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転職試練・百体討伐編2
迫りくるゴブリンアーミーたち。
ゴブリンアーミーファイターにゴブリンアーミマジシャン、ゴブリンアーミーアーチャーがボクたちの行く手を阻んでいる。
「わらわら湧いてくる! どれだけいるんだよ~」
襲い掛かられては斬り伏せ、魔術や矢は結界などを駆使して何とかしのいでいく。
ボクの使える防御結界は属性防御陣を利用したもので、地面に設置する以外に服などの防具に陣を刻むことができる。
簡単に言うと、効果範囲が広いか狭いかくらいのもので、当然地面設置型の方が融通は利かないけれど多数に効果を及ぼすことができる。
防具に刻む場合、効果範囲単体に限定されてしまう。
その上、陣を刻んでいくのにそこそこ時間がかかるので戦いの最中に効果を変えるのが大変なのだ。
そう言った意味では、魔術師の使う『マジックシールド』は簡単に張りなおすことができるので汎用性は高いと思う。
ただ、『マジックシールド』は全属性を軽減するだけなので、無効化するということはできない。
特化したのが属性防御陣なら、広く簡単に利用できるのがマジックシールドというわけだ。
もちろん、他にもいろいろな防御結界が存在しているようなので、今度確認してみたいとは思っている。
神官(プリースト)なら『ホーリーシールド』や『ディバインシールド』なるものがあるようだし、召喚師にしても祈祷師(シャーマン)にしても独自の防御結界を持っているようだ。
「貧弱な結界しか持ってないのね? そんなことで大丈夫なのかしら?」
忙しいのはボクだけで、大禍津は気楽なものだと思う。
じーっとボクを見ているようで、ついて来たり話しかけたりはしてくるものの攻撃に参加したりはしないようだ。
「そんなこと言うなら、手伝ってよ~」
敵は前衛と後衛といった組み合わせで隊列を組んでやってくる。
前衛のファイターさえ排除すれば、アーチャーとマジシャンは比較的簡単に排除することができた。
とはいえ、そんな前衛も今のボクにはさほど苦労するものではなかった。
やっぱり鋭利を付与した刀の切れ味は素晴らしいものがある。
防具には『堅固』を付与することで防御力が上がるし、靴には『俊敏』を付与することで素早い動きができるようになる。
ちなみに、属性防御陣と堅固の符術は重複可能なので、実質さらに防御力を上げることができるのだ。
道士見習いの時から使えた、パーティー全体を満遍なく強化するバフスキルは、女神の加護しかなかったけど、道士になってからは属性防御陣が増え、20を超えたところで防具に符術を付与するということができるようになった。
この辺りは後で詳しくまとめたいけど、今は目の前の敵に集中しないといけないのですぐにはまとめることができない。
ちなみに、女神の加護は任意の発動が可能で、これも重複が可能だ。
なので、実質三種類のバフが適用できることになる。
「貴女の持っている『女神の加護』だけど、そこまで強い効果はないのね? 所属するパーティーの強化だけど、一分間で1.1倍程度しかあがらないのね?」
「ちょっ、なんでボクのスキル見てるのさ」
「だって暇だもの。貴女、さっきから小鬼を斬ってるだけじゃない」
「ゲギャー!!」
「【五行刻印比和火行一段:火点火陣】」
地面の一部を指定して火の属性点を設置する。
「ギャー!!」
火の属性点を設置した箇所に踏み込んだゴブリンアーミーファイターが噴き出した火に焼かれてのたうち回っている。
「まだまだいくよ!【氷符二段:大氷刃】」
氷の符を二枚重ねることで生み出された大きな氷の刃、その刃が横なぎにゴブリンアーミーファイターたちを斬りつける。
「ギャギャッ」
何を言っているのかは分からないけれど、悲鳴っぽい声を上げ、ゴブリンアーミーファイターは切り裂かれていく。
「【氷符:氷槍】」
氷の符から小さな槍を生み出し、ゴブリンアーミーアーチャーとゴブリンアーミーマジシャンに向かって放つ。
氷の槍の大きさは小さめだけど、威力がそこそこあるため、急所に当たれば倒すことも可能だ。
「一体目! 符術は結構色々なことに応用できるけど、同時に違う武器にできないのがつらいなぁ」
槍や剣、斧などに変化させることは可能なんだけど、どうしてもできないことがある。
それは、同時に二種類以上の武器に変化させることができないというものだ。
同じ符を重ねたところで、【氷符二段:大氷刃】のように一種類の武器が強化され、大型化したり本数が増える程度のことしかできないのだ。
慣れてくるとすごく不便だ……。
「とりあえずその辺りの研究は後ででもいいのではないかしら? 今は数を増やすなりして突破するのが先よ」
大禍津の言葉にボクは頷き、槍の本数を増やして突破することを優先した。
「【氷符三段:氷槍乱舞】」
三本の氷の槍が生み出されると、ボクの指示したゴブリンアーミーたちに向かって飛んでいく。
避ける暇もなく、勢いよく飛んできた氷の槍に貫かれ、三体のゴブリンアーミーが動かなくなった。
「やっぱり三倍にすると単体で使うより妖力をよく使うなぁ……。正直結構きついかも」
マタンガの郷で購入した妖力丸(ようりょくがん)を一つ口にする。
最初は糖衣に包まれているため甘いのだが、それを過ぎるとじんわりと苦い薬が中から出てくる。
「うえぇぇ……、これやっぱりきついよ」
困ったことにこの妖力丸、人間の街では売っていないのだ。
マタンガの郷のような精霊たちのいる場所か、宝箱、製作でしか作ることができず、いくつかは委託販売所でも販売されていることがある。
それでも昨今、妖種ユーザーが増えたことや、烏天狗などが有用なために、妖種へと進化する人間プレイヤーが増え始めたことで、手に入りにくくなっている。
いい加減、調合をしっかり学ぶ必要がありそうだ。
「その丸薬、なんだか苦そうだけど、材料の見直しとかすればいいのではないかしら? 甘い薬草もあることだし、取り入れてみるべきね」
「うぅ。そうだよね。ちょっと調合について学びなおすよ」
「それはいいことね。頑張ればそのうち神力丸(しんりきがん)も作れるようになるかもしれないわね?」
大禍津の口から全く知らない言葉が出てきた。
神力丸? そんなの聞いたことないんだけど?
「その神力丸ってなに?」
ボクの問いかけに、大禍津はしまったという顔をする。
「ええっと、聞かなかったことにしてくれるかしら? 貴女にはまだ早いわ」
「むぅ……」
「もう、この話はおしまいよ? そのうち教えてあげるから、さっさと切り抜けましょ?」
大禍津の口ぶりからすると、どうあっても教える気はないようだ。
聞き出したい気持ちはあるけど、どうやっても無理だろうし、今は大人しくダンジョンクリアをするほうがよさそうだ。
「そうそう。素直なのはいいことよ? 今教えられなくてもいずれ教えられるわ。それについてはごめんなさいとしか言えないわね」
少しだけ申し訳なさそうな顔をして謝る。
神力丸かぁ。
一体どんなものなんだろう。
「さぁ、どんどんいくよ!!」
二層目は十字路の多い迷路型の地下遺跡といった感じになっている。
行けども行けども十字路ばかりで帰り道がわからなくなりそうだ。
そんなことを考えながらゴブリンアーミーを倒しつつ進んでいると、階段を発見した。
「やった! 階段だよ!!」
「あら、案外早かったわね」
ボクは喜び勇んで階段を降りる。
「あれ?」
「あら」
なんだか見覚えのある場所に出たのだ。
その上、前方には徐々に消えていくゴブリンアーミーの死体があった。
「あのゴブリンアーミーって、ボクが倒したやつじゃない?」
「たまたま誰かが通ったとかはないのかしら?」
「いやだって、ここソロ専用だよ?」
「ということは、ループしてるのね」
「ええっ!? 本物の階段探さないと抜けられないの!?」
「ゲギャギャー!!」
ボクは同じ階をループしていることに気づき愕然とする。
そんな中、空気を読まずに現れたのは、ゴブリンアーミーの団体さんだった。
「もう、いい加減にしてよ!!」
ボクのダンジョン探索はまだまだ終わらない。
ゴブリンアーミーファイターにゴブリンアーミマジシャン、ゴブリンアーミーアーチャーがボクたちの行く手を阻んでいる。
「わらわら湧いてくる! どれだけいるんだよ~」
襲い掛かられては斬り伏せ、魔術や矢は結界などを駆使して何とかしのいでいく。
ボクの使える防御結界は属性防御陣を利用したもので、地面に設置する以外に服などの防具に陣を刻むことができる。
簡単に言うと、効果範囲が広いか狭いかくらいのもので、当然地面設置型の方が融通は利かないけれど多数に効果を及ぼすことができる。
防具に刻む場合、効果範囲単体に限定されてしまう。
その上、陣を刻んでいくのにそこそこ時間がかかるので戦いの最中に効果を変えるのが大変なのだ。
そう言った意味では、魔術師の使う『マジックシールド』は簡単に張りなおすことができるので汎用性は高いと思う。
ただ、『マジックシールド』は全属性を軽減するだけなので、無効化するということはできない。
特化したのが属性防御陣なら、広く簡単に利用できるのがマジックシールドというわけだ。
もちろん、他にもいろいろな防御結界が存在しているようなので、今度確認してみたいとは思っている。
神官(プリースト)なら『ホーリーシールド』や『ディバインシールド』なるものがあるようだし、召喚師にしても祈祷師(シャーマン)にしても独自の防御結界を持っているようだ。
「貧弱な結界しか持ってないのね? そんなことで大丈夫なのかしら?」
忙しいのはボクだけで、大禍津は気楽なものだと思う。
じーっとボクを見ているようで、ついて来たり話しかけたりはしてくるものの攻撃に参加したりはしないようだ。
「そんなこと言うなら、手伝ってよ~」
敵は前衛と後衛といった組み合わせで隊列を組んでやってくる。
前衛のファイターさえ排除すれば、アーチャーとマジシャンは比較的簡単に排除することができた。
とはいえ、そんな前衛も今のボクにはさほど苦労するものではなかった。
やっぱり鋭利を付与した刀の切れ味は素晴らしいものがある。
防具には『堅固』を付与することで防御力が上がるし、靴には『俊敏』を付与することで素早い動きができるようになる。
ちなみに、属性防御陣と堅固の符術は重複可能なので、実質さらに防御力を上げることができるのだ。
道士見習いの時から使えた、パーティー全体を満遍なく強化するバフスキルは、女神の加護しかなかったけど、道士になってからは属性防御陣が増え、20を超えたところで防具に符術を付与するということができるようになった。
この辺りは後で詳しくまとめたいけど、今は目の前の敵に集中しないといけないのですぐにはまとめることができない。
ちなみに、女神の加護は任意の発動が可能で、これも重複が可能だ。
なので、実質三種類のバフが適用できることになる。
「貴女の持っている『女神の加護』だけど、そこまで強い効果はないのね? 所属するパーティーの強化だけど、一分間で1.1倍程度しかあがらないのね?」
「ちょっ、なんでボクのスキル見てるのさ」
「だって暇だもの。貴女、さっきから小鬼を斬ってるだけじゃない」
「ゲギャー!!」
「【五行刻印比和火行一段:火点火陣】」
地面の一部を指定して火の属性点を設置する。
「ギャー!!」
火の属性点を設置した箇所に踏み込んだゴブリンアーミーファイターが噴き出した火に焼かれてのたうち回っている。
「まだまだいくよ!【氷符二段:大氷刃】」
氷の符を二枚重ねることで生み出された大きな氷の刃、その刃が横なぎにゴブリンアーミーファイターたちを斬りつける。
「ギャギャッ」
何を言っているのかは分からないけれど、悲鳴っぽい声を上げ、ゴブリンアーミーファイターは切り裂かれていく。
「【氷符:氷槍】」
氷の符から小さな槍を生み出し、ゴブリンアーミーアーチャーとゴブリンアーミーマジシャンに向かって放つ。
氷の槍の大きさは小さめだけど、威力がそこそこあるため、急所に当たれば倒すことも可能だ。
「一体目! 符術は結構色々なことに応用できるけど、同時に違う武器にできないのがつらいなぁ」
槍や剣、斧などに変化させることは可能なんだけど、どうしてもできないことがある。
それは、同時に二種類以上の武器に変化させることができないというものだ。
同じ符を重ねたところで、【氷符二段:大氷刃】のように一種類の武器が強化され、大型化したり本数が増える程度のことしかできないのだ。
慣れてくるとすごく不便だ……。
「とりあえずその辺りの研究は後ででもいいのではないかしら? 今は数を増やすなりして突破するのが先よ」
大禍津の言葉にボクは頷き、槍の本数を増やして突破することを優先した。
「【氷符三段:氷槍乱舞】」
三本の氷の槍が生み出されると、ボクの指示したゴブリンアーミーたちに向かって飛んでいく。
避ける暇もなく、勢いよく飛んできた氷の槍に貫かれ、三体のゴブリンアーミーが動かなくなった。
「やっぱり三倍にすると単体で使うより妖力をよく使うなぁ……。正直結構きついかも」
マタンガの郷で購入した妖力丸(ようりょくがん)を一つ口にする。
最初は糖衣に包まれているため甘いのだが、それを過ぎるとじんわりと苦い薬が中から出てくる。
「うえぇぇ……、これやっぱりきついよ」
困ったことにこの妖力丸、人間の街では売っていないのだ。
マタンガの郷のような精霊たちのいる場所か、宝箱、製作でしか作ることができず、いくつかは委託販売所でも販売されていることがある。
それでも昨今、妖種ユーザーが増えたことや、烏天狗などが有用なために、妖種へと進化する人間プレイヤーが増え始めたことで、手に入りにくくなっている。
いい加減、調合をしっかり学ぶ必要がありそうだ。
「その丸薬、なんだか苦そうだけど、材料の見直しとかすればいいのではないかしら? 甘い薬草もあることだし、取り入れてみるべきね」
「うぅ。そうだよね。ちょっと調合について学びなおすよ」
「それはいいことね。頑張ればそのうち神力丸(しんりきがん)も作れるようになるかもしれないわね?」
大禍津の口から全く知らない言葉が出てきた。
神力丸? そんなの聞いたことないんだけど?
「その神力丸ってなに?」
ボクの問いかけに、大禍津はしまったという顔をする。
「ええっと、聞かなかったことにしてくれるかしら? 貴女にはまだ早いわ」
「むぅ……」
「もう、この話はおしまいよ? そのうち教えてあげるから、さっさと切り抜けましょ?」
大禍津の口ぶりからすると、どうあっても教える気はないようだ。
聞き出したい気持ちはあるけど、どうやっても無理だろうし、今は大人しくダンジョンクリアをするほうがよさそうだ。
「そうそう。素直なのはいいことよ? 今教えられなくてもいずれ教えられるわ。それについてはごめんなさいとしか言えないわね」
少しだけ申し訳なさそうな顔をして謝る。
神力丸かぁ。
一体どんなものなんだろう。
「さぁ、どんどんいくよ!!」
二層目は十字路の多い迷路型の地下遺跡といった感じになっている。
行けども行けども十字路ばかりで帰り道がわからなくなりそうだ。
そんなことを考えながらゴブリンアーミーを倒しつつ進んでいると、階段を発見した。
「やった! 階段だよ!!」
「あら、案外早かったわね」
ボクは喜び勇んで階段を降りる。
「あれ?」
「あら」
なんだか見覚えのある場所に出たのだ。
その上、前方には徐々に消えていくゴブリンアーミーの死体があった。
「あのゴブリンアーミーって、ボクが倒したやつじゃない?」
「たまたま誰かが通ったとかはないのかしら?」
「いやだって、ここソロ専用だよ?」
「ということは、ループしてるのね」
「ええっ!? 本物の階段探さないと抜けられないの!?」
「ゲギャギャー!!」
ボクは同じ階をループしていることに気づき愕然とする。
そんな中、空気を読まずに現れたのは、ゴブリンアーミーの団体さんだった。
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