アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
地下の村『アリエスタ』
幻影結界を施された穴の奥へとゆっくり警戒しながらボクたちは進んでいく。
穴の奥から吹いてくる風は、外のような生ぬるい気持ちの悪さは感じられない。
「地上の汚染は地下までは及んでいません。ただ、あまりにも地上を汚染しているために、生きていくために必要な何もかもが地上からは失われつつあります。あの植物たちは毒や瘴気は吐き出しますが、酸素は吐き出しません」
「それって、遠からず滅亡するっていうこと?」
「そうです。スピカ様は賢いですね」
「えへへ」
「何を言っているのかわからない。けど、森は重要」
「そうですね。私でも何かが失われていることはわかりますが、詳しいことはわかりませんでした」
「光合成をするような植物ではないってことだにゃ」
「音緒が知っているなんて不思議!!」
「スピカにゃん、ひどいにゃ!」
現在先頭をルーナが歩き、ボク、フィルさん、ミア、そして音緒の順番で進んでいる。
音緒は盗賊職なので後方の警戒を有利にするスキルを持っているらしい。
それと、パーティー効果というか盗賊職の恩恵で、パーティーメンバーも罠に気づきやすくなっている。
「前方には特に障害物はありませんが、階段があります。どうやら地下があるようです」
ボクたちの前方には階段が存在しているらしい。
正直狐火の明るさではあまりよく見えない。
ただ前方にぽっかり穴が開いてるようにしか見えないのだ。
「ルーナ、見えない」
「スピカ様は身長が低いですからね。ほ~ら、たかいたか~い」
「ちょっ!? やめてよ!?」
ちょっとどいてくれればいいだけなのに、なんでわざわざボクを持ち上げたのか。
ルーナめ、後でお仕置きしてやるううう!!
悔しくも持ち上げられ、抱きかかえられた状態でルーナの前に出たボク。
うんざりしつつも前方を確認すると、たしかに地下へと続く階段があることが分かった。
実際に歩いた距離は数メートル程度だろうか?
暗いので詳しいことはよくわからない。
それに入り口が地味に上の方にあるように見える。
どうやら傾斜がついていたようだ。
「小聖堂ですけど、住居も兼ねているはずです。ですので、奥行きは結構あるはずなんですよね」
「小聖堂の構造は基本的に同じ。礼拝堂のある前方部分と居住スペースのある後方部分の二つに分かれてる。脇にある扉で行き来する構造。小聖堂は孤児院も兼ねている場合が多いから、後方部分のスペースは広め」
「へぇ~。ということは、この部分は元々作られていたのかな?」
「たぶん何か理由はあったはずにゃ。それが今はデッドスペースとして扱われているのかもしれないにゃ」
何を考えてここに通路を作り、地下への階段を作っていたのかはわからない。
まぁ、考えてもわからないから実際に聞くしかないんだけどね。
階段は思ったよりも長く、結構な段数を降りたように感じる。
狐火の明るさって松明より少しくらい程度だから、周りがよく見えなくて少し困る。
ただ、しばらく降り続けていると、前方に扉が現れた。
どうやら終着地点のようだ。
「ここが問題の場所ですか。扉には鍵が掛かっているようですね」
「攻撃的な罠はないにゃ。ただ触ると向こうにこっちの情報が伝わるようになっているにゃ」
「解除はできないのですか?」
「無理にゃ。これは術式を組み込んだ魔術にゃ」
「この術式は知ってる。エルフ特有の認証魔術。幻影結界と併用すると登録者以外は入れなくなる仕組み。ただ、エルフ族が触るとエルフが来たことは伝わるはず」
そう言うと、フィルさんは扉のノブに触れた。
フィルさんがノブに触れた瞬間、扉は開かれた。
そしてフィルさんが先頭に立ち、扉をくぐっていく。
「このホール、危険。招かれざる人はここで殲滅魔術を仕掛けられる可能性がある」
扉の先には石レンガで作られたホールが存在していた。
奥に扉は一つあるが、その前には揺らめく白い光を発する壁が存在していた。
『エルフが訪ねてくるとは驚きました。このような汚染された場所に来るとは酔狂ですね』
どこからともなく、女性の声が聞こえてきた。
音声系の魔術か何かなのだろうか?
「噂の調査。それと浄化のために来た。幻影結界でわかったけど、ここ、隠れエルフ村」
「隠れエルフ村ってなに?」
フィルさんの言葉を聞いてボクは疑問を投げかけた。
フィルさんはボクの方を向くとこう言った。
「アニエス国の森林地帯を追われたエルフが作った村のこと。犯罪者じゃない普通の人たちで構成されている。アニエス国にある大きな問題は長命種の人口増加。食料不足を回避するために各村では棄民のような行為を行う。その結果がこれ」
この世界はまだまだ大部分が汚染されていて、まともに生産活動を行うことができない。
フィッツガルド連邦の三国とメルヴェイユの街は、自分たちが生産する食料に加え、不足分の食料を融通し合うという行為をずっと行ってきたらしい。
軍事力の高いガーランドは食料生産は少なめだけど、人口が多い。
代わりに軍事力を融通することで支援を受けている。
アニエスは大きな森林地帯と山脈、そして広大な平原を有しており、メルヴェイユの街と共同で食料生産に励んでいる。
主な食糧生産の拠点はここ。
カーライルはガーランドとアニエスの中間くらいの生産能力を持っている。
でも、主な輸出品は工芸品や美術品といったものだ。
長命種であるエルフが長く仕事をすることで効率的な食糧生産を行うことができる。
ただ、無作為に耕地面積を広げられるほどの土地があるはずもなく、神聖である森を切り拓くことができるわけがない。
それでも生きている以上は増えていく。
人間と比べれば緩やかにしか増加しないエルフ人口だけど、増えるものは増えていく。
その上、簡単には死なないため減ることも少ない。
その結果、一部の民を間引くといった行為がエルフたちの村で行われ始めたのだ。
『私たちは汚染地帯に投棄されました。そして生き延びるために、廃村などを利用して汚染の侵食を避けつつ細々と暮らすことにしました』
どうやら、この村の主要な機能は地下にあるようだ。
話を聞いている限り、このような村がいくつかひっそりと存在しているのだろう。
「エルフは魔術に長けている。だから地下での生活にも適応することができた。まるでドワーフのように」
『…………』
この世界のエルフとドワーフは不仲というわけではない。
ただやっぱりイメージとしてはドワーフは地下や洞窟、エルフは地上の森というのがある。
『地上の浄化と言いましたが、その術はあるのですか? 私たちエルフにすらできないというのに』
「ある。スピカがそう。そのためには、貴女達が持って行った聖杯を一時的に貸してもらう必要がある」
状況的に見て、ここのエルフたちが持って行ったとしか考えられない。
とは言っても、放置しておくわけにはいかないしね。
『話は中で聞きましょう。どうぞ、お入りください』
女性がそう言うと、奥の扉から「カチャリ」という音が聞こえた。
「ありがとう。私が先頭で行く。スピカは後ろから来て」
フィルさんはすぐに行動する。
迷わずまっすぐに扉に向かっていくと、ノブをひねる。
「うわぁ」
「これはすごいにゃ」
「地下生活とはいえ、ここまでやりましたか」
「エルフ族、侮れないですね」
「地下の森」
扉の先には、森林が広がっていた。
天井は大きく削られ、ホールのようになっている。
ところどころに支柱があり、小さなジオフロントのような印象を受けることができる。
木々の間にはツリーハウスがあり、一部施設は地上にも存在していた。
光を生み出す発光する謎の樹木もあれば、天井に魔術光も設置されていた。
そして、地面では農地が用意され、川のようなものには水も流れていた。
どれだけの年月が経っているのかは分からない。
ただ、どうにか生き延びよう、快適にしようという工夫が随所に見られた。
「ようこそ、地上の方。ここは地下の村『アリエスタ』です。私が責任者のアリエスです」
ボクたちが地下の村の光景に見惚れていると、前方からエルフの女性がやってきた。
長い金色の髪に翡翠のような色をした瞳、白い肌に高い身長。
よくおとぎ話に出てくるような姿をした美人のエルフだった。
「貴女たちを歓迎します」
そう言って、アリエスさんはにっこりと微笑んだ。
穴の奥から吹いてくる風は、外のような生ぬるい気持ちの悪さは感じられない。
「地上の汚染は地下までは及んでいません。ただ、あまりにも地上を汚染しているために、生きていくために必要な何もかもが地上からは失われつつあります。あの植物たちは毒や瘴気は吐き出しますが、酸素は吐き出しません」
「それって、遠からず滅亡するっていうこと?」
「そうです。スピカ様は賢いですね」
「えへへ」
「何を言っているのかわからない。けど、森は重要」
「そうですね。私でも何かが失われていることはわかりますが、詳しいことはわかりませんでした」
「光合成をするような植物ではないってことだにゃ」
「音緒が知っているなんて不思議!!」
「スピカにゃん、ひどいにゃ!」
現在先頭をルーナが歩き、ボク、フィルさん、ミア、そして音緒の順番で進んでいる。
音緒は盗賊職なので後方の警戒を有利にするスキルを持っているらしい。
それと、パーティー効果というか盗賊職の恩恵で、パーティーメンバーも罠に気づきやすくなっている。
「前方には特に障害物はありませんが、階段があります。どうやら地下があるようです」
ボクたちの前方には階段が存在しているらしい。
正直狐火の明るさではあまりよく見えない。
ただ前方にぽっかり穴が開いてるようにしか見えないのだ。
「ルーナ、見えない」
「スピカ様は身長が低いですからね。ほ~ら、たかいたか~い」
「ちょっ!? やめてよ!?」
ちょっとどいてくれればいいだけなのに、なんでわざわざボクを持ち上げたのか。
ルーナめ、後でお仕置きしてやるううう!!
悔しくも持ち上げられ、抱きかかえられた状態でルーナの前に出たボク。
うんざりしつつも前方を確認すると、たしかに地下へと続く階段があることが分かった。
実際に歩いた距離は数メートル程度だろうか?
暗いので詳しいことはよくわからない。
それに入り口が地味に上の方にあるように見える。
どうやら傾斜がついていたようだ。
「小聖堂ですけど、住居も兼ねているはずです。ですので、奥行きは結構あるはずなんですよね」
「小聖堂の構造は基本的に同じ。礼拝堂のある前方部分と居住スペースのある後方部分の二つに分かれてる。脇にある扉で行き来する構造。小聖堂は孤児院も兼ねている場合が多いから、後方部分のスペースは広め」
「へぇ~。ということは、この部分は元々作られていたのかな?」
「たぶん何か理由はあったはずにゃ。それが今はデッドスペースとして扱われているのかもしれないにゃ」
何を考えてここに通路を作り、地下への階段を作っていたのかはわからない。
まぁ、考えてもわからないから実際に聞くしかないんだけどね。
階段は思ったよりも長く、結構な段数を降りたように感じる。
狐火の明るさって松明より少しくらい程度だから、周りがよく見えなくて少し困る。
ただ、しばらく降り続けていると、前方に扉が現れた。
どうやら終着地点のようだ。
「ここが問題の場所ですか。扉には鍵が掛かっているようですね」
「攻撃的な罠はないにゃ。ただ触ると向こうにこっちの情報が伝わるようになっているにゃ」
「解除はできないのですか?」
「無理にゃ。これは術式を組み込んだ魔術にゃ」
「この術式は知ってる。エルフ特有の認証魔術。幻影結界と併用すると登録者以外は入れなくなる仕組み。ただ、エルフ族が触るとエルフが来たことは伝わるはず」
そう言うと、フィルさんは扉のノブに触れた。
フィルさんがノブに触れた瞬間、扉は開かれた。
そしてフィルさんが先頭に立ち、扉をくぐっていく。
「このホール、危険。招かれざる人はここで殲滅魔術を仕掛けられる可能性がある」
扉の先には石レンガで作られたホールが存在していた。
奥に扉は一つあるが、その前には揺らめく白い光を発する壁が存在していた。
『エルフが訪ねてくるとは驚きました。このような汚染された場所に来るとは酔狂ですね』
どこからともなく、女性の声が聞こえてきた。
音声系の魔術か何かなのだろうか?
「噂の調査。それと浄化のために来た。幻影結界でわかったけど、ここ、隠れエルフ村」
「隠れエルフ村ってなに?」
フィルさんの言葉を聞いてボクは疑問を投げかけた。
フィルさんはボクの方を向くとこう言った。
「アニエス国の森林地帯を追われたエルフが作った村のこと。犯罪者じゃない普通の人たちで構成されている。アニエス国にある大きな問題は長命種の人口増加。食料不足を回避するために各村では棄民のような行為を行う。その結果がこれ」
この世界はまだまだ大部分が汚染されていて、まともに生産活動を行うことができない。
フィッツガルド連邦の三国とメルヴェイユの街は、自分たちが生産する食料に加え、不足分の食料を融通し合うという行為をずっと行ってきたらしい。
軍事力の高いガーランドは食料生産は少なめだけど、人口が多い。
代わりに軍事力を融通することで支援を受けている。
アニエスは大きな森林地帯と山脈、そして広大な平原を有しており、メルヴェイユの街と共同で食料生産に励んでいる。
主な食糧生産の拠点はここ。
カーライルはガーランドとアニエスの中間くらいの生産能力を持っている。
でも、主な輸出品は工芸品や美術品といったものだ。
長命種であるエルフが長く仕事をすることで効率的な食糧生産を行うことができる。
ただ、無作為に耕地面積を広げられるほどの土地があるはずもなく、神聖である森を切り拓くことができるわけがない。
それでも生きている以上は増えていく。
人間と比べれば緩やかにしか増加しないエルフ人口だけど、増えるものは増えていく。
その上、簡単には死なないため減ることも少ない。
その結果、一部の民を間引くといった行為がエルフたちの村で行われ始めたのだ。
『私たちは汚染地帯に投棄されました。そして生き延びるために、廃村などを利用して汚染の侵食を避けつつ細々と暮らすことにしました』
どうやら、この村の主要な機能は地下にあるようだ。
話を聞いている限り、このような村がいくつかひっそりと存在しているのだろう。
「エルフは魔術に長けている。だから地下での生活にも適応することができた。まるでドワーフのように」
『…………』
この世界のエルフとドワーフは不仲というわけではない。
ただやっぱりイメージとしてはドワーフは地下や洞窟、エルフは地上の森というのがある。
『地上の浄化と言いましたが、その術はあるのですか? 私たちエルフにすらできないというのに』
「ある。スピカがそう。そのためには、貴女達が持って行った聖杯を一時的に貸してもらう必要がある」
状況的に見て、ここのエルフたちが持って行ったとしか考えられない。
とは言っても、放置しておくわけにはいかないしね。
『話は中で聞きましょう。どうぞ、お入りください』
女性がそう言うと、奥の扉から「カチャリ」という音が聞こえた。
「ありがとう。私が先頭で行く。スピカは後ろから来て」
フィルさんはすぐに行動する。
迷わずまっすぐに扉に向かっていくと、ノブをひねる。
「うわぁ」
「これはすごいにゃ」
「地下生活とはいえ、ここまでやりましたか」
「エルフ族、侮れないですね」
「地下の森」
扉の先には、森林が広がっていた。
天井は大きく削られ、ホールのようになっている。
ところどころに支柱があり、小さなジオフロントのような印象を受けることができる。
木々の間にはツリーハウスがあり、一部施設は地上にも存在していた。
光を生み出す発光する謎の樹木もあれば、天井に魔術光も設置されていた。
そして、地面では農地が用意され、川のようなものには水も流れていた。
どれだけの年月が経っているのかは分からない。
ただ、どうにか生き延びよう、快適にしようという工夫が随所に見られた。
「ようこそ、地上の方。ここは地下の村『アリエスタ』です。私が責任者のアリエスです」
ボクたちが地下の村の光景に見惚れていると、前方からエルフの女性がやってきた。
長い金色の髪に翡翠のような色をした瞳、白い肌に高い身長。
よくおとぎ話に出てくるような姿をした美人のエルフだった。
「貴女たちを歓迎します」
そう言って、アリエスさんはにっこりと微笑んだ。
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