯一神として信じているアトゥルスカによって与えられる物だ。実際は私達宮神によって与えられている。実は遥か昔には、私達のことは知られていた。しかし、いつの頃からか忘れられアトゥルスカと呼ばれるモノが信じられるようになった。それでも私達は下界の者達を見捨てず加護をそして寵愛を授けてきた。私達は君達を愛しているからね。少し話が逸れてしまったな。話を戻そう。加護は1種類ではなく、全てで5種類。まず、生命の加護。これは人より体力が多かったり、傷を受けづらかったりと身体的な強度が増す。また、回復系や守備系の魔法を覚えやすくなる。次にいくさの加護。これは戦いに置いてどうしたら良いかが分かるようになったり、思考・判断力が増す。人によっては戦況を把握することも可能になる。こちらは生命の加護と変わり、攻撃系の魔法の覚えが早くなる。次に魔の加護。これはその名の通り魔法に関する能力が上がる。魔力量、魔力操作、魔法の覚え易さ、魔法の威力。中には得意属性でなくても派生属性が使えるようになる者もいる。次に知の加護。この加護の持ち主は『ノトム』を使用できる。『ノトム』とはどこかで"本"として記されたモノの知識を得ることが出来る魔法だ。例えばこれで魔物を視る。もし魔物がどこかで記憶されていたらその魔物についての情報を得られるが、今までに誰も知らない、もしくは本がたった1冊だけである場合は情報を得ることができない。この『ノトム』では人を覗く事は出来ない。人によっては他の効果も持っている。例えば嘘が見抜けたり、魔力の流れが分かったりだ。そして最後が唯一神の加護。この加護を持つ者は極少数。加護持ちの中でも数パーセントになる。この加護を持つ者は特殊な技能を持っていたり、他の加護の能力を複数持っていたりする。加護の中では最上位の物だ。ひとまず加護については以上だ。何か気になる事はあるか?」


 話を一度切り荒神が聞いてくる。加護でも人によって差がある事は分かった。僕が寵愛を持っているとはいえ、今の僕と加護持ちの相手では、後者に分がある。気をつけなければ。


「いえ、ありません」


 僕はそう答える。すると荒神は頷き話を続ける。


「そうか、なら続けよう。次は寵愛についてだな。寵愛とは簡単に言うと加護の上位互換。それも2、3段上だ。それは、神の力の一片を使えるからだ。とは言ってもこれにも個人差があり、更には種族による制約等も存在する。寵愛持ちはその力を最大限使用できれば、他の者を圧倒する事が出来る。同じ寵愛持ち、若しくは私達が相手しなければならない程に。また、寵愛持ちは加護持ちの者を知る事が出来る。むやみに知れるわけではないがな。ただ、同じ寵愛持ちは知る事が出来ない。相手から言われれば別だが。そして、加護持ちはどの時代にも一定数はいるものだが、寵愛持ちは変わる。2、3人しか居なかったり、逆に24人全員いたりとね。今は13人。ただどの神の寵愛かは私でも分からない。レオルでさえ寵愛について介入する事は難しいからね。それ程までに寵愛は強力だ。君も気をつけるといい」


 成る程、今は13人居るのか。きっと全員に会う事は無いだろう。余りにも確率が低い。ただ荒神の言う通り気を付けておいて損は無いだろう。


「これで寵愛についても説明し終えいたが、他に質問は?」


「貴方方宮神についても知りたいです」


 僕は遠慮がちに聞く。荒神は僕の目をじっと視る。何故知りたいのかを問いてくる目をしている。そのまま数秒が経過すると、荒神は言う。


「詳しくは話す事が出来ない。簡単にでいいかな?」


「構いません」


「そうか。荒神は災い、守神は守り、知神は知識、独神は弱さ、魔神は魔法、戦神は戦い、愛神は心、冒険神は魔物や土地、戯神は楽と嘘、豊穣神は植物や動物、商業神は営み、最高神はこの世の理をそれぞれ司っている。最高神は神の統率者としての役割も果たしている。基本私達は下界に干渉する事は出来ない。加護や寵愛といった形や自然現象、今の君のようにこちら側へと招き個人で会う事ぐらいしか出来ない。下界の手助けも出来ない。このぐらいしか話せる事は無いのだが、良かったか?」


「はい、ありがとうございます。それで次の質問ですが、何故僕に寵愛を授けて下さったのですか?」


 僕はそう聞く。荒神は顎に手を当て少し考えるような仕草をしてから答える。


「簡単に言ってしまえば神の気まぐれの様な物だ。神によって理由は様々だ。其の者が気に入ったから、其の者の未来を過去を知っているから、ただ単に面白いから、様々だ。私の場合は、君ならと思ったからだ。私は今まであまり恩寵を授けてこなかった。それにも理由があるのだが、君に話すべきではない。そして、君ならと思った理由も大層な事ではない。話す内容でもないだろう。ただ君は恩寵を授けてるだけの資格はある。その事は忘れないでくれ」


 そう言って荒神は微笑んでくる。その微笑みは今まで見た荒神のどの表情よりも暖かく愛に満ち溢れている気がした。それを見た僕は託してくれたこの人、いや神の託してくれたその理由を知りたいと思った。今は話してくれそうにない。ただいつか話してくれるかもしれない。その時が来るように努力を続けよう。


「さて、こんな感じでいいかな?次の質問は何だい?」


「いえ、もうありません」


「そうか。そろそろ干渉できる時間の限界が近づいている。最後になったが君に寵愛の力を授けよう。こちらへ」


 そう言って荒神は手を振り机と椅子を消し、玉座を立つ。僕も荒神の方へと歩み寄る。荒神は僕の方へと手をかざす。


「汝に寵愛を」


 すると僕の体は暖かい物に包まれ、辺りには風が吹く。その風が止むと荒神が言う。


「これで力は授けた。どの様な力なのかは君の頭に入っている」


 僕は頭の中で力について知る。それを知った僕は戸惑う。話そうとするが上手く力が入らない。


「こ、荒…神、この力は…」


 荒神はただ優しい笑みを浮かべる。
 段々と意識が薄れていく気がする。
 そして最後に言う。


「君ならば大丈夫だ。頼んだよ」


 荒神のその言葉と共に僕の意識は完全に途切れた。


 ▽ △ ▽


 ユールが去った後白い空間にシウルは残っていた。まるで何かを願う様に彼はその場に立っていた。


「言ったか。私と同じ道は歩まないでくれ。私の唯一の願望を君に託す」


 その言葉を最後にシウルは空間から姿を消した。シウルが姿を消すと空間は崩れ始める。玉座は既に、崩れ始める前に何処かへと消えていた。
 そして空間が完全に崩れ、この世界から消えて無くなった。


 ▼ ▲ ▼


 アザーとは違う場所、違う次元


 神々の住まう場所、スエドオシオス


 その一空間、アザー最高神レオルの住まう場所


「成る程、奴は寵愛を与えたか。何百年ぶりかのう。次の者はどうなるのか」


 レオルの周りが暗くなり、星が巡る


 星は軌道を夜に残し、消えていく


「成る程のう。こうなるか…」


 レオルは星を詠み、結果を導き出す


 その結果を見たレオルは、表情を崩す事はなかった


 ただその目には1つの輝きがあった


 それが悲しみなのか喜びなのかは分からない


 そして願う


「かの者と荒人神あらびとがみに我らが主の御加護を」











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