孤独で泣き虫な一人の少女の妖物語

椛日向葵_himari

「1.少女」

    都心から何時間もかけた、日本の東の小さな町に少女は暮らしていた。幼い頃に交通事故で両親を亡くしたその子は、祖父母に育てられていた。小さな町には、学校が1つしかなく、小中高一貫であった。人口も少なく、同級生は10数人。皆、仲が良く、休日も公園などに集まるほどだ
少女を除いて。
    「アノちゃん遊ぼー!みんな待ってるよ!!」
    「あーちゃん。遊んでおいで。」
無邪気に誘う同級生にも、心配しながらも優しく声をかけてくれる祖母にも、少女は無愛想だった。
    「遊ばない。」
短く、静かに言うと少女は自室に戻って行く。
    「ごめんねぇ。また誘いに来てくれる?」
    「アノちゃんは、大切なクラスの友達だもん!」
    「ありがとう。あーちゃんの事よろしくね。」
祖母と同級生達の声が聞こえる。小学1年生、7才。年齢に似つかわしくない無愛想な性格で、にこりとも笑わない少女は、夏休み前頃から学校にも行かなくなった。幼くして両親と死別したことによる心の傷はふかかったのだ。
    独りの少女は、自室に籠って絵を描いたり、本を読んだりする。祖父母はそんな孫をそっと見守った。少女は時々、ひどく寂しくなる。そんな時は静かに、静かに独りで泣く。祖父母にも甘えず、静かに、声を押し殺して泣くのだ。無愛想で甘え方を知らない少女はいつも孤独だった。祖父母は彼女を温かく、優しく見守り、同級生の少年少女達ははやく友達になりたいと彼女を誘う。教師や街の大人達も、心配しつつも優しく温かく見守る。

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